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花月さん正面
「蘭亭ぽん多」さんの角を曲がって春日通りに通ずる小路の右手にあるお店。店内はお客が二人も入るともういっぱい。お馴染みさんは黙ってガラス戸の外で待ちます。
とにかく花月さんのかりんとうは美味しい。太くて歯ごたえ十分ながら、中はカリッと仕上げられ、軽い。甘さは江戸下町風と云いましょうか、かなりぐんと来ます。外側が艶やかで舌触りもなめらかなところは花月さんの独壇場ではないでしょうか。ちょっと舐めて甘さを感じてからがりっと噛みたい。香ばしさがいっぺんに広がります。
かりんとうと並んであられ三姉妹も是非。「さざれ」「あげせん」「かさねうめ」といずれも工夫を重ねた香りと味、それに柔らかめの噛み心地が何とも素敵。
これに最近「いわおと」が加わりました。コメの旨みを生かした醤油味の堅揚げせんべいで、餅に残る水分を天日干しで抜き、米に宿されたおいしさを引き出す工夫をこらしたという新製品。醤油味にこだわる煎餅通にも是非味わっていただきたいと思います。
「さざれ」は煮詰めた上白糖の飴で仕上げられていて、花月さんお得意のストレートな甘さと中身歯触りの軽さが直球で味覚・食感を刺激します。一方「かさねうめ」は塩味と若干甘酢っぱさが効いた二つの味のあられが組み合わされたもので、花月さんらしい、工夫を重ねた逸品です。
「かさねうめ」は以前の「しらうめ」に代わる新商品と見えます。「しらうめ」はもちろん湯島の白梅に縁起をおいた塩味のレシピで、湯島天神下のお店が作ったオリジナル感が出ていて、私的には好きなあられでした。「かさねうめ」は塩味だけでは寂しかった向きには願ってもない“ダブル味”です。
店頭には四本の幟(のぼり)スタンドが並び、よく店頭にご主人の溝口智正さんが立ってお客さんをお迎えしています。職制名は“会長/お兄さん”だそうで、多分ご主人とか社長とか呼ばれるのはお嫌いなんですね。店内小上がりの座敷に若いスタッフが数名いつも車座でかりんとうやあられを包んでいます。支店やデパート売り場は持たず、すべてこの小さい間口の店舗と通販のみ。支店を広げて拡大路線を取らず、「その日自分の店と通販で売り切れる量しか作らない」という昔ながらのお店のポリシーを守っている専門店らしさは甘味のみつばちさんと同じです。それにしても、若手スタッフが車座で仕事に励む姿は感動もの。日本はまだまだ大丈夫、って感じがして心強い限りです。会長/お兄さんのお力ですね。
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