湯島_Wikia
ニュース ...
“正一合の店”「シンスケ」さん。
五時開店の居酒屋さん。全国規模で居酒屋体験している人にも、いつも一番先に上げられる名店。
03-3832-0469(日・祭日・年末年始にもお休みあり)
居酒屋と云ったら酒飲みのお店、と決めている人が多いようですが、とんでもない。お酒と同時に、何か美味しいものを口にしたいと、食べ物にもぜいたくなのが酒飲み連中。それにその場の雰囲気にもかなりぜいたく。
あーだ、こーだは、面倒くさいが、あるべきものが、あるべきところに鎮座していてほしい。余計なものはいらない。つまり、ほしいものをほしい時にというぜいたく屋。そしてもう一つ大事なぜいたく。話しの深みと心得た相客…。
そんな望みをかなえてくれるのがご店主の三代目と四代目の若主人、主に二階を見ていらっしゃる女将さん。従業員の方々も居心地よいシンスケさんを作っています。
「シンスケ」さんは、お酒の「正一合」の気合と同じ「正五時」開店。二、三十人が並んで五時を待つのは珍しくありません。ちなみにシンスケさんの「正一合」は、酒屋さん時代から引き継ぐお店の精神となるキャッチフレーズ。上げ底徳利で儲けに走らない店であることを宣言するものと聞いています。
戸口に杉玉が下がり、入って右手、もう一枚の引き戸を開けると左手に奥行がたっぷりのカウンター、右手に壁を背にした横並び・ベンチ型のテーブル席。奥には左右に対面テーブル席が。整然とした広がりが目を奪います。余計なものが一切ない。
入口すぐのカウンターで若主人が出迎えて「いらっしゃい」のひとこと。手もとには、いつもお願いする「氷なしの水」用のグラスがもうその掌に遊んで、もう一度からぶきされながら、出を待っています。
季節のメニュー、食材の特徴、料理のバリエーション、食べごろ(産地選びと仕入れどき)、食べ方…、若主人の丁寧な説明を聞いていると、今提供する料理に懸けるお店の信念が伝わってきます。
秋も深くなると毎年帰ってくる「たこ芋煮」…。明石ダコと里芋に、塩気を押さえてコクのある甘辛の煮汁が見事にしみ込んで、びっくりするほど柔らかに。こんなに旨い「タコ芋煮」ってあったのかー?!
タコに微妙に残された弾力と、里芋の豊潤な歯ごたえ、煮汁の旨みが口の奥をぐりぐり刺激して、今年はあと何回食べられるかなぁと、早くもシーズン終わりが恨めしくなってしまう…。そんな味です。
立春過ぎて、冬も佳境に入るころ、「今年もやっと美味しくなったんです!」と、「やりいか煮」の一皿。とろみをつけたやや辛めのたれ汁の上品さ、じっくり煮込まれたやりいかとの絡まり具合。ほかのお客さんを忘れて、残ったたれ汁を飲んでしまうのは私だけ? (^o^)
そしてその少し手前、年が明けたころを過ぎれば、ぶりが一番の食べごろに。待ってましたと、「寒ブリ刺身」、「寒ブリと大根のあら煮」、それに「寒ブリのねぎま串」の三姉妹・三兄弟がそろって登場。
大根好きの私などは、すぐさま「寒ブリと大根のあら煮」に走ります。この大根、本当におつゆをたっぷり吸いこんで、歯を当てるとじゅっとシンスケさんらしい軽めの甘辛つゆが噴き出して味覚を奪います。
大根といえば、2015~16の冬、メニューの冒頭「東京むかしの味/晩冬のお惣菜」とタイトルがついたカコミの中に、「揚げ出しだいこん」という聞き慣れない一皿を発見。次の行、斜め下に“湯島でとれた大根”と何気なく説明書きが…。え?ここ湯島で大根とれるの?
四代目若主人に早速、「湯島大根、ですか?」と伺うと、熊本県天草に湯島という島があり、大根が名物。天草・湯島と東京・湯島のコラボというプロジェクトにちなむ食材として「湯島産大根」をごま油でカリッと揚げて江戸料理仕立てにしたものとのこと。香り、歯ごたえ、じゅっとしみ出す旨みがう~ん、たまりませんでした。天草湯島の地元PR誌も備えての特別料理。過去は過去として未来を拓いて行くシンスケさんの姿が見えて、またまた納得でした。
同じころ、ほんの短い期間でしたが、もう一つ白眉の献立が。「女将手製のだて巻」。これが寒卵と北海道産マタラのすり身の逸品。だて巻き大好き派は私に限らないらしく、早めの時間に着席しても、二度ほど“本日売れ切れ”のオーダー・ストップに遭遇。
という訳で、お気に入りの料理が献立てに乗ったら、毎日でも通っていただいておくのがおすすめです。だからシンスケさんは居酒屋シンスケさんに終わらないんです。
手元用のメニューもあるけれど(ちなみに英語版もバッチリOK)、1階ならカウンター正面と向こう正面(奥の正面)にずらり並ぶ白の短冊紙に墨筆書きの貼り出しを見ながらのオーダーも楽しい。
そこで目に入るのがカウンター背面上にかかる一枚の書額「春酔風」、入ってすぐ左に架かるもう一枚に「酒」の一文字。シンスケさんでいただくお酒とお料理を楽しむこの上ないお供です。
カードケース入りの手元用メニューを手にされる時は、始めの二行をお忘れなく。二十四節気に季節を思い、今日の献立の心意気が書いてあります。
シンスケさんで「すみませーん」と声を上げる方はあまりおいでにならないように思います。やっぱり呼吸を合わせて手を上げたりして一階では大旦那か若旦那の「はーいい」の声でオーダーをさせてもらうのがいちばん。
だから店内はいつも相客たちの和やかな話し声でいっぱい。皆さんがお店の流れを大切にし、いつも、誰にでも、「私のシンスケ」と自慢するお店になる。
「肩幅の世界」を大事に守るシンスケさん。肩幅とはお客一人一人が憩う空間、お店が提供する個の場。シンスケさんは、それを大切にするお店であり続ける。お客の話題はお酒、料理と食材にとどまらず、土地柄と伝統、相撲、落語、ジャズや邦楽、模型…限りなく広く、深く、皆が相方と意見を交わしながらお店を楽しんでいます。
10年ほど昔、初めてという同僚をシンスケさんにお連れしたことがあります。お酒とお料理がだいぶ進んだ頃「ここ下町の雰囲気、いき(粋)でいいですねー」と一言。お褒めの言葉だったけれど、ちょっと引っかかるものがありました。「ここって下町だっけ?」という疑問と、西荻窪の美味しいお蕎麦屋さんでいただく一杯もいい雰囲気で好きだけれど、下町じゃないから「いき」じゃないのかなぁ?
三代目のご主人がちょうど前に来られた時にこの疑問を聞いてみました。「東京の粋(いき)と考えれば」、というヒントを貰い、四代目からは、「山の手、下町という区分けは物理的なことであって、いきっていうのは心意気。ようは、その土地に長く住む人間=土地っ子の価値観じゃないですかね」とクリアーなお話しを聞くことができました。
そんなお話の中で、江戸の名残→下町=「いき」という固定観念にとどまらず、「東京の洒脱・意気・いき・粋(すい)」を感じながら東京を愛したいと感じたものです。つい先だって、「いきの構造」(九鬼周造著=岩波文庫)を読んでみたら、と三代目ご主人に教えられ、挑戦していますがなかなかの硬派ぶり。とは言え、「いき」って何だろうと興味を引かれた方にはお薦めです。
お酒の話も少し。私はいつも入口ちかくに席を貰うので、「ぬるで辛口」とお願いすれば、若旦那からお燗番の大旦那に伝えられ、「辛口をぬるで…、はーいっ」とお燗番の大旦那からゆったりした復唱が。いいペースで今夜もスタート。徳利は白に紺色でシンスケの銘。上に巻き線1本が楢崎、下に1本が純米酒、無地は本醸造。やや細目の上部から掌に馴染む絶妙の丸みをもたせた徳利の胴から基部。握っておちょこに注ぐ、お酒を口にたどり着かせる寸前の楽しみを、なんとも伸びやかなものにしてくれる握り心地の徳利です。
お酒は秋田の両関。シンスケさんは常温を基本と考え、カウンター背面の棚にはお酒が入った徳利がきれいに並べられています。お燗は徳利をお湯を張った銅壺に、冷やは徳利を氷の桶にいれて、適温を待ちます。
カウンター奥には2段積み3個のこもかぶり4斗樽。10月から4月までの限定期間は樽酒も呑めます。奥左の鴨居上には氏神と酒神(奈良の三輪大社)が神棚に祀られています。
いつも変わらない安らぎの「シンスケさん」ですが、最近新発見がありました。グラスです。まずビール用のタンブラー。それにお水のグラスも。底に近い部分までスッキリ透明感を生かしたニューデザインですが、光沢がガラスとは思えない落ち着き。
このグラスたち、厚くはないけれど薄すぎず、軽くないけど重すぎず、掌に包み込むとスッと収まる馴染み具合にびっくりです。「若主人が木村硝子店さんにお願いして特注し完成させたもの」と三代目ご主人。嬉しそうでした。
酔い過ぎは自主規制、話題豊富なお客さんが集うスマートでダンディーな大人の居酒屋。シンスケさんは、1階がカウンターと横並びの椅子席に数人座れるテーブル席が奥に2つ。2階は予約もできるテーブル席です。
湯島のコンテンツ一覧 |
湯島下町案内 |
神田連雀町誕生ばなし | 神田連雀町を歩く | 昭和初期の建物 |
ゲートウエイステーション | 神田連雀町の魅力とは |
湯島おすすめスポット1 |
上野公園 | 横山大観記念館 | 伊豆栄 | 鈴本演芸場 | 酒悦(しゅえつ) | 池之端藪 | 旧岩崎邸庭園 | 無縁坂 | 三菱経済研究所付属資料館 | 東大構内三四郎池 |
湯島おすすめスポット2 |
赤門 | 焼き鳥「八巻」 | かねやす | 洋食・本郷にしむら | 三原堂 | 竹仙 | まるしょう○笑 | 江知勝 | 湯島天神(天満宮) | 天庄 |
湯島おすすめスポット3 |
サカノウエカフェ | 蘭亭ぽんた | 花月 | うさぎや | つる瀬 | シンスケ | みつばち |
湯島百景 |
シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。
ニュース ...
DSC02665伊豆栄さんを出て中央通りを左に行くと鈴本演芸場定席の寄席。ビルの中にできた寄席として、始めは以前のスタイルを気にする人もいたけれど、ステージと椅子席、それに新幹線座席のようなテーブルが...
DSC02668福神漬けを世に送った酒悦さん本店舗。鈴本演芸場さんのすぐ並び日本の味「福神漬け」の発明者で現在もその第一人者、と申し上げれば十分でしょう。ラーメンと並ぶ日本人好み食ナンバー1、カレーラ...
DSC04103お待たせしました。赤門。本郷三丁目交差点寄りに徳川第十一代将軍家斉の息女が百万石の大名、前田斉泰に嫁入りしたときに建設された御守殿門(ごしゅでんもん)と呼ばれる特別な門。朱塗りのため通...
DSC03664「湯島・蘭亭ぽん多」さんのお出迎え初夏の装い(暖簾は年数種をかけかえ。麻の白地は初夏から真夏)これがとんかつ?と噛みしめてしまう豊かな逸品で知られているとんかつ屋さん。長時間低温揚げの...
DSC03648花月さん正面「蘭亭ぽん多」さんの角を曲がって春日通りに通ずる小路の右手にあるお店。店内はお客が二人も入るともういっぱい。お馴染みさんは黙ってガラス戸の外で待ちます。とにかく花月さんのか...
DSC03267本富士署前のT字路に面した春日通り沿いに江戸あられの「竹仙」さん。見事なあられとおせんべいはサポーターがしっかり。「江戸あられ」と店頭にある小さいお店。お客さんから寄せられた色紙や手紙...
DSC03451八巻さんの店内。奧で焼に入っているご主人ちょっとコースから足をのばして美味しい焼き鳥を召し上がりませんか?5時半開店、水曜定休ですが、「八巻」さんの焼き鳥は鮮度最高、美味しさ抜群。今回...
DSC02961最初の辻から無縁坂を見る。緩い左カーブで坂を上る森鴎外(文久2年(1862)‐大正11年(1922))の代表作の一つ、「雁」(明治44年(1911)作)に描かれていることであまりにも有...
あなたの好きなスポット、風景をぜひ投稿してください。上野公園上野公園横山大観記念館横山大観記念館伊豆栄伊豆栄鈴本演芸場鈴本演芸場酒悦(しゅえつ)酒悦(しゅえつ)池之端藪池之端藪旧岩崎邸庭園旧岩崎邸庭園...
DSC03300「湯島天神入口」交差点に立つ「湯島天満宮」の傍示杭。右に鳥居がある“天神通り”(仮称)が始まる湯島天神は、社名は湯島天満宮と云い、勅命により、雄略天皇2年(458)に創建されそうですか...
※おことわり:ここにご紹介したお店は、ほとんどがご家族や小人数の方々で営んでいらっしゃるお店ばかりです。大きいお店であっても限られた人員で営業されています。予約や営業関係のお問い合わせでお電話される場...
Bg header湯島の地:武蔵野台地の突端湯島は現在の文京区南東端で、東隣は台東区上野に、南は千代田区外神田、西は本郷(文京区)という位置にありますが、江戸幕府が開かれる前後の江戸の地形は今とかなり...
DSC03235本郷三丁目駅から本郷通りに出る商店街途中左側にある街のグリル「洋食にしむら」さん。お店が4階のため、通りに案内板がある典型的な日本の洋食グリルで、昭和45年(1970)年から営業する地...
注釈[]注1)「婦系図」(おんなけいず)泉鏡花が明治40年(1907)1~4月、「やまと新聞」に連載し、おそらく、自身の作品中、一番読まれることになった作品。翌年舞台上演されて新派の代表作になり、公演...
DSC03642仲町通り中ほどにある(あった)池之端藪のあんどん明るい雰囲気はそのメニューとお店のレイアウトにも。入って右手に座卓席の小上がり、左半分に椅子テーブル席。丁度良い広さです。引き戸を開ける...
DSC03293屈指の牛鍋店「江知勝」さん。湯島切通坂を上り切ったあたりに、落ち着いただ住まいのお店が人も知る牛鍋屋さん。個室でいただき、仲居さんが鍋の熱し具合、肉と野菜の食べごろを見て、いちばん美味...
DSC04169池之端一丁目交差点から不忍通りを行くと すぐに見えてくる横山大観記念館の外塀戦災で焼失後、昭和29年(1954)に土台を生かして再建された画伯の自宅建物がそのまま保存され、画伯自身の視...
DSC04117三四郎池(池の形状が心と云う字の形に似ているため、心字池と云う名前が正式)こちらは夏目漱石の「三四郎」に描かれていることでよく知られていますが「三四郎池」はあくまで通称。その形が「心」...
DSC02958旧岩崎邸庭園入口その名の通り、三菱の創始者岩崎弥太郎氏の三男で三代社長を務めた久彌氏のもと邸宅。明治29年(1896)に造られ、1万5千坪の敷地に20棟の建物がありましたが、現在は約5...