みつばち

ページ名:みつばち
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みつばちさんの喫茶室。奥左は7~8名、右側は4名のテーブルが4卓

百年にわたるユニークな創作甘味で唸らせる「みつばち」さん。小倉アイスにハニー焼、みつまめ、あんみつ、氷あずき…何をおいてもちょっとお寄りしましょう。

【26. 小倉アイスにハニー焼:「みつばち」さん】[]

(無休03-3831-3083)

明治42年(1909)に氷業店として創業。既に107年の歴史を持つ老舗でありながら、「みつばち」さんは創造と発見、工夫が続いています。私(案内人)は、イチゴ大福も好きだし、豆大福、きみしぐれと普通よく言う和菓子が好きな一人ではありますが、「みつばち」さんのレパートリーには参ります。

上野広小路から春日通りを天神下交差点方向に向かって(=本郷方向)左側を少し歩き、辻2つ先に「みつばち」さんが。さあ、着きました!

店内喫茶スペースに入る前に、是非店頭をご覧ください。お土産に買い求めるお客さんがいつも並んでいます。これほど通りがかりに店頭を見て買いたくなる甘味店は少ないでしょう。まず目につくのがずらりと並ぶアイスクリーム。19種類が2列に並んでいます。多分アイスクリーム専門店さんもぞっと寒気がするくらいの品揃え。

冬場限定で目が離せないのがハニー焼。アイスクリームの左、ガラス窓の奥に並んでいれば待ち時間ゼロでいただけます。寒い季節にはアツアツのハニー焼が絶対のお薦めです。香ばしく焼かれた生地が包むのは、餡、栗、求肥、花桜の塩漬け、抹茶餅、和栗、チーズ、黒糖くるみ、きなこ餅、など。夏場の氷あずきや、“年中無休”の名物、元祖小倉アイスと並んでこれも「みつばち」オリジナル。

案内人の私的には、栗か和栗が1番ごひいきで、2個買います(1つは妻の遺影の前にお供え用…きっと彼女は喜びます。「みつばち」さんのハニー焼「栗」が本当に好きでしたから)。

薄く軽く、香ばしい生地に餡がどっしり包まれて、ひと口食べると口の中でさっと溶け合い、みつばちさんらしいしっかりした甘味、和菓子の醍醐味が広がります。ハニー焼をお持ち帰りのときは、絶対温めてからいただくのがお薦めです。

そのハニー焼、最近一回り小さくしたそうです。食べやすさを優先させたのでしょうか。前のは結構大きくて、厚みもあったから女性向というより男性向きサイズだったかも。大判焼きとか今川焼とかの名前を付けた良く見る同類の焼き菓子とは一線を画すデリケートな甘さが素晴らしく、一瞬でとろける薄皮が中に包まれた餡の楽しみをちょっと待たせる、その香ばしさが絶妙です。

と、ハニー焼を礼賛しつつ、夏場の楽しみは何といっても「氷あずき」。これは店内喫茶店で着席して頂きます。平たくて大きく、薄め、楕円形をした真鍮製の特別な器にかき氷がグワンと乗って、「みつばち」さんお得意の煮小豆がたっぷり盛られてきます。

秋・冬・春と季節を回り、一年待っていただく「みつばち」さんの氷あずきは、お好みで白みつを。でも、ほんとは、みつを遣わず、あずきとかき氷だけを交ぜていただいて見ていただきたいんです。選びに選んだあずきを昔変わらぬふわっとした歯ごたえに炊き上げ、しっかりと上質な甘味を持たせる腕前に感服してしまいます。

と云いつつ、いただく前にもう一度お皿の上の盛り付けを眺めてください。何かの景色を連想されませんか?

ちょうど不忍池に雪が降り積もった景色のような風情が…。暑さを忘れさせてくれますね。みつなしでも甘味は十分。「みつなし氷あずき・みつばち風」、ぜひお試しを。

氷あずきは夏場だけなので、五月に入ったら行くたびに、今年はもう始めたかどうかチェックが必要です。私の場合、「目に青葉」ときたら、山、ホトトギスとかつおは置いといて、「みつばちブンブン、氷あずきがやってくる」に続きます。と、いう訳で、春になると、喫茶部入口左のショーケース中段は毎回欠かさずチェック。みつばちさんの「初・氷(あずき)」をミスらないようにしましょう。

氷あずきのことばかりご紹介してしまいましたが、アイスと云えば大正4年(1915)に創作されたみつばちさんオリジナル、全国にファンが広げている「小倉アイス」のことをお話ししなくては。

女将のお話しでは、ひいお爺さん(曾祖父)ご夫婦が生みの親だそうです。冷夏となったその年はかき氷の売れ行きが伸びなくて、ゆで上がった小豆が大量に残ってしまい、捨てるにはもったいなくて、周りに氷と塩を入れた桶の中に冷やして保存することに。

すると、桶の周りが少し凍り、中の小豆を試食してみるととても美味しい。これを買い入れたばかりのアイスクリーム製造機にかけて食べてみると、美味しさに加えて柔らかい食感。すっきりした甘さ。これが小倉アイスの誕生だったそうです!

こうして日本で唯一の小倉アイスが生まれたということですが、もとが小豆のみ、というところが驚きです。あんなにソフトでねっとり感があるのに、クリームのような乳脂肪は一切使っていない。小豆(大納言)、砂糖、塩、水だけで出来ているんだそうです。

大正4年夏の、この出来事がみつばちさんを単なる甘味店から大きく変え、その伝統がいつも工夫と創造を欠かさないみつばちさんのDNAになっている感じがしてきます。それでいて、通りすがりのお客さん相手の店頭販売にも江戸下町人情味に端正なタッチを保っている。これは、やはり湯島の地のせいですね。

喫茶部ではもちろんあんみつ、クリームあんみつ、おしるこ…と、ファンが離れられないみつばちさんのラインナップがブンブン飛びかって楽しめます。ちなみに男性客もけっこう多く、案内人の私も結構大きい顔をして冬はいなかじるこ、夏は氷あずきをいただいています。

喫茶部の中はテーブル席。奥左手の大きめのテーブルは7~8人席、右手奥から手前に4人テーブルが4セット用意されています。天井から下がるモービル(金魚だったり、当然みつばちぶんぶんのマーク付きだったり、ストレートな商品メニューだったりしますが、どれも手作り。四代目女将の嶋田有子さんとお店の有志スタッフの飾り付けや書きつけがアットホームな「みつばち」さんを演出しているのも楽しいところです。

その極め付けが、お持ち帰りの紙袋の折り返しを留めているシール。

家に持ち帰ってハニー焼を取り出そうとしたとき、折り返しを留めているみつばちマークのシールの縁がどうもみつばちマークの端(はじ)の線と並行していない、少し不揃いな裁ち落とし。よく見ると、手作業のハサミ切りです。シール一枚をお店の方々が手作りで裁断しているなんて、なんてお店なんでしょう。しかも湯島の大店(おおだな)。ただただ驚きました。感心しました。心をこめた商品を心を込めたシールで留めてお客に手渡す。見事なみつばち流です。

「みつばち」さんはお店の名前通り、遠くまでぶんぶん飛んでいきます。大阪や名古屋、仙台、長野など、デパートなどきちんとしたイベントなら積極的に出店に応じていていますが、女将や下町好きのスタッフが必ず現地で立ち会うところはさすが。

また、いろいろなセットを組んで地方発送にも積極的取り組んでいるところが嬉しいことです。セットの名前には「熊んばちセット」があったりして、とことん「はち」に徹しているところに、ブンブン共鳴します。

「嶋田屋」という氷業創業時からの屋号が「みつばち」になったのは二代目の時で、その由来は“甘い蜜”のイメージではなく、太平洋戦争後の焼け野原に咲く野菊にみつばちが集まっている光景を見て、たくさんのお客さんがこのように集まってくれたら、という思いで名付けたそうです。気さくで元気な笑顔でお客を迎えてくれる今日のみつばちさん店頭を見ると、どなたもそのDNAは変わっていないと思われることでしょう。

※案内人からひと言:みつばちさんや花月さんのような専門店が、品物の品質維持を工夫しつつ、宅配通販に積極的に取り組んでいる姿を見ると喜ばしく思います。

少し横道にそれますが、つけ麺発祥の店として知る人ぞ知る「中野・大勝軒」(東京・中野区中野と渋谷区上原に各一店)もその一例。代表の坂口光男さんが麺とスープに具材を加えたパッケージを苦心の上に開発し、改良を重ねながら宅配通販に積極的に取り組んでいる姿にも注目しています。(「中野大勝軒」は、中野店03-3384-9234, 代々木上原店03-3467-1479、いずれも水曜定休、年始に休みあり)




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