狂歌百物語 - いにしえwiki
狂歌百物語の妖怪一覧初編001.見越入道(みこしにゅうどう)002.狐火(きつねび)003.船幽霊(ふなゆうれい)004.平家蟹(へいけがに)005.姑獲鳥(うぶめ)006.陰火(いんか)007.貍(ねこまた)008.一ツ家(ひとつや)009.実方雀(さねかたすずめ)010.三ツ
狂歌百物語の妖怪一覧初編001.見越入道(みこしにゅうどう)002.狐火(きつねび)003.船幽霊(ふなゆうれい)004.平家蟹(へいけがに)005.姑獲鳥(うぶめ)006.陰火(いんか)007.貍(ねこまた)008.一ツ家(ひとつや)009.実方雀(さねかたすずめ)010.三ツ
小袖手001.形身わけ 配る小袖に 爪長き 族うからも欲の 手を出いだしけり(香以山人)002.数持ちし 内の小袖を 出づる手の 指の爪にも 見る物着星ものきぼし(語吉窓喜樽)003.噂をば 包みておける 化小袖 出だすその手は 喰はぬ七つや(語安台有恒)004.さ干ほしおく 花
猪熊001.はにかむも 似気にげなかりけり 猪熊は 鎧の袖を 口にくはへて(藤園高見)002.太刀とりの 鎧の袖に 喰ひつくは 人を脅しの 猪熊頼玄(有恒)003.太刀とりの 鎧につきて 怖ろしや いかる刃金はがねも 鳴らす猪熊(弓のや)004.緋縅ひをどしの 鎧喰ひ切る 猪熊は
魔風001.金銀を 並べ立てたる 家までも 将棊倒しの 魔風激しも(於三坊菱持)002.節分の 鬼さへ嫌ふ 柊ひひらぎまで 根から吹き折る 魔風怪しも(銭の屋)003.土煙つちけぶり 立てる魔風は 今戸にて 焼きし瓦の 鬼も脅しつ(桃江園)004.霊国の 空ゆく船を くつがへす
木魂001.分け登る 庚申山の 岨そば道に 立てる木魂は 猿すべりかも(松の門鶴子)002.石となる 楠くすの木精こだまに うつ斧の 当てゝ怪しき 火も出でにけり(銭のや)003.切り兼ぬる 檜の魂たまに 空をうつ 斧の焼刃も 鈍なまる乱れ火(弓のや)004.狐とも 狸とも名の
尾崎狐001.狐をば ふところにして 尾崎村 腹をふくらす 商人あきうどもあり(月豊堂水穂)002.子を産みて 増える狐の 尾崎村 持参金にも まさる婚礼(東風のや)003.尻馬に のせて送らん 花嫁の 持参に添へし 尾崎狐を(和風亭国吉)004.上つけの 尾崎狐の 玉つむぎ 化
山姥001.金時の 誕生日には 山姥も 赤のまんまの 草や食はむらん(東海園)002.己が子は 出世の綱に 引渡し 雲を霞と 帰る足柄(花林堂糸道)003.親知らず 子知らず育つ 山姥は 浮世を薩埵さつた 峠にや住む(花前亭)004.鉄漿かねつけて 笑ゑみぬる様も 尖々とがとがし
小坂部姫001.檜扇に 隠るゝ月の 作り眉 姫が天守に 名ある蝙蝠かはほり(升目山人)002.物いはぬ 色美しき 小坂部をさかべの 種や伏見の 姫桃の花(宝市亭)003.年ふりし 小坂部姫の 緋の袴 狐色にも 化けて妖しき(銭の屋)004.名物の 姫路の皮も 狐かと 言へば空嘯そ
玉藻前001.浮草の 玉藻の前は たゞよひて 水穂の国に 流れきにけむ(草加 四角園)002.眉作る 星も雲井を 追はるれば 那須野に落ちて 石となりなむ(東海園)003.那須野へと 飛ばぬ内から 祈られて 玉藻の顔ぞ 青石あをいしの如ごと(草加 四豊園稲丸)004.化けすがた
龍燈001.さしのぼる 梢の上の 龍燈に 鱗きらめく 橋立はしだての松(江戸崎 緑樹園)002.かんてらも 幾尋いくひろあるか 消えずして 鯨の油 添はる龍燈(和風亭国吉)003.のろしほど 軋きしめき出づる 龍燈に 龍たつの宮姫 笑みや含まん(鈍々舎香勝)004.龍燈の 夜な夜
一寸法師001.背の低き 一寸法師は 汝なが親の 忌日に魚うをを 食ひし報いか(南寿園長年)002.親の身も ともに縮まん 愛し子を 一寸法師と 言はれぬるたび(語吉庵跡頼)003.身の丈の 延びぬをさぞな 託かこつらん 人と肩をも 並べられねば(松梅亭槙住)004.背せい低き
犬神001.毛を吹きて 底を求むる 修験者しゆげんじやの 尻尾や出づる 犬神の術(銭の屋)002.巻きし尾の 左前なる 貧しさも 富みてぞ金の 唸る犬神(草加 四角園)003.正法に 不思議は内外 清浄しやうじやうと よめば尾を巻く 犬神の術(於三坊菱持)004.烏羽玉うばたまの
古椿001.燈火ともしびの 影あやしげに 見えぬるは 油絞りし 古椿かも(駿府 望月楼)002.見て凄く 油のやうな 汗を身に 絞りて咲ける 化椿かな(語吉窓喜樽)003.花首の 落ちては燃ゆる 火と見せつ 脅しやすらん 世を経る椿(吾妻井香好)004.草も木も 眠れる比ころの
小幡小平治001.光さへ 青き鬼火は こはだ鮨 透すく影凄き 蠅帳の㡡かや(香以山人)002.魂棚たまだなに 馬はあれども 幽霊の 徒かちにて戻る こはだ小平治(花垣真咲)003.煮て喰ふ 焼いて喰ふと 目論見の 果てはこはだに 味噌をつけたり(語安台有恒)004.殺す智恵 浅香
家鳴001.雷の 折りたる松を 梁はりにせし ゆゑか此家このやも 轟きにけり(枇杷の屋)002.床の間に 活けし立木も 倒れけり 家鳴りに山の 動く掛物(宝市亭)003.家鳴りする 音なほ凄し 雷の 裂きし杉戸の 太皷羽目かも(東海園)004.物凄き 家鳴りは遠し 柱木に 天狗の
化地蔵001.行き遇ふて 歯の根も合はず 震ふるひけり あごなし地蔵 化けて出いでけん(藤園高見)002.茶園にて 片眼潰した 色地蔵 夜あるきに何 浮かれたりけん(草加 四角園)003.われ言ふな 俺は言はぬと 石地蔵 其の誓言も 堅き言の葉(陽昇庵雅学)004.袖すりて 化地
金玉001.塗籠ぬりごめの 窓飛び出だし 金玉は 左官の家に 住替すみかへやしつ(花林堂糸道)002.羽根生えて 利足も高く 飛び歩ありく 烏に貸せる 金の玉かも(朝霞亭)003.怖ろしと 見し人をもて 言はしむる 天に口なし 色の金玉(和風亭国吉)004.爪に火を ともして溜め
蝮蝎001.蝮蝎の 毒気にふれて 荒寺の 蛙股かひるまたさへ 色変はるらん(弥生庵)002.夜を昼と 怪しき洞ほらの 山おろち 眼は月か 日にも等しき(宝鏡庵元照)003.生贄いけにへは とまれ大蛇をろちは 呑む酒に 肴はいなだ 姫小鯛かも(遠江袋井 延麻呂)004.粗金あらがね
貂001.鼬いたちから 切るべし貂は 供さきの 道は切らせぬ 鑓やりの投鞘なげざや(松の屋)002.あひもなく 倒るゝ貂の 火柱は 鋸山や 根とはなしけん(日年庵)003.鼬もや のぼりて貂と なりにけん 深山に幾世 棲めるものとて(藤園高見)004.雲起し 俄にはかに雨の 降る
疱瘡神001.貝嫌ふ 疱瘡神は 水海みづうみの 干潟となるは 猶も忌みけり(宝遊子升友)002.疱瘡に 被る頭巾は 茜さす 陽の目も見せず □おろす神(宝市亭)003.序病じよやみする 幼をさなに着する 衣さへ 八丈嶋は 忌む疱瘡神もがさがみ(銭の屋)004.酒湯さかゆせし 疱瘡
鎌鼬001.足もとへ 絡む鎖の 鎌鼬 砂を飛ばする 風の目つぶし(宝市亭)002.鎌鼬 切られて口は あきのかた 薬によしと 練る古暦(梅屋)003.旋毛つむじ巻く風は横立よこたて十文字すごく手鑓てやりの鎌鼬見つ(善事楼喜久也)004.臑すねに持つ 疵はたしかに 鎌鼬 笹原はしる
縁切榎001.縁切りに 削り呑ません 古榎 我が身の皮も 剝ぎし男を(語吉窓喜樽)002.結納の 鰹節かつぶしも仇あだ 背合せの 額をさゝぐる 縁切り榎(豊の屋)003.縁切りの 榎を削り 給はれと 三くだり半に 書く頼み状(松梅亭槙住)004.縁を切る 為に煎じた 榎の葉 濃き
土蜘001.頼光らいくわうに 一太刀討ちし 跡見れば 血潮の糸を 引ける土蜘(南寿園長年)002.頼光に 滅ぼされずば 打つ事も 堅き岩根の 穴の土蜘(南向堂)003.狼も 猪ししも喰くらうて 土蜘の その毛のごとき 糸や引くらん(春道)004.土蜘の 出だす糸には 荒くれし 宿
古寺001.苔の髭 胸にひまなく 生おひ出いでて 瓦の鬼も 凄き古寺(升目山人)002.荒寺は 施主の油を 絞りたる 護摩ごま堂さへも 絶えし燈明(日年庵)003.雨漏りの 防ぎもならず 方丈も 傘一本で 開きたる寺(青葉茂住)004.つめ米の 散りし仏餉ぶつしやう 梟の 餌ゑ拾
越中立山001.雇はれて なる立山の 幽霊に 足を添ふれば いくたびも出る(草加 四角園)002.立山に 見る幽霊の 白袴しろばかま 紺屋こうや地獄に 落ちし人かも(弥生庵)003.立山の 地獄に出づる 幽霊は 宜むべこそ越こしの 中つ国なれ(駿府 松径舎)004.散り松葉 幽霊
四谷於岩001.抜けあがる 毛さへ哀れの 窶やつれ筆 お岩稲荷の 幟のぼり書くにも(弥生庵)002.鼠茸ねずみたけ 生ふる谷間の 岩小菅こすげ 髪もおどろに 振り乱しけり(梅屋)003.薬鍋 さげてお岩が 恨めしと 苦笑ひする 顔は青山(語安台有恒)004.おそろしや 岩が恨みに
羅生門001.鬼の腕 切りにし綱が 差料さしれうは 手棒てんぼといへる 太刀のたぐひか(駿府 望月楼)002.切らるれば 鬼もまことに 片腕の 折れし思ひや 力落とさん(在江戸 牡丹園獅々丸)003.いにしへは 鬼の荒れたる 羅生門 当時は仏 在いますなりけり(五息斎無事也)00
生霊001.塵ほどの 恨みつもりて 足引あしびきの 病に人を 萎なやす生霊(千住 四耕園茂躬)002.石に矢を 通す思ひの 生霊は 梓の弓に 引かれてぞ出る(望止庵貞丸)003.占うらかたの おもてに出でて 生霊は 巽そんの卦のたつ 祈禱するらし(駿府 東遊亭芝人)004.葛の葉
山鳥001.しだり尾の 長き秋の夜 かこつらん 妻とねぐらを へだつ山鳥(望止庵貞丸)002.鉄炮の 狙ひも逸れて 脇へ飛ぶ 玉を欺く 美なる山鳥(周防 清香)003.長追ひを しつゝゆけばや 山鳥に 谷をへだてゝ 道を迷ひつ(和松亭羽衣)004.妻恋ひて こぼす泪なみだか 山鳥
のつぺらぼう001.男には 目のなき女をみな 産みし子の のつぺらぼうで 種は分からじ(松月亭繁成)002.なまこにも のつぺらぼうは 劣りけり 藁に縛らん 髪だにもなし(雛の舎市丸)003.不便さに 撫でつさすりつ 育つ子の のつぺらぼうは 賓頭盧びんづるの如(尚丸)004.な
鬼女001.角髪つのがみに 結ゆふも疎うとしと 鬼娘 赤毛に母の 心ちゞみて(春の辺道艸)002.鬼娘 やゝとる年も 十三の 琴かき鳴らす 指の三つ爪(陽月舎)003.ざくろ花 咲く十七の 鬼娘 酸すいも甘いも 喰ひ習ひけり(有雅亭得意)004.蛇じやともなる 鬼娘をば 酒薦さか
札へがし001.幽霊に 札をへがせと 見込まれて 腰より下は 覚えざりけり(宝市亭)002.門口の 枯葉の札に しんばりの 三尺棒を わぶる幽霊(教和楼)003.剝へがさんと 六字の札を 幽霊も なんまいだあと 数へてぞ見る(花前亭)004.思ひきや 我より札の 角大師 張臂はり
不知火001.筑紫潟つくしがた 越路にまさる 一ひと不思議 汐を油に ともす不知火しらぬひ(槙のや)002.赤き心 みせし宿禰すくねが 湯起請ゆきしやうを 炊きし事をも 偲ぶ不知火(草加 四角園)003.不知火の 数くだくるは 火の国の 二つに分かる 初めなるらん(江戸崎 緑樹園
大鵬001.天地あめつちも 分かぬ世界を 大鵬は 己おのが玉子と 見違みたがひやせん(陽月舎)002.獅々と虎は 何者かはの 大鵬も 秋津空には 羽ばたかぬなり(語同堂春道)003.髭なでを するとは知らで 大鵬は 誇り顔にて 海老にとまれり(大内亭参台)004.九万里に 翅つば
橋姫001.茶摘女ちやつみめが 娘やりたや 婿欲しと 歌ふも妬む 宇治の橋姫(在江戸 牡丹園獅々丸)002.水いらぬ 人の縁えにしに 波立てゝ うはなりをする 宇治の橋姫(江戸崎 緑錦園有文)003.茶にしては 居ずて嫉妬の 胸の火の 煎じつめしや 宇治の橋姫(宝遊子升友)004
大入道001.草鞋わらんぢも 引きずりながら 逃げ出しぬ 仁王立ちなる 入道を見て(松梅亭槙住)002.文福の 化けし姿か 臍までも 大釜ほどに 見ゆる入道(千住茂躬)003.箱根より 東に無しと 入道は 足高あしたか山に 首伸ばすらん(喜樽)004.榎ほど 背丈の延びて 堀池の
さとり001.山賤やまがつが 焚火をかざす 掌に さとりが悟る 胸の占方(宝市亭)002.酔ゑひしれて 伏したる杣そまが 寐言まで さすがさとりは 悟り得ぬなり(都月庵駒綱)003.猟人かりうどの 狙ひ違うて 逸れ行くは さとりも知らぬ 矢先なりけり(綾のや)004.悟りしは 九
化物屋敷001.魚鳥うをとりを とめにし札も 見えながら 通用門の 生ぐさき風(五葉園松蔭)002.怖がつて 逃げる大工に 敷居まで 外へ駆け出す 化物屋敷(梅屋)003.住居すまゐさへ ならでいつまで 秋風の 人驚かす 化物屋敷(桃江園)004.何ゆゑに 人や果てけん 荒屋敷
逆幽霊001.死水を とらぬゆゑにや 月影に うつる糸瓜へちまの 逆さ幽霊(於三坊菱持)002.天窓あたまをも 病みし遊びの 幽霊か 逆さに出づる 髪洗ひばし(甘口庵菊好)003.争はぬ 風の柳の 蔭になど 人おどろかす 逆さ幽霊(綾のや)004.美しい 娘の果てゝ 軒口に 吊る
飛龍001.蓮はちす生おふ 池の鯉もや 富士の嶺ねの 砂いさごを飛ばす 龍となりけん(草加 四豊園稲丸)002.潜まりて 翼得る日を 松浦川まつらがは 龍立ちのぼる 領巾振山ひれふるのやま(宝遊子升友)003.湖に 住みたる鯉や 一夜さに 富士を飛び越す 龍となりけん(花前亭)0
大座頭001.塗り込みし 京間の壁に あまりしは 大仏ほどに 見る大坐頭(桃太楼団子)002.我邪魔ぞ 梅戸いらずの 膏薬を 礑はつたと睨む 大坐頭の坊(和松亭羽衣)003.物言ひも 祥さがなき性さがの 大坐頭 しばし塗る間の 壁になれなれ(江戸崎 緑樹園)004.夜もすがら 人
後髪001.後髪 引かれし事を まこととも 取り上げにくき 妹いもが縮れ毛(語吉窓喜樽)002.早蕨さわらびの 手を差しのべて 後髪 ひく幽霊や 強き悪念(正女)003.さしてても 行き悩めるを 後ろ髪 引かれて凄き 闇の真砂地まさごぢ(仙台松山 千澗亭)004.影清き月の下風
蜃気楼001.蒙求もうぎうを 囀る雀 化しにけん 翰学院を 吹けるはまぐり(桃本)002.はまぐりの 吹く絵と澪に 棚引きし 霞の網を こす蜃気楼(語吉窓喜樽)003.蛤も こゝに群れつゝ 蜃気楼 建つる支度や 柱並べて(駿府 望月楼)004.うち渡す 龍たつの都も うらゝかな
あやかし001.室むろの沖 くゞつの思ひ 荒浪に あやかし出でて 止むる船足(銭の屋別号 宝山人)002.あやかりて 薬罐やくわん頭の 子を産むは 煮え茶をかけし 尨犬むくいぬの罪(花前亭)003.あやかしの 附きたる家の 疾風はやちかぜ 吹き返したる 船板の塀(語志庵跡頼)00
女首001.笑ひ顔 美しよしと よく見れば きを空蝉うつせみの からだなき首(朝霞亭)002.文殻ふみがらを 銜くはへて出づる 生首は 髪をちらしの 女なりけり(吉野山住)003.からだをば 切売にした 報いかも 遊びの□□□ 首の飛べるは(松の門鶴子)004.人みなの 愛し女も
川獺001.泊り舟 寐耳に入りて 寐つかれず 眠らぬ魚うをを 脅す獺をそには(稲守)002.金入るゝ 財布にとりて 皮剝がん 堤に近き 堀の川獺(三輪園甘喜)003.見世物師 儲けし金を 入れ物の 財布となさん 川獺の革(下総恩名 弓雄)004.末終つひに 喰ひつき合ひに なりぬ
八幡不知001.此の郷さとに いつの世よりか 生ひ繁り 八幡やはた人さへ 知らぬ竹藪(喜樽)002.入いるなとの 八幡の藪の 戒めを つゞるは蛇の 出いでもこそせめ(水々亭楳星)003.藪枯らし 八幡の藪に 根の張りて 出ること難かたく 茂り合ひけり(春の辺道艸)004.竹茂る
おいてけ堀001.蝉の声 森の木蔭に 釣る魚も 魚籠びくを蛻もぬける 置いてゆけ掘(宝市亭)002.得し魚も おいてけと声 たてるなり 度を失ひて 逃げる堀端(松梅亭槙住)003.思ひきや 褌ふどしばかりの 裸身はだかみを おいてけ堀に 置いていけとは(南向堂)004.おいてけの
化鳥001.見世物に 出す化鳥ばけどりを 見物が 見あらはさんと 鵜の目鷹の目(萬町庵柏木)002.鵺鳥ぬえどりに 文目あやめも分かず 弓取の 引きぞわづらふ 闇の夜の的まと(楽亭西馬)003.鷹の羽の 征矢そやに命を とられけり 雲井の庭へ 出づる化鳥けてうは(駿府 小柏園)0
海坊主001.其の丈は 雲につくしの 海坊主 見る目も凄く 身に纏ひけり(桃実園)002.肝玉は 大晦日おおつごもりに 海坊主 出てもその手は 桑名屋徳蔵(宝鏡園元照)003.播まかなくに 何の種やら 海坊主 浪のうねうね 浮かみ出づらん(吾妻井香好)004.海坊主 浮かぶ衣の