狂歌百物語（鬼女）

鬼女

001．角髪つのがみに 結ゆふも疎うとしと 鬼娘 赤毛に母の 心ちゞみて（春の辺道艸）
002．鬼娘 やゝとる年も 十三の 琴かき鳴らす 指の三つ爪（陽月舎）
003．ざくろ花 咲く十七の 鬼娘 酸すいも甘いも 喰ひ習ひけり（有雅亭得意）
004．蛇じやともなる 鬼娘をば 酒薦さかごもの 鱗で包む 見世物の小屋（宝市亭）
005．嫁入りも ならぬ娘の 角盥つのだらひ うつせる顔の 鬼も十七（花前亭）
006．己が子の 転ぶを待ちて 喰くらはんと 母の心も 此の世から鬼（桜川慈悲有）
007．耳に口 寄せて語りし 清姫の 裂けし顎あぎとは 塞ふさぐよしなし（槙の屋）
008．鬼むすめ 金にもならぬ 顔かたち 地獄の沙汰も なき噂なり（語吉窓喜樽）
009．煮え返る 心も溶くる 角叉つのまたの 法のりの道をも 知る鬼娘（蓬洲楼惟孝）
010．二親の ために稼ぐや 鬼娘 夜は地獄に 昼は見世物（教和楼）
011．かたつぶり 角ふり立つる 鬼娘 年は十七 芭蕉布ばせをふを着て（秋田舎稲守）
012．怖ろしく 思へば目にも 九十九髪つくもがみ 角笄つのかうがいを 挿す鬼娘（月守）
013．男のみ 喰ひ散らすのは 何ゆゑぞ 油断のならぬ 鬼娘かも（羽衣）
014．睦まじく 鬼の娘の 遊べるは 角つきあひも あらじとぞ思ふ（駿府 望月楼）
015．垂乳根たらちねの 臑をも囓かじる 怖ろしや 鋭き鬼歯 生えし娘は（槙住）
016．地獄屋の 鬼娘さへ 十七の 眉毛地蔵に つくる白粉おしろひ（団子）
017．幾たりか 己おのが夫を 喰くらひけり 恐こはや女の 丙午ひのえうま鬼（江戸崎 有文）
018．角文字の 鬼ともなりし 八うらみ 喰ひ裂く文の 赤き口紅粉くちべに（遠江袋井 延麻呂）

タグ

一覧： 狂歌 狂歌百物語

カウンター

ページ全体： 301
今日： 1
昨日： 1