AIと協力して拓也さんに狂気山脈を登山してもらう 最終回

ページ名:AIと協力して拓也さんに狂気山脈を登山してもらう 最終回

8000mまでの行く手にアイスフォールがある。
無数の氷の柱が連なり、氷の裂け目がいくつもの深遠を覗かせている。
要するにクレパスがたくさんあるようなものだ。
さらに不気味なのは、それらのアイスが、山肌の黒を透かしているのか、
あるいはなんらかの成分が混じっているのか、ヌラヌラと玉虫色に輝く黒色であることだ。
見た感じ、溶けたチョコレートのような質感だ。
加えて、勾配が極めて急なため、どうしても氷壁の垂直登攀が発生してしまう。
上るためには、その垂直壁をよじ登るしかない。
クライミングの経験なんていままでなかった拓也は、
恐怖の感情を抑えながら必死で氷壁に取り付いていた。
しかも深夜から寝てなくてうまく休憩がとれなかったせいで、体力の消耗が激しい。

拓也「あとどれくらいなんだ?」
ケヴィン「この調子だと、夕方までには辿り着けるはずだ」
ヤバいぜ、気分が悪くなってきた。下の景色がふと見えて、一瞬吐きそうになった。
拓也は高所恐怖症だから、なおさらキツかった。
でも、ここで弱音を吐くわけにはいかない。
ここで吐いたら一気に不安が広がって狂うからな。

拓也「もうひと頑張りだぜ、うおお!」
そして、ついに8000メートル地点へ到達した。
やったぜ、ここまで来れたぞ。拓也はなんだか限界を超えた気がした。
でも拓也を縛るものは増えていくばかりだ。
テントを設立し、コージーのジャンバーを探っていると、中から手紙が出てくる。
デナリーへって書いてあった。中身は見なかった。
拓也の心の中で、ますます後悔がにじみ出ていく。
お母さんももういない拓也と違って色々手を回してくれる人がいたんだなって思うと
今を生きる自分に責任がのしかかってくる。

深夜。拓也はまた夢を見ていた。切り立った巨大な漆黒の壁を登っている。
翼が生えているかのようなスピードで登り進める。
なぜって、拓也の体中に、まるでエネルギーが充満したかのように力がみなぎっていたからね。
でも、足首を掴まれる。下を見下ろすと、そこには腐った肉がへばりついた白骨の登山者が、
拓也を奈落の底へ引きずり降ろそうとくびりついていた。

拓也「うわぁぁぁぁぁぁ」
拓也は必死に振り払おうとするが、相手はしつこく食い下がってくる。
そして、とうとう腕を捕まれてしまった。

拓也「くそっ、離せよっおらぁ!」
すると、相手の手は、信じられないほど強い力で拓也を引っ張ってきた。

???「堕ちろ 堕ちろ」
やがて、拓也の腕がミシミシと音を立て始めた。

??「この山を最初に登るのは、オレだ」
拓也「助けてくれぇ!!」
白骨が喋る。しかしその声に、そして白骨がまとっているウェアに、心当たりがある。

拓也「コージーなのか!?」
コージー「そうだよ、お前の大好きなコージーさ お前…ビルダー拓也ともう死ぬ運命なんだよ」
引きずり降ろされまいと、必死に登る自分の手が、見れば腐りはじめていた。

拓也「そんなっ、やめてくれよ!」
コージー「お前は堕ちたんだ。お前はもう死んだんだよ!」
拓也「いやだつ淫獣拓也は生きる生きてみせる!」
肉が剥がれ落ち、白骨が覗く。掴んでいた岩肌が骨を砕き、拓也は谷底へと落下していく。
その先に待っていたのは、深い闇の世界だった。

意識が覚醒する。
嫌な汗だ。
あれは……なんだったんだろう。スコットの方を見ると、
またもや揃って同じような夢を見ていたらしい。

拓也「おはよう。なあ、スコット。俺達の夢に出てきたあの男、もしかしたら、コージーじゃないか?」
スコット「コージー…?俺が見たのは……友人だった」
拓也「そうか……。」
スコット「俺たちをあの世に呼ぶために、山がこの夢を見せたんだろうな」
彼は、一粒の涙をこぼし、それから黙ってしまった。
テントの外にて山頂を見据えながら、穂が口を開く。

穂「ここからは、もう長期の停滞ができないわ。8,000mを超えると死の領域に突入する。
眠っているだけで体力を消耗していく、人が生きていけない領域。
しかも、天候も今まで以上に不安定になるわ。出発のタイミングの見極めには慎重を要する」
マネージャー「はい……」
拓也「ウッス…」
穂「揃って同じ夢……それもひどい悪夢を見た。
医学的に見て、既に低酸素による幻覚が発生している可能性もあるわ。
撤退の判断をするなら、ここかもしれないわよ」
拓也「……」

拓也は言葉が出てこなかった。
ここで下山すれば、たしかに俺たちは助かるかもしれない。
でもここで降りたら男婦を連れて死人をだしながら無謀な登山に挑戦した愚か者共として、
世界中から賠償と謝罪を求められるだろうな。
第二次登山隊として会見に出席した時、
いつものようにシャワーも浴びずに種付け競パン姿で登壇したら
感謝祭の時みたいに自己紹介は飛ばされるし拓也の容姿と経歴は思いっきり罵倒された。
7200m登ってるから一応は許されたけどここで降りるのは後ろめたかった。
結果を出さずに帰る勇気がなかった。

拓也「でも、俺たちは登らなきゃならないんだ。
どんな危険を冒してでも。それが、俺たちの使命だから。」
スコット「ああ、そうだ。俺たちは登らなければならない。」
スコットも同じ気持ちだった!
以前に増してひどい咳を断続的にするようになったケヴィンが立ち上がる。

ケヴィン「天候は悪くない。食糧も体力も、まだ余裕がある。引き返す理由は、ないさ」
一同は、ついに登頂を開始した。
これから断崖絶壁に挑み、命綱なしのロッククライミングに挑む。
一歩間違えれば、奈落の底へ転落してしまう。
拓也が唾を飲むと、となりでケヴィンが血痰を吐き、崩れ落ちる。

マネージャー「大丈夫ですか!?」
肺水腫と脳浮腫を併発しているのか、絶え間なく咳をし、
息はヒューヒューとか細く、時折血痰を吐き、意識は朦朧としている。

穂「まずいわね……重度の高山病を発症している。これ以上は命にかかわるわ」
だがケヴィンは、何とか立ち上がろうとする。

拓也「だめだ、これ以上進んだら本当に死ぬぞ!」
ケヴィンはうなされるよう、虚空に向かって呟いた。

ケヴィン「コージー……おまえの言うとおりだ。
私は、第一次隊が失敗したと聞いたとき、しめたと思ってしまった。バチが当たったんだ…許してくれ」
拓也はその言葉を聞いて、胸が締め付けられる思いがした。

スコット「ケヴィン……」
穂は彼を連れて、7,000mの地点に残しているキャンプ地まで引き返すという。

穂「あなたたちはどうするの?」
拓也「ビルダー拓也は行くよ。頂上まで登りたい。」
スコット「俺もだ。ここまで来て、降りるなんてできないんだ、本当に。」
使命感にとらわれた俺たちの答えは早かった。

マネージャー「拓也?スコット?」
マネージャーは決めかねているようだった。
やがて意を決すると、決断を下す。

マネージャー「私も行きます。ケヴィンさんをお願いします。」
穂「本当に、山頂を目指すのね」
拓也「はい」
穂「こっちは、ケヴィンの応急手当をするわ。でも、この症状は降ろさないと完全な治癒は無理。
待ってられる時間の猶予はあまりないわ」
拓也「俺たちは必ず戻ってくるんで。それまで、お願いします」
穂「えぇ、信じてるわ。必ず戻って来なさい。」
3人は無言のまま、岩壁に取り付いた。

このチームのリーダーがいなくなってしまったことに拓也は少しの不安を覚えていた。
しかし、リーダー不在という状況下においても、3人の心は折れなかった。
それは、彼らがこれまで歩んできた道のりが、決して生半可なものではなかったからであろう。
拓也は必死に二人の無念を背負って、前に進む。

拓也「絶対に生きて帰ろう!」
3人は、黙々と登っていく。さっきの場所からかなり登ってきたはずなのに、未だ景色に変化はない。
緊張の糸は切れることなく張り詰めたままだ。
足元は黒い氷、踏み外しでもすれば即死は間違いないだろう。
拓也は一人で背負うプレッシャーに耐え切れず。
言葉をダラダラ漏らしていった

拓也「なぁ、スコット」
スコット「なんだ?」
拓也「お前、なんで登山を始めたんだ?」
スコット「……俺は小さい頃から山が好きで、よく家族で山登りに行ってたんだ」
スコット「普段仕事が忙しくて構ってくれない親父も
登山の時はハメ外して楽しんでたから家族で楽しめた。
このカメラだって親父の奴なんだ。あの人、写真を取るのが好きだったからこれでよくとってた。」
拓也「そっか」
スコット「親父は日本の富士山を写真に映すのが夢だったんだけど、
叶わなかった。日本で事故に遭ってさ、親父が死んで俺は脚の骨を折って入院してた…」
スコット「その時、病院の窓から見えた富士山がすごく綺麗でさ、
悔しかったよ。未だに富士山は登れてない」
スコット「登山を始めたのはそのトラウマを払拭して富士山を写真に映すためさ、
だから山から逃げたくなかった」
拓也「ごめんな、こんなこと聞いて」
スコット「いや、話せてよかったよ」
スコット「なあ、拓也」
拓也「ん?」
スコット「もし、このまま何事もなく頂上まで着いて、無事に下山できたらさ……」
拓也「おう」
スコット「俺と二人で富士山に行こうぜ!」
拓也「そうだな!楽しみにしてるよ」
スコット「あぁ、約束だ」

若干拓也の気持ちが軽くなってこのままの勢いで1000m登る…はずだった!
二人を悲劇が襲う。

拓也「なっ!?」
スコット「ぐあっ!」
スコットの体は宙に投げ出され、そのまま氷の斜面を転がった。

拓也「スコット!」
スコットの姿はそのまま拓也の視界で小さくなって、消えていった。
標高9,000mあたりに、風よけができそうな岩の陰があった。

マネージャー「ここで休憩にしましょう……」
拓也「ウッス……」

俺たちに悲しんでいる暇はなかった。引き返してスコットを探したいという気持ちがないわけではない。
でもさっきから拓也の目は山の山頂にしか向いていなかった。
チキショー!はめられたぜ。
この山の大気には媚薬が含まれてるな!
さっきから登りたくて登りたくてガタイが悶えてたまんねー。
ふと、横を向くと、一人の死体を発見する。

マネージャー「どうしました!?」
死んだ登山家は、衣服などが凍っているが、
皮膚や肉が半ば溶けかけており、一部分の骨が露出していた。
拓也はその死体をみて、戦慄する。この死体、凍死とは明らかに違う。
拓也はこの死体をみて、昨日の夢を思い出した。

マネージャー「これは一体……」
足を負傷しているが、行動不能になるほどではない。
適切な処置を行えば、歩いて降りることは可能な傷だ。
横にはザックが落ちていて、荷物を漁ると、残っていた燃料や食糧のほかに、手記を手に入れる。
拓也は、その手記を読むことにした。

「第一次登山隊は、山頂を踏むことなく壊滅した。
道中、未知の生物と遭遇し、襲われ、皆狂気に侵されて死んだ。
最後に残った私とパートナーの2人でなんとか登頂を目指すも、大黒壁を登りきることができず、落下。
私は足を負傷し、パートナーは背骨を強く打ち付け行動不能となった。」

拓也「……」
ハァハァ喘ぎ続けている拓也には、最初に書かれてあった部分が理解できなかった。

「後に続く者のために記す。この先、頂上直下に、”大黒壁”の垂直登攀が待ち構えている。
”大黒壁”は黒い岩肌と氷壁が、途切れ途切れに表れるミックス帯だ。
ここからが要点だ。“大黒壁”の登攀の際に、岩肌を傷つけてはならない。
岩肌を傷つけると、粘性の高い石油のような液体が染み出してくる。

「この粘液は金属を腐食し、肌を溶かすため、登攀が極めて困難となる。
当然、ハーケンは打込めないし、アイゼンを履いて岩を踏むこともできない。
私はこれに気づかず、アイゼンとピッケル、そして指のことごとくをダメにした。
この壁を登るには、氷がへばりついている場所を慎重に選びながら進むか、
ピッケルとアイゼンを捨て、フリークライミングで進むしかないだろう。」

拓也「……」
マジかよぉ!?岩肌を傷つけたらヤバイって……。
チョーSだよな!
というかそんな手指が溶ける液体が出てくる山なんて聞いたことないから意味がわからなかった。

「私は足を引きずって降りることもできたはずだ。
なのに、何故かこの場所から動くことが出来ない。
山頂から目が離せないのだ。このままでは私も仲間も、ここで朽ち果ててしまう。
今の満身創痍の状態で、登頂は無理だ。
ならば、せめて動ける私だけでも降りなければ。
しかし、なぜだ。私はどうしても、ここから降りることができない。」

拓也「え?」
拓也は手記を読んで、少し違和感を感じた。
得体の知れないものが、腹の底から這い上がってくるような感覚を覚えた。
まるで今の俺と同じ様な心情じゃないか。
登山家ってのはみんなそうなのか?
俺みたいなネコでつらくても快感を見つけて喘ぎながら山を登っているのか?

マネージャー「どうかしました?」
拓也「いえ、なんでもないです」

「Mr.スコット。きっと私を見つけ、あの山の頂を目指す友よ。
ああ、君が今すぐにあの山を諦めて引き返してくれればどれだけよいことか。
だが友よ、私は知っている。
最高の登山家である君が、そんな選択をとりようがないことを。だから、覚悟して向かってくれ。
そして願わくば、君がこの山を制覇してくれんことを。」

拓也「……ッ!!」
この文面を読んだ瞬間、拓也の中で何かが弾けた。

マネージャー「どうしたんですか?大丈夫ですか!?」
拓也「ウッ……ス」
正直、限界を感じていた拓也だったけど、この手紙を読んで、なぜか勇気が出てきた。
絶対に登頂してやる。そう思った。
だってさ、拓也は今、色んな人に支えられてここにいるんだもん。
この山に敗れ去った登山家達の夢と拓也の願望、絶対に登って見せるぜ。
ここまで来て引き返すなんて、できるわけがないんだよね。
登頂してからカ尽きて死ぬなんて、もう考えない俺は、俺たちは、生きてこの山を登りきるんだ。
狂気山脈最高地点、その頂に至る道に立ちはだかる、最後の関門。漆黒の、巨大な岩壁。

”大黒壁”

天をつんざく黒い壁が、強烈な威圧感をもって小さな拓也を見下ろしている。
ところどころに氷が張り付き、あるいは岩肌がむき出しになったミックス帯。
こんな場所地球のどこにも存在しない。まさにクレイジー。
超低酸素、強風、極寒……高度1万mに至らんとする
その熾烈な環境を抜きにして見れば、その壁自体は、慎重に昇りさえすれば、登攀可能に思える。
でもこの黒い山肌に一つでも傷つければ、ドロッとした粘液が滲み出てくるらしい。
まるで精液みたいだ。
淫獣の精液まみれの壁に登るなんて、正気の沙汰じゃないぜ。
拓也はこの壁をフリークライミングで登るか、
氷が張った場所をうまく伝っていくかでマネージャーと相談した。

拓也「フリークライミングで登りたいです」
マネージャー「アイゼンとピッケル無しで登るということですか?本当に危険ですよ?」
拓也「はい」
マネージャー「…拓也、あなたはもう立派なプロです。もう私が言うことはありません。行きなさい」
拓也「ありがとうございます!」

こうして、拓也はフリークライミングで壁に挑むことに決まった。
マネージャーは氷をうまく伝っていくルートを選択した。
どっちも危険な手段だから、どっちか選べと言われても難しい。
だからお互い無理に引き止めることはしなかったし、
そもそも二人とも早く登りたくてたまんねーって様子だからそこまでトークをかわさないのがエチケット。

とにかく、俺は装備をぬいで裸になる。
そして、壁の一番低い場所に足をかける。そこから壁をホールドしていく。
壁をホールドしている最中に、もし滑ってしまったら、
それはオレの死亡を意味するんだろうなと嫌な予感がしていた。
壁の表面に付着する白い結晶が、風に吹かれて飛ばされていく。
凍った壁を伝って、ビルダー拓也の指にまとわりつく。

「真の救世主ってのはさ、絶望感漂ってるときに現れるんだぜ」
セックス中に合ドラキメたダチの言葉を思い出す。
そして俺は天に向かう、まずは右足、左足、左手、右手、次は左腕、右腕、胴体、下半身、頭。
全身を使って壁を掴んでいく。拓也のギリシャ彫刻のような肉体が、汗の雫とともに躍動する。
腕の筋肉が悲鳴を上げている。乳酸が溜まってパンパンだ。
左腕、右腕、胴体、乳首、デカマラ、ケツマン。
拓也は一心不乱に登った。ただ下半身の疲労だけには注意した。
マネージャーはいま無事なのかとか考える余裕はなかった。
全身の細胞が躍動する。アドレナリンが放出され、脳が覚醒する。
この感覚、久しぶりだぜ。
インパルスが脳内で駆け巡る。永久記憶のシナプスが活性化する。
もうすぐ頂上だ。

拓也はついに手をかける。大黒壁の登攀を終え、山頂の稜線を進む。
切れ立った山脈の山頂部分は痩せた岩稜が続くが、
もはやここまでを昇りきった拓也にとってはそれほど困難ではなかった。
やがて、マネージャーも登頂に成功した。

マネージャー「お疲れ様です」
拓也「うっす!」

そして、ついに。二人は神々の座、山の頂を踏みしめる。

やったぜ、登頂成功だ!ついに俺は誰も成し遂げられなかったこの偉業を成し遂げたんだ。
この偉大な山を制覇したのは、俺が初めてなんだ!

「うぉおおおおっす!」
思わず雄叫びを上げる。
マネージャー「おめでとうございます」
マネージャーと熱い抱擁を交わす。
拓也「うっす!あざっす!……うっす!」

不思議と風はやんでいた。眼下に、これまで登ってきた漆黒の山脈と、
その先に、視界の果てまで続く、純白の大地が広がっていた。なんだか世界が違って見える。
白い図面に筆を置いた直後のような光景。
ここから世界創造が始まるのではないか、と勘違いさせるような、
原始的な風景。拓也はそんな印象を受けた。
拓也は、今までに見たことのない景色を見て、感動した。

マネージャー「きれいですね」
拓也「はい」
マネージャー「私もこんな景色を見るのは初めてです」
推定標高10,363m。地球上の最も高い位置に、今、拓也たちはいる。
拓也はここでマッスルポーズをとった。

拓也「見て下さい」
マネージャー「あの、そろそろ服を着てもらえませんか?見ていて寒いです」
拓也「うっす!」

拓也は服を身に着けた。そして、来た道を引き返す。
引き返していたはず……だった!。
1本道だったはずだし、ルートの目印も張ってきたはず。

拓也「あれ?ここはどこだ?」
周囲を見回す。どういうことだろうか。通ってきたはずの道が、断崖絶壁と切れ落ちている。
目印のロープも、その奈落へと続くかのような崖の底へ落ちていた。
明らかに来た時と山頂の様相が変わっている。
山の形が変わったとでもいうのだろうか。
これじゃまるで山が生きているようだ。

拓也「なんだよ、ここ。変な場所だな」
マネージャー「そうですね」
みるみるうちにガスもたちこめ、風が強まり、あっというまに吹雪の様相を呈してきた。
近くから、雷鳴も聞こえ始める。
マジかよぉ!?急激に天気が悪くなるなんて、この山はチョーSだよな!

拓也「なんかおかしくないっすか?」
マネージャー「そうかもしれません」

拓也たちは耳を傾ける。「オオオオオオォン」と、うめき声のような音が聞こえる。
この山にもイエティがいるのか!?マジで!?とか一瞬考えてマジ困惑。
この山の山頂には、本当に何かいるかもしれない。拓也は背筋が寒くなるのを感じた。

―――吹雪が強まっていく。

拓也「ちょっとヤバくないっすか?」
マネージャー「そう…ですね」

拓也たちは吹雪に遮られて何も見えない中、手探りで歩き始めた。
山頂稜線に沿って歩く。方向感覚も失ってしまった。
登ってきたはずの場所……大黒壁までたどり着けない。
拓也は焦りを感じ始めていた。このままだと遭難してしまう。
切れ落ちた断崖絶壁は、懸垂下降で降りることも不可能では無さそうだが、
何度か途中で支点を取り直さないといけないのと、天候の荒れも関係して非常に難易度が高い。
おそらく、命綱があっても無理だろう。それに、もし仮に降りたとしても、無事である保証はない。

拓也「あーっ!おぅううっす!」
思わず雄叫びを上げる。
吹雪の轟音のせいで、自分の声すらも聞き取れない。
それでも、叫ぶことで、自分を鼓舞する。

拓也「ウオーッ!」
叫んだ瞬間、突風が吹いた。

マネージャー「うわーっ!」
マネージャーも悲鳴を上げた。
突風に煽られて、崖の下がはっきりとみえた。
崖の下に、うぞうぞと蠢く不気味な粘液状の生物が、
ゾロゾロと山肌の空洞から這い出してきている姿が見える。

拓也「なんだアレ!」
マネージャー「なんですか?」
拓也「ほら、アレ!」
マネージャー「何のことですか?私はあんなのしらないですし
見えてませんし知らない知らない知らないみてないみてないっ!!」
拓也「マネージャー!」

今のスライムみたいな化け物を見てしまったせいか、マネージャーがマジ狂いし始めた。
絶壁から身を引いて、うずくまってブツブツとつぶやきまくり震えまくり。
マネージャーを引っ張って断崖部から少し引き返した稜線上で、拓也たちは相談していた。

拓也「帰り道ってあるんですかね?」
マネージャー「わかりません、もう私には何もわかりません、
断崖絶壁は降りられないし、ここに助けがくることは全くありません。
私は怖くてここから動ける気がしませんし、もうどうしようもありません」

マネージャーはもう、登山家としてこの山と戦うことを止めた。となると、使える登山家は拓也だけ!
でもマネージャーの言う通り、もう助からないんだよね。
俺も戦いを放棄して、早く楽になった方がいいかな。
ああ、そう思うと気持ちがよくなってきたぜ、いまならその辺のつまんねー女ともセックスできそうだ。
死ぬときって、セックスより気持ちいいって雑学で聞いたことあるな。走馬灯が駆け巡る…。

拓也の目がはっと覚める。そうだ、俺はセンパイのペット。
ご主人様の期待に答えられないでどうするんだ。
それに、俺は狂気山脈の登頂に成功したクライマー拓也!
ここで諦めたら名がなくぜ!拓也はマネージャーを背負って、歩き始めた。
視界の中で崖の側面に、洞がいくつかあるのを発見する。

拓也「あっ、洞窟!」
洞の中は湿っていて少しあたたかい。壁には管状の脈が這っている。
さわると粘ついた液体が手につく。
もしかしたらここはなんらかの生物の体内なのかもな、
とかこのねばついた感覚からして雄膣の中かもしれないとか考察する。
この山の正体を見破るためには、
常識の範囲を超えた考えを起こさないとついていけないように思えてきた。

そんなことを考えていると、地響きのような、しかし規則的な鳴動を聞き取る。
ドクンドクンとまるで拍動のようだ、と拓也は思った。
俺はこの鼓動から正体をつかみ取った。
信じられないし妄想に見えるかもしれないけど、絶対にこういうことだと俺は全身で感じる。

拓也はこう考察した、この山は、何か巨大生物の胎内なのだ。
山の形が変わったのは、出産の為だ。地殻変動は、その産みの苦しみによるものだ。
吹雪は、子を産む為に母胎が激しく震えているからだ。
恐らく、この山は、この惑星の生態系の頂点に位置する生命体によって造られたのだろう。
そして、今まさに出産しようとしているのだ。
拓也が登頂したことによって。

拓也は知っていたはずだった。大いなる山の前に、人類など塵芥に等しいことを。
だが、忘れていた。あまりに壮大で、あまりにも神々しかったからだろうか。
拓也は、自分が偉大なる存在を怒らせてしまったのではないかと思い始める。
しかし、今以上に、山への畏怖を魂で感じることはなかった。
狂気の中で、ようやく拓也は真の意味で自覚した。
己が矮小なる存在であると
だがここで恐れてはいけない、と拓也は自分を鼓舞する。
自分は選ばれた者だからだ。自分には使命があるのだと。

拓也はこの中をさらに進むと、洞の内壁はまるで消化管のヒダのように何かにまとわりついている。
これは何なんだろう?
もしかして、卵ではなかろうか。
だとしたら壊さなきゃと近づくと、壁から突き出た突起があった。
それは人間の頭蓋骨のように見えた。
近づくと、無数の溶けた遺体を見つける。
そうか!これはかつて空を飛んでいたんだ!

拓也「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
拓也は死体を見て吐き気を催す。
もしかしたら俺もマネージャーみたいにヤバい方の狂いを起こすかもしれないな。
旅客機はボロボロで消化されかかっているが、
乗客らしきものは見当たらない。ただ、積載物が残っているだけだ。
金属物、およびタンパク質性のものは溶解しているが、消化液は布類などは溶かさぬようである。
遺体も、骨と衣類だけはしっかりと残っている。
拓也は荷物の中から、ある物を拾い上げる。

それは、二人分のパラシュートだった。
マネージャーは気絶しているだけだから、
うまく使えば俺たちは助かるかなとか一瞬考えたけど、
K2や穂、スコットがまだこの山のどこかにいるって思ったら、これでさっさと脱出するのはダメなんだよね。
俺は恐怖心を押し殺して、この洞窟を進む、これが雄膣なら、どこかに出口はあるはずだ。

だが、内壁は想像を絶するほどの太さだ。
しかも、どこまでも続いているように思える。
拓也は、自分がどこへ進んでいるのかすらわからない。
でもここで諦めたらまたこの山を登ろうとする輩がたくさん出てきそうだぜ!
だから俺がこの山の真実を世間に発表するんだ。
GYM-Kのホームページでね。

おお、出口だと駆け寄ろうとすると、謎の異音が聞こえ始めた。
なんだか不気味だ。この音を聞いていると、頭がおかしくなりそうだ。拓也達は、急いで出口に向かう。
なんとか脱出することができた。さっさと出れてよかったぜ。
背後から、何かが迫ってきている気がしたからな。

拓也たちは命からがら、あの狂気の山脈から脱出した。
ケヴィンと穂とは直ぐに合流できた。ケヴィンは若干体調が悪そうだったが、無事だったようだ。
マネージャーも肉体は無事だったぜ!
ただ、非情に悔しいことにスコットと会うことは叶わなかった。
とにかく拓也の登山はこれで終わった。若干病院へ入院して、それからしばらく休暇をとった。
拓也は思う。もう二度と登山なんでするもんかってね。

あのあと狂気山脈について穂と会見を開いたら自己紹介が
スルーされることはなかったけど世界中が拓也に対して、謝罪と賠償を求めてきたし。
特にオスコー財団からの追求はすさまじかった。
お前らのせいだからな。
ただ、センパイは相変わらずだった。
拓也のことを責めたりしなかった。
むしろ、よくやったと言ってくれる。まあそれだけで、拓也としては満足だ。

今、自分の肉体美をアピールするため、トレーニングを続けている
世間の非難なんかに負けるものか。
富士山のふもとを走りながら、俺は携帯で掲示板に書き込みを行う

サーフ系ボディビルダー拓也
ttp://◯◯.◯◯◯◯.jp/surfinbody
胸囲107センチだって
すごいわね。

拓也の登山家人生はここで終わる、、、、はずだった!


前:AIと協力して拓也さんに狂気山脈を登山してもらう その1~3
次:続・AIと協力して拓也さんに狂気山脈を登山してもらう その1

https://www.nicovideo.jp/watch/sm41879987
https://www.nicovideo.jp/watch/sm41925232

 

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拓也(サーフ系マーケター)@ウリーランス/コンサル運営日本初ウリーランス(ウリ×フリーランス)/ウリ志望の人を稼げるレベルまで育てるプロ/ウリしながら4社経営/#拓也のコンサル1H3000...

AIを使って拓也さんをきつねにする

🦊💬朝起きた時にキツネに変身しているのはいつも突然だ。起き抜けに起き抜きをしようとネムネムの顔でチンポジをいじっていると、体に違和感。オレの姿はなんとまあ、可愛らしいコンちゃんになっていたのだ。昨日夢...