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「トライ・シフト」
キラ=ヤマトとラクス=クラインの別邸にゲルハルト=ライヒは居た。優雅な午後の茶会と呼ぶにはあまりにも人道に外れた内容。……その名は禁忌の計画『プロジェクト=コーディネイター』。
遠まわしにライヒが進めている計画を容認するキラに、笑顔の裏に潜むラクスと平和のためならば汚濁を飲み込んでみせるという凄絶な覚悟、人間離れした並列処理能力と観察眼を見たライヒは「最強の戦士と言っても所詮はラクス=クラインの操り人形に過ぎない」という認識を改めざるを得なかった。
規律の為にドーベルマンの処分をゲルハルト=ライヒに具申するメイリン=ザラ。ライヒの答えは意外な事に「放っておけ」というものだった。ライヒらしからぬ甘い処置に納得のいかない顔をしているメイリン。そんな彼女にライヒは謎めいた言葉を投げかけるのだった。
一方その頃シン=アスカは独り、ヒルダ=ハーケン率いるドムクルセイダー達と交戦していた。ジェットストリームアタックを駆使してシンに挑むヒルダであったが、シンはダストガンダムの機動力と今まで培った経験で切り抜ける。あえて余裕を見せる事で連携を崩そうとしたシンだったが、必殺の陣形を切り崩された割にはヒルダ達に動揺は見られなかった。なぜなら彼等の切り札はまだ切られていなかったからだ。切り札の名は『トライ・シフト』。
試しの戦陣トライ・シフトの脅威が、シンに襲い掛かる。
重装甲に加えスクリーミングニンバス、ソリドゥス=フルゴールまで装備しているドムクルセイダーにダストガンダムの持つ火器では撃墜どころか隙を作ることさえできない。今までの相手と違い包囲を崩さず、確実に仕留められる射撃によってこちらを機械的に攻撃してくるドムクルセイダーの前に、防戦を余儀なくされるシンは焦りと疲労を募らせる。
しかし焦りと疲労はヒルダも同じ事であった。幾度も死角を突き、対処できないであろう攻撃を繰り出しているにも拘らず全て回避、防御されるという事態に、さしもの彼女達も『カテゴリーS』の恐ろしさを認めざるを得ない。そして焦りからついにはシンの奇策によってトライシフトから脱出されてしまうのだった。
一対多という最高のシチュエーションでさえ倒す事ができない。つまり増援が現れたら勝機は失われる、という事実に更に焦るヒルダは確実に倒すために禁じられた手段を取る。……それは、シンの心の傷を抉るものであった。
「編集」
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