❖ 国内主流体系の変遷
1960年〜1970年・・・・【ナスルーラ】
全世界で発展したナスルーラ系。現在も、近代の「種牡馬の父」として大きな影響力を保持している。
直子として、欧州でネヴァーセイダイ、ネヴァーベンド。北米ではボールドルーラーなどがおり、
グレイソヴリン、プリンスリーギフト、レッドゴッド等の現在主流血統の基礎となっている。
セクレタリアト、シアトルスルー、インヴァソール、バゴ、ダラカニ、サキー等数多くの活躍馬、名種牡馬へその力を伝えている。
母系血統としてもナスルーラの血を受ける種牡馬としてミスタープロスペクター、オーサムアゲイン、ラムタラ等おり、近代競馬を語るうえで外せない種牡馬となっている。
国内ではテスコボーイが種牡馬として輸入され発展。
テスコボーイはプリンスリーギフト系としてはサクラユタカオー、ミスターシービー等、数々の名馬・名種牡馬を誕生。
現在勢いは衰えたもののサクラバクシンオーを通じショナンカンプやキタサンブラックの母系血統としても受け継がれている系統。
1970年〜1980年・・・・【ノーザンダンサー】
それまで世界的に栄華隆盛を極めたナスルーラ系はノーザンダンサーの登場によりその地位を奪われる。
ノーザンダンサーの種牡馬としての成功は北米の枠を超えて世界レベル。
20世紀中最も成功した一頭といわれ、Thoroughbred Timesの調査では現在のサラブレッドに対する遺伝的な影響はセントサイモンに次ぐ2位と報告されています。
種牡馬としても、イギリスクラシック三冠馬となるニジンスキー。
英愛ダービー優勝馬ザミンストレルなど146頭のステークス競走優勝馬を輩出。
イギリスのリーディングサイアーを4回(1970年、1977年、1983年、1984年)獲得
アメリカのリーディングサイアーは2度(1971年、1977年)獲得している。
主要国でリーディングサイアーとなった産駒はサドラーズウェルズを筆頭に9頭。
これはセントサイモンの8頭を上回る。
日本国内ではノーザンテーストの輸入によりノーザンテースト一強時代に突入。
その後10年連続でリーディングサイアーに輝き現在の社台グループ発展の礎となった名種牡馬として名を残しています。
現在でも、ノーザンテーストの4×3というインブリードで三冠馬オルフェーヴルが誕生しています。
- ノーザンダンサー系
<芝スピード型>
キングヘイロー/シングスピール/ゼンノエルシド/ファルブラヴ/ローエングリン
など
<芝スタミナ型>
オペラハウス/コマンダーインチーフ/サドラーズウェルズ/ジェネラス/ダンシン
グブレーヴ/テイエムオペラオー/フサイチコンコルド/ホワイトマズル/メイショ
ウサムソンなど
<ダート型>
クロフネ/ジャイアンツコーズウェイ/ストームキャット/ストームバード/ストラ
ヴィンスキー/スニッツェル/ファスリエフ/フレンチデピュティなど
1990年〜1995年・・・・【ロベルト系(ターントゥ系)】
日本ではリアルシャダイの登場でターントゥ系に属するロベルト系種牡馬として勢力を伸ばす。
豊かなスタミナを持ち活躍するも、多くの有力競走馬は体質が弱く後継となる馬は現れることなく衰退。
同時期に登場したブライアンズタイムは同じくロベルト系。
スピード・スタミナ共に優秀な産駒を多く輩出しその流れを継承。
ナリタブライアン、シンボリクリスエス、ムッシュシェクル。
グラスワンダーの血からスクリーンヒーロー、モーリスへその血を繋いでいる。
ロベルト系
グラスワンダー/シンボリクリスエス/タニノギムレット/ブライアンズタイム/マ
ヤノトップガンなど
1990年〜2000年・・・・【グレイソヴリン系(ナスルーラ系)】
1988年ジャパンカップ参戦後(結果:5着)、社台により種牡馬スタッドインしたトニービン。
その優秀な種牡馬戦績により再度ナスルーラ系が復権を果たした。
初年度より、ベガ、サクラチトセオー、ノースフライト、ウィニングチケット等の重賞馬を産出。
その後も、オフサイドトラップ、エアグルーヴ、ジャングルポケット等、当時巻き起こっていた競馬ブームの中心となる多くの優秀な産駒を産み、1994年には日本リーディングサイアーを獲得。
その後の発展が期待されたが、同時期に輸入されたサンデーサイレンスの結果によりその活躍は影を潜めたが、その評価は現在でも非常に高く優秀な種牡馬だった。
産駒特徴として、突出したスピードこそ無いが、後方から確実に伸び続けるロングスパートを得意とする差し馬、追い込み馬が多く、ゴール前の直線が長い東京競馬場や近年の新潟競馬場での良績を残す。
特に東京競馬場では圧倒的ともいえる成績を残しており、産駒のG1勝ち星の合計13勝のうち11勝は東京競馬場であげたもの。
反面やや不器用な面があり、コーナーワークや瞬時の加速などは若干不得手で、そのため中山、福島、小倉など、小回りで直線が短いコースにおける実績は振るわない。
ダートでも走るが本質的には芝向き。重馬場でもさほど力は落ちない。
頑健な馬体と成長力を併せ持ち、中には古馬になってからも衰えない息の長い活躍をみせる産駒もいる。
- グレイソブリン系
アドマイヤコジーン/ジャングルポケット/スターオブコジーン/タマモクロス/トニ
ービンなど
1995年〜現在・・・・【サンデーサイレンス系(ターントゥ系)】
社台の吉田善哉により米国2冠及び世界最高峰のレースのブリーダーズカップ・クラシックを制し、1989年の全米年度代表馬サンデーサイレンスが購入価格:約16億5000万円で日本に導入される。
サンデーサイレンスが種牡馬としてスタッドインされた1990年以降、日本国内の馬産の中心はサンデーサイレンス一色。
サンデーサイレンスは初年度産駒がデビューした翌年の1995年から2007年にかけて13年連続でリーディングサイアーとなる等、数々の種牡馬記録を塗り替え、現在の日本競馬界を形作ることになった。
サンデーサイレンスは中央競馬における種牡馬に関する記録の多くを更新。
以下全ての最多記録を保有している。
・ リーディングサイアー
・ 連続リーディングサイアー
・ 通算勝利数
・ 通算重賞勝利数
・ 通算GI級競走勝利数
・ 年間勝利数
・ 年間重賞勝利数
・ 年間GI級競走勝利数
・ 年間獲得賞金額
・ 通算クラシック勝利数
それ以外にも、中央競馬・地方競馬をあわせた通算勝利数は3719勝。
アジュディケーティングの3766勝[に次ぐ世界2位となっている。
日本の馬産を席巻しすぎたゆえ、2011年の日本ダービーでは出走18頭すべてが「サンデーサイレンスの血を引いた馬」という事態も起こっており血の飽和が懸念される状況もありサンデーサイレンス系(ターントゥ系)以外の血の導入が急務となってる。
しかし、ターントゥ系の台頭は日本だけの話で、欧州や米国では依然ノーザンダンサー系や、ナスルーラ系、ネイティヴダンサー系の活躍の方が目立っており、新たな有力系統が待ち望まれている。
- サンデーサイレンス系
アグネスタキオン/アドマイヤマックス/オンファイア/ゴールドアリュール/サク
ラプレジデント/サムライハート/スズカフェニックス/ステイゴールド/スペシャ
ルウィーク/ゼンノロブロイ/ダイワメジャー/ダンスインザダーク/ディープイン
パクト/デュランダル/ネオユニヴァース/ハーツクライ/フジキセキ/ブラックタ
イド/マンハッタンカフェ/リンカーンなど
❖ ディープインパクト
そして、その血は現在も強く影響しており、2007年にスタッドインしたディープインパクトにより継承されている。
初年度産駒の誕生した2010年JRA2歳リーディングサイアーに輝いた事を皮切りに翌年のリーディングサイヤーではキングカメハメハに次ぐ2位を獲得、2歳リーディングを連覇する。
2012年、GI-5勝を含む重賞18勝を挙げるなどの大躍進を魅せ、初のJRAと全国のリーディングサイアーに輝く。
産駒はJRAで216勝を挙げたが、これはキングカメハメハの184勝(2011年)を大幅に塗り替える内国産種牡馬のJRA年間勝利数新記録となった。
その後、5年連続リーディングサイヤーとなり日本を代表する名種牡馬としてその血を拡大しています。
初年度1200万円であった種付料もその圧倒的な実績の結果2016年には3000万円迄高騰。
ディーマジェスティ(皐月賞)、シンハライト(優駿牝馬)、マカヒキ(東京優駿)、マリアライト(宝塚記念)、ヴィブロス(秋華賞)、サトノダイヤモンド(菊花賞)(有馬記念)とG1-7勝。牡馬クラシック制覇等、多くの実績を残し今日の日本競馬の中心を担う大種牡馬となっている。
【ミスタープロスペクター系(ミスプロ系)】
ミスタープロスペクターは1970年生まれの米国産馬。
競走馬としては大成できなかったが、種牡馬としては20世紀末でもっとも成功しミスタープロスペクター系を築いた。
ダート適性の高い短距離馬が多い。
大系統として1950年代〜種牡馬として活躍したネイディヴダンサーを基礎とし、レイズアネイティブ、ミスタープロスペクターというラインでつながる。
米国血統には基本的に”仕上がりが早い”特徴があり、2歳戦の早い時期から活躍する馬が多くミスプロを軸に以下の3つの小系統に分類される。
❖ フォーティナイナー系
芝をこなすタイプもいる
❖ キングマンボ系
欧州タイプで芝適性が高い馬が多い
❖ ミスプロ系
上記に分類しない全ての馬
❖ フォーティナイナー系
フォーティナイナーはミスタープロスペクターの直仔。
日本の短距離ダート界ではサウスヴィグラスが目覚ましい活躍をしています。
★ アイルハヴアナザー
★ アドマイヤムーン
★ エンドスウィープ
★ クリストワイニング
★ コロナズドクエスト
★ サウスヴィグラス
★ スウェプトオーヴァーボード
★ トワイニング
★ プリサイスエンド
★ マイネルセレクト
★ Any Given Saturday
★ Distorted Humor
アドマイヤムーンは、現役時代から芝の中距離でも活躍した少し異色の存在。
産駒も主戦場は芝の短距離ですが、中距離までも対応可能。
サウスヴィグラスは短距離ダートでの良績多数。
特に”外枠・距離短縮・昇級戦”といった条件下での良績を残す。
アドマイヤムーン・スウェプトオーヴァーボードはどちらかと言うと芝向き。
それ以外の種牡馬は基本的にダート向きです。
完成度が高く、早い時期から活躍。
2歳戦では芝の短距離でも良く好走します。
しかし気性があまり良くない(気分屋)事があるので、原因不明の凡走をしたり、その後何も無かったかのように簡単に巻き返すなど、人気で信用はしたくない面もあります。
❖ キングマンボ系
父がミスタープロスペクター、母がミエスクという欧州の超一流牝馬から産まれた超良血馬がこのキングマンボです。
キングマンボ系は他のミスプロ系に比べると”日本の芝適性が高い”です。
★ アポロキングダム
★ アルカセット
★ ヴァーミリアン
★ エルコンドルパサー
★ キングカメハメハ
★ キングズベスト
★ ソングオブウインド
★ ルーラーシップ
★ ワークフォース
★ Dubai Destination
ミスプロ系代表種牡馬でもあるキングカメハメハは日本ダービーを制した名馬。
サンデーの血を持っていない為に良質なサンデー系牝馬と配合可能。
現在ディープ系と双璧を成す大種牡馬となっています。
2016年皐月賞・日本ダービーでは、1~5着すべてがディープ産駒とキングカメハメハ産駒が独占。
ディープ系以上にダートでも活躍する馬が多いため、サンデーサイレンスが持つ1日での産駒の勝利数記録を更新する偉業も達成しています。
キングカメハメハはスタミナに関して若干の不安があり3000mを超えるレースでは成績が極端に落ちる事も特徴。
エルコンドルパサーは”母父として豊富な底力”を伝え、タフな馬場や大舞台で真価を発揮。
ヴァーミリアンは”ダートで活躍する馬”を多く出しています。
キングカメハメハ産駒は瞬発力の高い産駒も多数存在しますがそれ以外はそこまで切れるタイプでは無く、サンデー系よりもパワーが優るので、タフな馬場で強いです。
ルーラーシップが今後どのような産駒を出すのか、現役時代と同様に不器用で広いコースが得意な産駒が増えそうな気がします。
❖ ミスプロ系
小系統ミスプロ系は、フォーティナイナーとキングマンボを介さない全ての馬が属する。
代表的な種牡馬は以下。
★ アグネスデジタル
★ アドマイヤドン
★ ウォーエンブレム
★ エンパイアメーカー
★ ケイムホーム
★ サマーバード
★ ストーミングホーム
★ バトルプラン
★ マイネルラヴ
これらはミスプロ系の一部で、他にもミスプロ系の種牡馬は多く存在しています。
基本的にはダートの短距離がメイン。
アグネスデジタルは芝や中距離をこなす様々なタイプが出やすい。
ストーミングホーム・マイネルラヴは芝向きの馬が出やすいです。
中でもエンパイアメーカー(産駒:バトルプラン含む)は芝・ダート問わず高い能力を持つ産駒が多く注目のミスプロ系と言えます。
エンパイアメーカーは引退後、2004年より生まれ故郷でもあるケンタッキー州のジュドモントファームで種牡馬入り。
国内では、持込馬であるフェデラリスト等の活躍により注目を集め、2010年11月には日本軽種馬協会に売却。
2011年から日本の日本軽種馬協会静内種馬場で供用される。
初年度の種付け料は条件によるが200 - 300万円で、初年度は204頭に種付けを行い現在に至る。
2016年からはアメリカに戻り、ゲインズウェイファームで種牡馬生活を送っている。
- ミスタープロスペクター系(ミスプロ系)
アグネスデジタル/アドマイヤムーン/アフリート/イーグルカフェ/エンパイアメ
ーカー/キングカメハメハ/キングズベスト/サウスヴィグラス/スウェプトオーヴ
ァーボード/フォーティーナイナー/ルールオブローなど
❖ ダンチヒ系
ノーザンダンサーの超絶後継種牡馬御三家(ニジンスキー、ダンチヒ、サドラーズウェルズ)の1頭
世界各国で成功するも突出した強さはない。日本国内だと90年代の印象でその後あまり目立った存在では無い。
理由としては平坦専用機で坂が全く駄目な印象で距離適性も短距離芝。
これで早熟傾向もあるので夏のローカルでは狙いたい系統。
母系にノーザンテーストのクロスを持つことで坂苦手というのを補強する効果があるらしい。
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