❖ 前提
ギャンブルは常に流動的である。
必勝法は存在せず、絶対に負けない方法のみが存在する。
それはギャンブルに参加しないことである。
ギャンブルに参加する事は自分自身の資産を流動性(=運)に晒すことである。
生きることはギャンブルである。
言い換えればギャンブルは小さな人生であるともいえる。
故に負けるという事は死の疑似体験となりえる。
小さな人生の中で死を覚悟し生存を掛け勝負に望み勝利した際にもたらされるカタルシスの影響は強い。
少なからずアドレナリンやドーパミン等の脳内物質がもたらす高揚感・多幸感に魅了され廃人となってゆく人々も存在する。
これらはギャンブルの魅力でもありリスクでもある。
ギャンブルに支配されないように一定の距離感を確保する必要がある為、必要な各種前提をまずは整理しておきたい。
❖ 競馬に関する私的な考察
元々日本の競馬のハウスエッジ(控除率)は、券種にもよるが約20-25%程度と非常に分の悪いギャンブルである。
ハウスエッジが25%の場合、1000万円投資した際の回収額基準は単純に750万円となる。
単純なギャンブルを行いたいのであればより低いハウスエッジを求めて多少のコストを払ってもカジノに行けば良い。
ラスベガスルールのブラックジャックのハウスエッジは99.7%と非常に低く1000万円投資した際には、回収額基準は単純に997万円となり、競馬との差額は247万円となる。
比較のしようがない非常に有利で魅力的な条件である。
しかし、何故ギャンブルとして競馬を選択するのか?
先ずは単純なこの理由について自分自身の前提を理解する必要がある。
人間は基本的には合理的な存在であると考える。
その合理的であるはずの人間が分の悪いギャンブルをする理由は勝つことのみが目的では無いと考えたほうが合理的である。
毎年数多くの競走馬が誕生し、ダービーを頂点としたクラシックを目指す。
その過程で生まれる数多くの戦いに参加し数多く生まれる敗者と共に敗退を経験し、一握りの勝者と共に勝利しその偉業を我が事にように称え喜ぶ。
競走馬を愛しその馬生に沿いその血脈を辿り数々の歴史の中に存在する数多くの物語を発掘してゆく。
かつて愛した名馬の子孫の誕生を願い生誕を喜び活躍を期待し改めてその馬生に沿ってゆく。
若い騎手が華々しい戦績を討ちたて新しいスターとして数多くの苦悩の中で成長してゆく。
その中にも数多くの敗者は生まれ乗鞍に恵まれずに若くして挫折し新しい可能性を求め元騎手になってゆく。
スランプは日常、不幸な事故や様々なアクシデントの数々。
かつて隆盛を極めた騎手が不幸なアクシデントに見まわれ怪我の後遺症でその輝きを失い無様な敗退を重ね罵声を浴びる日々を重ねる。
新しいヒーローの活躍、古参はその地位を奪われ苦渋を味わう道程に我々は沿い復活を信じ願う。
多くの苦悩の中に居ても諦めず腐らず努力を続けベストを尽くす。
ふとした切っ掛けを掴み再度輝きを取り戻した際に向けられる尊敬と賞賛、大きな感動や喜び。
それら競馬が提供し続ける数多くの物語へ参加する為のチケットとして馬券を購入し絶対的な当事者としての地位を得て我々は競馬に参加する。
自分自身の人生のなぞらえそれら多くのコンテクストの中から自分自身の体験を通し物語を見出し自分自身の人生を見直す。
それら数々の物語は自分すら自覚していない感情を揺さぶる。
その一つ一つ感情の揺れが人生の喜びであり競馬がもたらす最大の魅力であるように思う。
馬券的勝敗は競馬がギャンブルである為に欠かすことの出来ない重要な前提である。
しかし、捉え方次第でそれは競馬の魅力の全てでは無く副次的な前提と定義出来る要件でもある。
極端に言えばギャンブルでは無いと定義することも可能であろう。
正しいバランスを自分自身に問い自分自身が感情を震わせ感動できる為に必要なバランスを求める事が最も重要だと考えている。
❖ まとめ
馬券下手の単なる競馬好きとして競馬を楽しむため必要な私的なルールを作り身を守る必要を感じる。
善良な競馬ファン的な視点を持ちつつも単純にギャンブルを楽しんでいる自分が確実に存在する。
勿論、カジノはカジノの魅力が存在する。それも否定しない。
しかし単純な話、わざわざラスベガスやマカオへギャンブルをしに出向くのは多くの準備を必要とする。
それらと比較し日本国内に居住し簡易的に参加出来る競馬は以上にコンビニエンスなギャンブルで有る。
単純にそれだけで競馬をやり続けているのかもしれない。
キレイ事だけでは無く、頭の悪い怠惰な我々が選択するギャンブルとしての側面についても否定せずに自覚しておきたい。
ギャンブルに支配され、全財産をオールインし破滅する可能性は誰にも有る。
これらリスクを正しく理解し、競馬が自分の人生にとって有益なものとして肯定できる状態を維持したいと望み、常に更新される正解を考え続けバランスをとり続ける。
深遠な魅力とリスクを持つゲーム故に危険性を正しく理解し上手く付き合う事が肝要であると考える。
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