今年の皐月賞は結果的にデムーロの作ったレースとなった。
賛否はあるとは思うが個人的には先週のルメールの消極的なレースと違い全力で自分のレースを作りに行りにゆく姿勢に好感が持てた。
9Rに同条件で実施された鹿野山特別をみるまでも無く当日は先行有利な馬場状況であり勝ちを求めた積極策として評価したい。
最後の直線、降着の理由になった斜行に関しては決して褒められた行為では無い。
しかし勝ちへの執着の強さの現れでありシンプルに勝利を求める姿勢に上手いだけの騎手と勝てる騎手の差を感じた。
前哨戦、前走マカヒキに切れ負け敗退した経緯や、好位差しを得意とするサイトダイヤモンドやエアスピネルなど、自在性に富むライバルを相手に完全に勝ち切るには自分自身でレースを作る能力を持つ事が有効となる。
スローの上がり勝負になりやすいG1で自分自身でレースを作れる力は同馬の今後にとって有効な戦略となるはずだった。
先週の桜花賞でその力のある有力馬を凡走させたライバルから得た教訓から取られた行動だったようにも感じる。
同馬の課題であったスタートを無事決め時点で積極的な先行策を選択した背景にこういった思いがあったのだと思うのは考えすぎだろうか。
先行策自体、リオンディーズが勝利するためには非常に有効であったと感じる。
しかし、リスペクトアースが作る前半1000mを58.4秒と非常に早いペースに追従。
風の影響でペースをつかめなかった影響かその後の1000m〜1200mも11.5とハイペースのままレースは進行。
結果上がりのかかる消耗戦に突入した。
ある程度の流れを作る事が目的ではあったが前半をせめて60秒前後で抑え1000m〜1200mも12秒前後で抑えられればもう少し展開を制御する事も可能だったが、息吐く間もないペースで作られた消耗戦は結果差し馬に有利な展開となった。
本レースを経験したことによる唯一の懸念は同馬の折り合い面である。
今回のレースで経験した競馬は気性に問題のある同馬に本レースを勝利する為の一か八かの勝負でもあった。
名牝シーザリオから生まれた同馬の兄妹にはエピファネイアを代表に気性難を受け継ぐ産駒が多い。
その血の影響を考えると今後も気性面の問題と付き合ってゆく必要があり、今回のこの戦略は悪い影響を残す可能性のある内容であった。
しかし、諸刃ではあるが一定の速度で先行し折り合う事が可能となれば同馬の今後のレース戦略における強力な武器になる可能性はあった。
行き過ぎたハイペースを認識し、前目で折り合いをつける等の試行があれば良かったように思う。
しかし今回の印象としては強風でペースが読めずリスペクトアースの暴走に付き合い、馬の行く気に任せて追従したのみの印象が強かった。
折り合いの悪さについては、二歳マイルG1である朝日杯を勝利した以降顕著になったように感じる。
今回、改めて積極的な先行策を経験した事で、今後も折り合いを欠き前に行きたがる癖が付く可能性は高く、更に距離の伸びる日本ダービーでこれら問題に目処を立て勝利出来るのか?非常に不安の残る内容となった。
結果的に先行馬が全て潰れる最も厳しいレース展開に耐え上位入選を果たした結果に同馬のポテンシャルの高さを改めて感じた。
繰り返しになるが、この馬の強さを発揮するのに安定した先行力は非常に強い武器になると思う。
しかしこれまで述べてきた通り先行策は気性面の問題を助長し誘発するリスクの高い戦略でもある。
無難に道中を抑えても負けた前走、例年と比較してもハイレベルな競合が多数存在する今年の3歳クラシック戦線を勝ち上がってゆく為にはプラスαの武器が必要でありリスクを考えても積極先を取る必要があるという状況故の判断かもしれない。
改めて今年のレベルの高さを感じるレースとの印象が強かった。
勝ち馬となったディーマジェスティの強さはフロックで語られる内容のものではない。
同レースのレコードを記録した勝利であり、昨年古馬G1を連勝したラブリーデイの持つコースレコード1:57.8にも.0.1秒に迫る内容だった。
現時点でも古馬一線級と堂々と対峙出来る内容であり改めてこの世代の層の厚さ、能力の高さを感じさせる内容となった。
上がり最速のマカヒキを筆頭に、自在性の高いサトノダイヤモンドやエアスピネルも直線の不利さえ無ければ走破時計以上に僅差な内容であり、距離適性や展開、枠順などで左右される程度の能力差しかない。
今後のクラシック戦線の難しさや面白さを改めて感じたレースだった。
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