ロケットマン(水木しげるの漫画)

ページ名:ロケットマン_水木しげるの漫画_

登録日:2022/04/03 Sun 00:38:13
更新日:2024/06/18 Tue 11:53:08NEW!
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ロケットマン 水木しげる 漫画 貸本 ツッコミどころ満載 デビュー作 講談社 小学館 ※スーパーマンではありません グラヤ 怪獣のアラエッサッサ踊り 布団で寝る怪獣 兎月書房




『ロケットマン』とは、水木しげるの漫画家デビュー作*1
1958年に兎月書房より単行本が出ている。
同名の漫画とは一切関係ない。


貸本漫画の例に漏れず、一時期は非常に手に取りにくい作品だったが、2010年に小学館クリエイティブより限定版BOXが出た他、現在は講談社から発行された水木しげる漫画大全集に収録されているので、比較的読みやすくなっている。
変わったところでは、2002年に講談社から水木しげる生誕80周年記念として限定発売された『水木しげるオフィシャルBOX 妖怪世界遺産』にも本作の復刻版が特典の一つとして封入されていた。


色々な意味で破天荒かつツッコミどころ満載な内容であり、ホラー要素こそないものののちの水木しげるの雛形はこの時点で既に出来上がっていたことがわかる。
なお、ストーリーラインはゲゲゲの鬼太郎の『大海獣』や『妖怪獣』とよく似ている部分がある。


あらすじ

突然日本上空に現れた「第二の月」に国民は大パニックに。
その謎を解くべく第二の月に向かった上津戸博士は、ロケットの中で謎の死体となってしまった。
そしてテレビを通して「第二の月の使者」が怒雷博士に権力を移譲するよう呼びかけるが……。


登場人物

  • 上津戸新一

主人公……だが、序盤~中盤にかけてはあまり活躍の機会がない。
大学でヒョウタンの研究をしているらしいが……?
割と事態が切迫している状況でも蕎麦を食おうとする、自宅がグラヤに持ち上げられても「外が騒がしいな」で済ますなど、豪胆なのか状況把握ができないアホなのかイマイチ判断がつかない怪人物。水木しげるらしいっちゃらしいが


  • 上津戸博士

新一の父親で、日本を代表する科学者。日本で初めてノーベル賞を貰ったらしい。
第二の月が現れた二日後にはロケットで第二の月に直行する勇気の持ち主。
第二の月で謎の怪死を遂げ、その死体は怒雷の手でに放棄されたが……?


  • 怒雷博士

上津戸博士と並ぶ日本を代表する科学者で、日本の支配を企む悪役。
上津戸博士が乗ったロケットの燃料を抜いておく、その死体を海に放棄するなど外道そのもの。


  • 第二の月の使者

テレビを通じて日本国民に降伏を呼び掛けた。なぜかカタコト。
その脅しとして、日本全土を停電に追い込むなど、実力は本物。


  • 西総理

総理大臣。しかし無能。
怒雷の脅迫にも当初は強気だったが、あっさりと屈する。


  • ロケットマン

終盤になって唐突に登場する。この漫画最大のツッコミどころ


用語

  • 第二の月

日本上空に突如として出現した謎の天体。
「落ちてくるのではないか」と国民はパニックになる一方、上津戸博士は何かに気づいていたようだが……?


  • グラヤ

海から現れたクラゲっぽい巨大怪獣。
なぜか新一に執拗につきまとうが……?
ちなみに、自分で名乗ったわけでもないし、特に会議とかが開かれて名前が決められたわけでもないのに、なぜか作中では普通に「グラヤ」と呼ばれている。


  • ネオ・ドライ

怒雷博士が作った「宇宙最強」らしい巨大ロボット
頭に「どんな生物でも溶かす爆弾」が仕込まれているらしい。なんでこんなもの自宅の地下に保管していたんだ
なお、恐らく時代的に最初期の「巨大怪獣VS巨大ロボット」である。











以下ネタバレ












なんとグラヤの正体は、宇宙で謎の寄生生物に寄生された上津戸博士。なお、この寄生生物については最後まで全くと言っていいほどその正体には触れられないので、第二の月事件とは一切関係ない完全な偶然の産物だった模様……。
海に捨てられた上津戸博士は、この寄生生物と同化し巨大怪獣グラヤと化してしまったのだ。
なんとか息子と連絡を取ろうとするグラヤ=上津戸博士だったが、当然の如くコミュニケーションに失敗。失意のまませめて自分の証となる端切れだけを残して去っていく。
息子から拒絶された上津戸博士は、ならばこの事態だけでも収めるべく、怒雷博士の自宅を襲撃。妙に達筆な手紙で怒雷博士に第二の月を鎮めるように警告。字が書けるなら最初から新一にも手紙書けや
一方怒雷博士はすぐさまグラヤの正体が上津戸博士であると看破すると、即座に超兵器ネオ・ドライで応戦。グラヤは善戦するも、生き物を溶かす爆弾で腕を失い撤退。
怒雷博士は、この事態も自身の宣伝に繋げ、自分を「国を救った英雄」と自画自賛し、総理の座を明け渡すよう要求し、西総理も渋々これに応じた。


そして怒雷が総理となった後、端切れからグラヤの正体に疑問を持った新一は、海流研究所から父親を名乗る人物から毎日のように手紙の入った瓶が流れ着く、という報告を受ける。
その手紙に従い伊豆に向かった新一は、波に飲まれ偶然にもグラヤの隠れ潜む洞窟へとたどり着いた。
そこでようやく字を書いて自身の状況を伝えた上津戸博士は、海底から引き揚げたたくさんの財宝を使って、大鳥島という無人島に鉄などの材料を届けてほしいこと、新一には新一自身の研究を続けて欲しいことを伝えた。


一方、グラヤの行方を追っていた怒雷は大鳥島にグラヤが潜んでいることに気づく。
ただちに全空軍・海軍を出撃させてこの撃滅に当たる怒雷。どうでもいいがこの時代の日本には自衛隊ではなく空軍と海軍があるらしい
しかし、グラヤの決死の抵抗であっさりと軍は全滅。なおこの際グラヤ=上津戸博士に殺意はなかったが、軍艦を引っ繰り返しながら「しばらく海底で寝ていてくれ」ってそれどう考えても永遠の眠りで(ry


そして時間を稼ぐことに成功したグラヤは鉄でできた鎧を纏い、再度日本を襲撃。鉄の鎧にネオ・ドライの生き物を溶かす爆弾も無効化されてしまう。
この危機に怒雷は冷徹にも「周辺の住民はどうでもいいから水爆を投下しろ」と命令。どうでもいいがこの時代の日本には水爆が(ry


水爆が直撃して生きていられる生物はいないだろう、と高を括る怒雷だったが、なんとグラヤの鎧が動いていた!
その鎧に接近するも、ヘリコプターの燃料が切れてしまう怒雷。やむなく鎧の上に不時着するも、その鎧に中身が何もないがらんどうであることに違和感を覚える。
そして鎧はどこかの島に磁力で引き寄せられていたのだった…。


謎の島にたどり着いた怒雷。その島には不自然なほど立派な屋敷が建っていた。
怪しみながら中に入ると、謎の声が語り掛けてきた。


……ここから先の展開はあまりにも急展開なので、箇条書きとする。


  • 謎の声の正体は、「世界を動かす第三の男(ちなみに第一は怒雷、第二はグラヤ)」を名乗る''胸のSマークに至るまでスーパーマンそのまま''なビジュアルの男、ロケットマン。
  • ロケットマンはすでにグラヤを従えたと語る。
  • 「お前はスーパーマンだろう故郷のアメリカに帰れ」と怪しむ怒雷を奥へと導くロケットマン。
  • するとそこには超巨大な布団でグースカと眠るグラヤが
  • 「自分に権力を明け渡せ」と怒雷を脅すロケットマン。
    • なお、この時点まででロケットマンの一人称が「」「わし」「私」と非常に頻繁に変わるので読者も混乱する。酷いと同じコマですら一人称が違う
  • 渋る怒雷に、「自分はグラヤを思い通りに動かせるのだぞ」と示すべく、「アラエッサッサ」と間抜けな踊りをグラヤに踊らされる。
  • とうとう敬語になり屈する怒雷。グラヤと並んで間抜けな踊りを踊らされる。
  • 「自分の力こぶはまるで水爆の爆発だ」「だから水爆並みのパワーがあるのだ」とさらに重ねて怒雷を脅すロケットマン。よくよく考えると理屈が全然通っていないのは気にしないように
  • とうとう日本に戻ってきたロケットマン、自分が新しい日本の総理になると宣言。アンタ正義の味方じゃないのか……
  • 怒雷の企みは「宇宙膜に映した巨大な月の映像で国民をパニックにする」「強力テレビ電波でテレビをジャックし第二の月の使者に扮したそのへんのオッサンで国民を脅す」「ゼロ電波装置で実際に日本中を停電にする」「そして自分が日本の総理になる」というものだった!正直回りくどいことせずにこの辺の発明真っ向から使えば普通に世界征服ぐらいできた気がする……しかし、これらの企みを明かされて怒雷の計画は完全に水泡に帰した。
  • そこでやってきた西元総理にロケットマンが種明かし。なんと彼の正体は新一だったのだ。体型全然違うやん……
  • 新一はヒョウタンから採取した新物質「ヘウタリウム」で物を小さくすることに成功、このヘウタリウムでグラヤを小さくして父親の姿に戻したのだった!なんでヒョウタンにそんな物質があるのか、小さくするとなんで元の姿に戻るのかは全然説明がないのでわからない
  • しかし、過剰投与で上津戸博士は新一のポケットに入るほど小さくなってしまった。……ところで息子よりも遥かに小さな小人のような父親……このビジュアル、どこかで見覚えがあるような……?
  • そして父親を元の大きさに戻す研究を続けると誓う新一、大鳥島に流された怒雷で物語は幕を下ろす。

最後に投げられた教訓は以下のとおりである。
「科学が進歩するということは人々を必ずしも幸福にはしない。いや使い方が悪ければ恐ろしい結果になる」
……言っていることは正しいのだが、話の流れからすると微妙に釈然としない感は残る教訓である。



余談だが、『ゲゲゲの鬼太郎(第6シリーズ)』には本作が元ネタである漫画『ロケットメン』が登場している。



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  • メカゴジラの他、エイリアンや物体Xも先取りしてる感じ -- 名無しさん (2022-04-03 09:47:08)
  • 第2の月自体は無害だったわけね -- 名無しさん (2022-04-03 10:35:17)
  • ざっとあらすじを読んだだけなのにいろいろと意味が…というか謎が多すぎる -- 名無しさん (2022-04-03 14:47:55)
  • 『原子人間(1955年)』と大海獣とジャミラの間にあるミッシングリンクと言えるだろうか -- 名無しさん (2022-04-03 18:02:29)
  • ↑2ぶっちゃけ水木しげるの短編ってこう勢いで誤魔化してるの結構あるし。タイトルのやつが全然出てこないも鬼太郎でもあるし -- 名無しさん (2022-04-03 22:43:05)

#comment(striction)

*1 ただし、これ以前に『赤電話』という作品にも関わっているので、そちらをデビュー作と見る向きもある。

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コメント

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