登録日:2019/04/02 Tue 02:04:30
更新日:2024/04/04 Thu 11:37:13NEW!
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アニヲタ神様シリーズ アニヲタ悪魔シリーズ インド神話 仏教 道教 シヴァ アグニ 次男 軍神 孔雀 韋駄天 昴 俊足 御馳走 スカンダ カルティケーヤ
■スカンダ
『スカンダ(Skanda)』はインド神話に登場してくるアシュラマンの2倍の6つの頭と12本の腕というインパクトのある美少年姿の軍神。
故に、クマーラ(Kumāra)=少年という呼び名もある。
孔雀をシンボルとすることで知られており、孔雀は彼の乗り物(ヴァーハナ)でもあるという。
他の有名な異名にカルティケーヤ(Kārttikeya)があり、これは昴星団の系譜(子)を指す。
この神性を指す名称としては上記の三つの何れかが用いられることが多いが、スカンダとカルティケーヤに関しては後述の様に別々の出自を語られてしまっている上に更に別の出自に関わる神話まである。
他に特に知られた異名は、ムルガン(美少年)、シャンムガ(六つの頭)等。
現在では大神シヴァのファミリーの次男として扱われる有力な神格であるが、これについては後述の様に様々な経緯があり、養子であったり実子であったりする。
長男のガネーシャとは血縁関係が無い場合が多いのだが、共に父神の軍勢を受け持つ優秀な指揮官であるとされる。
仏教では、俊足の神として名高い韋駄天として知られ、実際の地位以上の高名を獲得しているが、実は韋駄天=スカンダが俊足設定なのは東洋のみである。
以下に、それぞれの出自に関わる神話。
【スカンダ】
大叙事詩『マハーバーラタ』によれは、火神アグニの子である。
昔、火神に想いを寄せるスヴァーハー*1という娘が居た。
彼女は、火神が聖仙の七人の美しい妻達に懸想していながら自制していたのを知り、火神と自らとの想いを叶える為に貞淑で知られる一人を除く、七人の妻の内の六人に化けて順に火神と交わり、火神の精を含んだ愛液をアシュベーダ山の黄金の穴に六度に渡って注ぎ、更に母なるガンジス川の水を同じく注いだ(産湯か?)。
すると、そこから六面十二臂の少年神スカンダが誕生したのである。
火神の六回分の精を受けて誕生したスカンダは生後四日にして非常に強大な気を放ち、何事かと様子を見に来た神々の王にして神軍の最高指揮官であるインドラと争いが起こった。
しかし、スカンダは尋常では無い程に強く、何とインドラばかりかインドラが援軍として呼び寄せた神軍をも打ち破ってしまった。
余りのスカンダの強さに感服したインドラは神軍の最高指揮官の任をスカンダに譲ったという。
…この様に、本来はスカンダはアグニの子であったのだが、余りに強大なスカンダの信仰を取り入れたかったシヴァ派が、後にスカンダ信仰を自分達の派閥に取り入れることになった。
この場合、アグニとスヴァーハーが交わった時にそれぞれにシヴァとパールヴァティーが宿っていたと解釈される。
中々に強引だが、メタ的な意味で言うとヴェーダ=バラモン時代は単独の神性としても信仰されていたアグニは、ヒンドゥーに至る頃には単なる神々に供犠を捧げる為の炎という認識の方が定着していた為に、神性としてのアグニの属性毎に、より強い信仰を持つシヴァの神話に組み入れ、序でにスカンダを有力な神格としての姿のままで地位を残せた、とも取れる。
シヴァとパールヴァティーの子とされてからは、上記の強引に実子とした神話があんまりだと思われたのか、養子扱いの神話もある。
…一方、養子の場合だと元は六つ子であったスカンダだったが、母性溢れるパールヴァティーは六つ子を見た時から母親モード全開となり、妊娠してもいないのに母乳が溢れ出した。
そして、六つ子を抱き締めた所、余りに愛しくて力が入りすぎてしまい、六つ子が合体して一人のスカンダになった…という微笑ましい神話も作られている。…いいね?虐待じゃボケェ
【カルティケーヤ】
カルティケーヤとはクリッティカー(krttika)に結び付くものの意であり、前述の様にクリッティカーとは昴星団を指す。
この場合のカルティケーヤは、大神シヴァと、正妻のパールヴァティーの妹であるガンジス川の化身のガンガー女神*2の息子であるとされており、多くの妃が存在するものの、凡てパールヴァティーの化身(変身や異名)として扱われるシヴァにとっては唯一の不倫と云える。同じ下半身自慢でも何処ぞの最高神とはエラい違いである。
ただし、出自はともかくとして結局はパールヴァティーの息子として扱われているため、この場合のガンガーもパールヴァティーの化身として扱われているか養子縁組扱いだと思われる。
上記のスカンダの誕生譚に於いても、ガンジス川の水が重要な役割を果たしているので姉夫婦と敵対する部分も無いのだが。
ともあれ、こうして誕生したカルティケーヤは昴星団の化身である六人のクリッティカー女神を乳母として育ち、同時に六人から乳を貰っていたので遂には六面になったという説明がされている。
この、クリッティカーはスカンダの神話に於ける聖仙の七人の妻達の名前ともされている為、カルティケーヤはスカンダの異名としても成立するのである。
また、カルティケーヤはクリッティカーの義子であることから星の支配者としての属性も持ち、ゲラハ(惑星)の主という位階を授かっているという。
孔雀はスカンダ(カルティケーヤ)のシンボルであると共に乗り物(ヴァーハナ)でもあるが、その固有名詞はパラヴァニであり、これは年月を顕す。
そして、天空を孔雀に乗って駆けるカルティケーヤの姿が十二ヶ月の星の運行に喩えられたのである。
スカンダ(カルティケーヤ)は、後述のアスラターラカ討伐の神話にも絡めて語られているが、ターラカとは“星”を指す名であるという。
この他としては、カルティケーヤは女性蔑視的な視点に根付いた女人禁制の信仰を持つとされている。
カルティケーヤは元来、疫病を運ぶ役割を持ち、産褥熱や小児への疾病の元凶であるともされていたらしく、これが女人禁制の理由ともなったようである。
一方、スカンダは二人もの妻を持っているともされており、片方は因縁あるインドラの娘のデーヴァーセナー。
片方は人間から神の妻となったヴァリである。
尚、デーヴァーセナー(神々の軍勢)とは、前述の神話でスカンダがインドラより譲り受けた神軍のことを指すため、何らかの混同や比喩を含む名なのかもしれない。
【ターラカジット】
スカンダは強大な魔神ターラカの神話にも絡めて伝えられる。
“星”の名を持つ女アスラのターラカは例の如く苦行に励んでブラフマーからチートコードを受け取った。
そのコード内容とは、シヴァの子以外には負けないというもの。
何しろ、当時のシヴァは妻のサティーを喪ったばかりで落ち込んでいた頃で、新しいパートナーを探す気も見せずに苦行に明け暮れていたからである。
転生したサティーはパールヴァティーとなり、今回もシヴァを慕ったのだが、苦行三昧となったシヴァは存在に気づくことすらなかった。
そこで、苦慮した神々は元凶ブラフマーに解決法を仰ぎ、手にした矢で射いたものに愛欲を起こさせる力を持つカーマ神を派遣した。
途中、カーマとお付きが地上に降りてきた影響でそこら中の人々がズコバコしまくるというトラブルはあったものの、修行場に到着したカーマは矢を瞑想中のシヴァを射た。
これによって、瞑想から覚ますことに成功はしたものの、目覚めたシヴァは怒りのままに第三の目から放つ光によってカーマを灼き尽くしてしまったという。
しかし、この尊い犠牲によりパールヴァティーに気付いたシヴァは、早速パールヴァティーと床に入り、これによってスカンダが誕生。
スカンダはターラカの支配を打ち破ったという。
この神話は『クマーラ・サンバヴァ』に語られており、ターラカを倒したスカンダは「ターラカジット(ターラカを降した者)」の名を受けたと云う。
この様に、この神話ではシヴァ夫婦の実子となっておりややこしい。
ターラカが“星”を意味することから、天の理の正常化を示した神話であるとも分析される。
【韋駄天】
仏教では四天王配下の三十二将の首位に置かれており、その内の増長天配下の八将の一つに数えられる。
インドと同じく大自在天(シヴァ)の子である。
梵名は前述の様にスカンダであり、塞建陀や建陀天、等と訳されていたものが違陀天と誤植され、音の共通から道教の韋将軍*3信仰と習合したことにより韋駄天と定着した。
中国でも人気が高く、伽藍の守護者として布袋尊と並べられていたという。
韋将軍との習合から、剣を携えた若い甲冑姿の武将の姿で描かれており、俊足の神としての韋駄天のイメージは此方の姿である。
インド神話では、既に紹介したように武力に関する神話はあるものの、特に俊足であるとするような説明はされていない*4のだが、風の様に走る捷疾鬼が仏舎利を盗んだ時に追いかけて捕まえた、とする説話から、それに負けない位に足が速いという設定が半ば公式化していったらしい。
この説話が生まれた元になったのは『涅槃経』にて帝釈天(インドラ)が仏の荼毘所によって二牙(歯)を得るが、二捷疾羅刹により片方を奪われた、とする話からで、これを韋駄天が取り戻した、ということらしい。
仏(釈尊)の弟子になった後に、仏の為に方々を回って食べ物を集めた、とまで語られるようになり、御馳走とは、この俗信から広がった言葉であるらしい。*5
また、カルティケーヤの項にある様にインドでは元来は小児に病魔を運ぶとされていたものが、反対に小児から病魔を避ける神となっており、病気避けの信仰も受ける。
【鳩摩羅天】
仏教では鳩摩羅天としても名前が伝わる。
此方は本来のインド神話に近く、六面で孔雀に乗った姿で描かれている。
東洋では中国で付けられた韋駄天のイメージの方が広まった為か“韋駄天の別名である”という以上の認識が広がらず、姿が曼陀羅内に描かれる程度で止まってしまっている。
【種字・真言】
■ク
■オン イダテイタ モコテイタ ソワカ
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▷ コメント欄
- 某ペルソナ漫画でグリーミーズの成れの果てとか言われてたな。 -- 名無しさん (2019-04-05 16:35:19)
- ロード・オブ・ザ・リング1作目では「馳夫(Strider)」が韋駄天と略されてたな。DVDで修正されたけど。 -- 名無しさん (2019-04-05 21:49:00)
- 名前の由来だかモチーフだかがアレクサンドロス大王って説もあるんだっけか -- 名無しさん (2019-04-05 22:03:23)
- ↑イスカンダル(アレクサンドロス)に由来すると発表した学者がいたが、サンスクリット語の方が古い言葉なんで「無いわー」と判断されとるらしい。 -- 名無しさん (2019-04-05 22:07:52)
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*2 ガンガー女神は天上よりガンジス川を降下させる際に受け止め手であるシヴァを嘗めきっていた神話で知られる。…その後でお仕置きレ◯プでも食らったのかもしれない。
*3 アニヲタ的には『封神演義』の「韋護」と言えばなじみ深いだろうか
*4 因縁あるインドラと競争する神話なんかはあるが。
*5 昔はもてなしの為には方々を巡って食材を集める必要があった為。
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