登録日:2017/02/04 Sat 20:45:01
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概要
バンイップは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州やクイーンズランド州の河川に棲息しているとされるUMAで、
「バニップ」「バンニップ」と呼ばれることもある。
全長は1~5m、目撃報告から水陸両方で活動することができ、性格は凶暴で肉食性と考えられている。
バンイップが未確認生物として知られるのは1800年代と比較的最近だが、
原住民のアボリジニの間では災厄や病気をもたらす不吉な存在として忌み嫌われてきた。
一方で野生動物にとっては慈悲深い保護者としての側面を持つと言い伝える地域も存在する。
欧米人による最初のバンイップの遭遇記録は1801年6月。
時の皇帝ナポレオン・ボナパルトの命令により、オーストラリアの動植物や原住民のアボリジニを観察するために調査隊が現地へと派遣されていた。
この遠征に同行した鉱物学者のジョセフ・チャールズ・ベイリーが、
「西オーストラリア州のスワン川を訪れた際に奇妙な動物のうなり声を聞いた。」と報告したのだ。
それからアボリジニとの交流が深まるにつれ、バンイップを目撃した、中には襲われてケガをしたという報告まで集まった。
多くの姿を持つ伝説の魔物
バンイップの姿かたちは目撃者によって特徴に統一性が無いことでよく知られており、
毛に覆われていた、皮膚がヌメヌメしていた、首が長かった、鋭い爪があった、手足がヒレ状だったなど、その特徴は極めて多岐にわたる。
目撃証言を大まかに分けると2つのタイプ。
一つ目はブルドッグのような頭部とヒレ状の前足を持ち、全長は1m~3m。タテガミのようなものがあったという目撃証言もある。
二つ目は全長4~5mと巨大で、牛のような胴体に四つの足を持ち、首はダチョウやエミューのように長い。
どちらのタイプも頭部は犬によく似ているとされている。
ただし、一つ目のタイプはブルドッグのように鼻先が短く、二つ目のタイプは鳥のように鼻先が長く尖っているという。
作家のロバート・ホールデンが2001年に記した著書『Bunyips』によれば、
バンイップの姿は地域によって少なくとも9つのバリエーションが存在するという。
川面から奇声を発する謎の怪物
バンイップの目撃が特に多発したのは1800~1900年代前半だが、近年になっても目撃談は衰えることなく続いている。
中でもニューサウスウェールズ州ワーレンに住むセシリア・ロー夫人の体験談は非常に精緻なものだった。
1977年8月のある夜、夫人がマクガイヤ川の畔でくつろいでいると、どこからともなく生臭い匂いが漂ってきた。
匂いはどうやら川岸の方から漂ってくるようである。
視線を向けたところ、そこにはブルドッグのような顔とアザラシのようなヒレを持った謎の生物がいた。
身長は目測でおよそ2m、全身が黒い毛におおわれ、目がギラギラと輝いていた。
ロー夫人の気配に気づいたのか、怪物は川に飛び込んだ。
そして水面から顔を出し、立ちすくむ彼女に威嚇するかのように
「キーッ!キーッ!」とイルカに似た鳴き声を上げながら泳ぎ去っていったという。
家に逃げ帰った彼女の通報でワーレン警察署からパトカーが現場に赴いた。
二人の警官が付近を調べたところ、川岸から川に向かって続く奇妙な足跡が見つかったのだ。
翌日の晩、ワーレン署には謎の生物を見たという通報が相次いだ。
通報したのはロー夫人同様、マクガイヤ川の近辺に住む人々である。
目撃現場周辺の草むらで、何者かに引き裂かれた子羊の死体が発見され、周囲は騒然となったという。
この騒ぎの中、アボリジニの古老が、謎の怪物はバンイップと呼ばれる生物に違いないと告げた。
バンイップは普段は川底や湖底の洞窟に隠れ潜んでいるが、
ひとたび水面に姿を現すとボートを転覆させ、鋭い爪と牙で人間を襲う凶暴な性格を表すのだという。
日本におけるバンイップ
日本国内では比較的マイナーなUMAであるはずのバンイップだが、特撮番組「ウルトラマンネクサス」の劇中では「怪物バンニップ」と呼ばれ、
若者の間では知らぬものはいないと言われるほどメジャーなUMAとされている。
本作におけるバンニップは日本国内に生息しているうえ、「人間を頭からつま先まで食いつくしてしまう」ほど凶暴とされており、
大規模な事故や失踪として報道される事件の多くにはバンニップが関与していると言われる。
さらにバンニップは「一つ目の鳥」を連れており、バンニップが人を食うところを見たものは鳥の超能力によって記憶を消されるという……
実際のところ、劇中の日本ではスペースビーストと呼ばれる怪物が猛威を振るっており、
機密保持とビーストの大量発生を抑止する為の組織、メモリー・ポリスが被害者の記憶を消去していた。
一連の都市伝説はビーストの存在を明かそうとする何者かが、意図的にウソの情報を混ぜて流布したものと推測される。
その為、劇中でバンニップとウルトラマンが戦うようなことはなかった。
主な目撃と遭遇の歴史
- 1818年4月
ニューサウスウェールズ州の北東部で探検家のジェームズ・ミーハンとハミルトン・ヒュームが未開の湖を発見、
更にその翌日に湖畔で未知の動物の頭蓋骨と骨片を発見した。
ヒューム達が発見した湖は「バサースト湖」と名付けられ、現在のバサースト郡の由来となった。
- 1821年11月
バサースト湖にキャンプに訪れていたエドワード・S・ホールがバンイップを目撃。
体長1.5m、真っ黒な毛に全身を覆われ、頭はブルドッグそっくりで、ヒレを使って湖を泳いでいたという。
- 1845年7月
ビクトリア州ジーロングの地方新聞ジーロング・アドバタイザー紙が、バンイップの詳細な特徴を掲載する。
「バンイップ」という名前が公に使用されたのもこれが始まりとされている。
内容を要約すると以下のようになる。
バンイップの姿を説明するときは、多くの場合鳥とワニの特徴を結び付けて表現される。
頭はエミューによく似ていて、クチバシは長く先端が幅広い。
後ろ足は短いが非常に力強く、後ろ足に比べると遥かに長い前足も強い力を持っている。
原住民たちは、バンイップは獲物をその強力な手足で締め付けて殺すと信じている。
水中をカエルのように泳ぐことができ、岸辺に上がった時は首を高くもたげて後ろ足だけで歩く。その時の背の高さは3m~4mに達する。
- 1872年4月
早朝、メルボルンから羊の群れを連れて移動していた人々が、沼の畔でキャンプをしている最中にバンイップと遭遇。
体長は1.2m、漆黒の長い毛に覆われ、犬そっくりの頭部と尖った耳が印象的だったという。
- 1873年
クイーンズランド州ドルビーの小川にカモ猟に来ていたアルダーマン・イーストーフが、
アザラシに似た頭部と大小2つのヒレが付いた尻尾を持つ謎の生物を目撃。
- 1880年代
南オーストラリア州クーパーズクリークの湖で、飼い犬がバンイップに襲われるという事件が発生。
飼い主によれば、湖で泳いでいた二匹の犬のうち一匹が、突如水中に引きずり込まれ、水面下で何者かと戦い始めたという。
そのうち付近の水面が血で赤く染まり始めたため、咄嗟に犬を引っ張り上げた。
この時、赤茶色の滑らかな皮膚をした身体の一部が泳ぎ去っていくのがハッキリ見えたという。
犬は首と肩の後ろを爪のようなもので切り裂かれていたがなんとか一命と取り留めた。
約40年後の1929年9月19日、州新聞の『レジスターニュースピクショナリー』紙がこの一件を掲載した。
- 1907年1月19日
クイーンズランド州ブリスベンの新聞『ワーカー』紙が、
ニューサウスウェールズ州タマットの沼地で目撃されたバンイップの詳細を掲載した。
内容を要約すると以下のようになる。
その奇妙な生き物はアザラシのような鳴き声を上げ、頭部は水陸両用で活動できる生物の特徴を持つ。
尻尾はカンガルーのように根元が太く、先端に行くにしたがって段々細くなっていく。
泳ぎが得意で、水面から顔だけを出して高速で泳ぐことができる。
鼻先から尻尾の先までの長さはおよそ1.2mで、身体は黒い。
耳を持っているようには見えず、あったとしても非常に小さいものだろう。
- 1927年1月
ニューサウスウェールズ州ロバーストンの沼地で、二人のハンターが明るい灰色の体表を持った生物を目撃。
2歳のオスの牛ほどの体格があり、ヒレのような前足を使い泳ぎ去っていったという。
- 1935年2月11日
ホバート・マーキュリーがきめ細かな柔毛にぶち模様が入った謎の生物を目撃。
身体はコッカースパニエル*1ほどの大きさしかなかったが、
顔つきは犬よりも遥かに獰猛で、下顎から二本の大きな牙が突き出ていた。
犬やアザラシ、ハイエナやタスマニアデビルの誤認ではないという。
- 1949年9月8日
L.キーガンと妻が、ビクトリア州のローリストン貯水池で、
毛むくじゃらの耳を持った1.2mほどの生物を目撃。
その生物は手足や尻尾ではなく、耳を使って泳いでいたという。
- 1965年
クイーンズランド州ギルストン郊外にあるネラン川で、謎の生き物の吠え声が響き渡った。
翌日、川の堤防で泥が飛び散った跡が残されていた。
正体の考察について
バンイップの正体を明らかにするのは未確認生物全体で見てもかなり難しい部類に入る。
上記で述べたように身体の特徴や大きさが目撃者によってバラバラであり、
既存の生き物を見間違えたのか、絶滅した動物の生き残りなのか、新種の生物なのかもはっきりしない。
知名度の高さと目撃証言の多さに反して、その姿を捉えた写真・映像が現在に至るまで皆無という点もそれに拍車をかけている。
アボリジニのスケッチや壁画ですら当てにならないことが多い。
例えば、ビクトリア州西部に住むアボリジニ、カーラク氏によって描かれた怪物は、長い首と二足を持つ動物である。
しかし、「バンイップは四足の動物であるはずだ」と異を唱える人は多い。
だが、その人たちが根拠として示すスケッチもまた、1848年に描かれたスケッチなのだ。
描いたのはビクトリア州マレイ川周辺に住むアボリジニ、J.P.メイン氏。
著名な研究家でさえも正体の解明に頭を悩ませるこの未確認生物だが、彼らを更に悩ませる事態が起こっていた。
それがバンイップの頭蓋骨こと「バンイップスカル」である。
バンイップスカルは本物か
1847年2月17日の『シドニー・モーニング・ヘラルド』紙は、
ニューサウスウェールズ州モラムビジー川の岸辺で謎の頭蓋骨が発見された、と報じている。
メルボルンに運ばれた件の頭骨は自然科学者のW.S.マクレイ博士により鑑定された。
博士は当初、これは哺乳類ではなく、大型の鳥のものである可能性を示唆した。
だが、後に数名の動物学者で再度鑑定した結果、これはラクダの未成熟個体ではないかという見方が強まり、
最終的には子牛のものであるという結論に至ったのである。やがて、頭骨はシドニーのオーストラリア博物館に展示された。
しかし、より詳細な分析を待たずして、バンイップスカルは博物館から消えてしまったのである。
大型の鳥、ラクダ、子牛と二転三転し、判然としなかった謎の頭蓋骨の正体はもしかしたら本当にバンイップだったのかもしれない。
ちなみに、鑑定を受けた頭骨を上下左右から描いたスケッチも存在するが、
それを見る限りでは上顎がかなり長く、後頭部がこぶのように盛り上がっている。
目の穴がかなり低い位置にあり、そのすぐ下には鋭い大きな歯が並んでいる。
かなり異様な形をしているが、少なくともギザギザに並んだ歯という点から鳥類ではないのはほぼ明らかである。
バンイップスカルといえば同じく1800年代に川岸で発見された謎の頭蓋骨がある。
こちらは目が顔の中心に一つしかなく、下顎が異常に長い。歯の形状は草食動物に近く、あまり鋭くない。
発見されたのは頭だけで、胴体や手足、尻尾は無かったという。
この骨も研究者達から鑑定を受け、継ぎ目が極めて自然であることから作り物説はほぼ否定されたが、
現在では単眼症を患って死んだ馬という説が最有力とされている。
元々、目が一つしかないという時点で既存の生物の奇形という説が有力視されていたのだが、
2014年に動画サイトにアップされた単眼症の馬の動画が、謎の頭蓋骨に余りにも酷似しているのである。
更に長細い顔の形や草食に適した歯などから、頭蓋骨の主はつまるところ馬の奇形でほぼ間違いないとされている。
その他、バンイップの正体を推測する説としては、
川を泳ぐ犬の誤認、海から河川流域に迷い込んだアザラシといった現実味のある説から、
新種の海棲哺乳類、絶滅した古代生物というロマンのある説まで数多い。
古代のオーストラリアには、ディプロトドンやティラコレオといった
現在のカンガルーやコアラのご先祖様ともいえる化石有袋類が数多く生息していたため、
彼らがそのまま生き残った・もしくは時代の経過と共に半水生に進化し、バンイップとなったと推測する学者もいる。
謎に満ちたバンイップの形態が明らかになる日は果たしてくるのであろうか?
追記・修正はバンイップの写真を撮った人がお願いします。
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▷ コメント欄
- 1枚目の画像がちょっとグロテスクで、wikiのルールに抵触するかもしれませんので、ご意見お願いします。 -- 作成者 (2017-02-04 20:55:56)
- 我が子を食らうサトゥルヌスよりはマシだからいいと思いますがね -- 名無しさん (2017-02-04 21:26:20)
- ここまで謎に包まれていると目撃証言のあった河川の近くで正体を見破ろうと居座り続ける学者が一人くらい現れそうなものだけどいないのね。やっぱお金の問題? -- 名無しさん (2017-02-04 23:29:08)
- いたけど喰われたのかもしれない -- 名無しさん (2017-02-06 03:00:20)
- 壁画スケッチは何度見ても思わず笑う -- 名無しさん (2017-02-06 14:48:18)
- シドニーのブルー・マウンテンにはこんな伝説がある。かつてブルー・マウンテンには祈祷師と美しい娘の三人が暮らしていた。ある時祈祷師親子はバンイップに襲われ、祈祷師は娘たちを食べられないように岩に変え、自身は鳥に変身してバンイップから逃れた。しかし祈祷師はどういうわけか鳥から人に戻ることができず、三人の娘たちは今でもブルー・マウンテンに岩の姿のままでいる -- 名無しさん (2017-02-11 20:46:19)
- 巨大動物図鑑ではヒョウアザラシ説を推してたね -- 名無しさん (2019-10-02 00:50:30)
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