フィアナ騎士団(ケルト神話)

ページ名:フィアナ騎士団_ケルト神話_

登録日:2014/09/14 (日曜日) 20:38:00
更新日:2023/12/21 Thu 10:54:40NEW!
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公務員 ケルト神話 騎士団 フィニアンサイクル 騎士 英雄 アイルランド 神話 狩人 フィアナ騎士団 職業軍人






全ての者の心に真実があり、腕に勇猛があり、口にしたことは必ず実行した。







ケルト神話において、フィニアンサイクルに登場する戦闘集団。
フィアナとは戦士や狩人を意味するフィアンの複数形である。
英雄の元に勇者達が集う様は、後のシャルルマーニュ十二勇士やアーサー王率いる円卓の騎士の原型になったとされている。
媒体によってフィオナ騎士団、フィアンナ騎士団、フェーナ騎士団などと呼ばれる。





概要

フィニアンサイクルの約三百年前に当たるアルスターサイクルで活躍した赤枝の騎士団が、アルスターの王コンホヴォル・マク・ネッサ直属の
部隊であったのに対し、フィアナ騎士団は王家の権力に縛られない独立部隊である。


エリン(アイルランドの古い呼称)にはアルスター、マンスター、レンスター、コナハト、ミースの五つの小王国が存在し、
それぞれの国に一つづつフィアナ騎士団が配置されていた。
それぞれの国のフィアナ騎士団には隊長が居たが、全てを統括するのは騎士団長の役目であり、フィアナ騎士達が真に忠誠を誓うのは所属する
国の王でも自分の隊の隊長でもなく、騎士団長とミースにあるターラの王宮で運命の石に右足を置いて玉座に座るエリンの上王に忠義を尽くす。


フィアナ騎士団の設立は1世紀頃だと言われているが、騎士団が最盛期を迎えたのは「百人力のコン」の孫コルマク・マッカートがエリンの上王で、
フィン・マックールが騎士団長を務めた3世紀頃である。
その規模は指揮官150人、兵士4000人を抱えるまで成長し、優れた戦闘能力と土地に縛られない高い機動力を持つフィアナ騎士団は
当時のエリン最高峰の騎士団となった。


フィアナ騎士団内にはフィン・マックール等が属するバスクナ一族とゴル・マックモーナ等が属するモーナ一族という二つの派閥が存在する。
この二つの一族は所謂宿敵同士であり、フィンの父親の代から騎士団長の座を巡って争い合っていたが、フィンが騎士団長になったことで両者は
一旦の和睦を結ぶ。
しかし、物語の終盤この二つの勢力は再び敵対することになる。


そして、どんな英雄譚にも繁栄の物語と破滅の物語があり、このフィアナ騎士団も例外ではない。
コルマク上王の死後、息子のケアブリが王位を継ぎ上王となったが、新たな上王はフィアナ騎士団の強大な力を恐れた。
このケアブリの手により内部分裂が起こり、フィアナ騎士団はフィン派と上王派に二分した。
分裂した二つの軍は最後の戦場ガヴラの地において衝突し、その輝かしい歴史に幕を閉じた。





生活と任務

フィアナ騎士団は特定の住居に長居せず、常にエリン中を旅しながら狩猟生活を送る放浪騎士達である。


彼等は平時、冬の間はそれぞれの家族や族長の館で客人として過ごし、夏の間は訓練の為に集まってきて野外で共同生活を行う。


無論、食料は自分達で調達する為、フィアナ騎士団は戦士としては勿論、狩人としても名高かった。
彼等は時に徒歩で、時には馬に乗って仔牛程の大きさのある猟犬を連れて狩りをする。
しかし、フィアナ騎士達の足は猟犬より速く、一日でエリンの南西端から東海岸まで獲物を追い掛けられたと言われている。


その為、エリン中を駆け巡った証として現在のアイルランドの各地には彼等の生活の名残である「フィアナの炉辺」が残されているという。
また騎士団にとってはエリン中が自分達の領土であり、王を通さず独自に徴税を行っていた。
が、これが後に上王との敵対理由の原因の一つになる。


そんな彼等の主な任務は豊富な緑を持つエリンを外敵から防衛することと、エリン内で起こる諍いを解決することである。
アルスターサイクルの時代と違い国同士の大きな戦争はあまりない為、主に海を越えてやってくる海賊を相手にしたり、
魔法や妖精絡みの事件と関わることが多かった。
なので、フィアナ騎士団は敵を討伐する為の部隊と言うよりも、防衛部隊や治安部隊としての側面が強かったと言えるだろう。





入団試験

フィアナ騎士団は世襲制ではなく、入団する資格は誰にでもあったが、フィアナ騎士になるには以下のような厳しい試験を合格する必要があった。



1.
下半身を地面に埋めてハシバミの枝と盾を持ち、四方八方から攻撃を仕掛ける九人の騎士達を相手に身を守らなければならない。
騎士達の槍が少しでも皮膚を掠めれば不合格。


2.
全裸で髪を二十本の三つ編みに編まれ、森の中を武装した騎士達に一本分の木の長さの距離から駆り立てられる。
怪我をするか捕縛された場合、三つ編みが一束でもほつれた場合、走っている最中に小枝を踏み折って音を立てた場合、
試験が終わって槍を握る手が震えた場合は不合格となる。


3.
自分の背と同じ高さの枝を飛び越え、膝と同じ高さの枝を潜り抜け(または膝と同じ高さに身を屈めて坂を駆け抜ける)、
足裏に刺さった茨の棘を走る速度を落とさず抜かなければならない。


4.
詩篇十二冊とエリンに伝わる古来の物語を二十以上暗記しなければならない。



試験を合格した者には、次の様な誓いを立てさせる。

  • 妻を得るときは持参金を受け取らないこと。
  • 不正に対する報復以外では、他人の牛を略奪しないこと。
  • 助けを乞われたら、誰であろうと拒まないこと。
  • どれだけ劣勢になっても、仲間が九人居る内は退却しないこと。
  • エリンの上王と騎士団長に忠誠を誓うこと。


これらを全うして、初めてフィアナ騎士になれるのである。





主な団員

フィニアンサイクルの主人公にしてフィアナ騎士団を統括する団長。
父親は先々代の騎士団長クール・マックトレンモー、母親は銀の腕のヌァザの孫娘マーナ。
本名はディムナ。フィンとは彼が持つ美しい金髪と白い肌からつけられた愛称である。
性格は極めて寛大で父親の仇を許して仲間にしたり、我が子と赤の他人を裁く時も平等に接したりするなど公平的。
また物惜しみしない性格でもあり、金銀だろうと頼まれれば全て他人に与えてしまう程。
その一方、彼には対極とも言える暗い一面があり、恨みを溜め込んで相手を死ぬまで憎み続けることもあった。
特に妻を呪いで鹿に変えられた挙句に行方不明になった後はさらにその面が強くなっている。
その手には知恵の鮭フィンタンによる知恵の力と癒しの力があり、右手の親指を舐めることで前者、
両手で水をすくうことで後者の力を発揮させた。
晩年の最後の戦では、ケアブリの軍勢を相手に往年の輝かしい英雄たる人格と活躍を見せたが、奮戦の末彼もまた戦死を遂げた。



  • ゴル・マックモーナ

副団長的立場で、老練な隻眼の戦士。
フィンの一代前の団長であり、その地位はフィンの父クールを倒して団長の証である鶴革の袋を奪い取って手に入れた。
父の仇である自分を許したフィンを団長として認めて忠誠を誓い、以降はフィンの腹心として活躍する。
因みにゴルとは独眼を意味し、本名はエイ(アエドとも)。



  • コナン・マウル

モーナ一族の腕っ節より相手を貶すことを得意とする戦士。
皮肉屋で窮地に陥っているにも関わらず食べ物をせがむなど、決して人に好かれるような人柄ではないが、
心中にはしっかりとした常識が備わっており、時に的確な助言をするコナンをフィンは自分の近くに置いていたという。
外見は禿頭(マウルは禿頭の意味)で太っており、背中には食い意地が災いして張り付いた黒い羊の毛がある。



  • コナン・マックリヤ

フィアナ騎士団もう一人のコナン。
フィンに父親を殺された為、フィンを付け狙い彼を持ち前の剛腕で拘束するが、後にフィンに忠誠を誓いフィアナ騎士団の一員となる。
上記のコナンと同じ名前の為か、しばしば特徴を上記の彼に統合されてしまう不遇な人物。



  • キールタ・マックローナン

フィアナ騎士団一の俊足で知られる戦士。
フィンの甥であり、フィアナ騎士達が何年も追い掛けながら仕留められなかった猪を仕留めた功績を持つ。
また音楽の才能もあって、仲間達が食後には必ず耳を傾けたくなる程の竪琴の腕前を誇った。



  • リガン・ルミナ

キールタに負けず劣らず足の速い跳躍に優れた戦士。
高跳びのリガンとも呼ばれ、西風を凌ぐ程の跳躍力を持つ彼は心が風の様に軽い時はターラの丘の端から端まで一飛びで跳躍出来たという。



  • ファーガス・フィンヴェル

フィンの頼れる相談役の中で最も知恵深い者の一人。
詩人でもある。



  • ディアリン・マクドバ

千里眼の持ち主で、目を閉じて頭の中の暗闇を覗けば、遠くの出来事や未来のことを知ることが出来た。



  • ギィナ・マックルガ

フィンの親戚にあたる騎士だが怠け者。
後にフィンの訓戒で改心する。



  • オシーン

フィンとその妻サーバとの間に生まれた妖精族の血を色濃く持つ人物。
その出自から彼の名前は「子鹿」を意味する。
父親譲りの金髪と優れた武勇を持っていたが、彼にはそれ以上に天性とも言える詩と音楽の才能があることで有名だった。
物語の終盤、彼は運命の人二ーヴと出会い常若の国ティル・ナ・ノーグへと旅立つ。
そしてケルト版浦島太郎のような最後を迎えた後、自分達の活躍を言い伝え、伝説の語り部になったとも息絶えたとも言われている。



  • オスカ

オシーンの息子にしてフィンの孫でもある若く勇猛な戦士。
父親に倣い、その名は「鹿を愛でるもの」を意味する。
「鋼で覆われた曲がった角」の異名を持ち、指揮官としても有能で彼の率いる部隊は敵を一掃することから「恐るべき箒」と呼ばれ
敵から恐れられていた。
ディルムッドの一番の親友であり、作中ではフィンと仲違いしてまでも彼の味方をしている。
騎士団が分裂した後もフィンについてはいたが、ディルムッドを見殺しにした祖父をオスカは決して許さず、
祖父と孫の亀裂は解消しないままオスカは上王ケアブリと相討ちになって息絶えた。



フィアナ騎士団最強の戦士にして、悲劇の戦士。
単純な戦闘能力は勿論、槍の投擲の腕前は仲間から「外れたことがない」と言わしめる程。跳躍や軽業にも長けている。
彼の最大の特徴はその美しい容姿で、一目見て恋に落ちなかった女性はいなかったと言われている。
しかし、悲運の騎士としても有名で、彼の持つ魔法の黒子は自分自身を災厄へと導くこととなる。



  • フォトラ

ディルムッドと共に浅瀬を守った若い戦士。
疲れて警護中に居眠りをするなど未熟な面もあるが、戦いにおいて三人の王と戦うディルムッドに他の敵を近付けさせない活躍を見せ、
見事浅瀬を守りきる。



  • フィクナ

フィンの後妻の息子。
罠に掛かったフィンを守る為、浅瀬で裏切り者のミダクの兵達を返り討ちにしてミダクと戦うも、ミダクの死に際の一撃で若い命を散らす。



  • インサ

フィクナの乳兄弟。
フィクナ同様フィンを守る為、敵の族長と戦うも深手を負って命を落とす。
彼の仇は乳兄弟のフィクナによってとられ、遺体は埋葬された。



  • ミダク

捕虜としてフィアナ騎士団に加わった敵国の王子。
フィンの養子となり実の息子と分け隔てなく育てられたが、心の内にある恨みは消えておらず、
フィンの元から独り立ちした後はナナカマドの呪いの宿を使ってフィン達を罠にはめる。
浅瀬にてフィクナと戦うが応援に来たディルムッドの槍の投擲で致命傷を負うも、最後の力でフィクナを殺害。
その後は虫の息だったところをディルムッドに首を落とされ死亡した。



  • アーサー

ブリテン王の息子だが別に某円卓の王様とは関係ない。
戦士としては優秀だが、強欲な性格の持ち主。
フィンの愛犬ブランとスコローンを盗み出すが、救出隊の活躍によりフィンの元に連行され、以後は改心して再びフィンに忠誠を誓った。





追記・修正は入団試験を合格して忠誠を誓ってからお願いします。


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  • フィアナこそ我が命、フィアナこそ我が宿命 あぁ、まさにその名の如くに -- 名無しさん (2014-09-14 21:26:35)
  • ↑なんか格好いい(皮肉じゃないよ)、なんかの詩編かな? -- 名無しさん (2014-09-14 22:24:52)
  • ↑フィアナ騎士団とは全く関係ないボトムズ赫奕の異端最終話予告だよw -- 名無しさん (2014-09-14 22:25:30)
  • フィンが右手の親指をなめると知恵が浮かぶのはドルイド僧に弟子入りした時に知恵の鮭を捕まえて調理した時に火傷したから -- 名無しさん (2014-09-14 23:00:22)
  • Fateのせいでディルムッドだけやたら有名なイメージがある -- 名無しさん (2014-09-14 23:16:11)
  • まあ、日本じゃあまり見ないしなぁ -- 名無しさん (2014-09-14 23:19:05)
  • よくも悪くもディルムッドの存在感がでかすぎたよな --   (2014-09-14 23:26:47)
  • 追記修正が不可能すぎてワロタ -- 名無しさん (2014-09-14 23:45:55)
  • ↑×4 まぁ、アレの所為でまるで雑魚いかのような、かなり悪印象ついたがな -- 名無しさん (2014-09-14 23:47:05)
  • フィンも子供の頃は隠れている生活に我慢できなくて、おもわず友達作っちゃったり、自分の失敗を素直に師に告白したり、いかにも騎士っていう活躍してたりとちゃんとヒーローやってるのにねぇ -- 名無しさん (2014-09-14 23:50:35)
  • まあ英雄譚は基本的に栄光と悲劇がセットだしね -- 名無しさん (2014-09-15 00:56:53)
  • 過去の失敗ばかり責めてるとフィンに恨み殺されるぞ。 -- 名無しさん (2014-09-15 01:34:23)
  • 聖戦の系譜で見た名前が結構いるなぁ -- 名無しさん (2014-09-15 03:00:00)
  • なんか『魁!!男塾』の天挑五輪に出てきそうな連中だなw -- 名無しさん (2014-09-15 14:01:46)
  • Fateで知ったせいか、フィンのことをディルムッドの嫁さ -- 名無しさん (2014-09-16 11:13:48)
  • Fateで知ったせいか、フィンのことを嫌がるディルムッドの嫁さんを寝取る悪役だと誤解してたわ。知れば知るほど若い頃はちゃんとヒーローしてるんだな -- 名無しさん (2014-09-16 11:14:59)
  • ???「歳はとりたくないものだな。」 -- 名無しさん (2014-10-06 01:20:15)
  • ↑2一応その認識でも間違いではないとは思うけどね。実際ディルムッドとグラニアの逃避行の話のなかでは完全に悪役ポジションやっちゃってるから -- 名無しさん (2014-10-06 01:24:43)
  • ぶっちゃけサーバのトラウマを思い切り踏んだからなディルムッド…… -- 名無しさん (2014-10-07 10:12:54)
  • ↑あれはもう「間が悪かった」としか言いようがないな。 -- 名無しさん (2014-10-25 22:26:10)
  • 最初の口上は凄く格好良いのにな、善いか悪いかは兎も角、自分の信じる真を持ち、口先だけでは無い確かな実力を持ち、決めたからには実行し、その責任を受け入れる度量…此処だけ見れば確かに格好良いんだが… -- 名無しさん (2015-01-20 20:19:16)
  • ↑3 まぁ、正確には踏んだのはグラーニャのほうなわけだが…… -- 名無しさん (2015-01-23 22:37:42)
  • フィンは弱さがあるから魅力的なんだ。クー・ホリンがウルトラマンならフィンが仮面ライダーなヒーロー -- 名無しさん (2015-06-26 19:45:43)
  • ↑6 孫すら今際の台詞が「あんた、どのツラ下げて泣くつもりだ」だもんな、ディルムッドの親友なのもあったけど -- 名無しさん (2015-06-26 21:55:21)
  • バトスピ剣刃編の白デッキがフィアナ騎士団モチーフだったんだよな。フィンに始まってコナンやゴルも出てクーフーリンも出てディルムで終わる。 -- 名無しさん (2015-08-16 10:17:40)

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