登録日:2015/07/25 (土) 22:48:33
更新日:2024/01/16 Tue 10:58:55NEW!
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1985年にタイトー株式会社からリリースされた業務用LDゲーム。
タイトーLDゲームシリーズの第3弾及び1984年度の「忍者ハヤテ」に続くオリジナルLDゲームの第2作目。
映像制作は東映動画(現:東映アニメーション)。
概要
まずLDゲームとは何かを知らない人に説明すると、CD-ROMがメディアの主流となる以前の70年代に開発された光学式ビデオディスク規格、レーザーディスク(LD)のランダムアクセス機能*1を利用したゲームである。
全編、アニメや実写の映像を垂れ流しておき、映像の要所要所でボタン・レバーの入力を指示する。
タイミングよく入力できれば成功してそのまま映像が進み、失敗するとミスの映像に切り替わって1ミス……という、至極シンプルなもの。
現代のアクションゲームに多く見られるQTE(クイックタイムイベント)とほぼ同等のもの、といえばわかりやすいだろう。
1983年に欧米でLDゲームの先駆作「ドラゴンズレア」がヒットしたの皮切りにLDゲームブームが起き、日本国内でも様々な会社がLDゲームの制作を手がけるようになる。
80年代当時、家庭用ゲームはもちろん、アーケードゲームでも大容量のムービーをふんだんに使う事がまだまだ不可能だった時代にあって、光ディスクの大容量を活かした美麗な映像でゲームを楽しめる画期的な新ジャンルとして期待されたLDゲームであったが、実際には短期間でブームが収束、瞬く間に衰退してしまった。
基本的に映像の切り替えしか出来ない規格のため、パターン暗記が全てとなってゲーム性が低い、LDメディアの故障が著しく筐体寿命が極めて短い、映像製作のコストがかかる、安価で高品質なCD-ROMメディアの台頭……といった要因が重なったためであった。
日本に比べて独創的なゲームが好まれやすい下地のある欧米ではそれなりにジャンル人気は高く、1990年代まで新作の制作が見受けられ、往年の名作の復刻も盛んである。
一方の日本国内では欧米並みの盛り上がりを見せる事無く極めて短期間の内に廃れてしまい、過去作品の復刻の動きもほぼ皆無であるが、それなりに知名度の高いLDゲームも多く排出されており、家庭用向けの復刻もなされている。
その内のひとつが、タイトー制作の「タイムギャル」である。
ストーリー
タイムマシンによる時空間航行技術が確立された30世紀初頭。
歴史保全と時間犯罪防止のために創設された国際警察機構、歴史保安警察の施設内部に保管されていた世界唯一のタイムマシンが、30世紀最大の大悪党ルーダに強奪されてしまった。
ルーダ追跡の任に着いた歴史保安警察のエース、『タイムギャル』こと歴史保安官レイカは、時空間航行機能と時間制御機能を兼ね備えた超小型タイムスーツを身にまとい、タイムマシンを奪還すべく単身、時空の彼方へと飛び立った。
どんなゲーム?
主人公のタイムパトロール、『タイムギャル』こと歴史保安官レイカを操作し、タイムマシンを奪った悪党ルーダを追跡するSF冒険活劇もののLDゲーム。
80年代のアニメ層を意識した、美少女が主人公のOVA風の作風となっている。
画面内の操作指示に従いボタンとレバーを入力していく点は他作品と同一だが、本作独自の要素として「タイムストップイベント」が存在する。
レイカの着用している時空間航行服「タイムスーツ」には時間制御機能がついており、シーンの要所要所で危機に落ちた際にボタン入力により「タイムストップ」を発動する。
この際には映像が一時停止して画面内に全3つの選択肢が表示されるので、制限時間内に適切なものを選ばなくてはならない。
8方向入力であった先発作の「忍者ハヤテ」と違って入力方向は4方向だけだが、デバイス入力のタイミングはかなりシビア。
難易度の高さに応じて入力タイミングがより厳しくなるため、パターンを覚えていても一瞬の遅れでミスが頻発する。
上述の選択肢を選ばせるという初見殺しの要素も相まって難易度は相応に高い。
エンディングに到達するためには全16シーンをすべてクリアする必要がある。
キャラクター
レイカ(CV:山本百合子)
タイムマシン奪還任務に着いた歴史保安警察のエース。18歳のおてんば娘。
メガLD版やメガCD版の説明書によると、レイカはタイムマシン開発者の娘であり、タイトルの『タイムギャル』とは、幼少時より父の研究の被験者としてタイムトラベルを繰り返していたことからつけられた彼女のニックネームである。
更にメガLD版では、彼女が身につけているビキニタイムスーツは彼女の父がタイムマシン奪還のために病身に鞭打って作り上げたものであり、完成と同時に父が亡くなるという、鬱設定の盛り込みで有名なタイトーらしい微妙に重い設定が語られている。いい仕事をしましたねえ……。
なお、タイムトラベルおよびタイムストップの際には上スーツの中央部のタイムボール(胸留めのボタンを兼ねたスイッチ)を押すことが必要。
ルーダ
タイムマシンを奪った30世紀最大の大悪党。40歳。
上述のバックストーリーを踏まえると、レイカにとっては父の敵も言える宿敵である。
ゲーム中では脈絡なく行く先々の時代でレイカが様々なアクシデントに見舞われるが、設定上は、レイカの追跡に気づいたこいつが歴史を操って仕掛けた罠ということになっている。
レイカがミスする度に馬鹿笑いをするシーンがお約束のように挿入されるのだが、難易度の高さゆえにうざいことこの上ない。ええい、おっさんはいい! レイカを映せ、レイカを!
本作の特徴
LDゲームゆえに例外なく単調なゲーム性の本作に花を添えたのが、80年代の日本のギャグアニメを意識したコミカルなミス演出の数々である。
一部、リアクションを取る間もなくガチで死んでしまうパターンもあったりするが、基本はギャグ調で統一されており、頭身の低いデフォルメキャラクターに変化するというコミカルな演出で、通常時は主人公然とした8頭身美人に描かれているレイカの無様なやられっぷりが大きなインパクトを残した。
パターン数は非常に豊富で、同じパターンのセリフ違いを除いただけでも有に60種類近くある。
特にB.C.65,000,000 ステージ開始直後の「いやーん、エッチッ!!*2」は本作を象徴する伝説的名(迷)シーン。
スタッフ曰く『そこが本作最大の見せ場』だとかで、そこでわざとミスした御仁も多かったとかなんとか。このスケベエ!
このように、キャラクターの魅力を前面に押し出した作風が本作の大きな特徴であり、東映動画が本気を出して手がけた質の高いフルアニメーション映像(枚数なんと1万枚以上!)で演出されるギャグ表現と、レイカ役の女性声優・山本百合子のはつらつとしたアドリブ演技の相乗効果により、「先に進むよりもわざとミスして楽しむ」という、LDゲームにあるまじき珍現象を生み出した稀有な作品となった。
ミスリアクションがコミカルというLDゲームは本作に限らないが、むしろ「単調だからこそキャラとリアクションにこだわった」と言っても過言ではないほどの力の入れっぷりがうかがえるのは本作くらいだろう。
初期料金設定が200円と高かったためか、人気に反して全国規模で筐体の早期撤去が相次いでしまい、機種自体の短命性も手伝って稼動期間は非常に短かったが、このミスリアクションのおかげでインカム自体はかなり好評だったそうだ。
結果的に本作はマニア層からの熱狂的な支持を獲得するに至り、LDゲームというジャンル的にはマイナーな立ち位置の作品ながら、80年代のタイトーの代表作といっても差し支えないほどの人気作品となった。
人気の背景
80年代はまだ「萌え」「おたく」といった概念や言葉も一般的な時代ではなかったが、当時既に、そうした層がゲームセンターに集まる傾向は見られていた。
女性が主人公のゲームが多く作られるようになり、その手のゲームに多くのファンが突き始めたのもこの頃からだった。
特に、80年代に制作されるようになったゲーム作品は、日本テレネットの『夢幻戦士ヴァリス』に代表されるように、当時のOVAに影響を受けたものが多く、結果的にアニメファンを中心とするマニア層をTVゲームに惹きつける大きな要因となった。
衰退速度の著しかったLDゲームの中にあって稼動期間も非常に短かった本作が熱狂的な指示を獲得し、知名度の高い作品となった背景にはこういった事情が挙げられ、「美少女ヒロインが活躍するOVA」の骨子に合致した作風とキャラクターの魅力でアニメファンを中心とするマニア層のニーズに大きく訴求した結果であった。そういう意味では、本作は「オタク黎明期を象徴する作品」と言えるだろう。
移植版
- メガLD版
AC版の完全移植。AC並みの高画質で遊べる唯一のソフトだが、ハード本体、ソフトともに超プレミア。
- メガCD版
ウルフチームが移植を担当。ハード性能上、
映像の劣化は著しいがプレイ感覚は問題なく再現されている。オリジナルOP主題歌が作られた。
- マッキントッシュ版
Mac向けの移植。操作は全てマウスで行うためややプレイし難い。
- プレイステーション版
『忍者ハヤテ』とのカップリング。単品移植なし。
家庭用向け移植版の中では、アーケード版の内部設定変更機能を搭載した「DIPモード」の存在する唯一のソフト。
- セガサターン版
『忍者ハヤテ』とのカップリング。単品移植なし。
- VHDpc INTER ACTION版
MSXなどのパーソナルコンピューターにVHDインターフェースを接続することで遊べる独自規格のビデオディスク向け移植。
- スマホアプリ版
iOS/Androidにて配信開始した。税込み840円。
1度クリア・到達したシーンをミスシーン含めて自由に閲覧できるシアターモードや特定シーンを練習できるプラクティスモードが標準搭載されている他、開発当時の設定資料や企画書を閲覧できるギャラリーモード、次の入力デバイスを事前告知するナビゲートモードが有料配信されている。
余談
- レイカはゲーム自体は知らないけどキャラクターは知っている、という層も多かったほどのその人気振りと知名度の高さから、
一時期、タイトーのマスコットキャラとして扱われていた。 - 1990年頃の業界展示会や直営店舗の開店イベントにおいてコンパニオンにレイカの衣装を着せてキャンペーンを行ったり 、
『トップランディング』の販促宣伝のためにスチュワーデス姿の等身大ポップを飾られたり(そして盗まれもした)、
当時のタイトーのCI(コーポレート・アイデンティティ)用ポスターのイメージキャラクターに抜擢されたり、
PCエンジン版「パズニック」のEXステージクリア後の1枚絵に出たり、アーケード『クイズ地球防衛軍』の2Pキャラであるレイカ隊員のモデルになったり、
とゲーム内外含めて露出は多く、当時のタイトーの顔となっていたことが伺える。 - 2000年代に入ってからも、タイトー販売・アルファシステム制作のシューティングゲーム、
「式神の城」シリーズにレイカのパロディキャラである霧島零香(CV:豊口めぐみ)が出てきたり*3、
スクウェア・エニックスより販売のPS3用ソフト「エレベーターアクションDX」で、
小夜ちゃんともどもDLC(無料)として登場したりと、今も地味に活躍を続けている。*4
追記・修正はタイムストップを発動してからお願いします。
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*2 後ろから恐竜にパンツを食いちぎられ、赤面してしゃがみこんでしまう
*3 販売元がタイトーである縁か。ちなみに同シリーズに登場する巫女・結城小夜は、『奇々怪界』のプレイヤーキャラ・小夜ちゃんが元ネタである。
*4 販売元が異なるのは、2010年にタイトーがスクウェア・エニックス・ホールディングスの傘下に入っているため。
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