ローグダイバーとはダイブを私的に濫用することで利益を得る悪徳ダイバーの呼称であり、またダイバーから見て対抗勢力にあたる総称である。(このため、悪夢なども広義のこれに該当する。)
これより下記は、それらの組織についての説明である。
●狂信者
狂信者とは悪夢を恣意的に成長させ、それを維持させるだけの想像力のリソース(膨大な人数であったり、類稀な素質を持つ個人、或いはその双方)を確保することで、全知全能で願いを成就させる神格に近い悪夢「夢神」の顕現を達成することを目的とするカルト宗教的な集団である。なお、『宗派』やその信者ごとに夢神顕現への目的は違い、純粋な信仰から現世利益目当てであったりと、その思想は一枚岩とは必ずしも言えない。
また、夢神顕現については、その過程で払われるあらゆる犠牲はそれによって返還されると信仰されている為、倫理観及び生への執着の双方が弱い傾向にある。このため、悪夢による夢現災害で自身を含めた大量の死者が出ることを厭わず、むしろ新たな悪夢の促進であるとして積極的に凶行に及ぶ。
この構成員は大別して4種に分類され、また彼ら自身もその役職を自称することが多い。
「神学者」いわゆる研究者に当たり、教義に基づいて夢の研究を行う。その役割から中位以上に位置することが多い。
「宣教者」いわゆる勧誘者に当たり、派閥に与しないダイバーや素質ある一般人を構成員として引き込む。
「収穫者」夢の討伐によって、若しくは討伐したダイバーを強襲することで、クオリアを回収する役職である。
「種蒔き」見出した宿主へ悪夢の種の移植などにより、悪夢を誕生及・育成する役職。しばしば神学者と兼業する。
下記はその下位組織である。
■証明者
夢界こそが神のおわす天国にして聖域であり、ダイバー能力とはそれにアクセスする手段、現実への夢の持ち出しは恩恵の顕われである、と一神教的な解釈をする狂信者の下位組織。
その目的はこの解釈自体の証明であり、そのために夢神を顕現させて夢界に神が存在すると示すことにあるとされる。
最も主要な下位派閥であり、派閥全体としては夢神への願いを掲げてはいないものの、その広い間口から構成員一人一人の単位で見るとその目的は「祈手」によく見られるような、成就したい欲望を持つ者もしばしばみられる。
その活動内容は典型的な「狂信者」のそれであり、特に宣教士による布教活動と種蒔きによる悪夢の拡散が盛んである。
著名なダイバー
■真理
この下位組織は「狂信者」の中でも、有数の研究機関と人材を備えた組織の一つである。
全知全能である夢神を生み出し、それ自体を解析し尽くす事で数理的に全知を理解するのを目的としており、神学者の占める割合が他の下位組織と比較して極端に高く、また科学的な思想が強い特異的な組織である。ただし、後述する功績から証明者を始めとした神秘学的な思想を持つ下位組織とは対立しておらず、優遇された立場にある。
主な活動内容としては、夢神を理解するための基礎に悪夢の構造解析を積極的に進めており、これによって他の派閥・組織と比較しても抜きん出たいくつかの技術を保有する。その中でも代表的なのは悪夢そのものとの同一化であり、悪夢の力を直接得る術として、狂信者の組織全般のみならず協力的なローグダイバーに広く活用されている。
ただしこの技術は悪夢そのものへと自身を置き換えるため、撃破されるとクオリアを残して肉体が消滅するという非常に重いデメリットがある。
著名なダイバー
■保管庫
不死不滅、永劫の存在へと自身・あるいは物品などを昇華することを目的とする下位組織である。
「狂信者」としては稀有な夢神の顕現を目的としない組織(ただしアプローチとしてはしばしば持ち出されはする)。
死や消滅を恐れる者、価値ある財物や情報の永久保存を目的とする者、永劫こそが神聖であるという価値観を持つ者。そのモチベーションは構成員によって多岐に渡り、まただからこそその間口が広く、構成員を集めやすい組織である。
狂信者の例に漏れず倫理的な忌避感を殆ど持たないため、当然のことながらその研究は冒涜的な物が大半を占める。
主に挙げられる研究は老化進行の阻害・死者蘇生・時間停止に近い停滞などで、ある程度、つまり一時的に実現することは可能な段階には踏み込んでいるものの、欠陥を突かれることで効力を失ったり、永続的に持続させることが困難であったりするのが現状のようだ。
著名なダイバー
アンジェラ田中/ドクターパンドラ
●悪夢
自我を持ち、かつ現界において人間社会あるいは自然界に害をなす性質を備えた夢全般を指す呼称。
悪性クオリアの復元による人為悪夢と、自然発生による純粋悪夢の2種に大別されることが多いが、人工的に0から悪夢を開発した例が存在しないことから、元をたどると全ての悪夢は純粋悪夢に当たる。
下記はその悪夢の中で、ある程度の規則性から分類されたものである。
■来訪者
ある夢の主とそれに共鳴したダイバー達に集団発生したとされる、神格に近しい異形の悪夢達。
物理法則と異なる挙動が度々見られる悪夢の中でも、特筆して特異的でありその構造解析が困難である。辛うじて理解に成功した例であっても必ず重篤な精神汚染が担当職員に見られ、新たな悪夢の原因や最悪の場合廃人化するため、過去に編纂された資料はいずれも各派閥の機密部に封印されている。
先述された起原も実際のところは歴史から提唱された一説に過ぎず、精神汚染を受けた職員はしばしば「人ならざる者が見た夢である。さもなくば、このような道理は成立しない」と述懐することから、何等かの別知性・超知性を起原とするという仮説が存在する。ぶっちゃけた話クトゥルフ神話。
■怪人
何等かの致死的な痕跡(例えば腹部の穿孔や頭部欠損、頚椎骨折など。)を持つ特殊なホルダー群を指す。これらは致死的な事故や傷害行為、自殺などにより、生への渇望を強く持った潜在的ダイバーが瞬間的に生み出した生ける夢と即座に融合することで誕生し、それらが埋め合わせることによって死亡の回避、あるいは、肉体は死亡しているが自我を持続している。
自己の状態を認識し続けなければ存在を持続させることができないため、無意識下の防衛機構として、悪夢体に明確な外傷であったり一部感覚の喪失あるいは苦痛などを何かしら保有し、それを通じて認識を強固にしている。
前述の性質上、怪人は自身が怪人であることを忘れたり死人であると認識した瞬間に死亡する。その他にも修正力に対してのリソースを維持できなくなっても死亡するため、宿主なしの生ける夢にかなり近しい性質と言えるだろう。
■古典種
数百年以上の年月を経た生ける夢の総称。
人間の寿命を遥かに超越していることから自明なように、生み出されたときの宿主は須らく何等かの原因で死亡しているので、文献においては渡りによる代替わりの宿主によって生存するとされる。尤も、その場合は継ぐ家系に依存する形となるため、この方法を用いる大部分の個体は既に淘汰され消滅している。
であれば、現存個体はどのようにそれを回避しているのかというと、観測者を瞬間的な宿主とすることで少量のリソースを掠め取るのを繰り返し維持の糧にし続ける。この手段を用いるには対象へのダイブ権限を要するため、何等かの印象を植え付けて縁を獲得する必要がある。その印象に多く見られるのは「信仰」であったり「畏怖」だ。
つまるところ、古典種はそれらによって永らえる存在であり、大部分が伝承に関連する性質を保有するようになる。(「伝承になる」のか「伝承を模す」のかは後世となってはあまり意義は持たない)具体的なところとしては怪奇騨に登場する妖怪達、神話に名のある霊獣達、絵本や童謡で語り継がれる魔獣や怪物などが存在する。
御伽噺たちが人から人へと継がれる教訓や文化であることから、それらの権化である彼らも大きく左右され、伝承に敷かれたルールやタブーにおいては絶対の権限と弱点を持つのが殆どだ。(例えばゴルゴーンの古典種は「目を見ると石にされる」が「鏡を見れば自滅」する性質も併せ持つ。)
●テロリスト
組織呼称から汲める通りテロリズムを用いる組織とその実施者の集団であり、何等かの政治イデオロギーを組織総体で有する。大半のダイバー・ローグダイバー双方の各派閥・組織の目的や思想と対立することから、全体的にその夜の対象になりがちな組織である。
下記はその中でも著名なものの抜粋である。
■現実主義
夢界と現界は別け隔てられるべきであり、夢界という異界の論理の持ち出しを禁じ、現代の物理科学に従った秩序を構築しようとする集団。思想的には科学者の立場に近いがそれは初期の目標、現在においては建前に過ぎず、実際のところ、組織構成は夢幻災害によって大切なモノを失った犠牲者の合流が大半を占める。つまりいわば夢への復讐者の一団。
その活動はダイバーのあらゆる手段を用いた殺傷・拘束、ダイブにまつわる知識の抹消、そして現存するクオリア全ての破壊を目的にする。このためには自らもダイブ能力を使用することも躊躇わない、むしろ肉体や精神に負荷をかけるような方法を用いてまで非適性者の構成員もこれを獲得し利用する。こうして夢界と現界の繋がりを断つと、最後には唯一残される縁である自身達をも一切の例外なく殺すことを始めに誓っている。
彼ら自身、矛盾も破滅も理解していながら、既に誰もその憎悪の火を消すことができなくなっているのだ。
著名な人物
●ガーベッジ
かつては傭兵派閥に属していたが、なんらかの罪で傭兵のライセンスを剥奪され、ローグダイバーとして登録されたメンバーや組織の総称。基本的な行動原理はライセンスを有した傭兵たちと変わりはないが、高額な報酬の為にローグ組織への協力や任務妨害を行う危険な集団。
その活動は報酬の為に依頼を受諾し、戦闘などを行うという点で傭兵と大差ないものの、取引相手はローグ組織となっている点が異なる。元がライセンスを有した傭兵だった事もあり戦闘行為そのものに慣れており、戦闘を不得手としているローグ組織に彼らが随伴している事もあるため、主要組織のみで戦力評価を行う事は危険である。
しかし数あるローグ組織の中では、報酬次第では協力が見込める確率が高い組織と目されており、任務中にはライセンスを有した傭兵との共闘も確認されている。過去には任務内臨時協働での活躍により、特心対から個人単位の復帰を提案した事もあったが、その悉くが失敗に終わっている。
ライセンスを剥奪された主要な健在組織
・カットスローツ
・ブラックライン
・ファンシー・ブラッドバス
有名な人物
・スラッシュ
●イリーガル
特定の組織に属さないローグダイバーの総称。登録していない、あるいは登録抹消されたダイバーたちが占め、ダイバーログデータから不正な引数が検出されることからこのように呼称される。
個人のエゴあるいは利己的な目的からダイブ活動を行うため、その2種でおおまかな分類が存在する。
下記はその区別と、特記するある個人のものである。
■祈手
何らかの現世利益を求めて悪夢を利用する一個人。しばしば夢神の顕現をも計画することがあるが、組織的な力を持たない分それらは散逸的なものに留まることが多い。自身が利用しようとした悪夢を制御しきれず、ダイバーが発見し解決に向かう頃には既に再起不能・ないし死亡してることも多々ある。
なお彼らの目的についてだが、統計上でもっともありふれたものは悪夢そのものへの庇護欲や愛欲である。
■慈善家
祈手が利己的であるとすれば、慈善家は利他的な個人にあたる。倫理規範から逸脱した行い……無差別な生ける夢への殺傷、物理法則を捻じ曲げた望まぬ延命行為など、そのようなものに信念を見出してしまったダイバーが零落した末にここに陥る。
他者を利用して何か得るという方式でなく、自ら施しを与えるという性質からホルダー化しているケースが極めて多い。
●夢語り
夢界関連の技術を保有する個人あるいは複数の特定人物と、その他多くの一般人で構成された反社会的集団。その多くは廉価な装置を用いた簡易的なダイブ能力の代替技術を有しており、これを用いての武力的な手段や装置そのものを流通させることによる利益を得ることをその目的とする。要するところは夢界を用いたヤクザやマフィアのような暴力団。
小派閥同士での縄張りの概念が強く、しばしば衝突や抗争によって互いに食いつぶし合う。そのため、ガーベッジを用心棒代わりに雇用することも多く、その繋がりはかなり根深い。
幹部級の多くは純正の中級相当以上のダイバー、あるいは装置によってそこまで引き上げた中級~下級ダイバーが占め、構成員全般においても殆どは下級ダイバー相当であることが多い。
武力的には他の派閥と比較するとそこまで脅威でないものの、夢関連の隠蔽に関しては対処が困難を極めるうえに社会的な影響力が強いことも多く、特心対の目の上のたん瘤と言える存在である。
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