居高嵐/ウィンドウォーカー

 

おまえは私の捧げものだ。だから切って、開いて、中身を覗くのもみな私の自由で、勝手だ。」 「ええ、その通りで御座います。そして、枯れ枝のこの身でも恩を返せるというのなら」 「あたしゃ、これ以上に嬉しいことは一つもありませんよ。かみさま。」 「そうか。」 「ならば話はそれだけだ。おやすみ、■■■■」 「はい、おやすみなさい。」

 

■現実の設定

名前：二色沙織（にしき さおり）/居高嵐（いたか らん）

年齢：肉体年齢19（実年齢は29歳）

身長：155㎝

性別：女性

瞳の色：気分

髪の色：淡いピンク（部下の勧めを気に入ったため）

所属：生ける夢‐黒曜石‐大悪夢/夢の使者‐ドレアム騎士団‐自由派/特心対‐特総医‐ウタカタ

キャラクター設定：特総医におけるスプリームの契約対象の完全悪夢、或いはウタカタの最初期個体群の1人。

アミニズム的な土着信仰に起源を持つ神格で、災害の規模としては「リヴァイアサン」「死後生」から一段落ちて「八束脛」「屍龍」「摩訶鉢特摩」「灰時計」「世界樹」「森の悪い狼」に該当する大悪夢に数えられる頂点個体。局地的な気象そのものであり、雷を伴う暴風雨の悪夢である。

+大悪夢「居高の嵐」について

 

 

元々人に強い関心を持つ個体で、気紛れに通過した集落を襲撃し攫って飼うなどの行為に及んでいたが、信仰のある土地では口減らしを副次目的とした典型的な人身御供文化が存在し、老人・病人・食い扶持のない子供や外来の旅人などが捧げられることにより目的が合致し、災害としては久しく鎮圧……というか封じ込められることになる。

基本的に直接接触するだけで概ね死ぬのでなるべく長持ちするようにやれ眷属を作ったりして対処していたのだが、その中で完全に人間である自分を作成できれば自身で抑圧していた行為、まあ概ね抱擁するなどといったそういう行為を実現できるようになるのではないか、という考えを抱くようになった。これは人間に置き換えて考えると、ハムスターを可愛がるあまり自分もハムになれたらいいのにな～って願う飼い主と大体似たようなものだ。

この動機により動き出したそれは、生贄の疾患の治療法を模索する過程で内臓の機能を推測したり、生きたまま生体解剖して直接観測するなどして、膨大な時間を掛け、夜鬼磨率いる奇書院と実働隊の混成隊が接触に至るまでには驚くべきことに、切開式の人工呼吸器械やサルファ剤を作成するに至るまでの医療技術を自力で蓄積していた。

『腐った足は切断すれば長持ちする。』『willはこれから意思決定した未来形』……。‐嵐

だが、その時点においても納得する出来の「人間並みに弱い自分」は完成しておらず、そもそも接触の理由も「停滞を打破すべく世界を飛び回ってたまたま着陸した場所が山城盆地（京都南部）で、突然観測された異常気象のパニックを防ぐため」である。言うまでもないが夜鬼摩を派遣した辺り、特心対としては殲滅する気満々だった。

交戦中に指揮官だった夜鬼摩がコミュニケーション能力の有無を確認したこと、そして彼の通訳として同伴していた藍司がウタカタ計画の存在を認識していたこと、という偶然が二つ重なったことで奇蹟的に交渉が成立し、ウタカタとして人間の身体を得る引き換えに特心対に従属することを受諾したことで、この悪夢公的には討伐されたものとして記録されている。

そして、ここまでの事実から伺えるが、この悪夢は同じ他の「人間になりたい夢」の類型の中で、リボンのように人間性を重視しないというか、内面を求めない個体であり煙の悪夢などに近く、また、その感性も人間と同じものとは言い難いものがある。

 

+二色 沙織/ストリングについて

 

別に私は全てに絶望したってわけでもなかったよ。 この道は彼に信じ任せられると思ったから、私は降りることができたんだ。 ……なんて言ったら、負け犬の遠吠えだって、笑われちゃうかな？

生前は最先任境界級の自由派騎士。人格を簡潔に述べれば明るく、淑やかで、そして割と抜けていた。

その名前に違わず糸遣いのダイバーでそのエキゾチックさから自由派が掲げる新時代の象徴として知られていた。元々は複数本の剣を糸によって手繰り寄せることで、代わる代わる持ち替えを補助し剣舞のように戦う騎士だったが、約束された血と虐待めいた教育で次代の13席を見込まれていた神童時代のサー・ダンデライオンとの御前試合によって完敗を喫し、剣士としての大成の道がないことを悟って支援能力者として完全に転向し、象徴としての地位からは失墜した。

挫折と転落と言えば惨憺たる有様ではあるが、それで心身ともに奈落の底に落ちたかと言うとそうでもなく、ある種解放されたとも取れる彼女はむしろ晴れ晴れと過ごしており、現場の下級騎士達を鼓舞し必要とあれば熱心に能力による治療に励むなど、本来彼女が願っていた活動が実現した時期でもあり、一般騎士に限って言えば求心力は高まった。

それゆえに「アイドル騎士」などと揶揄され血統派からは疎まれる存在で、その生涯はそんな彼女を排除するために当時の13席に遠征を命じられた朧島によって閉じられることとなり、またそれが近年の自由派のクーデターの原因の一端にもなっている。

朧島撤退戦時、「標本士」という悪夢との交渉の折、生存者の保障と引き換えに身柄を引き渡したことでそれのコレクションに加えられ、鑑賞品に不必要な内面の除去などを加工され、そのままの形で保存されていた。戦友であるトーアの参加したリベンジ遠征にて「標本士」が討伐されると共に彼女の抜け殻は奪還され、最終的にはウィンドウォーカーの容器として実験の素材に使われることになった。

 

 

+居高 嵐/ウィンドウォーカーについて

 

「どうせ朝から何も食べてないんでしょう。食堂の残り貰っておにぎり作ってきたから、あーんして。」 「……今回に限ってはお前の指摘は誤りだ。簡易だが、13時間前に摂取している」 「最後に固形物を食べたのは？」 「34時間前になる」

 

 

 

大悪夢を少女騎士の肉体に突っ込むとどうなったかというと、大悪夢の人格を主体に記憶による混濁（悪夢から見ては精神汚染とも取れる）を受けた個体になった。お互いの要素をそれぞれ反映しながら共通点は更に強調される。……愛玩と献身が重なり合う点と言えば即ち。そうして”世話焼きウィンドウォーカー”は爆誕した。

 

・放っておけば寝ない、食わない、休まないの3拍子の契約対象であるトーアを定期的に捕まえては仮眠室に叩き込み

・外部とのやり取りにあたっては秘書として彼女の言葉の要約というより翻訳を担当し

・怖れから直接意見しにくい部下ダイバー達の意見箱になる

など、もはや専属の介護士のような活動をしている。これらの甲斐甲斐しい瀬谷や、ちまっこい容姿、そして大悪夢を自称するのが本人のみ、また部下との信頼関係の構築を重要視するため積極的に交友を深めるなどの努力の結果、現在では特総医のマスコットとしての地位を定着させ、若干のトーアからの嫉妬を買うに至っている。

私としても彼女の評価に異論はない。だが、なんだろうな、この蟠りは。一体”どちら”から来るものだろうか‐理事トーア

 

 

実務面においては外的な合理性と人間的な思慮が両立しており、前者で言うならウタカタ計画のことは「人類の過渡期であり、それ自体はいずれダイバーを普遍化し公表する為に必要な研究である一方で、合意なき施術は許してはならずヒアリング制度を徹底すべきだ」という見解を示しているし、後者においては……そもそもトーアがストリングが既に魂のない存在であるにも関わらず蘇生させようとした理由が『ストリングは自分を朧島に置いて脱出したことをどう思っているか』を尋ねるためのものだったのだが、これに対してその贖罪の意思が彼女の支えの一つであることを察して「私を容器のコードリーダーとして扱うのも、亡骸を暴く行為のどちらも、双方に対して無礼極まる行為だ」として一蹴していることなどが実際にあった例として取り上げることができるだろう。

やや情に傾いた保守派であるトーアに対し、ちょうど天秤が釣り合うよう対になる立ち位置に居るが、あくまで互いの意見は尊重しあっており、また交戦規定の撤回など双方の意見が合致し掛け合った事案も数多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撫でれば破れて崩れてしまう。腕に力を込めるだなんて以ての外。 ズルいな。ズルいよ、キミたちばかり、弱くて、脆くて、小さくて。

■夢の姿の設定

名前：ストリング/ウィンドウォーカー

武器：糸・剣身のない剣/暴風雨・雷・雪

外見：白黒ドレス/半実体の巨人

夢の姿の設定：ダイバーを容器にした方式のウタカタであるため、肉体由来と中身の悪夢としての二つのダイバー体を所持する。

ストリングについて：繊維生成の能力に特化した騎士で、剣身のない柄だけの剣がその象徴として知られる。選んでそうしているというよりは、心理的な問題で生成そのものに不全を来たしており、高硬度の繊維を束ねてその代替としている。軽量さ故に取り回しが良く、解けさせることで単分子繊維のカッターのように使うことができ、肉のダイバー体には威力を発揮する一方で質量攻撃を必要とする金属・装甲型には無力。このため正面切って戦闘することは稀。糸による縫合治療のような基礎的な使い方のほか、触覚を付与できることを利用して味方へのマーキングやセンサー付きワイヤートラップとして使うなど支援的な運用にこそその真価を発揮した。

死後は中身が高度な人体理解を持つ悪夢になったことで新たな用途として、糸を手繰り死体を人形のように動かす、という手法が生まれた。とはいえ、戦闘に使うには精々肉

盾がいいところの動きしかできず、そして中身に割と人の心がないため人間爆弾にして敵陣に帰して爆破させるという生前の彼女が泣くような使い方をされている。

一度通れば敵は疑心暗鬼で士気は下がるし、これが一番多く命を救えると思うんだけどな。‐ウィンドウォーカー

わかるよ、その気持ち。慈善事業はいつだって報われないんだ。僕たちのに限っては、特に、なぜだかね。‐リオン‐

……作戦としての有効性はこの際問わないとして、遺体の取扱いとして倫理的に悖る行為だからだろう。‐理事トーア

ウィンドウォーカーについて：調査の結果、信仰の存在する土地の言語で「風に乗りて歩むもの」という意味合いの単語が使われていたのをそのまま拝借してダイバーネームとして命名された。

 

大悪夢としての顕現そのものであり気象兵器であるとも言えるため、壊滅的な無差別攻撃しか行うことができず、基本的に局の承認と制限された時間内での活動に使用機会は限られ、それも海洋上などの能力行使後に二次被害が比較的発生しにくい区域を中心としている。

該当区域内のダイバーの避難完了。31秒間の行使を許可する‐プロミスノート

了解。……久しぶり過ぎて自分の身体じゃないみたいだ（暴風により録音が不明瞭）‐ウィンドウォーカー