At_akada_Pretense_Theory_and_Abstract_Object_Theory,_Edward_N._Zalta

ページ名:At_akada_Pretense_Theory_and_Abstract_Object_Theory,_Edward_N._Zalta

Zalta「偽装説と抽象対象説のあいだの道」

※ネット上でpreprint が読めます。

http://mally.stanford.edu/Papers/pretense.pdf


目次

$1 序[]

[In this paper]フィクションの哲学における2つの説

  • 偽装説(Walton)
  • 抽象対象説(Zalta=自分の説)

の調停を試みる。

調停とは、

  • (1)偽装説の基本概念を、抽象対象説のそれと対応させる
  • (2)明らかな矛盾(フィクションにおける名前は指示対象を持つか)を和解させる
    • 偽装説によれば、フィクションのキャラクターの名前は指示対象を持たず空である。
    • 抽象対象説によれば、それらの名前は抽象的な対象を指示する。
    • 抽象対象説でいう抽象対象は、偽装説がすでに認めている対象だけで解釈できる。


[The key to]

  • 鍵は、意味の使用説
  • フィクションにおける名前の指示対象である抽象的対象は、使用/行動のパターンとして解釈できる。


[I'll follow]まず抽象的対象、虚構的対象についての日常的談話を扱い、次に、それを許容可能な仕方で理解するというアプローチでいくよ。


$2 説明されるべきデータ[]

[Before we began](1)歴史的事実

  • 古代ギリシア人はゼウスを崇拝した。
  • シャーロック・ホームズは今もなお犯罪学者を刺激している。
  • ホームズはどんな実在の探偵よりも有名である。
  • ポンセ・デ・レオンは若返りの泉を探した。

(2)そこからの帰結

  • ポンセ・デ・レオンは若返りの泉を探した。ゆえにポンセ・デ・レオンが探した何かがある。
  • 古代ギリシア人はゼウスを崇拝した。
  • ゼウスは神話のキャラクターである。
  • 神話のキャラクターは存在しない。
  • ゆえに、古代ギリシア人は存在しないものを崇拝していた。

(3)フィクションの中の真理

  • ドストエフスキーの『カラマゾフの兄弟』でドミトリ・イヴァンとアリョーシャ・カラマゾフは兄弟である。
  • ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』でオスカル・マゼラスは3歳のときに年をとることをやめた。

(4)フィクションについて考えるときにわれわれが話すこと

  • この小説のすべてのキャラクターはフィクションであり、実在の人物との類似は偶然である。


[I take it]要請

  • (1)真理値と論理的帰結を保存すること。
  • (2)「古代ギリシア人はゼウスを崇拝した」が真であることと、「古代ギリシア人はシャーロック・ホームズを崇拝した」が偽であることを区別できること。
  • (3)4番目のデータが空虚に真になってはいけない。
  • (4)内包的動詞(ex.探す)をフィクションの場合のみ関係として解釈しない、といった一貫性のない方針はだめ。


[The sytematization described]以下の体系化はこの要請に従っている。


[感想]粒度がそろってなくて気持ちわるい

  • >(1)がすべてのような気がする。


$3 偽装説の特徴を確認[]

[In his intrguing]ウォルトンはフィクションを議論する概念のフレームワークをつくりあげた。そこにでてくる概念を復習しておこう。

ウォルトンにおける「フィクション」の用法

  • (a)名詞「フィクション」
  • (b)形容詞「フィクションの」
  • (c)叙述形容詞「フィクションである」
  • (d)「...においてフィクションである」is fictional in
  • (e)「...ことはフィクションである」it is fictional that
  • (f)「フィクションとして...である」...is, fictinally, ... / 「...をフィクションにする」... make it fictional ...

あんまり体系化されていない。


[Nevertheless, there]ゲーム、ごっこ、小道具などの概念でフィクションにアプローチするのは、得るところが大きいのだが、最終節に回す。次節では、ザルタ理論によるフィクション、ストーリー、キャラクターの概念分析を、ウォルトンのそれと対応させる。


[In what follows]抽象対象説の要点について、詳しくは補遺を見てね。関係、性質、命題、抽象対象、日常対象、符号化、例化みたいな概念を使うよ。


[補足]ザルタ説では、性質の例化exemplifyと符号化encodeを区別する。例化は、性質を持つこと。符号化は、想像された抽象的観念が、何らかの性質を【持つとされる】こと、と理解してよいと思う。(Inwagenはほぼ同様の概念としてholdを使っている)

例.抽象的なアイデアとしてのシャーロック・ホームズは、アイデアだからほんとうは人間ではないが、人間と【されている】。ホームズは<アイデアであること>を例化し、<人間であること>を符号化する。

記号で書くときは順番が違う。

  • 例化:
    • Fa アリストテレスは人間である
  • 符号化:
    • aF ホームズは、探偵とされている


※状況について「状況」とか「ストーリー」とか「可能世界」は命題的性質を符号化する抽象対象らしい。つまり、

  • ホームズは<探偵であること>を符号化する。

だけではなく、

  • 『緋色の研究』は<ホームズとワトソンがはじめて出会うこと>を符号化する。

というような用法もある。

s において p が真である(s |= p) iff s は p であることを符号化する。


※気になる点フィクションのキャラクターについては、以下が重要であると考える。

  • 人工物である
つまり誰かがつくったから存在する
  • 異なる性質を符号化することがありえた
ホームズのストーリーは異なったものでありえた

ザルタ説は以上の要請と両立しそうではある。


$4 偽装説と対象説を対応させる[]

必要な概念

  • x は y の著者である(Axy)
  • p は q よりも(時間において)前である(p < q)
  • 関連による帰結(p|-q)


[ストーリー]

x はストーリーである iff xは状況であり、具体物yが存在して、yはxの著者である

S t o r y ( x ) = d f S i t u a t i o n ( x ) & ∃ y ( E ! y & A y x ) {\displaystyle Story(x)=_{df}Situation(x)\&\exists y(E!y\&Ayx)} {\displaystyle Story(x)=_{df}Situation(x)\&\exists y(E!y\&Ayx)}


[コメント]これがこのままフィクションの定義にもつながるのだが、ノンフィクションの扱いはどうなるのだろう。

ノンフィクションは状況ではない?

ストーリーの特徴

  • ストーリーは、それが符号化する命題的性質によって個体化される。
    • (様相的性質がどうなるのか少し気になる。)
  • "ストーリーsによれば、p"は以下のように定義される
    • ストーリーsによれば、p iff s|=p


ウォルトンの「フィクション世界」は、ここでいうストーリーに対応する。2つの理由から、ウォルトンの「世界」の用法には従わない。

  • ウォルトンの世界は無矛盾ではない(ザルタ理論には不可能世界の概念もあるから、これは問題ない)
  • ウォルトンの世界は完全ではない(こっちの方が問題)


[I take it]「においてフィクションである」の定義

p は s においてフィクションである iff sはストーリーであり、sによればp

p i s f i c t i o n a l i n s = d f S t o r y ( s ) & s ⊨ p {\displaystyle p\;is\;fictional\;in\;s=_{df}Story(s)\&s\models p}

「フィクションである」の定義

p は フィクションである iff あるストーリーsによればp

p i s f i c t i o n a l = d f ∃ s ( S t o r y ( s ) & s ⊨ p ) {\displaystyle p\;is\;fictional=_{df}\exists s(Story(s)\&s\models p)} {\displaystyle p\;is\;fictional=_{df}\exists s(Story(s)\&s\models p)}


[Next, we]偽装理論によって、「著者である」という概念も分析できる。

x はsの著者である iff xはある作品(小道具)をつくり、その作品が想像するように指示するすべての命題はsにおいて真である


もう少しシンプルにできる。

yはsの小道具である iff yは小道具であり、かつ、すべての命題pについて、もしsがpを想像せよと指示するならば、s|=p.

これを使えば、

xはsの著者である iff xはyのつくる& yはsの小道具である.

上記の定義により、偽装理論の基本主張を演繹できる。

主張: もしストーリーsの小道具が命題pを想像せよと指示するならば、pはsにおいてフィクションである。証明:

yがストーリーsの小道具であり、qを想像せよと指示することを仮定する.仮定の前半と「sの小道具」の定義より、すべての命題pについて、yがpを想像せよと命じるならば、s|=p.仮定の後半より、s|=q.Story(s)&s|=qより、qはsにおいてフィションである。

[It is worth]3項関係による著者関係の定義

xはyによってsの著者である iff xはyをつくり、かつyはsの小道具である


[コメント]ザルタによれば、これで共著概念を分析できるらしいが、異なる小道具が同じストーリーの小道具として機能することがあるのか?

「サブストーリー」のような概念をつくれば、二次創作の分析ができそう。

tはsのサブストーリーである iff すべての命題pについて s|=pならばt|=p & ある命題qについて ¬s|=qかつ t|=qxはsの二次創作の著者である iff xはtの著者である & tはsのサブストーリーである

[Despite these interesting]この定義はいくつかのオープンクエスチョンを残している

  • 小道具がどんなものか指定していない
  • 「xはyをつくる」「yはpを想像せよと指示する」が「著者である」のかわりに原始概念となっている


[A third question]小道具はどの命題を真とするのか。小説の場合:文Sが書いてある.文Sによって指示される命題pは小説が提示するストーリーsにおいて真である.pによって関連的に帰結される命題もsにおいて真である.

Parsons[1980],Nonexistent Objects


[Despite the fact]「キャラクター」の定義

xはsのキャラクターである =df ある性質Fがあり、xがFを例化するという命題がsにおいて真である.

C h a r a c t e r ( x , s ) = d f ∃ F ( s ⊨ F x ) {\displaystyle Character(x,s)=_{df}\exists F(s\models F_{x})}


この定義でいくと、無生物もキャラクターとなる。実在するものもキャラクターとなる(フィクションのキャラクターという概念はあとででてきます)。

1項述語も定義しておきます

C h a r a c t e r ( x ) = d f ∃ s [ C h a r a c t e r ( x , s ) ] {\displaystyle Character(x)=_{df}\exists s[Character(x,s)]} {\displaystyle Character(x)=_{df}\exists s[Character(x,s)]}


[We may conclude]フィクションのキャラクターの定義

[sに由来する]

xはsに由来する =df xは抽象対象であり、sのキャラクターであり、それに先行するどのストーリーのキャラクターでもない

O r i g i n a t e ( x , s ) = d f A ! x & C h a r a c t e r ( x , s ) & ∀ y ∀ z ∀ s ′ ( ( A z s ′ ≪ A y s ) → ¬ C h a r a c t e r ( x , s ′ ) ) {\displaystyle Originate(x,s)=_{df}A!x\&Character(x,s)\&\forall y\forall z\forall s'((Azs'\ll Ays)\to \lnot Character(x,s'))}


[フィクションのキャラクターである]

xはフィクションのキャラクターである =df xはキャラクターであり、xはあるストーリーに由来する

F i c t i o n a l C h a r a c t e r ( x ) = d f C h a r a c t e r ( x ) & ∃ s ( O r i g i n a t e ( x , s ) ) {\displaystyle FictionalCharacter(x)=_{df}Character(x)\&\exists s(Originate(x,s))} {\displaystyle FictionalCharacter(x)=_{df}Character(x)\&\exists s(Originate(x,s))}

[コメント]要するに、何かのストーリーに由来するものがフィクションのキャラクターだということ。ところで、Character(x)の部分はOriginates(x,s)の定義に含まれているので、必要ない気がする。

[フィクションのFである]

xはフィクションのFである =df xはあるストーリーsに由来し、sにおいてFx

ex.フィクションの学生である

[We conclude this]対象理論において、抽象対象に関する包括原理は、キャラクターがフィクションの場合にのみ、抽象対象とキャラクターを同一視するために使用される。

公理:もしキャラクターxがストーリーsに由来するならば、xは次のような性質Fのすべてかつそれだけを符号化する抽象対象である; sによればxはFを例化する.

[コメント]「シャーロック・ホームズは、ドイル作品がホームズに帰属するすべての性質かつそれらの性質だけを符号化する抽象対象だよ」ということ。キャラクターと抽象対象を結びつける原理だと思われる。

[In what follows]英語の'is'は、例化と符号化の2つの意味によって多義的であるというのが重要な作業仮説。ホームズは「探偵であること」を例化しない。符号化するだけ。

[In what follows]対象理論によるデータの分析は直接的。偽装理論による特別なパラフレーズは必要ない。もし最終節のプロジェクトが成功すればこれらの分析は偽装理論の支持者にも使用できる。そこで、ザルタは、フィクションのキャラクターの名前の指示的用法を、偽装理論の観点から正当化するから。その前に、名前の指示が空であると考えると分析しがたいようなデータ(比較形)を扱う。


$5 偽装説にとって特別に問題となるケース[]

[There are very]比較形を含む文が偽装説にとって問題となる。

(GC)ピンカートンはどんなフィクションの探偵にもおとらず賢い。(GF)ピンカートンはどんなフィクションの探偵にもおとらず有名である。(1)シャーロック・ホームズはフィクションの探偵である。

GCと(1)、GFと(1)から以下が帰結する。

(SC)ピンカートンはホームズにもおとらず賢い。(SF)ピンカートンはホームズにもおとらず有名である。


[The two interesting]ここに2つのパズルがある。

  • (a)SCとSFの違いを扱えるように、分析する方法。
    • SCではピンカートンが例化する賢さと、ホームズがストーリーにおいて例化する賢さを比較している。
    • SFではピンカートンが例化する有名さと、ホームズが端的に例化する有名さを比較している。
  • (b)分析の結果、(GC)+(1), (GF)+(1)がそれぞれ(SC)と(SF)を帰結しなければならない。


[I shall asume]

  • 以下のような比較形の分析を仮定する(Gは変項、Fは「有名さ」、Cは「賢さ」)。
(A) x は y におとらず G である iff G の度合い d1 と d2 が存在し、 (1) x は d1 だけ G である。(2) y は d2 だけ G である。 (3) d1 >= d2
  • 賢さおよび有名さに適用すると、以下のようになる。
(AC) As-C-As(x,y) iff C の度合い d1 と d2 が存在し、 (1) x は d1 だけ C である。(2) y は d2 だけ C である。 (3) d1 >= d2(AF) As-F-As(x,y) iff F の度合い d1 と d2 が存在し、 (1) x は d1 だけ F である。(2) y は d2 だけ F である。 (3) d1 >= d2

[Notice that since]

  • 偽装説の支持者にとって名前「ホームズ」は空なので、(AC)(AF)に「ホームズ」を適用することはできない。
  • ホームズというものは存在しないので、ピンカートンとホームズの間に関係があることもない。
  • せいぜい、ある種のふり(pretense)において、ピンカートンとホームズの間に関係がある。
  • (SC)はふりとして理解できるが、(SF)は違う。
  • 偽装説の支持者は、「これらの文が2つの対象の関係を主張しているように見えるのは、見かけ上の論理形式であり、日本語の文の正しい論理形式はこれと異なる」と主張するかもしれない。


[Let's consider, then,][Crimmins[1999] suggests]

  • Crimmins[1999]が偽装説にもとづく比較形の分析を提示している。
(2)' 賢さの度合い d1 と d2 が存在し、 (1) ピンカートンは d1 だけ賢い。 (2) コナンドイルの小説によれば、「ホームズ」という人物は d2 だけ賢いと描かれている。 (3) d1 >= d2
  • どうして(2)'のような分析が導出されるのかCrimminsはあまり明確なことは言っていない。

[If the above]

  • (a)(b)のパズルは依然として残っている。
  • 上の分析を(SF)に適用することはできない。
(2)' 有名さの度合い d1 と d2 が存在し、 (1) ピンカートンは d1 だけ有名である。 (2) コナンドイルの小説によれば、「ホームズ」という人物は d2 だけ有名であると描かれている。 (3) d1 >= d2
  • この分析はまちがっている。(SF)はピンカートンの有名さを、フィクションの中のホームズの有名さと比較しているわけではない。
  • フィクションの外での、有名なフィクションのキャラクターとしての有名さの度合いと比較している。


[The second puzzle]

  • 2つめのパズルも残っている。
  • どのようにして偽装説的な(GC)の分析と(1)から偽装説的な(SC)の分析が帰結するのか明確ではない。

[コメント]

  • (GC)だけが問題であれば、(GC)の偽装説的な分析を以下のようにすればよい気はする(支持者がそれを提示していない以上、Zaltaの批判は適切であるが)。この場合、Zaltaの分析同様推論は、普遍例化とmodus ponensとなる。
(GC)' すべてのフィクションf について、賢さの度合い d1 と d2 が存在し、 (1) ピンカートンは d1 だけ賢い。 (2) f によれば、ある人物は d2 だけ賢いと描かれている。 (3) d1 >= d2
  • (GF)のようなものはどうすればいいのかよくわからない。


[The last probrem]

  • 偽装説の支持者は、以下のような推論を説明していない。
古代ギリシア人はゼウスを崇拝した。ゼウスは神話のキャラクターである。フィクションのキャラクターは存在しない。-------------------------------------古代ギリシア人は存在しないものを崇拝した。
  • 偽装説の支持者は、前提の偽装説的分析が、結論の偽装説的分析を帰結するとしめすべきである。
  • 対象理論では、そのための分析は用意されている。


[Let us return]

  • 最後に、対象理論による分析を提示する。
(RSc) 賢さの度合い d1 と d2 が存在し、 (1) ピンカートンは d1 だけ賢い。(2) ホームズは d2 だけ賢い。 (3) d1 >= d2
  • 対象理論の作業仮説によれば、二番目の節は、「例化」「符号化」の間で多義的である。
  • ホームズは「d2 だけ賢い」のか「d2 だけ賢いことを符号化する」のか。
  • この場合は、符号化による読みが正しい。ゆえに対象理論による解釈は以下のようになる。
(B) 賢さの度合い d1 と d2 が存在し、 (1) ピンカートンは d1 だけ賢いことを例化する。(2) ホームズは d2 だけ賢いことを符号化する。 (3) d1 >= d2
  • 対象理論の定理によれば、ホームズがd2だけ賢いのは、コナン・ドイルの小説でホームズがd2だけ賢いことを例化するとき、かつその場合だけである。

h C D C d 2 ≡ C D ⊨ C d 2 h {\displaystyle h_{CD}C{d2}\equiv CD\models C_{d2}h}

  • これを代入すれば
(B') 賢さの度合い d1 と d2 が存在し、 (1) ピンカートンは d1 だけ賢いことを例化する。 (2) コナン・ドイルの小説によれば、ホームズは d2 だけ賢いことを例化する。 (3) d1 >= d2
  • これはCrimminsの分析に対応する(でも対象理論だとちゃんと定義から演繹的にこの主張までを導ける)。

[Our representation and]

  • (SF)の場合は、解釈が多義的だった部分を「例化」として解釈してやればよい。


[Before we discuss]

  • 曖昧さを除去するために変数に+をつければよい。
  • + のついてる変数は、性質を符号化する対象として理解する。

[It is now]

  • 第二のパズルも同様にして解ける。
  • (GC)(GF)は以下のように解釈される。
  • (GC)と(1)から(AC)、(GF)と(1)から(AF)を導くのはただの普遍例化とmodus ponensである。

∀ x [ F i c t i o n a l − D ( x ) → A s − C − A s ( p , x + ) ] {\displaystyle \forall x[Fictional-D(x)\to As-C-As(p,x^{+})]} {\displaystyle \forall x[Fictional-D(x)\to As-C-As(p,x^{+})]}

∀ x [ F i c t i o n a l − D ( x ) → A s − F − A s ( p , x ) ] {\displaystyle \forall x[Fictional-D(x)\to As-F-As(p,x)]}


[コメント]

  • (GC)はさっきの分析で大丈夫だろうが、(GF)はよくわからない。


[One final point]

  • +記号付きのAs-G-As条件は、関係を構成するとはかぎらない。
  • +記号付きのAs-G-As条件が関係を構成するという主張を対象理論にくわえても矛盾しないと思うが、ここでは追求しない。
  • もし矛盾しないのならば、+記号つきのAs-G-As表記は、単なる定義ではなく、英語の真の論理形式である。
  • もし矛盾するとしても、偽装説も、比較形を関係として解釈できているわけではないので、偽装説より悪いということにはならない。


[コメント]

  • 「関係を構成する」というのがどういうことなのか。
  • どうも文章のニュアンスによれば、対象理論には、多項述語だけど関係を指示しない記号というのがあって、ふつうの関係とは扱いが違うということのようにも思えるが、よくわからない。
  • 関係も抽象的対象らしいので、その辺と関係しそうな気もする。任意の条件から、関係/性質の存在を主張できることになるとラッセルのパラドックスが起きるから制限があるとかいう話かも(完全にただの想像)。



$6 抽象物の再概念化[]

[It is time]

  • 偽装説の概念は(改良版)の抽象対象説に対応する
  • しかし偽装説は、フィクションと現実の対象の比較関係をうまく扱えない
  • 偽装説の支持者は前節の分析を受け入れないだろう。
    • 抽象対象説は『ブリキの太鼓』やラスコリーニコフが抽象対象を指示することを受け入れる。
    • 偽装説は拒否する。
    • これが両者の矛盾点となっている。


[In this section]

  • 抽象対象への量化は偽装説の観点からも無害であることを示す。
  • 抽象対象説の形式理論に新しい解釈を与える。
  • この解釈は偽装説の支持者がすでに認めている対象にしか量化しない。


[Let me begin]

  • 理論は抽象者の存在を認めるような一般化を行なう。
  • しかしこれらの一般化は、種々の行動のパターンと結びついた性質のパターンに量化するものとして解釈できる。
    • その一例が偽装する(ふりをする)行動のパターンである
  • 抽象物の包括原理を、自然な性質のパターンの一例として再解釈したい。
  • 性質のパターンはそのパターンを定義する条件の本質に依存する。


[If this idea]

  • もしこのアイデアが維持できるのであれば、これが偽装説にとっても受け入れられる対象説の解釈となるはず。
    • 「ふりをする」という行動のパターンや、ふりについての / ふりのなかでの発言はより一般的なパターンに分類される。
  • 偽装説が暗黙的に行なっているパターンへの量化を明示的にし、結果出てきた存在論によって対象説を解釈する。


[Let us make]

  • もう少し説明しよう。
  • 抽象対象の包括原理の2つの例をとりあげる。
    • コナン・ドイルの小説においてホームズが例化する性質を符号化する抽象対象がある。
    • 『ブリキの太鼓』で真である命題から構築された性質を符号化する抽象対象がある。

∃ x ( A ! x & ∀ F ( x F ≡ C D ⊨ F h ) ) {\displaystyle \exists x(A!x\&\forall F(xF\equiv CD\models Fh))} {\displaystyle \exists x(A!x\&\forall F(xF\equiv CD\models Fh))}

∃ x ( A ! x & ∀ F ( x F ≡ ∃ p ( T D ⊨ & F = [ λ y p ] ) ) ) {\displaystyle \exists x(A!x\&\forall F(xF\equiv \exists p(TD\models \&F=[\lambda yp])))}

  • 'A!'(抽象物である)と、'xF'(符号化する)の再解釈が必要。
    • A!: 性質のパターンである。
    • xF: F は パターンx の構成要素である。


[Now to carry][So the first]

  • 自然の世界においてこれら性質のパターンを基礎づけるものは何か?
    • 答え: 人間の行動(発言行動を含む)。
  • 「ホームズ」のような性質のパターンの源泉はコナン・ドイルによるごっこ遊びのゲームであり、ドイルの原稿によって制度化され、原稿の複製がゲームによって想像することを指示される命題の再認に用いられる。
  • (偶然的な)小道具の制作が性質のパターンを確立し、「シャーロック・ホームズはFである」といった発話のような後続のサブパターンを基礎づけている。
  • 性質のパターンの要素は「探偵である」「ロンドンに住んでいる」「とても賢い」など。
  • 性質のパターンは性質を例化するかもしれない。
    • 「ホームズは今も現代の犯罪学者に刺激を与えている」
    • 「ホームズは存在しない」は、ホームズパターンのすべての要素を例化する対象はないという風に読める。


[コメント]

  • 最後の部分ってマイノング主義捨ててないか?
  • マイノング主義は「非存在性」などの性質を還元することを許すのだろうか。
  • ザルタにとってマイノング主義は、非存在対象を基底的存在者として認める形而上学的立場ではなく、抽象対象への量化を許す形式手法にすぎないのか?


[Now consider the][The individual elements]

  • 包括原理の二番目の例について考えよう(『ブリキの太鼓』で真である命題から構築された性質を符号化する抽象対象がある)。
    • この特定の性質のパターンはギュンター・グラスによって創造されたごっこ遊びのゲームであり、原稿の制作によって制度化され、原稿の複製がゲームによって想像することを指示される命題の再認に用いられる。
  • これら性質のパターンの要素は「pであること」のような形式の性質を含む。
  • 「オスカーは3歳のときに成長することをやめたこと」など。
  • これらの主張が真であるという判断の傾向性は小道具の制作によって基礎づけられる。


[So we have]

  • 対象説をこう解釈すれば偽装説と矛盾しなくなる。
  • 虚構対象へのコミットメントは偽装説がすでに認めているコミットメントである。
    • 虚構対象は行動パターンのなかのサブパターンにすぎないのだから。


[コメント]

  • 最大の問題は「性質のパターン」って何?というところ。抽象者の言い換えにしか見えない...。
  • おそらく抽象者を「行動のパターンに依存する依存対象」として再定義したいのだと思うが、依存対象として定義したところで問題は解決するのか? 穴のような依存対象にも消去主義があるように、偽装説 + 抽象対象の消去主義は可能な立場ではないか?
  • もう少し言うと、「性質のパターン」が行動のパターンに依存するとしても、それは性質のパターンが行動のパターンと同一であることを意味しない。依然として対象説は、(行動のパターンに依存しつつも、行動からは区別される)性質のパターンの存在にコミットしている。一方、偽装説はこのコミットメントを認めないかもしれない。


$7 あいだの道を観察する[]

[The fundamental claim][since we now]

  • 偽装説の根底的主張は、今や対象説の新解釈とは矛盾しない。
    • 誰かがフィクションの作品を制作したならば、その人はごっこ遊びのゲームにおいて想像することを指示するような小道具をつくった。
  • 新対象理論ではストーリーやキャラクターの存在は著者の行動に存在論的に依存する偶然の事柄である。
  • ストーリーやキャラクターは著者のストーリーテリング、小道具制作、ゲーム制度化の行動に付随superveneする。
  • コナン・ドイルのストーリーやホームズはドイルの特定の行動以前には存在しなかった。
  • フィクションと抽象対象の同一視への古典的批判に対処できる。
    • 抽象対象と同一視すると、フィクションが偶然つくられることを説明できない。
    • トマソン「依存的抽象者」
  • 包括原理をプラトン主義的に理解すれば、抽象者は無時間的、永久的、必然的存在者だが、新解釈では、包括原理は「ストーリsによれば、xはFである」というデータがある場合のみパターンの存在を確証する。


[This sense of]

  • ここでいう偶然性は具体性を含意しない。
  • フィクションと通常の具体的対象にはカテゴリーの違いがある。
    • 性質のパターンや行動のパターンは通常の意味では、具体的でも時空的でもない。


[Since pretense theory]

  • 偽装説は行動のパターンや、それに付随する性質のパターンを認めているので、「ホームズ」「ゼウス」の直示的使用を拒否する必要はない。
  • パラフレーズは必要ない。
    • 「xはyを恐れる」「xはyを崇拝する」についても「恐怖のふり」「崇拝のふり」は必要ない。
  • モンスターの夢を見て、叫ぶとき、「恐怖するふり」をしているわけではない。
  • ある意味では夢の対象はモンスター「である」。

[コメント]

  • 「性質のパターンがモンスターであることを要素として持つ」がなぜ恐怖の源泉になるのかわからない。
  • 性質のパターンを恐れたり崇拝するのは変ではないか。


[Nor do we]

  • 「指示するふり」の観念も必要ない。
    • 物語をする間の名前の使用を記述するためであれば、指示するふりは有用な概念である。
  • 「ストーリーを語ること」は「命名の儀式」の拡張であり、ストーリーが語られると性質のパターンが定義される。
  • 偽装説の支持者は、性質のパターンへの真の指示を受け入れるべき。
    • 指示の因果説も適用できる。
  • 通常の対象の名前への指示は名前の使用の因果の鎖が最初の命名までさかのぼる。
  • フィクションの名前の場合、使用の因果の鎖は、ストーリーを語ることにおいて基礎づけられた性質のパターンまでさかのぼる。


[Under the interpretation]

  • 対象説の新しい解釈では、行動のパターンに基礎づけられた性質のパターンは「ホームズ」「ゼウス」などの名前の意味を構成する。
  • 新解釈では、意味に対するウィトゲンシュタイン的アプローチを反映している。
  • 意味に対するウィトゲンシュタイン的アプローチは形式的形而上学的理論の自然化された解釈を提供するが、一方形式的形而上学理論はウィトゲンシュタイン的アプローチをより正確にする。
  • 偽装説はウィトゲンシュタイン的な言語ゲームの精神のなかで発達したので、偽装説から対象説へいたる道は実は短かく、簡単に案内できるものである。


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