『場の古典論』_第2章_相対論的力学

ページ名:『場の古典論』_第2章_相対論的力学

他の章に飛ぶときはブックカードからどうぞブックカード

目次

8.最小作用の原理[]

 ここでは、解析力学はある程度既知としておきます。
 解析力学では「最小作用の原理」と呼ばれるものを学びます。ステートメントを本書から引用すれば
「すべての力学系に対して。作用と呼ばれるある積分Sが存在して、Sは現実の運動に対して極小値をとる。すなわち、その変分δSが0になる。」
厳密にいえばこれは極小になる必要はなく、極値をとればよいということが知られています。したがって「すなわち」以下には間違いがありませんが、それの読み替えとして「極小」というのは少し踏み込みすぎだということです。
 さて、本書では自由粒子の作用積分を考えるときに「この積分は基準系の選び方によらない、すなわち、それはローレンツ変換に対して不変でなければあらないことに注意する」と書いてあります。これはなぜ成り立つのでしょうか。いろいろ考えてみたのですが、これはローレンツ変換特有の性質というわけではなさそうです。というのも、作用は系のラグランジアンを用いて
S = ∫ t 1 t 2 L d t {\displaystyle S=\int _{t_{1}}^{t_{2}}L\,dt} {\displaystyle S=\int _{t_{1}}^{t_{2}}L\,dt}
 ラグランジアンをどの座標系で書くかによってその見た目は変わりますが、結局それをtの関数としてみたときには同じtについて同じ値を返すはずです。つまり座標変換の結果ラグランジアンの形が変更を受け、積分そのものの値は変わらないという仕組みになっています。これは当然ローレンツ変換についても言えますので、上の議論が成り立つわけです。
 さて、そんなわけで作用積分はローレンツ不変であるということが分かりました。さらに積分の形で書きたいので、ローレンツ不変な微小量を積分するのが手っ取り早いでしょう。そのような1次の微小量はds及びそれの定数倍しかありません。なぜなら、今考えている状態には微小量がdt,dx,dy,dzしかなくて、これらは
d s 2 = c 2 d t 2 − d x 2 − d y 2 − d z 2 {\displaystyle ds^{2}=c^{2}dt^{2}-dx^{2}-dy^{2}-dz^{2}}
という関係でしか結びついていないからです。変換で変わりうる微小量が1つの関係でしかむずびついていないので、作れる不変量はこれしかありません。
 以上の議論を踏まえて作用積分を改めて書きましょう。
S = − α ∫ a b d s {\displaystyle S=-\alpha \int _{a}^{b}ds} {\displaystyle S=-\alpha \int _{a}^{b}ds}
と書けるはずです。ここで係数に-を付けているのは、これが極小値を持つようにするためです。先ほども言ったように、厳密にはこの作用が極小値取る必要は必ずしもないのですが、その辺は気分の問題でしょう。これが極小値を持ちうることは一応1章3節でやったことになっていますが、そこでは議論し損ねていました。これについてここで議論するとただでさえ長かった話がさらに長くなるので、自身のブログにかいておきました(rounddの日誌)。
 さて、作用がかけたところで、次はラグランジアンを書きましょう。ラグランジアンと作用の関係は上の方で一度やりましたが、改めて書いておきます。
S = ∫ t 1 t 2 L d t {\displaystyle S=\int _{t_{1}}^{t_{2}}L\,dt}
 これと、僕たちがいろいろ条件を考えて作った作用を比較してみましょう。まず、dsの部分をdtにするために
d s = c 1 − v 2 c 2 d t {\displaystyle ds=c{\sqrt {1-{\frac {v^{2}}{c^{2}}}}}dt} {\displaystyle ds=c{\sqrt {1-{\frac {v^{2}}{c^{2}}}}}dt}
と書きなおしてみましょう。そうすると積分の中身を比較して
L = − α c 1 − v 2 c 2 {\displaystyle L=-\alpha c{\sqrt {1-{\frac {v^{2}}{c^{2}}}}}}
と書けることになります。あとはαを決定できたらいいですね。そこで、得られたラグランジアンをvがとても小さい範囲で近似して、Newton力学と比較してみましょう。Newton力学のもとでは
L N e w t o n = 1 2 m v 2 {\displaystyle L_{\rm {Newton}}={\frac {1}{2}}mv^{2}} {\displaystyle L_{\rm {Newton}}={\frac {1}{2}}mv^{2}}
と書けます。得られたラグランジアンをvが小さい範囲で近似すると
L ≃ − α c + α 2 v 2 c {\displaystyle L\simeq -\alpha c+{\frac {\alpha }{2}}{\frac {v^{2}}{c}}}
第二項がNewton力学のラグランジアンに似ていることに注目すると
α = m c {\displaystyle \alpha =mc} {\displaystyle \alpha =mc}
として決定することができます。
 よって、相対論的な作用とラグランジアンは次のように書けると考えられます
S = − m c ∫ a b d s {\displaystyle S=-mc\int _{a}^{b}ds}
L = − m c 2 1 − v 2 c 2 {\displaystyle L=-mc^{2}{\sqrt {1-{\frac {v^{2}}{c^{2}}}}}} {\displaystyle L=-mc^{2}{\sqrt {1-{\frac {v^{2}}{c^{2}}}}}}

9.エネルギーと運動量[]

 ラグランジュ形式における一般化運動量は
p → = ∂ L ∂ v → {\displaystyle {\vec {p}}={\frac {\partial L}{\partial {\vec {v}}}}}
と書けることが知られています。前節で得られたラグランジアンにおいてこの計算を行うと
p → = m v → 1 − v 2 c 2 {\displaystyle {\vec {p}}={\frac {m{\vec {v}}}{\sqrt {1-{\frac {v^{2}}{c^{2}}}}}}} {\displaystyle {\vec {p}}={\frac {m{\vec {v}}}{\sqrt {1-{\frac {v^{2}}{c^{2}}}}}}}
となります。一つ注意しておきたいのは、これが「相対論的に正しい運動量の表示である」ということです。なぜこのようなことをいうかというと、「4元速度に質量をかけて運動量を得る」と説明してある本が多いからです。数式上は間違っていないのですが(本書の場合4元速度の定義が一般的な本と少し異なっているためmcをかける必要があります)、意味合いはかなり変わると思います。というのは、1章7節でも書きましたが、’4元速度は速度の相対論的な表現ではない’と考えられます。そう考えると「4元速度に質量をかけて運動量を得る」という説明は妥当性があるとは言えず、上のようにラグランジアンから一般化運動量を計算するべきであるということが分かります。
 さて、次にこの自由粒子のエネルギーを計算してみましょう。要はハミルトニアンに移行します。ラグランジアンからハミルトニアンは次のようにして移行するのでした。
H = p → ⋅ v → − L {\displaystyle H={\vec {p}}\cdot {\vec {v}}-L}
これを計算すると
H = m c 2 1 − v 2 c 2 {\displaystyle H={\frac {mc^{2}}{\sqrt {1-{\frac {v^{2}}{c^{2}}}}}}} {\displaystyle H={\frac {mc^{2}}{\sqrt {1-{\frac {v^{2}}{c^{2}}}}}}}
と書けます。ただし、通常ハミルトニアンは運動量を用いて書くことになっているので、そのように体裁を整えておきましょう
H = c p 2 + m 2 c 2 {\displaystyle H=c{\sqrt {p^{2}+m^{2}c^{2}}}}
 さて、ここからはこれを4元ベクトルを使って書き表すことに挑戦します。

10.分布関数の変換[]

11.粒子の崩壊[]

12.不変な断面積[]

13.弾性衝突[]

14.角運動量[]



特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

輪読Wikiの利用法

レジュメを利用するには?レジュメって何?レジュメを探すには?レジュメを書く/登録するには?ブックリストにない本についてレジュメを書くには?ブックリストにある本についてレジュメを書くには?ブックリストを...

林正義(2010)『公共経済学』

目次1 書誌情報2 目次2.1 はしがき2.2 序章公共経済学への招待2.3 第1章課税と経済主体の反応3 第2章市場と効率性4 第3章不完全競争と公共部門5 第4章外部性6 第5章公共財7 紹介8 ...

大学演習_熱学・統計力学

大学演習熱学・統計力学[]物理系学生なら大抵は知っている問題集です。私(@kojinncircle)は学力が低いので分かるところだけ自分のためのメモを作っていくという方針です。熱力学的な言葉で書かれた...

ブックリスト

目次1 総記1.1 情報科学1.2 図書館1.3 論文作法2 数学2.1 論理学2.2 微分積分2.3 線形代数2.4 確率統計3 物理学3.1 力学3.2 電磁気学3.3 量子力学3.4 相対論3....

このWikiの利用法

レジュメを利用するには?レジュメって何?レジュメを探すには?レジュメを書く/登録するには?ブックリストにない本についてレジュメを書くには?ブックリストにある本についてレジュメを書くには?ブックリストを...

『蓮池流韓国語入門』第I部

目次1 どうして英語より韓国語のほうが早くマスターできたのだろう2 語順が同じということのメリット3 語順を変えてしまう助詞の魔術4 省略のニュアンス5 「それ」と「あれ」はどこが違う?6 召し上がっ...