20200824

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★魔力と魔素② [20200824]

 前節では世界設定とした魔素、魔力、魔力波の性質について論じた。ここで要約しておくと、①空間は魔素で満ちている、②魔力と魔素は同一の存在であり、形態とエネルギー状態が異なるだけ、③魔素や魔力が作用すると波が発生する、④物理世界のエネルギー等価法則とは別系統の法則を持つ。

 さて、本節は具体的にそれらがどのような機能を持ち、作用するかを考察していく。

1.

 基本的に魔素・魔力・魔力波は全て『情報を保持するハコ』であると捉える。ハコは「物理世界との対応表」を持っており、与えられた情報に反応して特定の物理現象を発生させる機能を持つ(本編では魔力波を入力、魔素と魔力を出力としている)。魔法とはこれらのハコに入力を行って出力を得る一連の過程であるといえる。情報のやり取りは波で行っているため、その形状や周波数(帯)が具体的なアドレスを指定するポインタのはたらきを担う(という設定)。

 コマンドが入力できる帯域にアクセスすれば、本編中の【幻影】をはじめとする複雑な術式も行使できると考えられる。この場合、電磁波の入射をトリガーとし、魔素を指定した周波数のみ反射(または吸収、透過)する形質に変化させるよう命令すれば実現できるだろう。

 なろう時代ではこの点に関して、「それでは自然に存在する魔力によって勝手に魔法現象が発生するので受け入れられない」と嚙みつかれたこともあるが、これも加味した上での考察となっている。それが稀に報告される超常現象や奇跡の正体というのが筆者の観念である。逆に何故、世界のシステムの一部であり、有機体の一種でしかない人間だけが魔法を独占できると考えるのか、傲慢すぎて今なお理解に苦しむ書き込みであった。そもそも発生の頻度など調整は容易いもので、現象を起こしたくないのであれば帯域幅を狭くして対応する波形を複雑にすればよいだけの話である。

2.

 もう一つの機能として、物理世界の作用を一方的に受けることができると考えられる。こちらも要は1.と同じく情報を保持する機能なのだが、1.での情報のやり取りが魔法世界で完結するのに対し、本項では物理世界からの情報取得を考慮する。この過程において問題となるのは、情報もエネルギーに変換可能である*1という点だ。換言すると、情報を抜けばその分だけエネルギーが移動し、その後の物理現象に影響を及ぼすということである。これを認めてしまうと非常に『都合が悪い』。

 それほど頻繁にエネルギーの交換を行われてしまうと、物理世界から再現可能な観測がなされてしまい、魔法を超自然的事象に位置付ける筆者のファンタジー定義と矛盾する。もちろんこれを是とする世界があってもよいが、熱力学や量子力学を根本から構築し直す必要があり、今度は物理世界の定義が揺らぐ。

 この問題の最も単純かつ根本的な解決案として、何らかの要因で情報の抜き取りによるエネルギーの授受が発生しない、すなわち物理世界の作用を一方的に受ける機能を追加した。要因としては「物理世界の全ての事象が既に魔法世界と紐づけされていて、情報のやり取りが魔法世界内で行える」などが考えられる。これは演算結果がログに記録されるゲーム世界に近い。

 何はともあれ、この機能を利用したのが本編主人公が利用する【眼】あるいは他作品でも多数見受けられる【鑑定】【解析】スキルであると筆者は考える。

関連 *1.マクスウェルの悪魔の解決 §044
作成 2020/08/24 更新 0000/00/00

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