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★魔法がある世界独特の法律 [7e3cq1]

 社会があれば法もある。およそ普遍的な性質と思われるが、具体的な中身に関してはその社会によって特殊性を発揮する。法律や政治は社会の上部構造*1にあり、社会の様式(下部構造)に影響を及ぼされながら変化していくものだからだ*2。魔法は下部構造に位置するといえる。生産様式の一つだろう。ならば魔法に関する法律も制定されているのが自然だ。

 本編では

金などの貴金属は還元されにくい物質となっているが、これらを詐術に利用することは禁止されており、重罰が課される

 とした。この法律は『「ない」と都合が悪い』([7e3cp2]参照)世界の設定に付随するもので、偽造による社会的混乱を防ぐために制定されていなければならないものだ。ちなみに、「ある」場合には金銀その他実物資産の価値が暴落し、インフレの原因となる(というか有史以前からハイパーインフレ状態だろう)。

 考え得る保護法益は①金銀その他実物資産の信用②貨幣を発行する国家その他機関の発行権③個人の財産④魔法を使う者の社会的信用である。

 構成要件は「正当な事由なく魔法を詐術に利用する」の一つのみと、かなり問答無用なもの。『詐術』の法的解釈をここでは「故意に他者の錯誤を惹起する虞のある行為をすること」としている*3。詐術を目的として魔法を使った時点で実行の着手が認められ、構成要件を満たすため、未遂罪は無い(ただし検挙されるか等は別)。過失は罪に問われないが、重過失は問われ得る。正当な事由とは王命など司法権を持つ機関の許可がある場合。

 『詐欺』ではないのは、目的が「他者の財産の不法領得または処分行為」でなくとも成立させるためという裏設定(相手が騙されるか否かは構成要件に含まれない)。要は民法の領域まで刑法が立ち入るということ。たとえば、「相手の信用を得るために【生成】したアクセサリを身にまとって適法且つ正当な経済活動を行う」ことも構成要件を満たす。

 尤も、本編はここまで法学が発展していない世界設定なのでほとんど記述する予定はないが。

 ここでのヒントとしては、①保護法益②罪刑③故意・過失の規定④未遂犯・中止犯⑤構成要件⑥違法性・責任阻却事由をそれぞれ考えることである。また、条文の法解釈も可能ならしておくべきだ。その中で魔法がどのような役割を持っているかなどに意識を向けられれば、世界観が安定するのではなかろうか。

関連 *1.上部構造 *2.マルクスは下部構造も上部に一定の作用を受けるとしているが、本論から外れるため今回は取り上げない *3.民法第21条、同96条とは異なる cf.通貨偽造罪,百円札模造事件 §038
作成 2019/03/26 更新 0000/00/00

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