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★魔力と魔素① [7e3cp2]

 ファンタジー作品では魔力なる要素がたびたび登場する。本編もそれに倣った。

 では魔力とは何だろうか。『力』と名が付くのだから、エネルギーの一種と考えるのが自然だ。作品によってはマナ*1*2とも呼ばれ、およそ実体のない存在として扱われる。しかしそのような実体の掴めない存在が炭素をはじめとする粒子に変質するというのは、発想としてなかなか厳しいものがある。もちろん、現実世界にも "E=mc²"*3 という有名な方程式があるので理論上不可能ではないし、エネルギーが点に収束すれば問題はないのだが、ではその最小の点の大きさはどうなのか等の疑問がとめどなく溢れてくることになる。

 ワンクッション挟みたい。

 そのために起用したのが魔素という粒子。これも魔力に次いでよく登場する*4。本編では

  1. 空間の大半を占めている
  2. 流動する粒/魔力が基底状態で存在するだけの粒
  3. 魔力や、魔素の運動で発生する波の影響を受けて変質し、様々な物質に似た振る舞いをする
  4. 魔素は光子より小さいという仮説
  5. スピンも熱的振動も、おそらく質量すらない

 以上五つの性質を導入として持たせた。

 1.は言葉の通りである。2.は魔素を「エネルギーが最も低い状態における魔力の存在形態」とし、「魔力=魔素」に設定した。励起すれば魔力へと変態する。3.が、およそファンタジー作品で語られる魔素の性質。ここで「魔素は運動によって波を起こす」という設定を付与した。波の伝播には媒質が必要だが、ここでは敢えて言及していない。4.は粒子の大体の大きさを描写したもの。本編主人公の言う『ゲージ』は基本相互作用を担うゲージ粒子*5のこと。『はっきり「ココのコレ」と特定し難い雲のような感じ』と、厳密に言わないのは不確定性原理*6や重ね合わせ*7によるもので、波束の収縮が起こっていないためである(筆者が言及を避けたのもある)。また『雲』と形容したのは当然だが電子雲*8を意識したものだ。5.は「物質ではない」ことを強調するとともに、相対性理論*9の枠から脱するために設定した。質量があると都合が悪い。

時間経過や過度な損傷で魔力に還元されるからである。これを『物質量保存法則』という

 『物質量保存則』は本編のように「ある」作品と「ない」作品*10の両方がある。「ない」と都合が悪いので本編はそうした。というのも、魔力さえあれば食事の必要がないといった世界設定になると、人間が食物連鎖の軛(くびき)から脱せることになり、世界そのものが崩壊しかねないからだ。また、相対性理論の外にいた存在を内に引き込むと、「 "E=mc²" が成り立ってオカシイじゃないか」という批判をされる虞がある。なろう時代にマジで経験した(保存則アリの設定だったのに!)。「そんな事はトールキンに言え」と返そう。

 エネルギー保存則に関しては魔力が形態を変えただけなので気にする必要はないだろう。そもそも、エネルギー保存則の本質は『孤立系のエネルギーの総量は変化しない*11』なので、孤立系でなければ成り立つ必要がないうえ、もっと言えば開放系なら質量の増減も別に不思議な話ではない。ポットからカップに茶を注ぐようなものだ。

 これらの世界設定における大原則は「わからない部分は曖昧にする」ということである。宇宙論や量子論は未だ解明されていない部分が多く、現代はその過渡期にあるといえる。また、現在の人類の知識をすべて理解しようとしても一般人には土台無理な話だ。現状の研究と自身の知識に照らし合わせて描写するのが鉄則である。変にM理論やダークエネルギーを持ち出すと後世の読者に笑われるかもしれない。黒歴史だ。一発中れば予言者でもあるのだが。

関連 *1.エルフ転生からのチート建国記 *2.マナ *3.E=mc² *4.転生したらスライムだった件 *5.ゲージ粒子 *6.不確定性原理 *7.コペンハーゲン解釈 *8.電子雲 *9.相対性理論 *10『異世界うさぎ』の水樹の苗 *11.エネルギー保存の法則 §038
作成 2019/03/25 更新 0000/00/00

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