7e3cc1

ページ名:7e3cc1
★『魔法』という訳語について [7e3cc1]

 ファンタジー作品でなくとも魔法という言葉はしばしば使われるものであるが、その語義を検討してみたとき、一つの疑問が芽生える。『魔』と『法』の訳語は果たして正確なのか、と。

 英語の‟magic”を魔法と訳すことは周知かと思う。magicの語源は古代イラン語にまで遡り、聖書にもその影響は見ることが出来る*1。正確に訳すとすれば「人知を超えた不思議な能力・技術」だろうか。この語は善悪においてニュートラル、或いはポジティブな価値を持っている。

 一方、日本語の『魔法』は仏教的な意味合いが強い。魔は魔羅(善事を妨げる悪い鬼神)の略であり*2、法は真理。何の真理かといえば仏、則ち仏法である*3。魔法は「仏の真理から外れた悪い行い」と解釈できる。もし「魔法は既に仏教色が薄まっており、magicの和訳として定着している」という反論があったとしても、『魔』がネガティブな価値を有する語であることは多くの賛同を得られるところだろう。

 ここで検討したいのが、ファンタジーにおける魔法という語の使用についてである。

 聖なる存在である神や、それに仕える聖職者(=一般的に善の価値を持つ者)が魔法を使うという表現は違和感がある。まして『魔王』なる悪の権化が存在する世界観なら尚更、魔の対極に位置せねばならないはずだ。神はmagicを使えても魔法は使えない。

 お気づきだろうが、これは日本語の問題である。異世界語を翻訳する際の適当な訳語が見つからないのである。

 尚、本編では

 神の力である神力を行使して世界の理に干渉する法を『加護』と呼び、悪魔の力、即ち魔力を用いることで世界の理に干渉することを悪魔の法力『魔法』或いは悪魔の術式『魔術』と呼んでいる。

 とした*4

 俺は日常会話レベルしかまだできないのに、グリモワールは専門用語が連なっている。

 から、その大半が初見の単語と思われる。そのため概念は前世の知識に頼らざるを得ない。

 という風に組み立て、敢えて仏教色を濃くし区別したのである。この問題において完璧な正解というものを筆者はまだ見つけられていない。今後の課題である。

***以後加筆予定アリ***

関連

*1.マギ *2. *3. *4.下部 §036


 Intervening in the law of the world by using a devine power: a great power of God has been called "blessing," and doing it by using a hex: a power of devils has been called "witchcraft" that means a force of devils or "wizardry" that means a technique of devils.

おそらくこのような文章を翻訳したのだろう。:の前や""の中身が知らない単語であっても、ある程度読むことは可能である。ただし筆者は横文字があまり得意ではないので、上記英文には誤りがあるかもしれない。

作成 2019/03/12 更新 0000/00/00

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

文明人之纂略046

文明人之纂略 作者:黒須輝046 自室 「ふむ、なかなか悪くない」 俺は自室のマットに腰を下ろす。厚みがあって断熱や緩衝などの機能を十分に果たしている。柄は曼荼羅、或いはトルコ絨毯のような色彩。おそら...

メニュー

メニュー移動トップページ管理人―黒須輝について管理人にメールを送る『文明人之纂略』の目次なろう作家支援プロジェクトあなたがコメントを開放しない6つの理由新着12文字以内、文字色は黒く noset in...

小説『文明人之纂略』目次

 はじめに こちらは黒須輝が前世で投稿していたファンタジー小説のリメイク版です。活動場所が”小説家になろう”のサイトでしたので、『なろう』感を多分に含みます。ご注意ください。 ...

文明人之纂略047

文明人之纂略 作者:黒須輝047 【身体強化】 「ふぅん、そこまで彩度が高い訳では無いのか……」 新しい生活が始まって一夜が明けた。 リゼからは環境に順応する為にと十日ほど...

ネタ帳索引

作者:黒須輝索引 はじめに 前提として:19/03/03:- ご都合主義を排除できない事柄:19/03/09:- プロットの組み方:19/03/09:/14 管理人がよく使う文字:19/03/25:-...

20200831

★詠唱 [20200830]  本編主人公は魔法を無言=無詠唱で使っているが、他の作品では『詠唱』と呼ばれる独特の呪文を唱える工程によってそれを使う設定*1を持つものもある。本節ではこの詠唱の役割と...

文明人之纂略044

文明人之纂略 作者:黒須輝044 種明かし 「リーゼロッテ様、緊張しましたね」 仮面を被り直しながら廊下を歩く。これ髪の結び目に引っ掛けてるから面倒臭いんだよな。 「リゼに戻して良いよ。それより君、緊...

文明人之纂略045

文明人之纂略 作者:黒須輝045 別棟  「あのぉ……この大所帯は何ですか?」 リゼの案内で連れられたこは城敷地内の一角、別棟となる建造物である。ちょっとした市役所庁舎並み...

20200824

★魔力と魔素② [20200824]  前節では世界設定とした魔素、魔力、魔力波の性質について論じた。ここで要約しておくと、①空間は魔素で満ちている、②魔力と魔素は同一の存在であり、形態とエネルギー...

文明人之纂略043

文明人之纂略 作者:黒須輝043 謁見 「お入りください」 守衛さんの案内に合わせて観音開きの大きな扉が開く。向こう側の景色が見えた。大きな広間だ。 高い天井に大理石の床、シャンデリアとステンドグラス...

文明人之纂略042

文明人之纂略 作者:黒須輝042 待合室 城に到着した俺は一旦リゼと別れ、待合室のような場所へ通された。セナが警護してくれている。 こういう部屋をキャビネットというのだろうか。それともサロンかな?ジャ...

文明人之纂略041

文明人之纂略 作者:黒須輝041 入洛(後編) それから約15分後。 馬車が行くのは城下町とでも呼ぶべき市街地の大通り。レンガやモルタル、石造りの家々がぎっしりと道の両脇に並び、人の営みを感じさせる。...

7e3d91

★補助魔法【バフ】 [7e3d91]  ファンタジー世界の戦闘用魔法には攻撃、守備の他に補助の効果を持ったものがある。対象の戦闘力を上げるものをバフ(buff)、戦闘力を下げたり状態異常に陥らせるも...

7e3de1

★転生のメカニズム [7e3de1]  転生モノの特徴は二つある。①前世の人格が受け継がれていること②その記憶に劣化がみられないことである。ここではそのメカニズムを考察する。 ①前世の人格が受け継が...

あなたがコメントを開放しない6つの理由

あなたがコメントを開放しない5つの理由 コメント機能の開放にはデメリットが伴う。 言論統制に無駄な労力を割かれる:管理人は「言いたい事があるなら自分のサイトで言え」という価値観の人間。「うるせえ黙れ」...

7e3db1

★「~主義」を軽く説明 [7e3db1]  各政治思想とその立場について論じる。  述べる事柄は有権者として一般的な程度の知識であり、大まかな概説である。それぞれの思想にについて善悪や優劣を評価する...

文明人之纂略040

文明人之纂略 作者:黒須輝040 入洛(前編)▼▽▼▽ さて、本書は魔法・魔術、魔法使い・魔術士・魔導師を意図的に使い分けている。これは本書のみに限った話ではなく、明確に定義されているものだ。 魔法使...

7e3d71

★甲種魔法取扱者 [7e3d71] 魔法を使う者を魔法使い、魔術を使う者を魔術士と呼び、魔法・魔術両方を用いる者と魔法使い・魔術士を合わせて魔導師と呼ぶ  本編では混同しがちな魔法関連の用語を整理し...

文明人之纂略039

文明人之纂略 作者:黒須輝039 邸宅の朝 「うおおおぉっ!かっっくぉいいいぃ!!」 思わず俺は叫んだ。 「アル、興奮し過ぎじゃないかい?」 「いやいやいや、目の前に騎士がいるんですよ?!お伽話にも出...