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★異世界の定義と主人公の思考 [7e3c32]

 『異世界』と一言で表しても、その定義は個人によって異なります。ここでは異世界の定義を「転生者の世界とは同一宇宙に存在しない世界」とします。

 小説における世界というのは3種類あります。①我々が住む『現実世界』、②作中の現実世界である『虚構世界』、③上記定義の『異世界』です。異世界モノでは虚構世界と現実世界は同一の物理法則が成り立っているとみなされます。そして異世界にファンタジー要素を盛り込みます。

 ここで問題となるのが異世界であることによる『地球人類科学』の基盤喪失です。

 本編主人公は

(中略)俺の体は何で構成されている?タンパク質か?毎日飲む水は本当に水なのか?吸っているのは酸素か?それだけではなく、身の周り全て、炭、鉄、塩、酒……燃える?磁力を持つ?塩辛い?酔う?そんなものは根拠とならない!
 目に見える色、耳に響く音、鼻に香る匂い、肌に触れる温度すらも、全ての基盤が、異世界の疑惑たった一つで失われる。

 と考えました。重要なのは「異世界かもしれない」という疑惑が生まれただけで、断定はしていないことです。

 というのも、

そしてもしここが地球でないのならば、地球と同じ宇宙に居るという証明手段はこの世に存在しない。

 転生者の場合は地球でないとした時の他の可能性が宇宙外、則ち異世界にまで範囲が広がるのです。

 現実世界(場合によっては虚構世界も)の人々には『地球』という確かな根拠が生まれつきあります。しかし転生者にはその『地球』であることを証明する手段がどこにもありませんから、同一宇宙にいるという証明手段も皆無と言って良いでしょう。

 そして異世界である(=同一宇宙でない)かもしれない、ということで生じる問題が前述『地球人類科学』の基盤喪失です。我々の宇宙で成り立つ理論が別の宇宙に当て嵌められるかは誰にも分かりません。この世界は物質優勢宇宙と謂われますが、異世界は反物質優勢宇宙かもしれません。反物質の振る舞いは物質と変わらないそうですが、例えばレトロニムとして逆物質、裏物質、対偶物質、半物質などを生み出せます。その振る舞いは予測不能。そんな『物質』で構成された可能性のある宇宙では、地球人類が蓄積してきた知識はアテになりません(するのは危険)。

 ならば、主人公の思考としては少々の疑問点があっても現状の物理法則を根拠に虚構世界であると看做し、異世界の選択肢を排除した方がまだ妥当です。月の模様が兎でないというのは我々からすると不自然ですが、虚構世界の転生者である場合はデータの欠損や現実世界作者からの意図的な改竄*1である確率の方がよっぽど高いのです。

 因みに、本編主人公は

(中略)何故死んだのかは不明であるが、取り敢えず死んだのだろう。或いはその直前に脳が見せている幻覚か。(中略)夢幻なら早いとこ目を覚まさなくてはならない。(中略)確定ではないが現実の可能性が出てきた。

 と、単なる夢の可能性も捨て去ってはいません。

関連 *1.蜘蛛ですがなにか? cf.地球から来た男 §001 §035
作成 2019/03/03 更新 2019/03/09

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