文明人之纂略046
文明人之纂略 作者:黒須輝046 自室 「ふむ、なかなか悪くない」 俺は自室のマットに腰を下ろす。厚みがあって断熱や緩衝などの機能を十分に果たしている。柄は曼荼羅、或いはトルコ絨毯のような色彩。おそら...
★それは‟チート”なのか [7e3cj1] | ||||
---|---|---|---|---|
以前、小説投稿サイト『小説家になろう*1』でメジャーとなっているチートという表現に関して私見を述べるエッセイを投稿した*2。これはもともと筆者が同サイトで二年以上前に投稿したもの(以後「前作」とする)で、そのうえエッセイというジャンルにおいての処女作であったために未熟な部分があった。本編とは関連性が弱いものの、当企画の主旨と合致するため最新の見解を以下に記すこととする。 大まかな主張は変わらない。『チート』と謳われる大抵の作品の実態は"TAS"である、というものだ。 まず、言葉の定義を行いたい。ここではチートを『コンピュータゲームにおいて、本来とは異なる動作をさせる行為*3』とする。具体的には『ゲームのデータやプログラムを改ざんして、正規の利用では本来できないこと(ゲーム内通貨やレアアイテムを不正に増やしたり、キャラクターのレベルを急激に上げるなど)を不正にできるようにする行為*4』を意味するものとする。一方TASは"Tool-Assisted Speedrun"または"Tool-Assisited Superplay"の略称とし、世界的に統一されているTASVideos*5のレギュレーション*6に準ずるものとする。大まかには、エミュレータ*7を用いて行われるゲームのプログラムやデータの改竄を伴わない競技とする。オンライン・オフラインは問わない。 「TASもチートの範疇である」という反論もあろう。だがこれは些か強引で、チートの解釈を拡張しすぎだと言わざるを得ない。確かに外部ツールをチートとする見方もある。しかしゲームを提供する側の認識はそうではないようだ。世にあるすべての利用規約を検証することは不可能なので二つのみ例示する。
前者のうちでエミュレータを用いることは『不公平な優位性を与えるあらゆるその他のもの』に該当するだろう。明確なチートという単語は後段にしかないので断定はできないが、『第三者プログラム』『編集されたゲームファイル』と解釈するのが自然だ。後者は『不正ツール』『チートツール』と使い分けている。いずれも不正行為として禁止されてはいるが、エミュレータを用いたプレイとチートが同一のものとは読めない。また、スマートフォンゲームである『アズールレーン』ではエミュレータを可、チートを不可と、それぞれ区別しているという情報もある*10。 以上より、本稿ではチートとTASを別のものとして考える。 次に、小説におけるチートの用法を検証する。これは作者によって定義が曖昧であるが、『規格外の能力で活躍する』ということは共通認識といえるだろう。そこには『本来とは異なる動作』や『不正に』という意味合いは大抵含まれていない。 前作ではここで『(普通の)人間には不可能かもしれないが、(神のいる世界の)システム上、再現可能なスーパープレイ(=無双)を行うこと』としてチートではなくTASであるとした。しかし、この論にはある大きな間違いがあった。世界をシステムとしたとき、プレイヤーにあたる存在は主人公ではなかったのである。主人公はキャラクターである。実在するゲームでいえばマリオやレオンである。プレイヤーに最も近い地位に立つのは作者だろう。 そうすると、一つの問題が生じる。
とある。二次創作でない限り、物語はオリジナルつまり自作である。英語の原文では、ゲームが改造か自作である場合はデモ版やベータ版やではなくリリースされていなければならないとある。尤も、これはゲームそのものの提出における規定であり、小説作品のrelease(公開)に関する議論は現状見受けられない。よって保留する。 では『規格外の能力』をTASとするなら、Toolに相当するものは何か。もちろん、テキストエディタである。作者が行っている執筆活動はリプレイファイルの作成にすぎない。校正における『追記』はTASにおける『追記』と同じ意味を持つ。『規格外の能力』を魅せることは十分にsuperplayといえるだろう。丁度、視聴者がTASのコードを実行しているキャラクターに魅せられているのと同じ構図である。 「では実機との違いはどこあるのか、このままでは他の作者と環境が同じではないか」と思うかもしれない。しかしそれは見当外れな問いだ。本編を含め、すべての作品はTASであるというのが本稿の主張である。実機は言うまでもなく虚構世界([7e3c32]参照)を現実世界とする世界線に住む、主人公の『魂』だ。作者はテキストエディタ上でその世界を再現している。これにより保留していた問題は解決する。虚構世界はデモ版でもベータ版でもない。また、その世界の『魂』にファイルのコードを実行させれば、『データやプログラムを改ざん』せずに再現性の確保されたプレイが見られることだろう。 特筆すべきはキャラクターがどんな『規格外の能力』を持っていたとしてもチートではないことだ。ゲームにおいてそのシステムはよく見られる。たとえば、ロールプレイングゲームにおいてレベル上げをできるのが主人公一行だけであることは珍しくない。あるいは、『ドラゴンクエストビルダーズ*11』では『創造する力』を持っているのは基本的に主人公だけだ。これをチートと呼ぶだろうか。否であると本稿は主張する。尚、当然だが前作で述べた『"MP"10の人間が消費"MP"20の魔法を使える、や、破壊不能オブジェクトを破壊する』といった行為は依然チートに該当する。 |
||||
関連 | *1.小説家になろう *2.え、それってチートなんですかぁ? *3.チート(Wikipedia) *4.チート行為はやめましょう! *5.TASVideos *6.ルール *7.エミュレータ *8.PUBG-利用規約 *9.ガンホー-利用規約 *10.パソコンで簡単にアズールレーンをプレイする方法 *11.ドラゴンクエストビルダーズ cf.マクロを取り上げた作品ぺったんTS転生 | |||
作成 | 2019/03/19 | 追記 | 0000/00/00 |
シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。
文明人之纂略 作者:黒須輝046 自室 「ふむ、なかなか悪くない」 俺は自室のマットに腰を下ろす。厚みがあって断熱や緩衝などの機能を十分に果たしている。柄は曼荼羅、或いはトルコ絨毯のような色彩。おそら...
メニュー移動トップページ管理人―黒須輝について管理人にメールを送る『文明人之纂略』の目次なろう作家支援プロジェクトあなたがコメントを開放しない6つの理由新着12文字以内、文字色は黒く noset in...
はじめに こちらは黒須輝が前世で投稿していたファンタジー小説のリメイク版です。活動場所が”小説家になろう”のサイトでしたので、『なろう』感を多分に含みます。ご注意ください。 ...
文明人之纂略 作者:黒須輝047 【身体強化】 「ふぅん、そこまで彩度が高い訳では無いのか……」 新しい生活が始まって一夜が明けた。 リゼからは環境に順応する為にと十日ほど...
作者:黒須輝索引 はじめに 前提として:19/03/03:- ご都合主義を排除できない事柄:19/03/09:- プロットの組み方:19/03/09:/14 管理人がよく使う文字:19/03/25:-...
★詠唱 [20200830] 本編主人公は魔法を無言=無詠唱で使っているが、他の作品では『詠唱』と呼ばれる独特の呪文を唱える工程によってそれを使う設定*1を持つものもある。本節ではこの詠唱の役割と...
★ [2020] 関連 作成 2020/ 更新 0000/00/00 ...
文明人之纂略 作者:黒須輝044 種明かし 「リーゼロッテ様、緊張しましたね」 仮面を被り直しながら廊下を歩く。これ髪の結び目に引っ掛けてるから面倒臭いんだよな。 「リゼに戻して良いよ。それより君、緊...
文明人之纂略 作者:黒須輝045 別棟 「あのぉ……この大所帯は何ですか?」 リゼの案内で連れられたこは城敷地内の一角、別棟となる建造物である。ちょっとした市役所庁舎並み...
★魔力と魔素② [20200824] 前節では世界設定とした魔素、魔力、魔力波の性質について論じた。ここで要約しておくと、①空間は魔素で満ちている、②魔力と魔素は同一の存在であり、形態とエネルギー...
文明人之纂略 作者:黒須輝043 謁見 「お入りください」 守衛さんの案内に合わせて観音開きの大きな扉が開く。向こう側の景色が見えた。大きな広間だ。 高い天井に大理石の床、シャンデリアとステンドグラス...
文明人之纂略 作者:黒須輝042 待合室 城に到着した俺は一旦リゼと別れ、待合室のような場所へ通された。セナが警護してくれている。 こういう部屋をキャビネットというのだろうか。それともサロンかな?ジャ...
文明人之纂略 作者:黒須輝041 入洛(後編) それから約15分後。 馬車が行くのは城下町とでも呼ぶべき市街地の大通り。レンガやモルタル、石造りの家々がぎっしりと道の両脇に並び、人の営みを感じさせる。...
★補助魔法【バフ】 [7e3d91] ファンタジー世界の戦闘用魔法には攻撃、守備の他に補助の効果を持ったものがある。対象の戦闘力を上げるものをバフ(buff)、戦闘力を下げたり状態異常に陥らせるも...
★転生のメカニズム [7e3de1] 転生モノの特徴は二つある。①前世の人格が受け継がれていること②その記憶に劣化がみられないことである。ここではそのメカニズムを考察する。 ①前世の人格が受け継が...
あなたがコメントを開放しない5つの理由 コメント機能の開放にはデメリットが伴う。 言論統制に無駄な労力を割かれる:管理人は「言いたい事があるなら自分のサイトで言え」という価値観の人間。「うるせえ黙れ」...
★「~主義」を軽く説明 [7e3db1] 各政治思想とその立場について論じる。 述べる事柄は有権者として一般的な程度の知識であり、大まかな概説である。それぞれの思想にについて善悪や優劣を評価する...
文明人之纂略 作者:黒須輝040 入洛(前編)▼▽▼▽ さて、本書は魔法・魔術、魔法使い・魔術士・魔導師を意図的に使い分けている。これは本書のみに限った話ではなく、明確に定義されているものだ。 魔法使...
★甲種魔法取扱者 [7e3d71] 魔法を使う者を魔法使い、魔術を使う者を魔術士と呼び、魔法・魔術両方を用いる者と魔法使い・魔術士を合わせて魔導師と呼ぶ 本編では混同しがちな魔法関連の用語を整理し...
文明人之纂略 作者:黒須輝039 邸宅の朝 「うおおおぉっ!かっっくぉいいいぃ!!」 思わず俺は叫んだ。 「アル、興奮し過ぎじゃないかい?」 「いやいやいや、目の前に騎士がいるんですよ?!お伽話にも出...