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★それは‟チート”なのか [7e3cj1]

 以前、小説投稿サイト『小説家になろう*1』でメジャーとなっているチートという表現に関して私見を述べるエッセイを投稿した*2。これはもともと筆者が同サイトで二年以上前に投稿したもの(以後「前作」とする)で、そのうえエッセイというジャンルにおいての処女作であったために未熟な部分があった。本編とは関連性が弱いものの、当企画の主旨と合致するため最新の見解を以下に記すこととする。

 大まかな主張は変わらない。『チート』と謳われる大抵の作品の実態は"TAS"である、というものだ。

 まず、言葉の定義を行いたい。ここではチートを『コンピュータゲームにおいて、本来とは異なる動作をさせる行為*3』とする。具体的には『ゲームのデータやプログラムを改ざんして、正規の利用では本来できないこと(ゲーム内通貨やレアアイテムを不正に増やしたり、キャラクターのレベルを急激に上げるなど)を不正にできるようにする行為*4』を意味するものとする。一方TASは"Tool-Assisted Speedrun"または"Tool-Assisited Superplay"の略称とし、世界的に統一されているTASVideos*5のレギュレーション*6に準ずるものとする。大まかには、エミュレータ*7を用いて行われるゲームのプログラムやデータの改竄を伴わない競技とする。オンライン・オフラインは問わない。

 「TASもチートの範疇である」という反論もあろう。だがこれは些か強引で、チートの解釈を拡張しすぎだと言わざるを得ない。確かに外部ツールをチートとする見方もある。しかしゲームを提供する側の認識はそうではないようだ。世にあるすべての利用規約を検証することは不可能なので二つのみ例示する。

9. 不正行為を禁止します。本ゲームにおいて、第三者プログラム、マクロ、クライアントサイド・ハッカー行為、編集されたゲームファイルまたは不公平な優位性を与えるあらゆるその他のものを使用してはいけません。これには、チートまたはハッカー行為を提供または促進するウェブサイトへのリンクを促す、またはそれを掲示することを含みます。*8

(25)不正ツール、不正アプリケーション、本アプリケーションの海賊版、チートツールその他本サービスの不正利用を目的としたプログラムの開発、配布もしくは使用、またはこれらの行為を第三者に誘発、推奨させるような一切の行為*9

 前者のうちでエミュレータを用いることは『不公平な優位性を与えるあらゆるその他のもの』に該当するだろう。明確なチートという単語は後段にしかないので断定はできないが、『第三者プログラム』『編集されたゲームファイル』と解釈するのが自然だ。後者は『不正ツール』『チートツール』と使い分けている。いずれも不正行為として禁止されてはいるが、エミュレータを用いたプレイとチートが同一のものとは読めない。また、スマートフォンゲームである『アズールレーン』ではエミュレータを可、チートを不可と、それぞれ区別しているという情報もある*10

 以上より、本稿ではチートとTASを別のものとして考える。

 次に、小説におけるチートの用法を検証する。これは作者によって定義が曖昧であるが、『規格外の能力で活躍する』ということは共通認識といえるだろう。そこには『本来とは異なる動作』や『不正に』という意味合いは大抵含まれていない。

 前作ではここで『(普通の)人間には不可能かもしれないが、(神のいる世界の)システム上、再現可能なスーパープレイ(=無双)を行うこと』としてチートではなくTASであるとした。しかし、この論にはある大きな間違いがあった。世界をシステムとしたとき、プレイヤーにあたる存在は主人公ではなかったのである。主人公はキャラクターである。実在するゲームでいえばマリオやレオンである。プレイヤーに最も近い地位に立つのは作者だろう。

 そうすると、一つの問題が生じる。

改造や自作ゲーム

改造されたゲームも投稿すること自体は許されています。しかし、その場合他のゲームよりも厳しい審査を受けることになるでしょう。なぜならまず改造されたゲームそのものが審査されるからです。その質が視聴者に認められる必要があり、更にそのゲームがTASを作るに値するか、またその元のゲームと比較しても価値があるのかどうか吟味されます。*6

 とある。二次創作でない限り、物語はオリジナルつまり自作である。英語の原文では、ゲームが改造か自作である場合はデモ版やベータ版やではなくリリースされていなければならないとある。尤も、これはゲームそのものの提出における規定であり、小説作品のrelease(公開)に関する議論は現状見受けられない。よって保留する。

 では『規格外の能力』をTASとするなら、Toolに相当するものは何か。もちろん、テキストエディタである。作者が行っている執筆活動はリプレイファイルの作成にすぎない。校正における『追記』はTASにおける『追記』と同じ意味を持つ。『規格外の能力』を魅せることは十分にsuperplayといえるだろう。丁度、視聴者がTASのコードを実行しているキャラクターに魅せられているのと同じ構図である。

 「では実機との違いはどこあるのか、このままでは他の作者と環境が同じではないか」と思うかもしれない。しかしそれは見当外れな問いだ。本編を含め、すべての作品はTASであるというのが本稿の主張である。実機は言うまでもなく虚構世界([7e3c32]参照)を現実世界とする世界線に住む、主人公の『魂』だ。作者はテキストエディタ上でその世界を再現している。これにより保留していた問題は解決する。虚構世界はデモ版でもベータ版でもない。また、その世界の『魂』にファイルのコードを実行させれば、『データやプログラムを改ざん』せずに再現性の確保されたプレイが見られることだろう。

 特筆すべきはキャラクターがどんな『規格外の能力』を持っていたとしてもチートではないことだ。ゲームにおいてそのシステムはよく見られる。たとえば、ロールプレイングゲームにおいてレベル上げをできるのが主人公一行だけであることは珍しくない。あるいは、『ドラゴンクエストビルダーズ*11』では『創造する力』を持っているのは基本的に主人公だけだ。これをチートと呼ぶだろうか。否であると本稿は主張する。尚、当然だが前作で述べた『"MP"10の人間が消費"MP"20の魔法を使える、や、破壊不能オブジェクトを破壊する』といった行為は依然チートに該当する。

関連 *1.小説家になろう *2.え、それってチートなんですかぁ? *3.チート(Wikipedia) *4.チート行為はやめましょう! *5.TASVideos *6.ルール *7.エミュレータ *8.PUBG-利用規約 *9.ガンホー-利用規約 *10.パソコンで簡単にアズールレーンをプレイする方法 *11.ドラゴンクエストビルダーズ cf.マクロを取り上げた作品ぺったんTS転生
作成 2019/03/19 追記 0000/00/00

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