デモコンデス(MtG)

ページ名:デモコンデス_MtG_

登録日:2011/01/22 Sat 10:04:07
更新日:2023/08/12 Sat 19:43:54NEW!
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mtg 自爆 悪魔 契約 ネクロの夏 特殊勝利 ライブラリーアウトの一種 demonic consultation デモコンデス



デモコンデスとはマジック:ザ・ギャザリング(以下MtG)の用語である。


MtGにはいくつか敗北条件があり、そのひとつにライブラリーアウト(ライブラリー=山札が0枚になり、次のカードが引けなくなる)が存在する。
デモコンデスはそのライブラリーアウトによる敗北の内、特に有名なもの。



その原因となるカードがこちら、《Demonic Consultation》。日本語訳で「悪魔の相談」
通称デモコンである。


Demonic Consultation (黒)
インスタント(アンコモン)
カード名を1つ指定する。あなたのライブラリーのカードを上から6枚追放する。
その後あなたが指定したカードが公開されるまで、あなたのライブラリーの一番上のカードを公開し続ける。
そのカードをあなたの手札に加え、これにより公開された他のすべてのカードを追放する。


MtG最強クラスのサーチカード*1の一つ。
カードゲームにおいて強力になりがちな万能サーチカード群の中でも、たった黒1マナで好きな時に直接手札に欲しいカードを持って来れる破格の性能であり、2000~2004年に禁止・制限カードとして指定を受けるまで、様々な環境で猛威を振るった。
ただし「悪魔の相談」の名が指し示す通り、この破格の利益を得るには対価として悪魔に供物を差し出さなければならない。*2
そしてその供物とは、

  • あなたのライブラリーのカードを上から6枚追放する
  • 指定したカードが出るまでライブラリーを上から公開し続けて、公開した他のカードを全て追放する

というもの。
字面ではその恐ろしさが分かりにくいが、実際にやってみると凄まじいデメリットである。


仮に、デッキ…ライブラリーの中に1枚しか入っていない《セラの天使》を《Demonic Consultation》で指定したとしよう。
ところが、供物となる「あなたのライブラリーのカードを上から6枚追放する。」の6枚の中に不幸にもその《セラの天使》があった。


すると、どうなるか?


1.《セラの天使》が見つかるまで残りのライブラリーの上をめくり続ける。
  ↓
2.当然見つかる訳がないので延々とめくり続ける。
  ↓
3.ライブラリーのカードがなくなる。
  ↓
4.《セラの天使》は見つからず、公開したカードは全て追放。
  ↓
5.ライブラリーがなくなったので、ライブラリーアウトにより敗北 *3



……悪魔に無駄骨を折らせた代償はかくも恐ろしい。
当時としては並外れたカードパワーもあって、あちこちで悪魔と契約してしまったプレインズウォーカーたちの愉快な悲鳴が響き渡った。
以上のような現象、すなわちデモコンによる自爆のことを、自虐と反省の意味を込めてデモコンデスと呼ぶようになったのである。



ただし悪魔と契約した物語の中には契約者が悪魔を出し抜いて利益だけを得た者がいるように、このカードもそのリスクを低減する方法がある。
それは「指定するカードを工夫すればいい」のである。
上述の例で言えば《セラの天使》がデッキに4枚入っていると分かっている状態なら、ライブラリーの上から6枚の中に《セラの天使》が4枚も固まっていない限り、いくばくかのライブラリーを犠牲にして確実に手札に加えられるというわけ。
もし《セラの天使》がすでに2枚手札に来ていたら、別のカードを指定して使うのもいいし、敗北のリスクを避けて使わないという方法だってある。


そして悪魔に支払う6枚+αの追放されたカードは、一見すると「もったいない!」と思ってしまうのだが、
「ライブラリーを最後まで使い切らないデッキならば、どの道使わずに終わってしまう無駄なライブラリーが存在する。ならばいくらかライブラリーが削れたって全く問題は無い」という戦略思考「デモコン理論」の発明に至る。*4


格ゲーで言うところの死ななきゃ安いに近いのだが、これはTCGという文化の黎明期だけあり非常に画期的な思考の転換だった。
ここから発展して「ゲームに負けると書いてあるに等しいデメリットがあっても、それに見合うリターンがあるなら使う価値がある」「デメリットがきついなら、デメリットの影響が出る前にそのカードパワーでゲームを無理矢理終わらせればデメリットはないも同然」
というMTGに限らない現在のカードゲームの通説の礎となり、従来のデメリット持ちカードの価値を大きく見直させたという意味では、同期の《ネクロポーテンス》と並んで偉大な存在と言える。
惜しむらくは歴史に名を残す暗黒期を築いてしまったので素直に賞賛できないことか。せめてパワーカードで収まって欲しかった…。


実際、当時の開発陣はネタカードのひとつとして作ったという。というのも、

  • 最初の6枚追放の時点で敗北のリスクがある
  • 追放したカードが二度と引けなくなる
  • そもそもサーチを使うということはデッキの中にある枚数の少ないカードを呼ぶための行為なので本末転倒

という理屈である。当然開発側にも「デモコン理論」なんて意識があるわけがない。
そして当時はよほどプロ志向が強くないかぎり、ほとんどのプレイヤーはまだまだ実物同士のトレードでカードを集めていた時代*5
つまり上述の「デッキに多く入れたカードだけを指定すればいい」という手段を取りたくても取れないプレイヤーが多かった。
「4枚あるのはコモンカードだから、わざわざ悪魔に頼んで引き増したいものでもない。悪魔に頼んで引きたいレアカードはデッキに1枚しか入ってない」というジレンマを起こす。
おそらく開発側が想定していたのは「このジレンマを感じてもらう」というもので、「4枚積みの強力なカードを指定することでカードの水増し手段として使う」なんてことは考えてもいなかった。
まさかジレンマを感じるどころかレアカード4枚フル投入を全く躊躇わないようなガッチガチに悪魔対策をした影魔道士ダブリエルのような人が喜び勇んで契約しに行くとは思っていなかったのだ。


悪魔と契約するには準備が必要。その知識を得て準備がちゃんとできたプレイヤーでないと、悪魔を出し抜くのは難しくしゃれにならない代価を支払う必要がある。
だが同時に悪魔を出し抜いてきたプレイヤーにいくつもの華々しい勝利をもたらしたのだ。



ただしこれは、あくまでも確率論の話。確率に泣かされるのは、ポケモンのストーンエッジやきあいだまだけではない。
基本60枚のライブラリーから6枚を追放、実際はゲームが続いていればそれだけライブラリー枚数は減っているので、たとえデッキに4枚眠っているカードを選択しても最初に追放する6枚の中にお目当てのカードがあったせいでライブラリーを全部吹っ飛ばされたなんてことは確率的には起こりうるのである。
こういった劇的なデモコンデスでなくとも、指定したカードがライブラリーの底の方に眠っていたせいで土地や他の実用的なカードがあらかた吹っ飛んでしまったことで結局敗色濃厚になるということも起こりうる。
いくら「引けなかったカードはどれも同じ」と開き直るデモコン理論も、実際には開き直り切れない部分もあるのだ。



さて、デモコンの正しい(ある意味正しくない)使い方が分かってくると、このカードは類まれなパワーカードと認知されるようになり、大会でもたびたび見受けられた。
そしていくつかの試合では、プレイヤーを自爆させて理不尽な敗北をもたらしたのである。
かのネクロの夏全盛期、1996年世界大会の決まり手もこれであった。1ゲームに2回も《Demonic Consultation》を唱えたことで、勝てたはずのゲームを落とし、目標にしていたタイトルを目前で逃してしまったのだ。
また、グランプリ00京都の決勝戦でも、初戦を勝利し二戦目も勝利目前という優勢のプレイヤーが、確実な勝利をものにするべく、ライブラリーに3枚眠っている《ファイレクシアの抹殺者》を指名してDemonic Consultationを唱えた。すると最初に追放された6枚に3枚の抹殺者の姿があり、デモコンデスによる敗北を喫し、そのまま三戦目も敗北、栄冠を逃すことになった。


唱えるべきではなかった、というのはいくらでも言える。しかし実際、勝ち目の濃い賭けなら挑むのに十分と考える者が勝ちを得る。
劇的な場所での敗北だから目立つのであり、彼らはこの戦法で何度も勝ちを得てきた。実際勝利をもたらした回数の方が多かったのだろう。
逆に野試合や、大会の序盤戦などでこのようなデモコンデスを起こしたプレイヤーも数々いたことだろう。今となっては忘れられているだけで。
悪魔は本当にいつ微笑むか裏切るか分からないのである。そういう意味でも、なんだかフレイバー的に完成されたカードといえないだろうか。


悪魔「ご利用は計画的に」



さて、実際デモコンデスで勝敗が決した場面に遭遇したことがないと単なる笑い話なのだが、デモコンデスを起こした&起こされた当人達からするとめちゃくちゃむなしい
というか、しらける。
使った側が怒ったり嘆いたりするのは「デモコンデスのリスクを加味した上で使っているのに怒るのか」とあきれて終わりだが、そういうのがなくても使われた側や見ている側がなんか……こう……喜んでいいのかなぁ……って。
唱えれば「圧倒的有利で勝利に近づく」か「勝手に自滅して負ける」という意味では、デュエマの「出した時点で勝敗が決まってしまうこいつ」に近い。使われたら自滅を祈るしかないが、いざ本当に自滅されるとげんなりするアレである。
実際、現在のMTGはゲームを大味にするようなパワーカードは時々あっても、デモコンのような「問答無用で負ける可能性もあるがそれ以上のリターンを得られる可能性がある」類のカードはほぼ皆無。これの教訓から意図して開発を避けている節がある。



もちろん後述の「わざとデモコンデスを起こす」の場合はまったく別。悪魔が微笑む時代にろくなもんはないのだ。




デモコンをデッキに入ってないカードを指定して唱えると、確定でライブラリーがすべて追放される。つまりわざとデモコンデスを起こせる。
そんなことしても次ターンにライブラリアウトで負けるだけだが、これを利用するコンボがある。


「ライブラリーアウトしたとき、逆に勝利する」という効果の《研究室の偏執狂/Laboratory Maniac》を出した状態で、相手のターン終了時に対応してこれを実行すれば、そのまま自分のドローを迎えて勝利である。
現在デモコンが使える環境はヴィンテージとEDHくらいのものだが、だいたい適当なカードを指定して自分のライブラリーを吹っ飛ばしてもらったあと、《研究室の偏執狂》に類似した効果を持つ《タッサの神託者》《神秘を操る者、ジェイス》などを出して「ライブラリーがないので私の勝ちです」を行うという勝ち筋を持ったデッキになっている(もちろん普通にサーチとして使う場合もある)。
さらにはモダンでも、デモコンのリメイクである《大霊堂の戦利品》を採用したデッキで同じような勝ちパターンが用意されている。
この時指定するカードは「神河:輝ける世界(NEO)」で登場した《お前はもう死んでいる》にするのがおすすめ。
後は《勝利の算段》とか《勝利の破壊》なんかもそれっぽい。


追放されるカードが表向きというのも重要で、追放領域から唱えられる《霧虚ろのグリフィン》などにとってはむしろ追放された方がアドバンテージというとんでもない状況を引き起こす。
デモコン登場から25年近くが経つが、悪魔との付き合い方もすっかり変わってきた。今となってはデモコンデスをリスクにしてのサーチより、むしろデモコンデス自体がこれらのコンボパーツになってしまっている。


悪魔「利用されたのは俺だ!」



余談ながら。


この強烈な効果ゆえに、別のゲームで似たようなカードが出ると必ず引き合いに出されるカードである。
たとえば遊戯王に《強欲で貪欲な壺》というカードが登場した時、このデモコンがたびたび引き合いに出された。
「自分のデッキの上からカード10枚を裏側表示で除外して発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。」という効果は、まさしくデモコンを強く想起させるものだった。
この10枚裏側表示という壺に食べさせるコストを論じる際、「デモコン理論」を持ち出すプレイヤーが多かったのだが、そもそも「制限・準制限カードという概念がある」「名称指定のサーチを多用する」「マナ・コストの概念がない」など、ゲーム性がまったく違うので議論する意味はない。*6
テキストは似ていてもゲームごとにリスクが異なるため、MTGの理論をそのまま流用してもあまり意味はない。ゲームそれぞれにデモコン理論との向き合い方がある。


悪魔「知識を得たい?だったら俺に相談しなって!」



追記・修正はライブラリーに4枚残ってるはずのカードが追放された6枚の中に含まれていた人にお願いします。


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  • こういう大味なカードって自滅込みで面白いよね。 -- 名無しさん (2014-06-12 21:34:03)
  • 第六感「うわあ悪魔ひでえ」 -- 名無しさん (2015-01-31 00:09:15)
  • 最初の6枚に無かったとしても底の方にあって土地が全て消し飛んだり、なんて光景もままあった -- 名無しさん (2015-08-27 18:08:12)
  • 魔導雑貨「なんて効果だ」  -- 名無しさん (2017-01-27 15:51:39)
  • ↑墓地に置くんじゃなくて除外だからな、あんたらと違って -- 名無しさん (2017-09-19 18:08:02)
  • むしろ今ではライブラリーを消し飛ばす手段として使われてるという -- 名無しさん (2020-06-01 13:32:21)
  • 最後の遊戯王下げの記事何これ? -- 名無しさん (2020-12-03 07:04:45)
  • 確かに最後の余談必要ないから削ったけどここに限らず最近ギャザ項目で攻撃的な記述が目立つな。 -- 名無しさん (2020-12-03 07:53:08)
  • デモコンデスの項目なのに延々とデモコン自体の解説がダラダラ続けてあって、読んでて疲れる。デモコンの項目作ってそっちでやればよかったのに -- 名無しさん (2022-06-05 17:47:25)
  • 底の方にあってデッキが壊滅するのはまだいい(どのみち引けないカードだったのだから)。最初の6枚に固まってて「悪魔の甘言に屈せず自分を信じていれば……」感は正しく悪魔的。 -- 名無しさん (2023-02-24 06:51:40)
  • デモコンデスではないがドルイドの誓い相手でライブラリーボトムにエムラクールで相手敗北、下から7枚目にグリセルでドロー能力起動できずになんだかなーと相手に同情したことはある。 -- 名無しさん (2023-02-24 07:49:39)
  • デモコンデスでしらけるとか書かれてるけど運ゲーに特化したカードでもなし、ましてや引き運という意味でなら片方初手から大事故で勝負にならないこととかあるしデッキを削る例なら墓地ソースでキーカードが悉く落ちるとかもあるしそういった運要素を含めてカードゲームの醍醐味として受け入れなきゃいけないと思うがねぇ、あとデモコンは勝利プランじゃないわけで勝利プランとして使われるボルバルとの比較も違うくないか? -- 名無しさん (2023-04-19 16:42:39)
  • 余談で思ったけど言われてみればMTGってヴィンテ以外はルール上の4枚制限しか無かったな -- 名無しさん (2023-06-28 12:02:25)
  • 制限ルールに関してはむしろあるのが普通でMTGの方が異例な気がするんだけど -- 名無しさん (2023-06-28 16:26:27)
  • 野良試合ですら、起きてしまうと「あっ」の一言とともに一瞬空気が固まるからなあ。大会で起きたら気まずいだろう。 -- 名無しさん (2023-07-13 23:16:16)

#comment

*1 欲しいカードを山札から探し出す事が出来るカード
*2 悪魔の教示者というカードが2マナで万能サーチ、悪魔らしいことをしていないというネタを受けてのこととも思われる
*3 厳密に言うと、敗北するのは"ライブラリーが0になった状態で、次にカードを引くことになったとき"である。しかしデモコンでクリーチャーをサーチするなら「相手のエンドに対応して使う」のが基本なため、直後に自分のターンが回ってきてドロー不能で敗北する。
*4 ちなみに開発されたのはデモコンではなく《オークの司書》というまったく別のカード。こちらもデッキトップのカードをいくらか追放する事で手に入れたいカードを入手しやすくするタイプのカード
*5 デモコンと甲鱗はどっちもアイスエイジ初出。あのネタもあながちネタだらけとは言い切れない
*6 たびたび比較されるカードゲームだが、遊戯王は「マナやチャージなどのリソース管理がない」「制限・準制限という概念がある」点がかなり異質。たとえカードの効果が似ていても簡単に比較できるものではない

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