登録日:2011/04/22(金) 19:43:18
更新日:2023/08/12 Sat 19:42:25NEW!
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42行聖書とは、世界で初めて「活版印刷」され大量生産された本(修道院で使うウルガータ聖書)である。
ドイツのマインツにてグーテンベルクによって1455年に製作されたものであり、印刷部数は約180部ほどと言われている。
少ないと思われるかもしれないが、従来の一枚ずつ手で書き写す「写本」だと生産数も数冊程度の希少品。それと比べれば文字通り桁違いである。
加えて当時の写本は、写本業務にお金を出していたスポンサーを楽しませる意味もあって、飾り文字やイラストに凝ったり、場合によっては表紙を金や宝石で飾りつけたりと、殆ど工芸品と言っても差し支えない出来栄えにする事もあった。
もっともそういう装飾本は儀礼用であり、記録媒体としての「書物」と言えるかは微妙だが。
因みに金や宝石なんか装飾された写本は書物庫ではなく、宝物庫で保管された。そりゃそーだ。
さて、話を42行聖書に戻そう。
名前の由来は内容が42行しかないから…ではなく、1ページに42行印刷されていたからである。
もっともこの頃は印刷と製本・装飾を行う場所は別であり、グーテンベルクは印刷だけを行い、印刷されたページは樽に詰められパリやヴェネツィアまで運ばれて製本された。
樽をゴロゴロと転がして船に載せて運んでいたそうである…
そういう事情もあり、文字部分は印刷されたものでありどれも同じながら、一冊一冊の装飾や造本は写本の伝統や美にならって行われたため、厳密には一冊一冊が違う造りになっている。印刷した紙も、羊皮紙だったり植物由来の紙だったりする。
因みにこういう本をインキュナブラ(揺藍期本)と呼ぶ。中世と近代の合間に現れ、その後印刷技術が広まるにつれ消えていった稀なる本である。
現存するものにはこれまでの所有者の紋章や署名が残され、歴史を感じさせるものとなっている。
完全な形で残っているのは世界に12冊。日本では慶應義塾大学図書館が所蔵している。
本としての形は残っているが、落丁が存在するものを含めれば48冊。こちらは関西学院大学や東北学院大学などが所蔵している。
他にもページの一部だけというのも存在する。
非常に希少に思えるが、生産されたのが560年前ということを考えれば、1/4も残っているのは驚異的と言える。
まあ、量産されたとはいえ、まだまだ本が貴重品であった(=大切に扱われていた)時代のものだから、後世まで残ったのも当然と見ることもできる。
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