登録日:2022/07/20 Wed 20:25:14
更新日:2024/06/24 Mon 13:14:33NEW!
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『課長島耕作』とは、弘兼憲史の漫画作品である。
【概要】
大手電機メーカーの初芝電器産業に勤務する課長・島耕作を主人公とした、サラリーマンの群像劇である。
サラリーマンが主人公の漫画としては日本でも屈指の知名度を誇る。
そのリアルな描写から作者および島が属する団塊の世代に大ヒットし、テレビドラマや映画化、CMでの起用など数多くのメディア展開がなされた。
当初は島も含めた社員の男女関係やサラリーマンの悲哀を中心に描いていたが、1990年代以降は現実の日本経済や社会動向を巧みに取り入れ、その中で島耕作が立身出世してゆくストーリーへと変貌していった。
そのため当初は課長だったのが「部長→取締役→常務→専務→会長→相談役→社外取締役」とサブタイトルも変更されている。
2001年からは若手時代を描いた「ヤング島耕作」の連載が開始され、今度は「ヤング(主任編)→係長→学生→少年」と遡り、
最終的には島耕作の人生を描いた大河作品と化した(作者曰くスター・ウォーズ方式)。
尤も作風が変わったこともあり、初期の課長と若手時代では様々な矛盾が生じるようになった。長期連載ではよくあること。
学生編は当時頻発していた全学共闘会議の描写など作者の実体験がふんだんに描かれているため、当時を知る貴重な資料ともなっている。
島の初芝社長就任時には、各全国紙の朝刊の社会面に就任記事が掲載されたほか、就任披露会見までも実施され、当時総理大臣であった麻生太郎との対談記事まで掲載された。フィクション企業の社長会見がここまで大々的に展開されることはまずなく、本作の影響力の高さがうかがえる。
【展開】
本作の特徴は、スピンオフや公認パロディが多いことである。
主要登場人物を主役にしたもののみならず、
- 起きたら隣で見知らぬ全裸女性の死体を発見した島耕作が、現場から逃亡しながら殺人事件の真相を探る「島耕作の事件簿」
- 転生したらスライムではなく島耕作になってしまった「転生したら島耕作だった件」
- 転生したら架空国家の騎士団長になっていた「騎士団長 島耕作」
- 連載後イブニングの売り上げを急落させた「ニート島耕作」
- ブラック企業に勤める社畜の主人公が修羅の国に転勤した「社畜! 修羅コーサク」
…と、ほんとに許可が降りたのか?と思えるようなぶっ飛んだものも多い。
尤も島耕作自身も社長就任記念で「イブニング」の各漫画に出張で登場する(この人とも絡んだ)など、作者がパロディに理解があるのだろう。
【登場人物】
・島耕作
本作の主人公。
山口県出身で、早稲田大学卒業後の1970年3月に初芝電器産業に入社。
日本各地から世界各国を飛び回り、たとえ左遷されてもその左遷先で大成功を果たして本社に復帰し、最終的には会長職まで上り詰めた完璧超人。
ベッドのテクニックも一流で関係を持った女性は多数、そして隠し子もいる。
連載開始当初は大学時代の後輩である怜子と結婚し、奈美という一人娘を設けていたがすでに夫婦間は冷めており後に離婚。
最終的には長年のパートナー兼であった大町久美子と結婚した。
座右の銘は「It's none of my business.」(「俺の仕事じゃないね」または「知ったこっちゃあないね」)
島なりの信念なんだろうが、見方によっては、『ビジネスマンとしてそれはどうなのか?』と見られてもしょうがない言葉である。
プロフィールが一緒なので、モデルは漫画家にならなかった作者*1の理想形・・・ではなく、加山雄三*2や中博など複数の人物がモデルとなっている。
年齢の割にほうれい線が少ない、老眼鏡をかける描写が無いなど年齢不相応の若々しい顔つきとなっている。波紋でも使っているのだろうか
また、作者自らが決めた不文律として「人を蹴落として勝つ生き方はしない」「自分から女性を口説くことはしない」
この二つがあるため自ら女や他者の破滅を求めることはなく、どちらかと言えば流れに対しては受動的な側面もが強い。
経歴、能力だけを羅列すれば確かに完璧超人でともすれば「都合がいい」と受け取られがちなスペックだが、失敗や恥といったものと無縁なわけではなく、予期せぬアクシデントも多い人生である。
そのためか望まぬ別れや悲劇も多く、失いたくないと思える大切な人や和解し分かり合えた人物でさえ出世街道の過程で容赦なく失っていくというケースがひどく多い。
そういった意味ではとにかく能力以上の棚ボタが多い人生とも、逆に運命に翻弄される強烈に不幸な人生の持ち主とも言える複雑な存在である。
・大町久美子
島耕作のパートナー。
吉原初太郎を父に、その愛人だった芸者の愛子を母に持つ。
島とは運命的な出会いをし、長く愛人恋人として公私ともにサポートする。
子宮がん発見後に島と籍を入れることに。数少ないまともなスピンオフとして「JK大町久美子」なる作品も制作された。
・木暮久作
島の親友にして私立探偵。
島では手の出しにくいアングラやアウトローの案件で島をサポートする。
専務編以降は金融関連の案件を取り扱うことも多くなり、知人である金融雑誌の編集者と手を組んで仕事をすることも。
同作者の別作品「ハロー張りネズミ」のレギュラーキャラであり、スターシステムとしての登場である。
・樫村健三
初登場時は国際部渉外課課長。
島とは大学のESS時代からの中で、初芝にも同期入社。
妻子持ちだが当人にはアッー!の気があり、大学および初芝の入社も島に振り向いてもらいたかったためだと告白している。
勿論島は丁重に断ったが、クビになりそうになった窮地を救われ、フィリピンでのビジネスを成功させるなど一同僚として友情を築いていた。
ところがフィリピンからのゴルフの帰りにゲリラからの銃撃を受けて蜂の巣になり死亡。
死の間際にも島に抱かれながら「俺のことを愛しているか?」と尋ね、島も「愛している」と答えて別れを告げた。
会長編では息子である翔太が登場。丸商交易という水産系商社に勤務しており、東南アジアでビジネスを担当。同じ海外という危険な場所で勤務していた父親を尊敬しているという。
・吉原初太郎
初芝電器産業の創始者かつ初代社長兼会長。
町工場であった初芝を大手電器メーカーへと育てた「経営の神様」。
島と中沢に対しては早くからその才覚を見抜いていた。
大町久美子の母親・大町愛子と愛人関係を持っていたが、晩年は性欲の衰えから自身の後任である木野と愛子に関係を持つよう計らい、その様子を見守るという変態的な側面も見られた。
死去後、上層部が吉原の持っていた初芝の株を売却し、その直後に死去を発表するというインサイダー取引を実施しており、島はその片棒を担がされている。
モデルは経営の神様と慕われた松下電器産業の創業者・松下幸之助。
・中沢喜一
初芝電器産業5代目社長にして島が最も敬愛する上司。
無派閥主義者の一匹狼であるが、部下を守るため時には上司にも楯突くなど、周囲からの人望も厚い。
「ヤング」時代には製造物責任法(PL法)の必要性をいち早く説くなど先見の明も見られた。
島の才能をいち早く見抜いており、プライベートや人生観を語るなど深い付き合いが見られた。
相談役に退任後、愛人との逢瀬中にくも膜下出血で死去、享年65。この作品の上司はこんなんばっかりである。
・今野輝常
島耕作の上司で、初登場時は初芝電産の大阪ショールーム所長。
部下には厳しく上司には媚びへつらう典型的な中間管理職兼小悪党キャラで島とは敵対関係に。
その後は自身のセクハラや求心力の無さが災いして閑職に回され、最終的には島とも和解して改心。
定年退職の際は島からオープンカーで祝福された。
退職から数年後、福岡で再会したのだが…
その人間臭さから作者のお気に入りのキャラクターでもあったが、本来の名前は「きつね」だったのが「てるつね」と誤植していたことが発覚し、謝罪を行っている。
・八木尊
初登場時は島が就任した総合宣伝課の部下。
ハーバード大学卒業で海外勤務歴の多い優秀な社員で、島と同時期に取締役に昇進。
昇進後早速社長の座を狙うなどクレバーながら野心にあふれる人物だった。
常務編以降は現地の商慣習を無視した強引なやり方を推し進め、社内での信用を大きく落としてしまう。
同時にロシア人ハーフのホステス和枝に入れ込み、会社の金を使い込んだうえインサイダー取引にも手を出す。
最終的には和枝をロシアまでストーカー同然に追跡し、現地で殺害。
直後自らも何者か*3の手によって冬のモスクワの川に浮かべられた。
自業自得とはいえ、昇進後の転落ぶりと最期の悲惨さはシリーズトップクラス。
・八ッ橋新子
サンライトレコードに専務として出向後に島が担当した演歌歌手。
年増の女性だが、ベッドの上では歴戦の名手である島に「感動しました」と言わせるほどの技能を持つ。
長らくドサ回りで不遇をかこっていたが、起死回生で出した「東京タワータンゴ」が大ヒットし紅白出場が決定。
しかし、その最中癌が全身に転移していたことが発覚。生命を燃やし尽くすことを決意し手術は受けずに紅白に臨み、翌年の正月に息を引き取った。
モデルは当時連続テレビ小説「ふたりっ子」に登場したオーロラ輝子(演:河合美智子)で、作中の設定はほぼ同じ。
余談だがこのオーロラ輝子にも叶麗子というモデルの歌手がおり、そちらは現在も歌手活動を続けている。
・ナンシー・アレン(Nyacco)
島の娘・奈美が発掘した新人歌手。
実はアメリカ赴任時代に交際していた女性、アイリーン・モーリイとの間にできた娘で、奈美とは腹違いの妹にあたる。
実の父親を捜すために日本での活動を希望し来日。Nyacco(ニャッコ)の芸名でデビューし一躍大人気となるが、父親探しに進展が無く1年であまりアメリカへと戻った。
しかしその後は鳴かず飛ばずで、アル中・薬物・流産・パパラッチへの暴行と自堕落な生活を送っており、島が再会したときはその容姿は大きく変わっていた。
島との再会で立ち直ろうとした矢先、住んでいたアパートに飛行機が激突して片腕と両足を喪失。島が集中治療室で再会した際は自身が父親であることを認め息を引き取った。享年20。
・神奈川恵子
島耕作の社長秘書の一人。外務省出身でロシア語が堪能。
ヌンチャクを得意としており、パワハラ紛いで家事を押し付けてきた秘書室長の妻を倒したこともある。
モデルは本作の大ファンであるタレントの中川翔子で、かねてから出演を希望しており実現したもの。
【余談】
- 初芝電器産業のモデルは作者もかつて勤務していた松下電器産業(現:パナソニック)で、作中の展開は史実のパナソニックとほぼ同じものとなっている。登場するキャラクターも、実際のパナソニック社員がモチーフとなっていることが多い。
- 実写ではフジテレビのドラマ版で演じた宅麻伸の当たり役として知られ、シリーズが1998年まで制作されたほか、NTTドコモのCMにも同じ役で起用されるなど、「宅麻伸=島耕作」のイメージは未だに根強い。また、2008年のドラマ版(主演:高橋克典)では他局であるが宅麻が中沢役で登場している。
- 2022年にはACジャパンのCMとして、若手の島耕作に対し、各世代の島耕作が腎臓検診を受けるように勧めるという島耕作バースなCMが制作・放送された。こちらの声は全て宅麻伸が担当。
追記・修正は社長就任会見を行ってからお願いします。
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▷ コメント欄
- 個人的な -- 名無しさん (2022-07-20 22:34:28)
- ↑途中送信 個人的な感想になるけど上司にしたいキャラで上位に入るのは違うと思う -- 名無しさん (2022-07-20 22:35:43)
- 主人公補正といえばそれまで -- 名無し (2022-07-21 08:36:42)
- ワイも途中送信や… 主人公補正だと言えばそれまでやが、あそこまで女にモテるのはやはり仕事ができて、アレのテクニックがあるからなのだろうか -- 名無し (2022-07-21 08:41:40)
- 異世界にいった島耕作はどうしても宅麻伸さんの別作品であるダンジョーを彷彿とさせる -- 名無しさん (2022-07-21 09:31:56)
- 「ニート島耕作」って初めて聞いたけど、イブニングの売り上げを急落させたってマジか… -- 名無しさん (2022-07-21 11:05:04)
- アザゼルさん作中で描かれてただけだから現実で描かれた訳ではないよ!! -- 名無しさん (2022-07-21 13:11:16)
- 騎士団長になってもやることは同じ… -- 名無しさん (2022-07-21 13:53:50)
- 中沢さんが亡くなる回(確か部長島耕作だっけ?)は泣かされたが、その少し後に刊行された「ヤング島耕作」で、若い頃の姿で改めて再登場してたのが感慨深かった。 -- 名無しさん (2022-07-21 16:31:48)
- タイトルの雰囲気からビジネス漫画なのかと思って読んだら男女関係のアレソレやらの人間模様がメインのお話だったので驚いた記憶がある。 -- 名無しさん (2022-07-21 17:45:28)
- 喰いタンにゲスト登場した回は笑った。 -- 名無しさん (2022-07-21 20:18:06)
- "課長"島耕作って項目なら、課長時代に限定した方がいいんじゃない? -- 名無しさん (2022-07-25 10:24:02)
- なんて言うか、日本って国が衰退した原因が良く分かるリアルな作品だと思う -- 名無しさん (2024-05-07 13:37:30)
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*2 耕作という名称も、加山のペンネームである弾厚作から取っている。
*3 ロシア大使館員が怪しい株取引に気づく描写があり、そこの関係者である可能性が高い。
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