カンフーハッスル

ページ名:カンフーハッスル

登録日:2020/01/17 Fri 06:56:18
更新日:2024/05/16 Thu 11:00:49NEW!
所要時間:約 19 分で読めます



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映画 香港 中国 武侠小説 チャウ・シンチー 上海 サモ・ハン・キンポー ソニー・ピクチャーズ カンフー カンフー映画 カンフーハッスル



我不入地獄 誰入地獄我、地獄に行かずして誰が行く



ありえねー。



「少林サッカー」を凌ぐ!超攻撃型エンタテインメント炸裂!!




『カンフーハッスル(原題:功夫/英題:Kung fu Hustle )』は2004年に公開された香港/中国映画。
日本での公開は2005年1月1日(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)。


2001年(日本公開は2002年)に公開されて国外でも大きな話題を集めた『少林サッカー』に続く、チャウ・シンチー(周星馳)監督・主演作で、前作が米国でも高い評価を受けたことから、本作ではハリウッド資本を受けて制作された。


引き続き、前作でも発揮された人脈とノウハウを使いつつも巨額の予算が得られたことから前作でも大きな話題となったCGアニメ等を利用したVFX効果のレベルが大きく向上しているのも特徴。
わざとらしく見えた前作のCGに対して、今作では一部のシーンを除いては、現在の視点で見ても自然なレベルで特殊効果が入れられている。


また、香港映画お馴染みのワイヤーアクションも取り入れられているが、チャウ・シンチーは『トリビアの泉』に出演した際に技法を知って、反対に持ち帰ったとの“トリビア”も囁かれる。


また、VFXに頼らない殺陣も本格的で『マトリックス』シリーズ等のハリウッド映画にも携わったユエン・ウーピンと、
カンフー映画全盛期の大スターの一人でプロモーターとしても知られるサモ・ハン・キンポーが名を連ねている。


また、日本では“『少林サッカー』の続編”ということもあってか、コメディ映画としてのプロモーションがされており、確かに本作でもコメディ的な要素は少なくないものの、“ありえね~”をキャッチコピーにされてしまう等、完全にお笑い方面でプロモーションされた。
それ以上にチャウ・シンチーが子供の時から憧れ、慣れ親しんだ香港の武俠小説やカンフー映画へのオマージュとしての側面が強く、出演者に往年の香港映画界を支えた重鎮や、アクション指導、俳優としても活躍した“本物”の武術家がキャスティングされている。
また、前作から引き続いての日本の漫画の他、米国のカートゥン的な演出も見られる。


実際、本作に於いて言及されている人物名や架空の武術や超人的な技については明確に元ネタが存在したりしており、それ等を踏まえて見ると“より”楽しみが増す……という仕掛けとなっている。そうした事情が日本でイマイチ受けなかった部分ではあるのだろうが。


前作に比べると笑える要素は少ないためか、日本では前作程のヒットとならなかったものの、本国や米国では前作以上の評価を受けた。
現時点での“香港映画史上最大の興行収入を得た作品”であり、前作『少林サッカー』の記録を塗り替えての評価である。


05年にハリウッドで公開された外国語映画としても最大のヒット作ともなり、ゴールデングローブ賞外国語映画部門にノミネートされた他、米国放送映画批評家協会賞を受賞。
米国以外では英国アカデミー賞外国語映画部門にノミネート。
第42回台灣金馬奨では最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞と、この年のアジア映画の頂点であった。



【物語】

──1930年代の上海。
西洋の資本や技術も入り、急速に近代化すると共に組織犯罪も横行していた街では、対立組織に対する苛烈な攻撃と粛清を武器に急速にのし上がってきた新興ヤクザ“斧頭会”が天下を獲り、その威勢の前には警察権力も無力で、寧ろ買収されて顎で使われる有り様であった。


……そんなある日、貧しいながらも呑気な住人達が街の喧騒とは無縁の平和な生活を送る、町外れの貧民窟“豚小屋砦”に二人組のチンピラがやって来る。


斧頭会の構成員と組長を名乗ったはいいが、ヘッポコぶりからあっさりと正体を看破されたチンピラが大家の奥さんに恫喝される中、チンピラが苦し紛れに着火した爆竹が、たまたま豚小屋砦の前を通りかかった本物の斧頭会の兄貴(副組長)の頭を焼いてしまい、ブチ切れた兄貴と取り巻き達が乱入。


チンピラが事態を住民達に押し付けたことで、犯人探しが始まってしまう。


……しかし、半ケツ理容師を殴ろうとした瞬間、反対に何者かに吹っ飛ばされた兄貴は、胴体を二つ折りにされて籠に押し込まれる。


瀕死の兄貴の命令で手下が本物の“斧頭会”専用の爆竹を空に放つと、大きな斧のサインが……。


それを見て本物の・・・組長以下、大集結する斧頭会のヤクザ達。


住民達が表に引き出され、犯人探しと共に凄惨なリンチが開始されようとしたその時、名を挙げたのは豚小屋砦の住人で、それまでは素性を隠してひっそりと生きてきた三人の達人であった。


面子を潰され収まりがつかない組長は、達人達を始末する為に裏社会で伝説となっている殺し屋を呼び寄せるが……。



【主な登場人物】

※以下、ネタバレ部分は折り畳み。


  • シン

演:チャウ・シンチー/吹替:山寺宏一
一応は本作の主人公。
前作の主人公と名前が一緒だが、セルフパロディ(「サッカーなんかもうやめた!」)以外に血縁等の関連があるのかどうかは不明。
幼い頃は正義感が強いが少し間の抜けた少年で、怪しい浮浪者(演:ユエン・チョンヤン)に“世の中を救うカンフーの天才”と煽てられるままに安っぽいカンフー教本「如来神掌」を子供にとっては高い金で買い叩かれていた。
それでも、純粋に世界平和に役立つことを信じてインチキ教本で学んでいたが、いじめられていた聾者の女の子を助けられなかったことからくじけ、悪の道に走った……ものの、そこでも資質の問題なのか半端者のチンピラ以下にしかなれなかった。
勢いのある“斧頭会”を名乗り、ショボい詐欺行為をしようとしたことが全ての騒動の元凶となる等、ハッキリ言ってクズ。
やることなすこと上手くいかないが、鍵開けは神業で、それで“斧頭会”のリンチから逃れた。
また、本人も気付いていないが異様に回復力が高い・・・・・・・・・という特異体質の持ち主で、ナイフで刺されてもコブラに噛まれても知らずに回復していた。
終盤、自らが解き放ってしまった火雲邪神の拳を裏切りから受けてしまうが……。

実は、浮浪者の言っていたこととカンフー教本は本物であり、人智を越えた領域の神技『如来神掌』*1の使い手。
真の使命に目覚めていないが故に才能の凡てが覚醒せずに眠ったままだったが、聾者の女の子が成長したアイスキャンデー売りとの出会いや正体を明かした大家夫婦の言葉と戦いにより目を覚まし、更に一度“火雲邪神に殺された”際の打撃により全身の経絡が開き、完全に覚醒。
“唯一無二、真の達人”として凡ての決着を付ける。



  • シンの相棒

演:ラム・ジーチョン/吹替:草尾毅
シンとは同郷らしい太っちょで、シンと共に詐欺行為に手を染めている。
詩人を気取ったりと調子のいい部分もあり、知らずにシンを不幸な目に遭わせていることも。
中盤、余りの惨めさからキレたシンに一方的に別れを告げられる。
演じているのは前作の“空渡り”であり、シンチー作品を経て以降の地位を築けたという。

エピローグでは、シンの開いた飴屋の店員となっており、和解した模様。



  • 大家夫婦

演:ユン・ワー/吹替:樋浦勉
演:ユン・チウ/吹替:磯辺万沙子
“豚小屋砦”の大家で、朝から酔っ払っては住人にセクハラ行為を働くようなお調子者の旦那と、ヘビースモーカーで口うるさく、腕っぷしの強い奥さんの不細工な夫婦。
妙になよなよしているからか、旦那は奥さんにボコボコにされ上階から叩き落とされても生きているというギャグ補正の超人で、奥さんは音響兵器並の大声を持ち、カートゥンか特撮の高速フォーム並のスピードで走れるギャグ補正の超人である。
“斧頭会”の襲来の際には、旦那は頭に突き落とされた鉢植えの土を再び盛って死んだフリを続け、奥さんはさっさと部屋まで逃げて布団をひっかぶって隠れていた。
結局、ヤクザ達は素性を隠して暮らしていた住人の三人の達人に追い出されるものの、トラブルの元であるとして三人を追い出そうとして他の住人達から非難を集める。

その正体は伝説の達人“楊過”と“小龍女”で、実はギャグ補正ではなく人間レベルを越えた達人だからこその特異体質の持ち主達である。
*2
本作では楊過は太極拳の達人。
小龍女は“獅子の雄叫び(獅子咆哮功)”の使い手。
かつて、一人息子を武術大会で失ってからは戦いから身を引いて隠遁していた訳だが、身を案じて豚小屋砦を離れさせようとした矢先に三人の達人が刺客に葬られたことで遂に立ち上がり、刺客達を退けるといつの間にか斧頭会の車に乗り込みタバコに火を点けさせたり無言で「これ以上やるなら喉を掻切り地獄へ落とすぞ」とポーズを取り、散々に脅しつけた。
……しかし、それでも事態が収まらないと見抜いており、斧頭会の本拠地のあるカジノに乗り込んでいた所で、解放された“火雲邪神”と戦うことになる。
個々では自分達でも及ばない邪神の力に窮地に追い込まれるも、夫婦のコンビネーションとして放った釣り鐘を利用した“強化版獅子の雄叫び”で邪神を倒す寸前まで追い込むも、一瞬の隙を突かれて暗器で刺されてしまう。
刺されたまま邪神を引き込み膠着状態になるも、夫婦の戦いを見て少年時代の正義の心を取り戻したシンが無力ながらも加勢し邪神に攻撃したことで戒めから解かれ、怒りの邪神に殺されたも同然に痛め付けられたシンを連れて一瞬の内に脱出。
施術をしても回復する筈のないダメージを負った筈のシンが急速に回復していくのを目の当たりにする。
旦那役のユン・ワーはサモ・ハンやジャッキー・チェンの後輩でブルース・リーのスタントや様々なカンフー映画の武術指導で知られる有名俳優。ジャッキー映画のサイクロンZでは華麗な足技で翻弄しつつも葉巻を吸うことを止めない敵マフィアのボスを演じた。
奥さん役のユン・チウも若い頃に007への出演経験もある往年のアクション女優である。
本作において注目された後は夫婦役で何本かの新作映画が制作されたとのこと。



  • 粥麺屋

演:ドン・チーホウ/吹替:坂東尚樹
豚小屋砦で住人の胃袋を支える人の良い粥麺屋の主人。
言葉の節々に英語を入れて喋る。
実は“五郎八卦棍”の使い手たる三人の達人の一人。

斧頭会の襲撃に際しては最後まで正体を明かさなかったものの、ヤクザ共が銃器(トンプソン)を持ち出して来たのを見て店の竿を次々と投げつけて破壊。
自らも竿を振るってヤクザ達を撃退した。
暗殺者の襲撃に対しては棍ではなくを振るって対抗するも後一歩の間合いが届かず倒れ、その後は正体を明かした大家夫婦の戦いを見届けた。
今際に悩める大家夫婦の肩を押すつもりで声をかけたが、英語で叫んだ為に(映画『アンタッチャブル』の台詞より引用されたもの)、二人には通じなかった。



  • 仕立屋

演:チウ・チーリン/吹替:岩崎ひろし
豚小屋砦でも重宝される赤パンもお洒落なオカマが入った仕立屋の主人。
なよなよを大家夫婦に弄られる位の人の良いオッサンだったが、実は“洪家鐵線拳”の使い手で三人の達人の一人。

ヤクザ共の襲撃に際しては最初は店に隠れていたが、店に叩き込まれた組員が襲いかかってきたことから参戦。
レールにかけていた鉄輪(鐵線)を腕に嵌めての攻防一体の技でヤクザ共を叩きのめした。
ちなみに上着を脱いだ下の肉体は今作でも恐らく一番のムキムキである。
その後、豚小屋砦を出ていかなければならなくなり、店終いをしていた所で暗殺者の襲撃を受ける。
一対一の攻防では互角であったものの、暗殺者が合流してからの琴の音による遠距離からの攻撃は流石の鉄輪でも防ぐことは出来ず、一方的に攻撃を受けることになった。
その後、粥麺屋に助けられるものの、粥麺屋も追い込まれた所を庇って音による拳の連擊を受けて沈む。
ちなみに、オカマ演技もキャラクターも立っているが、中の人は武道家の方が本職である。



  • 人足

演:シン・ユー/吹替:楠大典
豚小屋砦に住む、無口だが働き者の人足。
実は“十二路譚腿”の使い手で三人の達人の一人。
斧頭会の兄貴を吹っ飛ばしたのは彼だったらしく、犯人探しをする組長によって母子がガソリンを掛けられて火を付けられそうになったことで真っ先に名乗りを挙げて華麗なるキックでヤクザ共と大立ち回りを演じた。

キレのいいアクションも小気味いいキャラクターだったが、暗殺者の襲撃では真っ先にターゲットとなり、相手が敵かどうか確認出来たかも怪しい段階で敢えなく斬首されて死亡。
この場面は演出もホラー風味で怖い。
中の人はやっぱり武道家が本職である。



  • 半ケツ理容師

演:ホー・マンファイ/吹替:山口勝平
豚小屋砦で床屋を営む住人で、子供用の服を着ている為に常に半ケツを出している。
演じているのは前作にも登場した特徴的な顔のアイツ(作曲家志望)で、前回の声優は飛田展男、今作は山口勝平とチョイ役ながらインパクトのある出番からか吹替も豪華。



  • 聾者のアイスキャンデー売り

演:ホアン・シェンイー
若い娘。シンチー名物のブサヒロイン枠。……本作では見た目は普通だが。
声を出せないことをいいことにか、シン達が唯一強盗を成功させた相手であるが、彼女には過去にシンへの恩義があった。

幼少期にシンが挫けるきっかけになった、いじめっ子から助けられなかったと思っていた少女の成長した姿。
しかし、彼女自身はこの時にシンに助けられたことを感謝し続けており、何もかも上手くいかなくて自棄になったシンが彼女相手に強盗しようとした時に思い出のキャンディーを見せられて薄々と気付いて狼狽させ、シンは大家夫婦の戦いを通して完全に改心することになる。
エピローグでは街を歩いていた時にキャンディーを手にした多くの子供達を目撃する中で、キャンディー売りの店へとたどり着きシンとの再会を果たす。



  • “斧頭会”組長(サム)

演:チャン・クオックワン/吹替:矢尾一樹
をシンボルマークにする斧頭会のボスで、まだ若いながらも妥協のない残虐性と暴力によって組を支配し、以前から存在していた有力な敵対組織も次々と壊滅、勢力を吸収して斧頭会の絶対的支配を成し遂げてみせた……が、副組長がやられた豚小屋砦の一件にて自分達の暴力ではどうにも出来ない達人達の存在と力を思い知ることになった。
痛い目に遭いながらも面子の為に刺客を雇い入れて挑み続け、後戻りの出来ない所まで踏み込んでしまい、遂には伝説の殺し屋“火雲邪神”をも呼び寄せてしまうことになる。
演じているのは前作の“魔の手”で、この後は物真似に寄らず役者としてもキャリアを重ねていった。
また、前作に引き続き今作では自らがセンターを務める斧頭会の組員達による集団ダンスの振り付けも担当している。

自分の面子を潰した相手は許さない方針ながら、シンの鍵開けの技術には目を付けており、その腕を見込んで琴奏者の暗殺者を一蹴した大家夫婦を倒すために異人類研究所という、兵士が警備するどう考えても危険な施設から火雲邪神を連れ出させた。
強気な態度の裏には脆さが隠れているものの、自分が強く出られる機会は逃さないようで、それが現在の地位を築き上げた礎となっていた模様。
しかし、最期に強く出る相手(邪神)を間違えたことでインガオホーな末路を迎えることに。
ブルース・リーの物真似芸人でもある中の人が大家の奥さんからブルース・リーの有名なリアクション(『ドラゴンへの道』での挑発。)で脅されるというお遊びも。



  • “斧頭会”副組長

演:ラム・シュー/吹替:大川透
斧頭会の副組長で、サム(組長)の片腕的存在としてカジノ等を仕切っている。
何故か普段は寄り付かない筈の貧民街を視察していた所を、大家の奥さんに殴られたシンが苦し紛れに放り投げた爆竹が直撃して頭を焼いてしまい、怒り心頭で豚小屋砦に乗り込んでくるも、反対に瀕死の重症を負うことに。
引き連れていた手下達の様子から黒スーツと手斧、連絡用のボスケテめいた爆竹が斧頭会の基本の装備の模様。



  • “斧頭会”相談役

演:ティン・カイマン/吹替:茶風林
眼鏡をかけた斧頭会の相談役。
組長の腰巾着で調子のいい性格。
演じるのは前作の“鎧の肌”で、組長同様にコミカルながら小憎たらしい悪党を演じている。



  • 琴奏者

演:フォン・ハクオン/吹替:千葉繁
演:ジア・カンシー/吹替:辻親八
斧頭会が三人の達人を始末する為に呼び寄せた二人組の暗殺者で、琴の音色を武器に変える“古琴波動拳”の使い手。
背の低い盲目の方は演奏専任だが、背の高い目の見える方は接近戦もこなせる強者で、火雲邪神が姿を眩ました現在は裏の世界で実力No.1と讃えられる使い手。
刃や拳のイメージを付加した音の波動を飛ばすという反則的な技により三人の達人相手でも何もさせずに勝利を奪うが……。

正体を明かした大家夫婦の敵ではなく、旦那(楊過)にはあっさりと間合いに入り込まれた後は自分達の攻撃を利用して自滅させられ、散々に痛め付けられて最後は放り投げられる。
奥さんには死霊の兵隊とも呼ぶべきイメージを込めた全力の波動も獅子の雄叫びであっさりと粉砕されてしまった。



  • 火雲邪神

演:ブルース・リャン/吹替:屋良有作
カンフーにのめり込み過ぎる余りに“心が壊れた”と言われる伝説の達人にして、殺し屋界でも並ぶ者のない最凶の存在。
シンが異人類研究所から連れ出そうとした時には目の前の通路に血の川が溢れる等(映画『シャイニング』のパロディ)、不吉な幻視が立ち現れた。
……一方、ハゲ散らかした頭部にランニングとガラパン姿、便所サンダル履きで新聞を読んでいるという休日の親父のような出で立ちで本物かと疑われる程だったが……。

間違いなく本物の火雲邪神であり、奪った拳銃で自らに放った弾丸を難なく二本の指で挟んで止めたり、一蹴りの衝撃波でカジノの分厚い壁と床を割くことの出来る化け物。
強くなりすぎたが故に相手が居なくなり引きこもっていたという、刃牙世界の住人みたいな価値観の持ち主。
正体を明かした本気モードの大家夫婦相手でも一対二で圧倒する程で、太極拳の技にも瞬時に対応し、通常の獅子の雄叫びにも耐えきる程。
終始余裕であったが、大家夫婦が斧頭会のために持ってきたプレゼント用の釣鐘*3をメガホンとして使用した強化された獅子の雄叫びの衝撃は耐えきれずに吹き飛ばされ、更に至近距離から二発目の体勢に入られたことで敗けを認めて命乞いをする……も、フェイクであり手にした花の形の暗器により針を飛ばし、更にそれをフェイントにして大家夫婦の腹部を暗器で刺した。
しかし、その腕を間接に取られて膠着状態に陥るものの、大家夫婦の戦いを見て改心したシンに殴られ、ダメージこそ無かったものの怒りと共に夫婦を振りほどき、シンに血反吐を吐かせ頭が床にめり込む程に殴り付ける。
……しかし、その隙に大家夫婦は死角に回り込みながらシンを連れて脱出。
失敗を咎めた組長を裏拳一発で首を何回転もさせて殺すと、身形を整えてから組員達を率いて豚小屋砦にやって来る。
そこで、薄々と予感していた覚醒したシンを確認。
斧頭会を蹴散らしたシンとの一騎討ちでは、自身の予想を越えるシンの力の前に地面に這わされる屈辱を受けるも、その瞬間に奥の手である仙術の域の技である“崑崙派蛤蟇功(ガマガエル拳)”を繰り出し戦いを優位に進め、シンを空高くまで吹っ飛ばして勝利した……と思った所で天空で如来を見て完全に覚醒したシンの如来神掌の威力の前には飛び上がることすら出来ずに降参を口にする。
……今回も敗北を演じて隙を作るための策であったが、シンは全く動じずカウンターの如来神掌を放たれる…も、わざと狙いを外され命は救われる。
シンに技の名前を尋ねるが「学びたければ教える」との言葉に、武術家として完全に敗北すると共に、自分を殺せる相手を求め続けていた火雲邪神は、代わりに師と仰ぐべき人物を見つけて膝を折り頭を垂れるのであった。
演じるブルース・リャンは日本ではマニア層でもなければ知らないものの、矢張りカンフー黄金時代を代表する役者の一人で倉田プロの創始者である倉田保昭とも映画の中で戦っている。
なお、足技の見事さで知られたアクション俳優だが、本作の足捌きは流石にCG処理されているそうである。
なお、本作で火雲邪神が使用する蛤蟇功は原作だと楊過の得意業である。



  • “鰐革命”組長

演:ファン・シャオガン
多大な勢力を持っていた“鰐革命”(ワニ革会)の組長で、女房を捕まえた警察に乗り込み好き放題していたが、出て来た所を罠を張っていた斧頭会により処刑されることになる。
演じているのは中国本土で人気を得ていた俳優、映画監督の馮小剛で、劇中の「映画だけは商売にしちゃいけねぇ」という台詞遊びの他、メタ的に見ると本作の香港映画のスタッフから中国映画に対する物の見方が込められた配役だという考察も。



  • 怪しい浮浪者
  • 演:ユエン・チョンヤン

医師を目指すために貯金していた幼少のシンの前に現れた男。
如来神掌という題名のカンフー本(見た目は物凄く安っぽい)を売りつけた。
それを読んで熱心にカンフーの練習をしたシンだが、悪ガキにボコボコにされて浮浪者から騙されていた事を知りチンピラの道を歩む事になったのだが……

前述の通り、シンが如来神掌に覚醒。実は本物であった事が明らかになる。
ストーリーのラストにおいても登場、新たな才ある子供に対し如来神掌以外にも「獨孤九劍」「降龍十八掌」「一陽指」「九陽神功」「千手神拳」(どれも金庸の小説に登場する名高き技)
など数々の本を売りつけようとしていた。
数十年経過しているのに容姿に1mmも変化が無いのでガチの仙人なのかもしれない。



【余談】


  • 本作でハリウッドでも名前が浸透したチャウ・シンチーは、この後で自身が原作のファンである09年の『DRAGONBALL EVOLUTION』のプロデューサーに就任していたが、作品の余りの出来の悪さから一切のプロモーションへの参加を拒否している。
    本人によれば監督にも意欲を示していたが叶わず、また、映画の内容についてもアイディアを反映されず原作からかけ離れたものになったという。
    シンチーは、同時期にブルース・リーの出演作であった『グリーン・ホーネット』のリメイク版でカトー役で出演、監督を兼任とされていたが、此方も降板と映画のヒットに対して米国では満足な仕事が出来なかったようである。
    シンチーは、その後13年に『西遊記~はじまりのはじまり~』を制作してヒットさせており、本作では『ドラゴンボール』に影響を受けたと公言し、かつての鬱憤を晴らすような内容となっている。
    また、当該作を絶賛した鳥山明がポスターを書き下ろしている。




追記修正は正義の為に戦ってからお願いします。



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  • 物語の騒動の元凶が主人公という、よく考えると何気に酷い話 -- 名無しさん (2020-01-17 08:29:18)
  • ↑多分、オチも含めて昔の中国的価値観なんだろうね。日本だとイマイチ納得出来ないって意見も見かけるし。 -- 名無しさん (2020-01-17 08:47:17)
  • 何気に琴奏者の戦いが凄く好き。音使いってのがバトル漫画の能力者感あるし、棒ではなく槍を持ち出した本気モードの達人も倒すもんだから強キャラ感がやばかった。大家にやられる様まで面白い -- 名無しさん (2020-01-17 09:42:18)
  • ハッスルハッスルで有名だった小川直也が試写会でパクリと因縁つけて乱入してきたが、実際に映画を観てパクリと言った事を謝罪して若いした話好き。 -- 名無しさん (2020-01-17 10:04:50)
  • ↑そういう演出だったのかな? -- 名無しさん (2020-01-17 10:16:45)
  • 普通に観ても面白いが、武侠小説やカンフー映画について知ってるとより深く楽しめる作品。というか大家夫妻はあのビジュアルなのに(あるいはだからこそ)超カッケーわw -- 名無しさん (2020-01-17 12:08:57)
  • 武侠小説のお約束っつーか作法として、「パワーバランスは悪漢<善の武道家<悪の武道家<英傑<悪の仙人<善の仙人」という構図があるとか。中華的には「極めて王道な筋書きにトンチキを利かせてエッセンスを加える」という味わいになるのであろう。 -- 名無しさん (2020-01-17 15:06:40)
  • ↑実際、原作に忠実ではないものの自作の映像化に厳しい金庸さんも大満足の出来だったらしい。少し残念なのは監督自身も満足しちゃったのか精神的続編すら作られなかったこと。西遊記も面白いけど。 -- 名無しさん (2020-01-17 16:22:48)
  • 「半ケツ理容師を殴ろうとした」でなく殺そうとしただな 殴られてすむなら全然安いし -- 名無しさん (2020-01-17 20:24:26)
  • 小説版だと邪神も飴屋の定員になってた -- 名無しさん (2020-01-17 20:41:35)
  • これ子供の時に見たけど面白かったなぁ -- 名無しさん (2020-01-18 06:04:33)
  • ↑7、当時のニュースで報道されてた。 -- 名無しさん (2020-01-19 17:56:43)
  • ↑3へぇ、それは知らなかった。肩の荷が下りて飴屋としてようやく心の平穏を得たハッピーエンドみたいでなんか良いな。 -- 名無しさん (2020-08-23 03:50:28)
  • 中国映画で一番好き。『ミラクル7号』で如来神掌のシーンをまんまやったのには笑った。 -- 名無しさん (2021-04-22 00:46:06)

#comment

*1 香港の武俠小説発祥の架空の拳法の一つ。掌から波動を打ち出す仙術に近い拳法で、過去に映画化された際には特殊効果の限界もあってビームを出す攻撃となっていた。今川監督が香港の武俠小説や映画化作品の影響で描いた『Gガンダム』の石破天驚拳の元ネタでもある。尚、原典では本作の敵の名前になっている“火雲邪神”が生み出した技。
*2 武俠小説の大家、金庸の作品でも特に人気の高い『神鵰侠侶(しんちょうきょうりょ)』のヒーローとヒロインで、原作では美男と美女のカップルなのに本作では年齢を重ねたとはいえ不細工夫婦の名前とされたので、元ネタを知っている観客からは本名を明かした瞬間に爆笑と喝采が起きたとのこと。『神鵰侠侶』は本作でも夫婦を顕す異名として用いられている。
*3 「送鐘(鐘を送る)」と「送終(葬式のお見送り)」の音の共通から。鐘を送る=「今日がお前の命日だ」という意味の侮辱となる。

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