エリア88(漫画)

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登録日:2019/05/26 Sun 14:37:25
更新日:2024/04/05 Fri 13:50:09NEW!
所要時間:約 88 分で読めます (折り畳み込みで約109分で読めます)



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エリア88 傭兵 外人部隊 中東 エトランジェ 漫画 戦闘機 戦争 内乱 エースコンバット 名作 傑作 何故かなかなか立たなかった項目 所要時間30分以上の項目 所要時間60分以上の項目 所要時間90分以上の項目 シン・カザマ 新谷かおる ふたり鷹 命知らずの外人部隊!! ここはエリア88…… エトランゼ 軍産複合体 エリ8 エリパチ 外泊証明書 所要時間88分の項目



ここは中東……作戦地区名エリア88……
最前線中の最前線! 地獄の激戦区エリア88!!
生きて滑走路を踏める運はすべてアラーの神まかせ!!
おれたちゃ、神さまと手をきって、地獄の悪魔と手をとった……
命知らずの外人部隊エトランジェ!!





エリア88とは、新谷かおる作の漫画作品。
少年ビッグコミック(現・ヤングサンデー)にて、1979年から1986年までの8年間連載された。
単行本は全23巻、文庫版は全13巻。
略称はエリ8(エリパチ)など。



▽目次


◆概要

親友の裏切りにより中東の外人部隊に送り込まれた青年、風間真が生きて帰る為に地獄の戦場を戦い抜くというストーリー。
兵器の描き込みや設定の緻密さ、その一方で大胆なフィクション要素、随所に見られる独特の台詞回しなどは非常に人気が高い。
戦闘機を主役に据えた戦争漫画というジャンルでは金字塔と呼んで差し支えないだろう。
また最前線にして最大の激戦区が舞台という事で人・物共に消耗が激しく、
長らく活躍した主要登場人物や戦闘機があっさりと死亡・撃墜されるなど気を抜けない展開が続く。
劇中でも度々登場する「紙切れより薄い己の命」という表現が良く似合うハードな雰囲気で進行して行くが、
たまに箸休め的なコメディ回も挟まり、緩急がはっきりしているとも言える。


また、概ねリアルに描写されているが、中には現実にはありえない設定や(時代的に仕方ないものも含む)誤った描写も多いため、
本作の描写を鵜呑みにするのはNGである。F-8Eの主翼の折り畳みや、YaK-38の性能についての描写が代表的。
作中で多用される撃墜された航空機のキャノピーが開き、車輪が出る、弾痕からオイルが漏れ出すという描写についても、
現実にはありえないとは承知の上で、作者の師匠である松本零士の「メカもキャラクターの一人として描くべし(要約)」という教えに従い、
「被弾した痕からオイルが吹き出し、撃墜されれば手足車輪が力無く垂れ下がる」という航空機を人間に準えて意図的に盛り込まれたものである。


かなり古い漫画ではあるが、現代のサブカルに与えた影響は非常に大きく、本作をオマージュした演出を含む作品は数多い。
フライトシューティングゲーム「エースコンバットシリーズ」で谷間を戦闘機で抜けるミッションがお約束となっている事やシリーズ初期作品のあらすじ*1
世界的にはマイナーなイスラエル製戦闘機クフィールや米軍の試作戦闘機F-20などが日本に限ってやけに有名である事など、
本作の影響と見られるものは多岐に渡る。
本作を原題とするシューティングゲームもアーケードSFCで出ている。
またエリア88の影響を多分に受けた、特に男性の読者は(掲載当時が数十年前な事による高齢化もあって)エリ8おじさんと称される。


既に完結から30年以上経過しているが、2019年現在でも未だに本作とのコラボ企画や劇中に登場した戦闘機の「エリア88モデル」のプラモデル化が行われており、
その人気は衰える事を知らない。
食玩ブームと同時期には1/144スケールのコレクションモデルも発売されF-20やクフィル、バッカニアなど希少な立体化がされている。


全3話のOVAが1作、全13話のテレビアニメが1作存在するが、何れもほぼオリジナルストーリーであり、原作を完全にアニメ化したものは存在しない。
これらは軍事考証の甘さやオリジナルストーリーである事そのものが原因で、あまり評判は高くないのが実情である。
特にテレビアニメ版は深夜アニメ故に尺が確保出来ないという致し方ない事情があるものの、特に空戦描写のチープさ、メカ関係の考証不足*2が顕著であり、原作キャラがオリジナルキャラにすげ替えられるなど、原作ファンから黒歴史扱いを受ける事が多い。
てかavexが頭文字Dのアニメ化に成功して気が大きくなり、同じようなノリと勢いでエリ8のテレビアニメを作らせたなんて言われることも。確かにフル3DCGやユーロビートなど共通する部分は少なくない。




◆あらすじ

日本の大手航空会社大和航空のパイロット訓練生風間真の人生は順風満帆であった。
極めて優秀な成績でパリでの訓練を修了していよいよ夢のパイロットに、恋人にして大和航空社長令嬢の津雲涼子とも結婚秒読み……と、
まさに人生の絶頂期にいた。
しかし、共に訓練を修了した親友神崎悟に陥れられ、内乱が続く中東のアスラン王国外人部隊に傭兵パイロットとして入隊させられてしまう。
彼が配属されたのはエリア88と呼ばれる空軍基地。
様々な過去を持つ世界中の凄腕パイロットが集まり、未熟な腕では一周間と持たないと言われるアスラン王国反政府軍との闘いの最前線にして最大の激戦区であった。
そこから生きて帰る為には契約期間の3年間を生き抜くか、150万ドル(1979年当時の日本円で約3億3750万円)もの違約金を支払うかの二つに一つ。
生きて故郷と恋人の元へ戻る為に、そして自身を嵌めた神崎にその意図を問いただす為に、真は地獄の戦場で戦い抜く事を余儀なくされる。
一方、彼を嵌めた神崎もまた巨大な陰謀を進めて行く。





◆エリア88の主要登場人物

  • 風間真/シン・カザマ

「中東に…アスランという王国があります。」
「元アスラン空軍外人部隊、エリア88所属飛行戦闘第1集団第2中隊指揮官…」
「最終階級は大尉…除隊になるまでの総撃墜数92機、対地目標物撃破約230両…」
「指定目標攻撃率86%…出撃率95% 自己損率12%…」
「親友に裏切られ 外人部隊に入隊させられ…日本を思い恋人を思い…」
「カレンダーに印をつけ、来る日も来る日も死線をさまよい戦い続け…」
「そうした3年間の殺人と破壊の数字が、この風間真という男のすべてです。」


本作の主人公で日本人の青年。日本語の他に英語とフランス語を流暢に話すトリリンガルである。
劇中では「シン」と呼ばれる事が多い。劇中開始時点で入隊から半年が経過していた模様。
本項目でも88に関係する記述では「シン」、日本人との関係では「真」と表記する。
片目を隠す程の長い前髪と中性的な顔立ちが特徴的で、劇中でも「女みたいな顔」「わりとハンサム」と称された事がある。
旅客機のパイロットを目指し、訓練を修了した記念に神崎に呑みに誘われ、泥酔した所を外人部隊の入隊届にサインさせられ、傭兵として戦いに赴く事になる。
この経験と『戦闘機のコクピットでは空に上がると僅かなアルコールでも泥酔してしまう』という理由から酒は滅多に飲まない。
その一方で、精神的に荒れている時期には真っすぐ歩けなくなる程に呑みまくるなど、酒との付き合い方はかなり極端。


旅客機のパイロット(の訓練生)だったとはいえ操縦技術は相当なもので、88の並みいる強豪を押し退け撃破スコアナンバー1の常連である。
どちらかと言えば空戦、F-5系戦闘機を好む傾向が見られるが、対地攻撃でも少なくない戦果を挙げている。
だが元々戦場に来る事自体が不本意だった事もあり、自分が生き残るためとはいえ人を殺す事への忌避感は非常に強い。
普段は生き残る為には仕方ない事と割り切っているが、良心からそれを拒否し敵前逃亡で処刑される事を選んだ者からその姿勢を皮肉られた際は激しく動揺するなど、
本心では完全に「人殺し」を受け入れる事はできていない。


当初は人を遠ざける様な言動をしており、「傭兵に友達は要らない」と気さくに話かけて来たミッキーにも辛辣や言葉を浴びせたが、
序盤の内にその様な面は鳴りを潜め社交的になって行き、ミッキーともすぐに打ち解け親友同士となる。
感情の起伏が少ないクールな性格であるが、たまに何かの拍子に感情を爆発させる事もある*3
また外人部隊に入る前は陽気なお調子者であった。


孤児院育ちで、赤ん坊の頃、真冬に首にストッキングが巻かれ大人用のコートを着せられた状態で捨てられていたという。
神崎とは孤児院で兄弟同然に育った仲で、当初は彼を名前で「悟」と呼んでいたが、嵌められて以降は「神崎」呼びとなっている。
神崎は首のストッキングは「真の親が首を絞めて殺すつもりだったのでは」と推測しているが……。


喫茶店で度々注文している様子がある事から、好みのコーヒーはエスプレッソと見られる。


王都陥落に際し、サキからザク王をフランスに亡命させる片道限りの任務を受け、そのまま名誉除隊とし日本へ帰るよう告げられ本人もそのつもりであった。
しかし、エリア88の極限状態に慣れてしまった真にとってはフランスの平和な生活はかえって苦痛になってしまい、自身がミッキー同様平和に馴染めないことを理解。
同時にボッシュからアフリカ・バンバラでの仕事を請け負ったことでマークIII部隊に参加することを決意し、電話で涼子に別れを告げた。


だが任務地となったバンバラでは任務内容変更によりボッシュの裏切りが発覚、自分達が大統領一家殺害の犯人にされかけたがすんでのところで屋根裏に身を隠すことに成功する。
だが昼間は強烈な湿気と酷暑で蒸し風呂状態となっていた屋根裏の環境で徐々に大統領一家が衰弱し始めたため、国外逃亡を決意する。
元々道中に逃走車両を用意していたことで順調に進むも、給水中に接近していた捜索隊を始末した事でボッシュがシン達の行動を察し追跡を開始。
徐々に仲間達を失い、更には大統領夫妻も殺されてしまうが、エラーとともにボッシュを討つことに成功した。
バンバラでシンと再会し無線を傍受していたマッコイが救出に来たことで無事に国外脱出に成功。大統領から銀行のカードを受け取っていたことで真達は口座のあるスイスへと向かう。
そこで大統領には800億ドル、劇中レートで日本円に換算すると約9兆円もの遺産があったことが判明。
これに対しシンは本来の相続人である大統領の姉弟が継ぐべきとするも、彼女らは父親の遺志を尊重し相続を辞退したことで真に相続され、一夜にして大富豪となる。
この大金を元に真は建造中止となっていた空母を完成させ元ベテラン乗組員と合わせてアスランに派遣する直接的な支援と、大和航空の買い戻し等の間接的な行動でプロジェクト4の力を削いでいく。
しかしその行動は海音寺に察知されてしまい疑念を持たれるも、全てを語ったことで海音寺の信頼を得ることができプロジェクト4と対峙していくことになる。


バンバラ脱出後、紆余曲折あって日本へ戻る事になる。
帰国時の空港で海音寺と出会い、招待されたパーティーで海音寺主催の庭園会に強制的に誘われ海音寺に自身の身の上を明かした後、別れを告げた涼子と直接再会しヨリを戻し、涼子とジョゼと同居しながら悲願の結婚式寸前まで持っていくなど、一時は日本で平穏な暮らしを送っていた。
しかし戦友であったフーバーの亡霊が現れたことで迷いが生まれ、更に神崎が接触し互いの出生とこれまでの経緯を語る。
宿敵であった彼を討つことも捕らえることもしないまま見逃してしまった上、神崎はその後保有する日本企業の株を国外に売却してしまった
この事を重く見た海音寺からは国外追放を告げられたが、真も自身で神崎を討つことを決意し、マッコイの制止を振り切り今度は自らの意思でエリア88へと志願した。


やっと手に入れた平穏を捨てて戦場に帰ってきた彼は後輩のキム以外からは歓迎されず、中でもミッキーからは手荒い歓迎を受けた。
しかし自分の思いの丈をぶつけたことで和解し、仲間達と共に戦っていく。
次第に敵側が追い詰められて戦争の終わりが見えてくるが、仲間達も次々と倒れていき、中でもサキとミッキーの死は真に大きな精神的ダメージを与えた。
最後は神崎の誘いを受けて片腕を負傷した状態で一騎打ちを行い、意識不明になるほどの重傷を負うもかろうじて生還。
だが目覚めた真は戦場にいた数年分の記憶を失っており、性格もエリア88に行く前の青年にまで戻ってしまったのだった。


パーソナルマークは「炎のたてがみのユニコーン」。


ストーリー中盤の時点でのスコアは撃墜航空機92機、撃破対地目標230輌。
驚異的と言って差し支えないスコアである*4*5



  • ミッキー・サイモン

「過去も…未来も…微笑も…涙も…そして、愛すら投げ捨てたさ… だが、たった一つだけ捨てきれなかったものがある。」
「男の尊厳だ…」


第一話にて新たにエリア88に加わったアメリカ人男性。
かつて米海軍の艦載機パイロットとしてベトナム戦争を戦った経験がある。
88に来た理由は当初は「がっぽり稼いで遊んで暮らす」ためと語っていたが、
実際にはベトナム戦争での経験から戦場に慣れ切ってしまい、平和な社会に適応出来なかったためであった。
同じくベトナム戦争にいたグエンにも名が知られており「1人で村1つを潰した」という噂があるが、
実際は伝染病により壊滅状態で米軍によるワクチン輸送も失敗した村を「1人でやる方が気楽だから」とナパーム弾で焼いたのが真相。
周囲でストレスから薬物に手を出し精神的に壊れていく者や母艦に帰投する直前に墜落した者がいた様に、ミッキーもまた傍から見れば正常に見えるまま静かに壊れてしまっていた。
仲睦まじい婚約者もいたが、描写の限りでは外人部隊に入隊した際に事実上破談となった模様。


名家の出身であり、実家は大企業を経営している。
彼もベトナム戦争後から88に入隊する前まではその社内で働いていており、
書類相手の仕事はミッキー本人は苦手そうにしていたが、彼の父によるとそれでも社内ではキレ者と評判であったという。
本人曰くスポーツ万能との事で、総じてパイロットとしての技能以外の能力もかなり優秀と見られる。
この事は彼がアメリカ海軍士官学校アナポリス=アメリカ屈指の超難関校の出身である事からもうかがえる。


性格は基本的に陽気かつ社交的だが、過去の経歴からシビアでドライな一面もあり、丁度シンとは対照的でいつの間にか互いに無二の親友となる。


シン曰く、彼の戦闘スタイルは一撃離脱。マックバーン曰く「こいつ程の腕になると一騎打ちよりも乱戦のほうが得意」。
空戦の成績は非常に高い一方で、対地攻撃は少々苦手なのか対地スコアでワーストランキングに入っていた事もある。
しかし対地攻撃で戦果を挙げているシーンもあり、実際の所は苦手というよりたまたま調子か巡り合わせが悪かったか、
或いは「凄腕パイロットがひしめく88の中では比較的」という意味だったのだろう。
総じてシンと並ぶ凄腕のパイロットであり、彼に次ぐ88のナンバー2常連である。
またエリア88でも貴重な空母乗組員経験者であり、後述のラウンデルと共に空母に不慣れなメンバーの指導にあたる事もあったようである。


終盤恋仲になったセラと戦後は平穏な暮らしをすることを願うが、最終決戦にてマックバーンに撃墜されたかけたセラを庇う。
この時機体が飛行不能寸前に陥るもセラの誘導もあり無事に着陸するが、直後に爆発炎上。
セラはコクピットに駆け寄るがコクピット内の彼は既に意識はなく、セラに口づけされた直後に乗機やセラ諸共爆死した。
サキの自決で精神的ダメージを負っていたシンは戦友が次々に戦死し、
遂に追い打ちで親友が爆死するのを目の当たりにしたことで泣きながら大笑いするなど精神的に不安定になっていた。


パーソナルマークは、F-14Aに乗り換えて以降は「プレイボーイ誌のロゴマーク」*6


乗機はF-100→クフィール→F-14A→F-100→A-4→F-14(2機目)
A-4はギリシャ基地から山岳基地序盤にかけての短期間の使用に留まっており、また一機目のF-14の後は基地に残っていた空きのF-100を借用してそのまま使用し続けていた。
主人公が海軍機であるF-8を使用していた一方で、元艦載機乗りの彼が空軍機であるF-100に乗って登場した事は文庫版の解説で少しだけネタにされていた。



  • グレッグ・ゲイツ

デンマーク人の男性。
かつてデンマーク空軍に属していたが除隊され、しばらく飛行機による亡命の手引きを行っていたが、
その「逃がし屋」稼業の中で起きたある事件をきっかけに外人部隊に入る。
諸事情によりデンマークへ戻れないため契約更新を続けており、88でも古参に位置すると思われる。
88ではフーバー、カーライルと同期。


口ひげを生やした太り気味の豪快な男性で、頭を負傷した際には薬用アルコールを頭にぶっかけて包帯を巻いただけで「これでよし!」
火災が発生した乗機で着陸した後、消火と外板の交換と補給だけでロクな整備もせずにそのまま再出撃する
撃墜されても敵の重要機密が書かれた暗号書類で暖を取りつつ灼熱と極寒の砂漠を歩き通して基地に帰還するなど、88の傭兵の中でも一際タフ。
本人も「皆より血の気が多い」と自称している。
基地建設の為にブルドーザーを操縦していた時など、ミッキーから「飛行機より似合う」と称された。
作中では2度撃墜されるが、そのどちらも機体に燃料切れもしくは燃料が入っておらず爆死を免れるという強運も持ち合わせている*7


一方、中盤でサキがスイスへ目の治療へ向かい不在中は大統領と呼ばれながら司令官代理を務め、エリア85へ派遣された際にはリーダーシップを発揮し、
また血気に逸り無謀な戦いをしようとする85所属のアスラン正規軍のパイロット達に対して、
「内乱終結後はアスランの若者は国を立て直さなければならない故に、正規軍兵士は無駄死にしてはならない。死ぬべきは我々国を持たない外人部隊である」と諭し、
場を収める事に成功するなど、見かけによらない深みのある面もある。この発言は終盤になって大きな意味を持つ事になる。


対地攻撃のスペシャリストで、戦闘機より攻撃機を好む。最終的にはかのA-10を入手、大活躍を見せる。
シン、ミッキーに次ぐ88のナンバー3であり、対地攻撃の腕ばかり注目されがちだが割と空戦も出来る。
これは対地専門ともいえるA-10で戦闘機の大群を正面から突破できる所からもうかがえる。
また、OVA版ではありったけの爆弾を抱えて本人も「重くてスピードが出やしねえ」とボヤく状態のA-10でタイトロープ作戦に参加、爆撃に成功してみせていた。
また砂嵐による視界不良と計器の不調で進退窮まった味方機を淀みない誘導で救援する(実際には大きなミスがあったが……)など、
長年のパイロット経験に因む管制も出来る。


パーソナルマークは、A-10に乗り換えて以降は「頭頂部に蝋燭を立てたドクロ」。
趣味はレコード鑑賞。
後に戦争が終わった後にしたい事を語るというド直球の死亡フラグを立てる。


終盤、市街地上空を低空飛行していた所を撃墜され、燃料切れ寸前だったので爆死は免れ不時着しアスラン兵に救助される。
その道中、トイレの後で母親に死なれた少女に気づいて保護しようとするも、狂乱状態にあった少女は銃を取り発砲。これが致命傷となってしまう。
被弾してなおもグレッグは少女を窘め、少女を撃とうとする兵士を静止して医療班を要請。
少女から銃を取り上げた上「きみのお母さんが優しかったのなら、きっときみも優しいお母さんになれる」と少女と言葉を交わしながら息を引き取った。


グレッグの死から少し前、プロジェクト4からの命令が出るアスラン軍基地内でかつてエリア85でグレッグの言葉を聞いたアスラン兵の一人がグレッグの言葉を思い出し、
「アスランの為を思いアスラン人に代わって命を擲つ外国人である88と、口ではアスランの為を謳いつつアスラン人を操り人形にする外国人のP4、同じ外国人でもどちらが思うアスランが本当のアスランなのか?」と仲間に問いかける。
この動きはやがてアスラン各地の軍基地に波及、そのほぼ全てが同意・同調してプロジェクト4の命令を拒否し始め、作戦進行を著しく妨害させていた。
アスラン兵達は、内戦終盤にこうして自分達が戦う時だと立ち上がる遠因を作り、かつて無駄死にするところだった自分達を生かし、
プロジェクト4排除に間接的に大きく貢献したグレッグを「革命の父」として敬拝するようになる。
グレッグの死とその遺体が回収された後にアスランの空港に安置されていることが知られると、アスラン兵達は駆け付けて敬礼を捧げ、
出撃間際に滑走路上に機体を整列させて最終出撃直前だったミッキーも共に「革命の父」に対し敬礼を捧げた。



  • バクシー・マローン

グレッグの親友。共にデンマーク空軍を放り出され、「逃がし屋」を営んでいたが、彼と共に外人部隊に入隊した。
際立って凄腕と称される事は無く、大して活躍するシーンも無いが、
序盤で敵の傭兵部隊「ウルフパック」により88の戦闘機が全滅した際、シン・ミッキー・グレッグといったナンバー1~3と共に、
88に10機だけ支給されたクフィールのパイロットに選抜されている辺り、「(当時の)88の十傑に数えられるパイロット」と認知されている様である。


グレッグは彼を「セコくて臆病な奴」「善人ではないが悪人でもない」と称しており、
普段はグレッグとは軽口を叩き、時には口汚く罵倒する事もあるが、
グレッグが撃墜され未帰還となった際は生還を信じつつも落ち着きのない様子を見せたり、
また彼がエリア85に派遣され出発する間際には心配そうに声をかけるなど、深い絆を感じさせる。


砂漠空母との最終決戦にて、無人F-18の攻撃により撃墜されかかるが、ミッキーによって何とか助け出される。
しかし被弾によって目を負傷しており、手探りで飛行しながらミッキーに砂漠空母の位置を訊ねる。
それ知った直後に、そのまま砂漠空母に特攻し死亡した。


当時居合わせていなかったグレッグはギリシャでの再編までに彼の最期を知った様で、
ミッキーに「何故助けてやれなかったのか」「その様な状況で空母の位置を聞いて来たなら、特攻しようとしている事は予想できたはず」と食って掛かり、
そのまま周囲の傭兵達も巻き込む大喧嘩にまで発展する事態となる。
地上空母との決戦はかなりの大混戦で、ミッキーでなければ助けるどころかバクシーが応援を求めている事に気付くことすらままならない状況であり、
ましてや視力を失った状態のパイロットを安全圏まで誘導するなど到底不可能であった。
グレッグは尚も「イジェクトするだけなら失明状態でもできたはず。脱出を勧めるべきだった」と反論するが、
大混戦だった上に砂漠空母が最期に大爆発を起こした事を考えれば脱出した所でどの道助かる見込みは薄く、
「空母へ特攻させたのは、パイロットとして最も相応しい最期を遂げさせてやるため」というのが傭兵達の大方の見方であった。
グレッグとしてもそれは内心分かっていた様で、最後には自分一人を残して逝ってしまった親友のために大声を上げながら涙するのであった。
彼としても、バクシーに深い友情を抱いていた事が分かる場面である。


上述のグレッグと彼が「逃がし屋」を営んでいたエピソードは88が山岳基地に移ってしばらくした頃に描かれており、
ここで若い頃のグレッグと共に再登場する事になる。
当時のグレッグは髭が無く、もみあげも伸ばしていなかったためかなり雰囲気が異なるのに対し、彼はほとんど変化が無かった。


乗機はA-4、後にクフィール、更に再びA-4。



  • サキ・ヴァシュタール

「さあ、来い悪魔ども…地獄の灯が見えたら飛んで来い。死神の羽音とともに、憎しみの剣をひっさげて飛んでこい!!」


エリア88の司令官。アスラン王国空軍の中佐でもある。
アスラン王国国王ザクの甥であり、反政府軍を指揮するザクの兄アブダエルの長男。
つまり彼は実の父と戦争しているという事であり、自身もその境遇を「血みどろの親子喧嘩をしている男」と称している。
明言は無いが、描写されている限り彼はヴァシュタール王家の第一王子という事になる。
王族だけに帝王教育だけでなく、欧州(英国)の大学への留学経験も有る知的エリートでありそこで得た伝手やコネも多い。
腰まで届く長い黒髪と、額の十字傷が特徴。中盤で目を負傷してからは日中サングラスをかける様になった。
十字傷は、かつて自身の甘さが原因でアスラン正規軍の精鋭1個大隊を全滅させてしまった事に由来する。

内乱初期、肉親同士で血を流す事は避けたいという思いから彼は弟リシャールを通じて反政府軍を指揮する父アブダエルを説得できないかと考え、
自分の率いる部隊の攻撃予定をリシャールに伝えて反政府軍へ行かせた。
そして弟の返答を待つために自分の部隊を集結させるだけさせて攻撃を延期していたが反政府軍は奇襲攻撃を以て回答、彼を残して部隊は全滅してしまったのである。
この事を深く悔いた彼は国王の前でその罪を背負う事と自身を国に捧げる事を誓い、その証として自ら傷を刻んだのであった。

普段は軍人・傭兵を率いる基地司令として冷静に振舞い、時には冷酷さを見せる事もあるが、
一人のクズな傭兵の酷薄な態度に対して「ゲスめ!」と憤ったり、少々特殊な事情を持つシンや女性であるセラ*8に一定の配慮を行うなど、全くの非情な性格という訳でもない。
傭兵達には「生きていれば戦力、死んでもこの手の基地には幽霊話は付き纏うのでアクセサリーにはなる(要約)」と付き合いが長い筈のグレッグも「無茶苦茶な人やな」と呆れる暴論を繰り出すが、
同時に「死んでいった傭兵達を殺したのは、彼らの司令官である自分だ」と自責の感情も持っている。
弟リシャールを始めとした家族やアスランという国に対しては深い愛情を持っている事もうかがえる。


基本的に基地司令を務めているが、最序盤や中盤以降では度々パイロットとして自ら戦場に向かう。
その腕前は凄まじく、ドッグファイト中にバックを取った敵機の目の前から一瞬で消え失せ、次の逆にその背後に一瞬で回り込む
低空でアプローチして滑走路と周囲の砂漠とのエンジンの反射音を聞き分ける事で失明状態で着陸するなど正に超人的。
パイロット個人としての技量に留まらず、正規教育を受けた上級将校として、戦略的視野や政治的・政略にも通じる一軍人に留まらない深い知性と判断力をも備えた傑物である
一方でサキが出撃するときはエリア88が危機的状況にある場合が大半で、ある時には基地の壊滅フラグ扱いを受けた。

神崎が機長を務める大和航空機の無線を傍受し、無関係の乗客乗員を巻き込んででも撃墜しようと暴走する真だが、涼子も搭乗していると神崎から告げられ撃墜を断念。
帰投するが、民間の航空機に対する攻撃という国際問題になりかねない過度の暴走及び危険行為により基地内の懲罰房へ収監される。


そしてサキとの面会中、精神的に摩耗し錯乱状態に陥っていたシンが殴り掛かり目を負傷。
急遽治療を受けたが、医師達の会話を偶然聞いていたシンは自分が負わせた傷によりサキの視力に異常が生じ、遠からず失明する危機に陥っていることを知り、それ以来は彼に負い目と罪悪感を抱く事になった。
その後、戦闘中に突発的な失明が発生。なんとか基地へ帰還し、先述の反響音の聞き分けで着陸にも成功するが基地の医療設備では治療に限界があったため、急遽スイス行きが決定。
目の治療のためにスイスへ一時渡航した際に治療は成功、視力も取り戻し「目への強い刺激は極力避け、日中はサングラスを装着するように」と警告されるも、パイロットとしては致命傷である遠近感の喪失など徐々に目の容態は戦況の泥沼化と時を同じくして悪化していく。
しかし目のハンデを感じさせないように振る舞い、目の負傷の情報自体は共有されるが副官のラウンデルにすらその事実を打ち明けていなかったようで最終的に彼の目について言及したのは極少数の人数に留まった。


スイスに向かう途上で涼子と彼女が引き取ったばかりのジョゼと偶然出会い、神崎に大和航空を乗っ取られた精神的ショックから療養中だった津雲善三がたまたま同じ病院に入院中だったという幸運も重なり、
暗殺の危機に晒されるも読唇術で暗殺計画を知ったジョゼがサキに危険を伝えた事で窮地を救われたという経緯から、シンに対して殊更目を掛けるようになり、王都陥落直後は「彼女の元へ帰れ」とザク国王の亡命任務を最後の任務として名誉除隊を言い渡した。


そして最終出撃時、アスラン王宮にて遂に目が限界を迎えてしまう。キムと合流しアブダエルと対峙した時には光を辛うじて感じられる程度にまで急激に悪化し、夜を迎える頃には殆ど失明状態にあった。


その後神崎達によって重度の麻薬中毒にされた父と再会、事切れる寸前に正気に戻った父から事の真相を聞き、ようやく和解する事ができた。
父の最期を看取ったサキは父を抱きかかえ真に感謝を述べ、炎上する墓廟へと入っていき拳銃自決を遂げた。
だが「戦争を生き延びる可能性がでてきたにもかかわらず自ら死を選んだ」事は真にとっては精神的に大きなダメージを残し、記憶喪失になる要因の一つとなってしまう。


パーソナルマークは王家の紋章。
名前の由来はスコットランドの小説家サキとその短編スレドニ・ヴァシュタールと思われる。


乗機はクフィール。



  • フーバー・キッペンベルグ

西ドイツ人。元西ドイツ空軍少佐。鋼鉄の撃墜王の異名を持つエース。
エリア88に10機だけ配備されたクフィールのパイロットに選抜されるなど、当時の88屈指の腕前の持ち主である事がうかがえる。


代々戦闘機乗りの家系出身で、彼の父や祖父も一次大戦や二次大戦でのドイツ空軍のエースパイロットであった。
目元の皺と糸目が特徴的な渋い容姿をしている。劇中で目をしっかり見開いているシーンは無い。


NATO軍では飛行隊長を務め、訓練生を率いていた事もあるが、事故で訓練生を全員死なせてしまった過去を持つ。
この事は今でも彼を苛んでおり、これがNATOを辞めて外人部隊に入る切っ掛けとなった事が示唆されている。
またかつてNATOでの隊長の経験があっただけに、空戦の技能のみならず指揮能力も高い。
シン曰く彼の指揮はサキより安心感があるとの事で、それ故にか88のパイロット達からの信頼も厚い。


基本的に温厚な性格であるが、シンが乗機の通信機を買い替えるにあたり、アメリカ製、西ドイツ製、日本製のどれにするかで迷っていた際、
西ドイツ製を「なんたっていっちゃん良い!」「エレクトロニクスは西ドイツだ!」と絶賛、アメリカ製を推したミッキーと喧々囂々とするなど、
コミカルな面も描かれた(結局シンは日本製を選んだ)。

シンとカーライル曰く、基地ではドイツの白ワイン、シュタインベルガーを愛飲していたらしい。本人曰く「高級酒しか飲まない」との事。


砂漠空母編最序盤、攻勢に出た反政府軍の迎撃にサキ、ジェンセンと共に出撃。
その後は2人と分かれたのか3人が行動を共にする描写は無く、チャーリーとの一騎打ちを制し帰投したシンにマッコイの口からサキとミッキーの未帰還と共に戦死が告げられた。
鋼鉄の撃墜王の余りにも呆気なさすぎる死だった。


その後は幾度となく亡霊として登場、最期は日本に生還し涼子と幸せな日々を過ごしていたシンの前に現れ彼の平穏な日常の崩壊は加速していく。


作者の新谷が後に連載したバイクレース漫画『ふたり鷹』にも一種のスターシステムで風場ふうば正というほぼ同じ容姿のキャラが登場している。


乗機はクフィール。一部の回想でA-4に乗っているシーンもある。



  • ジェンセン

敵の大部隊が88基地へ大規模攻撃に打って出たエピソードにて初登場、サキ・フーバーと共に出撃し、彼らとの連携で一気に敵機を蹴散らす活躍を見せた。
その後エリア85にグレッグ・シンらと共に派遣される。
比較的落ち着いた人物の多い傭兵達の中では比較的喧嘩っ早い性格で、
85に到着早々に85のパイロットと罵倒合戦を経て殴り合いの喧嘩を起こすなどしている。
一方で、血気に逸り無茶な戦いに挑もうとする正規兵達に皮肉交じりの正論を述べて抑えるなど、シビアな面もある。


砂漠空母と88の面々が初めて遭遇した際の戦いにて真っ先に砂漠空母へ攻撃を仕掛け、
接近した所を対空ミサイルの雨に晒されエンジンに被弾、最早脱出もままならなかったため特攻を仕掛けるも、
先に機体が力尽き墜落、砂漠空母との戦いが始まってからの88最初の戦死者となった。
彼が単独で突撃を仕掛けた際には、グレッグは「防空能力も何も分からない以上、無暗に手を出すべきではない」と制止していたが、
彼はそれを振り切っており、自身の喧嘩っ早さが死を招いたと言える。


彼の死を聞いたシンは「ジェンセンが!?」と驚いており、彼も一目置く程のエースだった様である。

乗機はクフィール。



  • マリオ・バンディーニ

地上空母編の少し前に88に加わったパイロット。
イタリアのアクロバットチーム「フィレッツェ・トリコローリ」の花形パイロットだったが、「本物の戦闘機」に乗る為に88にやって来た。
初登場時、シンが88に着陸しようとしている所をシンの頭上を飛び越える様にして強行着陸する(あり得ないくらいの危険行為である)
それを咎めたシンと他88の傭兵達に取り囲まれ胸倉を掴まれても尚「あれくらい避けられなきゃここにいる価値はねぇよ!」「ほんの挨拶代わりさ!」と逆に煽り返す、
フーバーの古傷を掘り返すなど、シンを始めとする88のパイロット達からの第一印象は最悪であった。
他にも展示飛行のテクニックと実際の空戦を混同する、初戦闘後は恐怖で青ざめながら震えるなど、全体的に青臭さや空気の読めない所があった。
しかし空戦の腕前自体は非常に高く、ヘッドオンから一瞬で2機撃墜するなど、その技能は他の傭兵達と遜色ない。
着任した翌週には撃墜スコアランキングでシンを抜いて1位を取っており、これを機に当初は邪見に扱っていた他の傭兵達も彼を徐々に見直す様になって行く。
シン自身も「自分より技能は高い」と称していた。


ある作戦中、ミサイルを振り切るために逆向きのループを行った際にレッドアウト*9を起こし、
それによってバランスを崩したところにミサイルに追い付かれ、撃墜され死亡した。
シンは自分より技能が高いと思っていたマリオの死に納得が行かない様子であったが、
フーバーは「アクロとは異なり、空戦では死の中に垣間見える『生』に縋り付く為の目が必要だったが、アクロ上がりの彼にはそれが無かった(意訳)」と解釈した。

乗機はクフィール。



  • キャンベル

地上空母編の直前に初登場。
右手左足が義手/義足のパイロットで、「鉄腕キャンベル」の異名を持つ。
メインキャラの中では、特にシンやグレッグ等とは割と親しかった模様。
ある作戦中、被弾の影響で着陸時に乗機が爆発し死亡。



……したかと思われたが、ギリギリで脱出に成功しており、ペダルに引っかかっていた義足だけが取り残され黒焦げになるに留まった。


その後、グレッグやシンらと共にエリア85へと派遣される。
ジェンセンなどと比べて温厚であるが熟練の傭兵特有の凄みも持っており、
ジェンセンと85のパイロットとの喧嘩で85への加勢に割って入ろうとした、見るからにいかつい風体のパイロットを威圧して黙らせた事もある。
「ヘリパイのヘルメットなんざコーンフレークと同じだからな……」


グレッグと共に砂漠空母への攻撃の最中、弾切れを起こしながらも砂漠空母の位置を見失わないよう貼り付いていた際、
砂漠空母のエレベーターが故障によって開きっぱなしになっているのを確認する。
この時砂漠空母の艦載機であるF-18が1機発艦しており、格上の戦闘機相手に丸腰とあっては撤退もやむなしと考えるグレッグであったが、
キャンベルはエレベーターへの体当たりを画策する*10
しかし義肢のジョイントが外れず脱出に失敗、エレベーターのドアも衝突寸前に閉じてしまったため、彼は全くの無駄死にとなってしまった。
余りに報われない彼の最期にグレッグは涙を流し、また砂漠空母の頑丈さにA-4では性能不足を痛感し、A-10を注文する事になる。


グレッグと共に、砂漠空母のミサイル弾幕をほとんどスピードを落とさずに避け切る、
彼の死には88の面々が衝撃を受けるなど、ハンデを背負っていながらも相当な腕前だった模様。


OVAでは、最後の乱戦時にミサイルの追尾を受け射出座席を作動させようとした際に、義手が操縦桿に引っかかって外れず、そのままミサイルの直撃を受けて撃墜された。

乗機はクフィール、後にA-4。



  • マロリー

グレッグらと共にエリア85へ派遣されたパイロット。
色付き眼鏡と目の下の隈が濃いのが外見的特徴。
正規軍である85のパイロットと外人部隊である88のパイロットの違いを端的に示すなど、
同じく85に同行していたジェンセンと比べると渋い性格である。


85基地にて、乗機の電装品に砂が混じっている事を確認して以来「85にはジェット戦闘機を整備できる整備士が居ない」事を知り、
撃墜される前に整備不全で墜落するのではないかと不安に思いながら自力で整備を行っていた*11


マロリーの危惧は最悪の形で現実となった。
シンが他のエリア85派遣メンバーより遅れて88へ帰還した際、派遣メンバーが88へ帰還する2日前に整備不良が原因のエンストが着陸時に発生、
機体が滑走路に激突して死亡した事がグレッグの口から語られた。
同じくクフィールを使っていたジェンセンは生還するも、砂漠空母との激戦で彼の後を追うことになる。


乗機はクフィール。



  • ボリス

元イギリス空軍少佐。対地攻撃のプロで、マッコイが売りつけた格安のミサイルで痛い目を見たせいか彼に対して辛辣。
「暗闇からそのまま戻れなくなるかもしれない」という恐怖から眠る際に部屋の明かりを消さずに寝る癖があり、ある理由から88で自ら孤立するように振る舞い友達を作ろうとしなかった。


明かりを消して眠らず友達も作りたくない理由は、どれだけ死地を共にした友達であってもいつかは死に別れ、そして明かりを消して眠ると亡くした友人達が夢枕に立つという恐怖だった。


シンと共に「牙」攻略作戦を成功させ、ミッキーの援護を受けて帰還するが取り分で口論となりかけた際に空気取り入れ口から対空砲を被弾している事を明かす*12
自身も重傷を負っており、上述した1人でいた理由等を語り終えると「先に逝くぜ…ゆっくり眠れそうだ……」と力尽き緩やかに墜落。
シンの「ボリス、操縦桿を引け!!」という叫びすら届かず、「基地に帰還したら自分の部屋の電気を消して欲しい」と遺言を残して死亡した。
身寄りはなく、遺品も最小限しか無かったため彼の遺品は司令部で保管される運びとなった。


奇しくも「友達を作りたくない」という感情はシンと似通っていた。


乗機はF-8E。



  • モーリス

序盤に登場した初老のパイロット。T-6Aテキサンという旧式のレシプロ機に乗り続けながら対地攻撃の成績では海千山千の88でもトップレベルに食い込む。
88でも最古参級の機体を使い続ける理由は本人曰く「高齢故に計器類にランプ1つでも増えた瞬間頭が混乱するため」だが、機体の老朽化もあってサキには乗り換えを勧められていた。


序盤、エリア82が核攻撃を受け文字通り消滅し88にも核攻撃の驚異が迫る最中、イナゴの大群までも襲来し迎撃の為のスクランブルはおろか退避すら不可能という絶体絶命の状況に陥る。


絶望の只中でモーリスは走り、T-6Aで単機出撃。燃料を撒き散らしながら防塵フィルターとレシプロ故のプロペラを頼りに強引にイナゴを蹴散らし、撒いた燃料に発砲。
彼が走った滑走路に撒かれた燃料に引火し、それに巻き込まれたイナゴを燃やし文字通りの活路を切り開くが、それを見届けるのを待つかの様にT-6Aもまたインテークにイナゴが詰まり墜落、モーリスも戦死した。


その後の展開を鑑みるに、彼がいなければアスラン内戦は真の意味での終戦を迎えることは出来なかったため、地獄の一丁目の救世主となった。


乗機は上述のようにT-6A。



  • カーライル・ベンディッツ

グレッグ、フーバーと同期のパイロット。
山岳基地編に登場し、グレッグが契約更新する傍らで任期満了での除隊を選択。
同じ釜の飯を食った面々に見送られて故郷イギリスを目指して一路パリへと発った。
チャーリーを除き、劇中で任期満了で契約終了し除隊したのは彼のみという幸運な男と評された。


乗機はA-4。



  • ジェス

山岳基地編で登場したパイロット。
シンの部隊所属だったようだが、帰投中に本人曰く「燃料がスッカラカン」「もうこれ以上1分だって飛んでいられない」という墜落寸前の状況に陥っていた。
折悪しく出火している機が複数出ていたため、「火災発生機の帰投後、最優先で着陸しろ」という指示が出されるが、最早一刻の猶予も無かったからか焦る余り他の機体との間に割り込む危険行為を行った上、
パニック故か燃料切れ故か山岳基地特有の着陸コースにすら乗り切れておらず、そのまま進み続ければ入口付近に激突して基地や後続機に被害が出かねない状況にまで悪化。
脱出も勧められたが、あろうことか射出装置は故障しているだけでなく修理せず放置してしまっており、既に山岳基地は目と鼻の先まで迫っているため
周囲の地形的にも燃料の残りを考慮しても平地へ引き返しての不時着すら不可能……と完全に詰んでおり、状況を見るに見かねたシンが背後からジェス機を射撃。
間一髪のところで撃墜された事で最悪の事態は避けられ、サキも「撃墜していなかったら危なかった」とやむを得ない撃墜であったとして、このフレンドリーファイアについては不問とした。


ジェス……おまえ……

運がなかったな……


OVA版ではシンと同じ00セクション所属ということになっている。


敵機に背後を取られ咄嗟にシンに救援を求め、シンによって敵機は撃墜されるがその間際に機銃を受けてしまい、撃墜は免れたが風防を貫通した弾が両目を掠めて失明。
失明状態では機体の水平すら満足に取れず、シンの勧めを受けて脱出を試みたが原作同様射出装置の修理を忘れてしまっていた為、脱出すら不可能になってしまう。
明らかに挙動がおかしい背面飛行のまま、みるみる高度を下げていくジェス機を敵が見逃さない筈がなく追撃を受け、これもシンが撃墜するが敵機から攻撃を受けたことで完全にパニック状態に陥る。


分からねえよ、シン…!!どっちが上だ…どっちが下だ…!?

俺はどういう状態で飛んでるんだ!?

分かってるのは……滅多矢鱈に怖いってことだけだ……!


見えねえよ……!

俺には敵か味方か分からねえんだ!!


シンが誘導を買って出るが、完全に失明し付近を通過した味方のファントムの区別すら付かない状態では冷静さを取り戻す事は出来ず、出鱈目な飛行を続けながら手当たり次第に攻撃を繰り返してしまう。
まだ戦闘が終わっていない最中、いつ僚機に被害が出てもおかしくない状態になり、ミッキーからは「シン、なんとかしろやい!これじゃ安心して戦えやしねえ」とせっつかれ、キャンベルからも「荒稼ぎする前に味方の30ミリ機関砲をケツに喰らったらたまんねぇからな」と見放され、


ジェス……

運が無かったよ、お前


ミッキー、キャンベル両名から介錯を半ば押し付けられたような形ではあったが、偶然背後を取る形となったシンによって撃墜された。
原作ではどこかやり切れない表情を浮かべて引き金を引いたシンであったが、こちらでは割り切ったような表情と冷めた声であった。


原作では山岳基地編で登場した直後に自業自得の最期を遂げたジェスだったが、登場が大幅に前倒しにされた上に砂漠空母編で戦死したバクシーの末路をミックスさせて悲壮感を大幅に強化したとんでもない貧乏くじを引く形となった。
バードストライクで墜落死したチャーリー、2人掛かりでマリオの死を再現させられたバクシー&ロッキーとどれがマシだという比較話になったら凄まじく微妙だが


乗機はクフィール。



  • ブリッキー

中盤に登場するパイロット。88の名ありモブの一人。
角刈りと顔を斜めに横断する傷跡が特徴。
砂漠空母編で初登場し、補給のために88基地へ帰還した際にシンにジェンセンの死を伝えると共に
シンから砂漠空母の船体後方のエレベーターハッチが弱点な可能性があると教わり再出撃する。
その後も砂漠空母との決戦を生き抜いた様で、山岳基地編でも台詞こそ無いもののちょくちょくコマに映り込んでおり、
一度はシンらメインキャラと共に扉絵に登場した事もある。


山岳基地からの強硬脱出の際、正面から多数のミサイルに襲われ撃墜された。
この時に戦死したと思われたが、後の沿岸の仮設基地でバンダナの男と共にコマの端に映っており、どうやら脱出・再合流に成功していた模様。
それ以降の登場は無し。

作者の新谷が作画を担当した『ファントム無頼』に旅客機の乗客として2コマ登場する。コミックを持っている方は探してみよう。


乗機はF-4。



  • エスケープキラー

最序盤に基地へやってきた黒人3人組で、外人部隊のエリア88に懐疑心を抱いた正規軍から派遣された脱走兵殺し。
あと2万ドルというところで機体を大破させてしまい、自暴自棄になり脱走を試みようとしたシンに絡むがミッキーを始めとした猛者どもに包囲され
「脱走の現行犯ではないシンを脱走兵と見做して因縁を付けた」としてシンから手を引くか海千山千のエリア88トップエース全員を相手取るかという二択を突きつけられた挙げ句、サキに「88に脱走するような奴はいないと正規軍側に伝えろ」と切り捨てられ、その足で逃げるようにエリア88から撤退。
その際に真夜中に暇を持て余した88のパイロット達に境界線付近まで罵声を叩きつけられながらエスコートされ見送られた。


乗機はBAC ライトニング。



  • ウォーレン・コールドマン/ケン・シュニッツ

「消えちまうまでにフランス語を覚えるよ」

(ウォーレン)


「なあグレッグ 何で外人部隊に入ったんだ?」
(グレッグ「おまえは何でだ?」)
「さあ、なんとなくかな…」
(グレッグ「おれも…なんとなく…さ…」)

(ケン)


砂漠空母編の序盤辺りから登場するパイロット。
特にコンビを組んでいるという訳でもないが、よく二人揃って登場する。恐らく友人同士。
中盤の再編以降、ウォーレンはシンの、ケンはミッキーの副官となる。
どちらも乗機はクフィールで、消耗した状態でウォーレン、ケン、グエンの3機で敵の大部隊を相手に生還するなど非常に高い技量を持つ*13
ケンのみA-10を操縦しているシーンもあるが、詳細は不明。
シンを始めとした88のエースパイロット達が最も信頼する仲間の一人である。


ウォーレンは長髪でギターが得意。傭兵の身の上を皮肉る様な歌を度々弾き語りしている。
キザな一面が見られる一方、88のパイロットの例に漏れず気性が荒い部分もあり反政府軍を「ダニ共が……!!」と罵り、シンを侮辱する発言をしたグエンに対し「蜂の巣にされたくなければ黙れ(意訳)」と一触即発になりかけた事も。
また、女性も飛行服以外の需要も無い88に居ながらファッション誌を購読している。
出身は不明だが、フランス語が全く読めなかった。しかしフランス語で書かれた赤外線トレーサーのマニュアルと格闘する内に習得した。

シンの副官となった時は少尉に任命されたが、沿岸基地のワンシーンでは中尉と呼称されているので昇進したのかもしれない。


ケンはニット帽と鉤鼻が特徴。自称「不良中年」。
絵が得意らしく、終盤で88の滑走路に施された偽装ペイントは彼の手によるもの。



  • ルロイ・ヘンダーソン/ライリー・オコンネル

↑の二人と同様、中盤からよく二人組で登場する。
ただし準主役級の彼らと違ってこの二人は名ありモブ程度の扱いである。


ルロイはパンダの描かれたヘルメット、普段は毛皮の帽子を被った小太りの男で、ライリーはパーマのかかった長髪とサングラスの男。


後の再編でライリーはルロイの副官となる。
ルロイはシン・ミッキーと同様に大尉に任命された事から、彼らに準じる能力を持つエースと推測できる。
事実、自殺行為同然のタイトロープ作戦に参加し、見事に生還している。
両者揃って仮設基地にも登場しており、整備兵曰くスミソニアン博物館レベルに雑然とした倉庫で胡椒を探し、探し当てる頃には夜が明けていたらしい。


作者の別作品『ダブル・ニッケル』にもモサク&将軍として登場。こちらのモサク(ルロイ)は日系人という設定だったがルロイにも日本人の血が流れてたりするのかは不明。


乗機はA-4。



  • ラウンデル

「軍本部から連絡がありまして、理由を説明しろと言ってますがね」
(サキ「何の理由だ?」)
「この88が独立部隊として活動すると宣言したことに対してです」
(サキ「お前のことだ、もう返事は出したんだろう…聞かせろ」)
「”くそくらえ”と返信しておきましたがね」
(サキ「いいぞ…最高だ!」)



「空の銀狐」という異名を持つアスラン空軍少佐。サキの発言からかつてはイギリス海軍に所属し、空母「アーク・ロイヤル」に配属されていた模様*14。空母に乗った時はかなりウキウキしていた。
ギリシャの訓練基地の教官。シン曰く緩くなったそうだが、彼が訓練していた頃は24時間ぶっ通しの訓練があったらしい。
所謂「鬼教官」的存在であり、88に配属される前はシンも彼にシゴかれたとの事。またサキも彼に育てられた。
鬼教官として振る舞い、一定水準に達していない訓練生を容赦なく篩に掛ける理由は一人前の戦士として大成して少しでも生き延びて欲しいという親心故のもの。
再編後はサキの副官的立場(=88の事実上の副指令)となり、彼の仕事を支えた。


髪をオールバックとし、左目に眼帯を付けたいかつい風貌だが、その一方で(顔に似合わず)涙もろいという一面がある。
ある人物の心境を聞いた時には「健気じゃ…」とハンカチ片手に号泣しており、その人物いわく「あんなに涙もろいとは思わなかった」と言われた。
戦闘機に乗って出撃したシーンは1度しかなかったが、乗機の性能を活かした高い操縦技能を見せつけた。


乗機はバッカニア。パーソナルマークは小学館の雑誌に連載されていたのにジャンプパイレーツ



  • キム・アバ

「ウォーレンさんがいってましたよ…月の赤い夜はこの地球上でよからぬ事を考えてるやつがいるって…」


中盤の再編から加わったパイロット。齢16(作画的にもっと若く見えるのはご愛敬)の黒人少年で、普段は頭にターバンを巻いている。
実はアフリカの小国ルンガの第3王子。「寄港出来る規模の港があるルンガに寄港したいので政府関係者に挨拶に行きたい」と言う理由からキムがヘリコプターを操縦して*15向かった際は、
ルンガの王宮の中庭にアポ無しで軍用ヘリコプターで直接乗り付ける形でのエクストリーム挨拶を敢行する暴挙をやらかした。*16
志願入隊した理由は「王家の者は常に戦場で強くあらねばならない」というルンガ王家の習わしによる。
まだ少年である事から、88の男達からは大いに可愛がられている。
訓練成績こそ優秀であったが、少年故に精神は未熟であり、純粋さも残している。88の男達と比べて感情を露わにする場面も多い。


ギリシアの訓練基地でシンと出会って以降彼からは何かと気に掛けられており、彼の直弟子である。
戦士としての心構えを叩き込む事を目的にシンから過酷なシゴキを受けた事から当初は彼に反発していたが、
後にその意図を理解して以降はシンを大いに慕うようになる。この時シンがキムに叩き込んだ
「死ぬほどの目にあっても、なお生きようとする意志を保った奴が生きて帰ってくるのだ(意訳)」
という教えは、後に師であるシン自身の元にも帰ってくる事になる。
空戦シーンがほとんど描かれていない事もあり、彼が戦闘機を撃墜するシーンは皆無である。
空戦の成績も判明している限り1機のみ(本人の自己申告による)。
しかしこれはあくまで「明確に描写されている限り」の話であり、コマの外では戦果を上げている様である。
と言うよりも作戦の都合上(と無断出撃して突撃した)、キム機単機で敵基地を襲撃した事が2回あり、
どちらでも(奇襲が決まった上にすぐに増援が駆けつける形だったとは言え)撃墜されたはおろか被弾した形跡すら無い事から相応の腕は有している。
またグエンの非道な行為に憤った事もあるが、彼自身は決して「青さ故に人を殺す事に躊躇いがある」という訳では全く無く、*17
銃を持った敵兵士に取り囲まれ窮地に陥ったシンを救うためとはいえ、ハリアーの翼下ガンポッドで敵兵を粉々にするというえげつない活躍を見せた場面もある。

終盤、シンが神埼と再会するも負傷した上に敵兵士に包囲された絶体絶命の状況で駆けつけ、ハリアーで敵兵を蹴散らして助けるが、その際に発生した王宮の崩落で神埼を見失ってしまう。


その後失明寸前のサキと合流する直前に王宮を彷徨っていたアブダエル・ヴァシュタールを保護したが既に麻薬中毒の禁断症状に襲われており、持ち合わせのモルヒネで誤魔化すしかなかった。
キム以外全員が手負いの状態のため救援を呼ぼうとしたが折り悪くハリアーの通信機が故障しており、直接呼ぶために独り王宮から離脱。
その際、誰か一人は乗せて行けると進言するも、

  • シンを連れて脱出した場合、サキが再びアブダエルに怒りの矛先を向けて暴走、殺害すらしかねない
  • サキを連れて脱出した場合、負傷して左肩から先の感覚が殆どない状態のシンではアブダエルを止められない
  • アブダエルを連れて脱出した場合、万一後部座席で禁断症状が再発し暴れ出した場合墜落しかねない

という八方塞がりの状況である事をシンに指摘され断念している。
その後、約束通り救助ヘリで駆けつけるものの既にサキとアブダエルは霊廟で果てた直後という最悪のタイミングで、目の前でサキが自決したショックと銃撃骨折による発熱に魘されるシンを回収して王都脱出を目指す。


しかし、離陸直後にプロジェクト4による王都への総攻撃が開始。王都は火の海となり病院に着陸は困難と判断され正規軍の空軍基地へ迂回を余儀なくされる。
しかし王都上空は制空権が確保出来ておらず、その状況下で護衛機不在で飛行中の鈍足の救助ヘリが見逃される筈もなく、プロジェクト4の機体に捕捉され反撃手段も無く撃墜の危機に陥った所をケンに救出された。
しかしウォーレンの死と自らの別れを告げられ、被弾していたケンは機体の機首を落として建造物に激突。「もうたくさんだ!!」とシンを抱きかかえながら泣き叫んだ。
更に空軍基地到着後に帰投したミッキーとセラも爆死。セラの遺品となったヘルメットを手に無言で泣き、相次ぐ仲間達の戦死も相俟って神埼との決戦に向かうシンを引き留めようとしたがそれは叶わなかった。


エリア88の主要メンバーの数少ない生き残りとなるも、真はエリア88にいた時の記憶をなくしており、ある意味唯一の生き残りとなってしまった。
それ故に日本に帰国する真とは空港ですれ違うが言葉を交わすことなく別れることとなった。


好物はイチゴジャム。これはルンガの名産がジャムであることに由来する。


乗機は当初はA-4であったが、山岳基地に到着してから間もなくハリアーに乗り換える。パーソナルマークはハリアーを受領して以降は「剣に巻き付くコブラ」。
その後シンからF-20を譲り受けるも山岳基地からの脱出の際の1回しか使っておらず、改めてハリアーに乗り換えた。



  • グエン・ヴァン・チョム

「殺し合いに理屈はいらねェ!!真っ先にしとめて生き残った方が正義さ!!」


88が山岳基地に移行してすぐに加わったベトナム人のパイロット。
元南ベトナム空軍少尉にして、トンキン湾の人食い虎の異名を持ち、ミッキーとはベトナム戦争当時から互いの噂を知っていた関係。
口ひげと顔を大きく横断する傷跡が特徴的。また普段は葉巻を咥えている事が多い。


殺しを楽しみ、脱出したパイロットを機銃で射殺するなど残虐な性格の危険人物としてデビューを飾る。
またその時同行しており、それが切っ掛けで彼を嫌うようになったキムにも時々ちょっかいをかけていたが、
それは子供好きという見かけに反する側面も持っているためであった。ある時にはキムを昏倒させてまで危険な戦場への出撃を代わるという場面もあった。
残虐性故に当初は88メンバーの中でも少々浮いた存在だったがいつの間にか馴染んで行った。
部隊再編後に88へ加入しており、着任と同時に中尉に任命されている。
OVA版は砂漠基地のみで物語が展開し、タイトロープ作戦前に加入しておりタイトロープ作戦にも参加したが、キムとの絡みも無いため残虐性がピックアップされた。


パーソナルマークは翼の生えた虎。バッカニア同様、珍しく尾翼ではなく機首に描かれている。


王都陥落に際し一気に戦況が悪化し、88メンバーの多くが見切りをつけて去っていく中「アフリカで歩兵は性に合わない」という理由で残留を選択。
サキによる何故残ったという問答の場に姿を見せていたので、彼もまたサキが魂を雇う事に成功した1人だったのだろう。
山岳基地からの強行脱出作戦に於いてはミッキーと戦闘中に合流するも、直後に弾薬が底をつきかけた彼が死地を求めて突貫。
放っておけず自身の機体も乱戦で満身創痍に近い状態で追従、その直後に脱出装置が誤作動を起こし空戦の真っ只中に放り出されるというアクシデントが発生。
奇跡的に五体満足で木にパラシュートが絡みついた状態でミッキーに発見され救助されるが内臓が飛び出す程の重傷を負っており、
「中身が出ちまった、もう助からねえ」と終わりを悟る。
最早まともに動く事も出来ず、応急処置を受けて乗機も失ったので合流ポイントまでF-14の後部座席に搭乗。
その道中に自身の過去を断片的に語り、「もう一度メコン川に沈む夕日を見たい」というささやかな本音を漏らしつつ、
その美しさを思い浮かべながら眠りについたまま息を引き取る。
合流ポイント到着時に死亡が判明し、ミッキーとキムを始めとした88の残存メンバーで合流ポイント付近に遺体は埋葬され、墓の上空で追悼飛行が行われた。


なおエリア88に登場する、空戦によって負傷・死亡したパイロットで埋葬されたのは彼のみである。
彼は生前「死ぬなら空で死にたい。穴の中は御免被る」と言っていた事を考えると何とも皮肉である。
因みに、「どうせ死ぬなら空で」と語っていた者は彼以外にも数名いたが、実際に空で死んだ者は一人もいない。


OVA版では上述の敵兵射殺の件がクローズアップされ、乱戦中に弾切れになったため射出座席で脱出した際、射出直後に敵機に捕捉され無防備な状態で機銃により蜂の巣にされるという因果応報の末路を辿った。


乗機はF-105。後にクフィール。



  • バンダナの男(仮称)

本名は不明。乗機も不明。
序盤から最終決戦までコマの端々に登場する88のモブキャラの代表格的存在。
88基地の問題としてよく挙げられる「勝手に武装を変更するパイロット」は彼。
最終決戦直前でも88基地で飛行服の金具に油を差しているシーンが描かれているが、それ以降は不明。


「だめだよ……おれのは20ミリなんて。豆鉄砲じゃないんだ!! 40ミリ砲のタマじゃねェと……!!」
「40ミリ!!」
「あいつら戦闘機に高射砲でも積んでんのか?」



  • ランディ

エリア88の撃墜スコアトップ5に入る凄腕のパイロット。
スキンヘッドとサングラスが特徴で、ウルフパックによる襲撃で戦闘機が壊滅した際にサキから88の十傑の1人として数えられた。
端的に言って、後述する「沢松之助」と全く同じ容姿であるが関係はない。


グレッグが未帰還となって暫く経ったある日、「ゴールド」と呼称される何かを一心不乱に捜索する反政府軍の無線を傍受。
それを墜落した輸送機に積まれた反政府軍の軍資金の金塊と判断して自費出撃を繰り返していた所、補給中にうっかりその情報をマッコイに漏らしてしまい、マッコイが更に情報料を毟り取りながらパイロットに情報を拡散
文字通りシンとミッキーを除いた88のパイロット全員が、墜落機の捜索に完全自腹を承知で出撃してしまうという大騒動に発展。
平成アニメ版では、金塊の値段に尾ひれが付き、「総額数百万ドル相当の金塊が積まれている」という情報まで飛び交い、滑走路に待機列が出来る混沌とした状態になった。
なお、金塊であると判断した理由はロッキーの言葉を借りるなら「紛争地帯に於いては紙幣より金塊のほうがよっぽど金銭的価値があるから」なのかもしれない。


夜間、ロッキーが来た日を最後に消息を絶っていたグレッグが風邪を引きながら歩いて帰還。
その際に彼が件の輸送機を撃墜するが痛み分けでグレッグも撃墜されたという事実が明らかになり、出撃していた要員は金塊の在り処を尋ねるも、輸送機に金塊は積まれておらずゴールドという1人の男とその男の手荷物の鞄だけが積荷だったと明かされる。
そのゴールドは反政府軍側の作戦参謀で「第二のロンメル」とすら呼ばれる程の大物であり、彼の鞄の中身は暗号文書だったのだが、
あろうことかそれを発見したグレッグがその暗号文書で鼻をかんで暖を取ってしまった事で文字通り灰になり、解読すれば内戦の早期終結すら可能だったかもしれない代物がお釈迦になってしまった。


このゴールド騒ぎで出撃した面々にしてみれば骨折り損どころか丸損のくたびれ儲けであり、更にはグレッグ帰還時点で夜半にもかかわらず粘っているのか燃料切れで墜落したのか未帰還機が数機いるなど基地の運営に一時的な支障が出るほどの大騒動を巻き起こした引責で出撃組に袋叩きにされかけるが、
元はと言えばそんな紛らわしい名前のオッサンが乗った輸送機を撃墜したグレッグが悪い」という強引な理屈で責任を回避。
出撃組は完全に頭に血が上っていたためこの言い分に納得してしまい、グレッグが袋叩きにされる羽目になった。
その理屈でいくと偽情報を情報料と補給費用をふんだくりながら拡散したマッコイにも責任はあるのだが……


乗機はA-4、後にクフィール。



  • マッコイ

「兵器業者の間じゃ人間の命ほど安いものはないんだ!!お前さん一人いなくなったって地球は回るんだよ!!わかるかい?」


エリア88に出入りしている武器商人の老人。
88の面々からは概ね「マッコイじいさん」「じいさま」等と呼ばれ親しまれている。


性格は守銭奴の一言に尽きる。儲け話を耳ざとく聞きつけてはどこからともなく現れ商談を仕掛けて来る元気な老人。
彼の倉庫は「ティッシュペーパーから核弾頭まで何でもある」と称され、
また本人も「金さえ出せばクレムリン宮殿さえ引っ張って来る」「死んだ人間の魂以外仕入れられないものは無い」と豪語している。
事実、ヨーロッパ中を駆けずり回ってスクラップからドラケンを組み上げたり、試作機が3機しか製造されていないF-20を入荷するなど、相当なものである。
一方で、書類の偽造を繰り返してF-14を、NATOの高官の弱みを握ってF-18のスペアエンジンを用意するなど、あくどい事も繰り返している。
ロッキーに至っては「大量のカメラ用フィルム*18を売るために、ロッキーのフィルムバッグをドサクサに紛れて炎天下に放り出してフィルム200本をパーにする」という手法で被害に遭っている。
本人は「その時に起きていたグレッグとバクシーの着陸騒ぎで自分が撮影に夢中になる余り、自分で炎天下に放置してしまった」と思い込んでいたので余計にタチが悪い。


また、粗悪な品を異常な安値で販売する事も度々行っており、「墜落した機体から使える部品を回収して1ドルで売る*19」、
「誘導も爆発もしないどころか推進装置に点火さえしないミサイルを3発セットで5ドルで売る」など数多く、こんなに怪しいのに購入者は度々現れ、そして酷い目に遭う。
これには「部品の金口さえ合えばどうとでもなる」という身も蓋もないマッコイの考えも影響している。
それでも武器商人としての腕や人脈は確かなものであり、88基地の兵站は彼が一手に引き受けている。時には整備班の陣頭指揮を執る場面もあった。
中盤、エリア88の財布事情が逼迫していた時期は取り巻く状況も相俟って「貧乏人が戦争したきゃ、あいつに頼めばなんとかなる」「マッコイでなければとうに逃げ出している」とサキが評しておりかなり信頼を置かれていた。


また、88で多くの兵士達を見てきたからか彼らの境遇を気に掛けており、特にシンに関しては彼が望んで88に入隊した訳ではない事を把握しているので、
商談帰りに日本人マーケットで日本製カップ麺を土産に買ったり、情報料なしで大和航空及び前社長一家の現在を探ったり、機体を大破させた際は同程度の性能の機体を格安で見つけようとするなど配慮をしている場面も多かった。


88基地での彼はひょうきんな面を見せている事が多いが、その一方で「お前さん1人がいなくなっても地球は回る」と武器商人としての凄みを利かせる事もあり、
上述の悪癖もあって悪人ではないにしても決して善人でもない。



  • プーキー

マッコイの相棒的な存在であり、彼が輸送に使うC-130のパイロット。
88に雇われた戦闘員ではなく、マッコイの豆料理にウンザリして一度は戦闘機乗りになろうかとも言っていたが結局ご破算となった模様。
かなりの苦労性らしく、終盤ではマッコイへの借金を理由に1日数往復の輸送をさせられていた。
戦闘機乗りになれば1週間で葬式が出る腕前らしいが、山岳基地の開口部ギリギリの全高で垂直尾翼を破損させずに、初見で着陸に成功させるだけの腕前を持つ。


  • キトリ・パルヴァーネフ

平成テレビアニメ版のオリジナルキャラクター。
褐色の肌と黒髪を持つ、中東風の女性。
サキ曰く「私のおじの娘」(=サキにとっては「いとこ」に相当)とのこと*20
乗機はミラージュF1(こちらも原作未登場)



◆アスラン王国の人々

  • リシャール・ヴァシュタール

サキの実の弟。
サキとは逆に母に似ており、豊かな金髪を持つ。
彼からは大いに可愛がられており、普段は苛烈なサキも彼の身に危機が迫った際には本気で心配していた。
サキとの思想の違いから、父率いる反政府軍に属している。
彼としては敢えて父側に付く事で彼をの信頼を得た後に説得し、政府軍・反政府軍を和解させた後にアスラン王国を民主化させる事を目指していた。
彼はその結果としてヴァシュタール王家が処刑される事になっても構わないと考えているなど、その物腰に反して芯の太い面もある。


現実主義的なサキに対してこちらは理想主義的な性格で、
彼がアスランの民主化を進めようとしていると聞いた時にはサキは一笑に付し、その問題と危険性を指摘した。
また苛烈な性格のサキとは逆の穏やかな性格の持ち主で、彼と一度対面した事があるミッキーは彼を「炭火の様な暖かさ」と評した。


総じて何かに何までサキとは対照的な人物で、血液型も違う。サキもまたその事を大いに気にしている。


一時期は地上空母に乗艦、グランドスラムによるアスランへの攻撃に加担している様に見えたが、実際にはそれを妨害するために動いていた。
しかし詰めの甘さからグランドスラム発射阻止は失敗、
地上空母副艦長と通路に配置されたレーザー銃からの度重なる銃撃によって、地上空母からの脱出中に死亡した。


……と思われたが、地上空母の外に放り出された後、たまたま通りかかったマッコイに拾われ応急手当てを受けて蘇生し88へ運び込まれる。
そこで88にグランドスラムの情報を伝え、その後自身はヨーロッパへ療養に向かった。


プロジェクト4一掃後はアスランに帰国、共和制が敷かれた新アスランの王家を引き継ぐ事となった。



  • ザク・ヴァシュタール

アスラン王国現国王。
アブダエルの弟であり、サキの叔父に当たる人物。
政治上は保守派に当たり、外国資本の流入によって国が荒らされる事を嫌ってアブダエルと対立した。
生まれ育ったアスランを離れたくないという一心で亡命を渋り「サキが戦うなら自分も残って戦うし、亡命するのならサキも逃げるのが条件」と頑固に亡命を拒否していた。



  • アブダエル・ヴァシュタール

サキの実父、ザクの兄に当たる人物にして、反政府軍の指導者。
前国王の長男、つまり王位継承権第一位の人間であり、本来であればアスラン王国国王となっている筈の人物である。
しかし前国王は次期国王にザクを指名、彼がそれを不服としてクーデターを起こしたのがアスラン内戦の原因とされる。
外交手腕に長けるとされ、前国王はそれを活かしてザクの手助けをせよと言い残していた。


政治上は改革派であり、外国資本の積極的な導入やアスランの改革を勧めようとしていたが、その点でザクと対立する事になる。


アスラン内戦を起こした本当の理由、そして外国資本を導入しようとしていた理由は妻ソリアにあった。
当時の医学では治療できなかったソリアの血液ガンを治療すべく、アスランを改革しそれによって成長した技術で彼女を蘇らせようとしていたのである。


内戦中は国外に亡命していたが、プロジェクト4がアスランを制圧した後に帰国、
それ以降はプロジェクト4の傀儡政権の代表として据えられる。
更には神崎の策略(ザク国王派への攻撃の口実作り)でソリアの眠る霊廟に火をかけられ、そのショックで虚脱状態に陥ってしまう。
その後は麻薬を打たれてアスラン王宮に監禁され、サキ、キム、シンと合流した時には重度の麻薬中毒状態であった。
朧げな意識の中でソリアの霊廟に向かって歩く中で逃亡するプロジェクト4の警備兵に撃たれ、
そのショックで一時的に正気を取り戻すと、サキらにアスラン内戦の真相を語った後に息を引き取った。


  • ソリア・ヴァシュタール

サキの実の母であり、アブダエルの妻。
血液ガンに侵されており、リシャールを産み落としたのと引き換えに亡くなった。
遺体は王国宮殿敷地内にある、タージマハールに似た霊廟で冷凍保存される形で安置されていたが、神崎の策略により火をかけられ失われた。


サキさえも知らなかったが、実際にはアブダエルの手によってコールドスリープ状態で生きていた。
ガンの進行を止め、かつ医療技術の進歩を待つために仮死状態にされていたのである。
霊廟に火をかけられた事で焼死したと思われていたが、実際にはジュリオラの手によって運び出され、密かに治療と蘇生が行われていた。
ただ記憶を失っていたため、ひとまずはジュリオラの妹として匿われていたが、終盤に偶然彼女の日記を目にした事で真相を知り、最終的にはアスランに戻り王家を引き継いだ。


冷凍保存された彼女の維持の為にアブダエルは外資を入れようとし、ザクはそれによって国が荒らされる事を嫌ってアブダエルと対立した。
つまり彼女は内乱の遠因と言える(サキもまた、彼女がアスランを愛していた事が内乱の原因の一つと考察している)。




◆日本人の主要登場人物

◇津雲家とその周囲の人々

  • 津雲涼子

本作のヒロイン。劇中の描写からフランス語が堪能である模様。
容姿の美しさは多くの人物から度々触れられており、サキも「聡明でチャーミング」と称した。
真の恋人であり、彼は作中幾度も「俺の天使」と称し、戦場での心の支えにしている。
彼女もまた、パリで突如として行方不明となった真の身を案じ、またその生還を信じている。


僅かな手掛かりから真の行方を掴み、自身の目で生存を確かめるべく内乱中のアスランにまで乗り込む、
奪還が叶わないと見るやすぐさま別の手段を講じる為にパリでファッションブランドを立ち上げる、
88の戦いを支援する為に世界規模の運動を起こす等、行動力はかなり高い。
また直観・運命を信じる質で、真と出会った瞬間に一目惚れする、
真が死亡したという報告を「虫の知らせ」で生存を確信したばかりか、真自身が自分が死んだと伝えるよう言い残したと見抜く、
縁もゆかりも無いジョゼを引き取るなど時に突拍子もない行動に出る事もある。
一方、特に序盤では自身の社内での立場に甘えた結果世間知らずな一面も度々見られ、突拍子も無い行動や名目上ビジネスの渡航でファーストクラスの席を用意させるなど振り回される側であった大和航空社員の間では彼女に良い印象を抱いていない者も少なくなかった事を示唆する描写もあった*21


先述のファッションブランドは、後に88の戦いに大きな影響を与える事になる。

中盤フランスからバンバラへ行く直前の真から別れを告げられ発作的に自殺をするも、安田が早期に発見したことで一命をとりとめ療養のために日本へと帰国する。
帰国後海音寺から庭園会への招待を受け、本人は乗り気でなかったものの渋々参加するがそこで真と再会しヨリを戻すこととなった。


真との平穏な日常を過ごし結婚を間近に控えていたが接触してきた神崎を討てなかった真が海音寺によって国外追放されたことで一時塞ぎ込んでしまう。
だが直ぐに再起し、夫がプロジェクト4と体を張って戦うなら妻は関連企業に圧力をかけて戦うことを決意、その結果神崎を孤立無援状態にすることに成功している。
最終的には国連関係者としてアスランに赴き、神崎との一騎打ちに向かう真とすれ違う。
その後、記憶喪失となった真を連れて日本に帰国する。


  • 安田妙子

涼子を公私に渡って支える女性。少々キツ目の顔だちだが、なかなかの美人。
元々は大和航空社長秘書を務めていたが、神崎の社長就任に伴い退社し、
それ以降はファッションブランドを立ち上げた涼子をサポートするようになる。
またある事を切っ掛けに神崎の怪しい動きを掴んで独自に調査を行い、その過程で命を狙われ送り込まれた刺客により一度は殺されかかるも、
諦める事無く行動を続け、遂には神崎を失脚に追い込むなどバイタリティーは半端ではない。
その後は真を取り戻すためにアスラン王国そのものを買い取る事を画策する。


現在28歳であり、涼子の恋と真の奪還を応援・補佐しつつも行き遅れつつある事を本気で心配している。
真の行方を追い、涼子と共にアスランへ入国を果たした際は情報収集も兼ねて正規軍兵士を相手に合コン染みたものに繰り出していた。
涼子は、上述の高過ぎる行動力が男性を遠ざけてしまっているのではと推測している。
ただ、賢さ故か男の誘いに本気になれないようで、それも恋人のできない一因と思われる。



  • ジョゼフィン・シトロン/津雲ジョゼ

成田空港で涼子が偶然出会ったフランス人の父と日本人の母を持つハーフの少女。愛称はジョゼ。10歳。
両親を事故で失った孤児であり、母には親戚が居らず、駆け落ちによって生まれた子であるためにフランス側の親族も引き取りを拒否し、
戸籍上はフランス人である為に日本の施設にも入れず、飛行機でパリへ送られフランスの施設に入れられる予定だった。
「日本からもフランスからも歓迎されない子」である事を不憫に思い、またその姿を真に重ねた涼子に拾われ津雲家の養子となり、以降は「津雲ジョゼ」となる(真としては『義理の妹』と認識されている。)。
なかなか賢い子である上に、耳が不自由だった母に教わった事で読唇術を身に付けており、これが度々物語を動かす。



  • 津雲善三

涼子の父。
大和航空社長であったが、中盤に神崎によって失脚させられたショックで体調が悪化し倒れる。
その後はしばらくスイスの、サキが入院したのと同じ病院で療養していた。
趣味は日本刀収集。療養中にスイスにまで刀を持ち込んでいた事には涼子から呆れられた。
彼の刀の内の一本は沢によって大いに役立てられる事になる。
第二次世界大戦に日本軍の特攻パイロットとして参加、敵艦に突っ込んだものの奇跡的に助かるという経験をしていた。
傷病兵兼捕虜として敵艦に収容された際は「生き恥を晒すぐらいなら」と死を望んだが、乗艦していた日本語に理解のある牧師に説き伏せられ自身を見直す契機となったらしい。

真が大和航空を買い戻したことで再び社長に返り咲くも、本人は経営する意思は薄く真に経営を託したいと告げるも断られてしまった。
自身も戦争を経験しパイロットだったことから真の心情には理解を示すも、結婚を控えた娘を持つ父親でもあったため非常に複雑であった。


  • 沢松之助

大和航空宣伝部スイス支店に勤めるサラリーマン。
スキンヘッドに常時サングラスというインパクト抜群の容姿をしている。
因みに、88にほぼ全く同じ容姿のパイロットが居るが関連性は無い。
安田に一目惚れしていきなり求婚し顔面をひっぱたかれる等している内に津雲家やサキと知り合い、
目の治療を切り上げたサキのボディーガードとして、そのままイギリスまで彼に同行する。


……と、ここまでだとなんだかギャグキャラだな?と思う人は多いだろうが、
実は日本刀剣術の達人であり、銃を持ったギャング二人を前に、一瞬で銃を輪切りにした挙句に打ち倒す*22など凄まじい強さを持つ。
これにはサキも「なんて男だ……」と慄いた。
サキのボディガードを務め終えた後でも少し出番があり、役どころには何気に恵まれている。



◇海音寺家とその周囲の人々

彼らは存在自体が物語の核心に近いため、詳細は折りたたむ。

  • 風間英人

神崎の実の父にして、真の戸籍上の父。
元内閣総理大臣。
「佐藤栄作の造船疑獄事件を切っ掛けに総理大臣に就いた」という言及を始めとした諸々の描写から、彼が総理大臣だったのは現実の鳩山一郎内閣~池田内閣の頃と思われる。
最初の妻との死別後に神崎の母と再婚し長男(後の神崎悟)が生まれるが、
間もなく夫婦仲は冷え切り、海音寺祥子の家に出入りする様になる。
その後海音寺家との政略結婚に応じる形で神崎の母と離婚し、祥子と再再婚する。
神崎が10歳の頃、祥子に買い与えた伊豆の別荘に祥子と共に神崎の母に呼び出され、
彼女から車で崖に突き落とされて死亡した。


若い頃は海音寺八兵衛、そしてもう一人(名前しか出ず、話には絡まない)と併せて「政界の三羽烏」と称され、
八兵衛らとは誰が最初に総理大臣になるかを競った仲であった。


  • 神崎の母(仮称)

本名不明。苗字が神崎である事は間違いない。
神崎の実の母。
名家の出身で、それ故にプライドが高かったという。
風間英人との夫婦生活は早々に冷え切り、間もなく離婚する。
その後祥子の子である真を誘拐し殺害を試みるも結局断念、代わりに孤児院に預ける。
捨てられていた赤子の真の首に巻かれていたストッキングは殺害を試みた名残であり、母と旅館を転々としていた幼い神崎は母が外出した時と服装が違う事に気付き尋ねた時、
「可愛い赤ちゃんがいたから、ストッキングもコートもあげてしまった」と答えたため、神崎の言葉は嘘では無く殺意を持っていた事も真実だった。
程なくして風間と祥子を祥子の別荘に呼び出し、二人を車で崖下に突き落として殺害した後に、後部座席に乗せた神崎を道連れに自身も車ごと崖に飛び込み自殺する。
しかし心中は失敗。彼女のみ死亡し、後部座席で軽傷を負い意識を失っていた神崎が目を覚ますと、ボンネットの上に母親の首だけが乗っていたという。


  • 海音寺八兵衛

日本政財界の名家・海音寺家の出身の老人。
真の母・祥子の父親であり、真にとっては実の祖父。
父経由で涼子とも互いに知り合いである。


若い頃は政界で風間らと鎬を削り合い、最初に総理大臣の座を射止める者を競っていた。
結局彼は終ぞ総理大臣になる事はなかったが、代わりに裏で大きな権力を握り、
その事から「政界の古狸」「影の総理」と称され、神崎も「名より実を取った中々の曲者」と評した。
現役を退いた現在も尚、総理大臣や皇室にも発言力を持っていたり、総理大臣以外で唯一「M資金」を使用できたり、
果てはアメリカ大統領を強請る事すら可能という凄まじい人物である。
以上の通りかなりの大物であり、ジョゼも彼の権力の大きさを涼子から聞いた際は「おっかない人」と委縮していたが、
実際に会ってからはすぐに打ち解け、彼からの頬へのキスも快く了承した。
この様に、普段は日本政財界の超大物である事を全く感じさせない穏やかな好々爺である。
しかし日本という「大」の安寧の為には個人という「小」を犠牲とする事は、例えそれが極親しい人間であっても辞さないという冷酷さも持つ。
彼の語る「平和」と「安全」の違いに深く考えさせられた人も多いのではないだろうか。


真とは真が悲願の帰国を果たし空港で一人涙していたことに共感、自身も政治家になる以前に石油採掘のため海外で働き幾度も死にかけたが帰国後涙したことを吐露しその場は分かれた。
だがホテルで再会するという偶然が重なった結果であり、後に自分の孫であることを把握しているが真にそれを告げることはなかった。
ただし当初から真の若者らしからぬ雰囲気を察し、正体を探るために仕込み杖をちらつかせ、真に監視をつけるなど黒い面も覗かせている。*23
その後立場上真に対しては厳しい処分をしたものの真の力を削いだように見せる思惑はあったもののM資金に手を出し、X-29を手配した(と思われる)こと
真の呪われた身を案じ全てを終わらせ無事に帰ってくることを願うなど身内に対する愛情は深い。


真曰くマッコイに雰囲気が似ているとの事だが、八兵衛が「ご老人」なのに対してマッコイは「くそじじい」らしい。


  • 海音寺祥子

海音寺八兵衛の娘にして、真の実の母。
名門・海音寺家の出身というお嬢様であったが、真の実の父である日系ロシア人の男性*24と大恋愛の末に妊娠、
その男性の死後に「政財界の名門出の娘が未婚の母になる」というスキャンダルを回避するために風間英人との政略結婚に応じ、真を産む。
その後、神崎の母による真の誘拐によって心労から体調を崩し、療養先の伊豆の別荘で神崎の母に殺害される。



  • 海音寺美鈴

海音寺八兵衛の孫娘。真とは従兄妹の関係になる。
八兵衛は彼女を「目に入れても痛くない」と大いに可愛がっているという。
八兵衛が参加した社交パーティーに伴って参加、八兵衛が連れて来た「青年実業家」の真と出会った事で彼に好意を持つが、
後に涼子と恋人同士だった事を知り、「夢を見ていたのは、私……」と涙を流しながらも涼子のために身を引いた。
涼子とは、八兵衛が主催した園遊会で知り合い(上記の八兵衛とジョゼのエピソードもこの時のものである)、
それ以降も涼子が起こした大規模反戦運動に参加し協力する。


  • 司/藤堂

八兵衛の部下という訳ではないが、彼に従いプロジェクト4に立ち向かう真をサポートする。
司は陸上自衛隊幕僚本部第二部(陸幕二部)、藤堂は内閣調査局(内調)の人間。
共に情報戦のプロフェッショナルである。
藤堂は、当初は「ふじどう」と呼ばれていたが、後に「とうどう」に変更された。
終盤にはアスランに入り反プロジェクト4のレジスタンスと合流して指揮を執っていたようだが、実家が神主の藤堂が馬に跨って砂漠を駆け回りアラーの名前を出しながらレジスタンスに発破を掛けている様子に「いいのかそれで」と司は呆気にとられていた。



◇その他の日本人

  • 六木剛むつきごう

NP通信のカメラマン。「火の玉ロッキー」の異名を持ち、88ではそのままロッキー、もしくは職業から「ブン屋」で通っている。
世界で唯一の空軍の外人部隊であるエリア88に興味を持ち、取材にやって来る。
OVA版では真が戦死したばかりのパイロットの部屋を訪れた際、反射的にその背中を撮影してしまい真が声を荒げる一幕もあり、後日「デリカシーがなかった」と謝罪していた。
彼が88の様子を撮影した写真に真が映り込んでいた事で涼子と神崎は真の生存を知り、後々の展開に大きな影響を与える事になる。
それなりに修羅場を潜っている様だが、グレッグのあまりの豪快さや本物の空戦の迫力には流石に度肝を抜かれていた。


取材の途中、登場していたヘリが撃墜された事で敵地に一人で放り出され、
砂漠を歩いて88へ帰還しようとする途中に砂漠を旅するキャラバンと出会い、
紆余曲折の末に族長やその娘サーラと心を通わせる。
しかし翌日に反政府軍の戦車隊と遭遇、その攻撃によって族長やサーラを始めとしたキャラバンの多くの人間が虐殺された事で激昂、
ジープで戦車に特攻を仕掛け、敵戦車諸共果てる。
その様子を自身のカメラで撮影させており、そのカメラはキャラバンの生き残りによって88に届けられた。
それを彼の「遺品」として扱う88メンバーであったが、シンだけはロッキーが88にやって来た時の「戦場カメラマンの遺品はオシャカになったカメラと相場が決まってる」という言葉を引き合いに、
カメラがまだ稼働している事から生存を信じ、また無事を祈っていた。


OVA版ではやや事情が異なり、戦闘を生で撮影するためにバクシーの機体に同乗。後部座席で撮影に勤しんでいたがミサイルが接近、振り切るために宙返りを敢行する最中にレッドアウトを発症。
同行していた真は回避に成功するが、バクシーがミサイルを振り切れず被弾。バクシー諸共空に散った。

88のメンバーと読者が彼の事をすっかり忘れた頃、日本で生還していたことが確認された。どうやって助かったかは全く説明が無いため不明。
左目と左腕を失ったものの未だにカメラマンとして活動しており、
ヘリからの写真撮影の際にドアから身を乗り出し過ぎである事をパイロットから咎められた際には、
「戦車に体当たりするよかマシだ!」と言い返すなど、「火の玉」振りは全く衰えていない。
その後偶然からジュリオラに謀殺されかかった安田を救出、またもやその後の展開に影響を与えた。


その容姿や「砂漠での戦いで死亡したと思われたが片目片腕を失ったものの生還する」といった展開から、
アンドリュー・バルトフェルドの元ネタの可能性が指摘されている。



  • ショウイチロー・イトー

「人を殺し過ぎて、あんた…頭がマヒしてきたんじゃない?」


ギリシャの訓練基地に居た日本人のパイロット訓練生。
シンらが外出中に脱走を試みるがすぐにMPに捕まり、サキの弁護も虚しく敵前逃亡罪で銃殺刑が決まる。
同じ日本人としてシンが興味を持ち、処刑直前に彼と対談する。
そこで彼に、「外人部隊というから人里離れた国境で警備でもするのかと思っていた」「人を殺すくらいなら自分が死んだ方がマシ」という思いを打ち明け、
「自分が殺されても良いのか」というシンの問いに対し、「シンは大勢殺し過ぎて『人殺し』という行為の禁忌感がマヒしているのではないか」と皮肉る。
この会話でシンは改めて自分の行為を再認識する事になり、そのショックは後々にまで尾を引く事になる。



◆その他の軍人たち

  • バム・アッサン

ブラシア空軍大尉。オールバックと口ひげが特徴的な男性。
ブラシアがアスランによって制圧された際、実弾演習の標的という形で処刑されかかった所を88に救われる。
直後に休む間もなく88基地が襲撃され、稼働機の絶対的な不足からか迎撃のスクランブルにブラシア空軍組まで駆り出される羽目になり「もう何機撃墜したか数えていないし、ブラシア空軍時代の撃墜スコアを上回るのは確実」「忙しすぎる職場」と愚痴った。
その後のブラシア解放後にブラシアに帰還するが、尽力してくれた88に対する国の非協力的な姿勢を前に部下を引き連れて軍を脱走。母国を捨てる形で88に加入した。
生粋の空軍のパイロット故に、空母ではほとんど揺れていないにもかかわらず酷い船酔いを起こしていた。


終盤に「アッサンが率いたブラシア隊は2機を残して全滅」と語られて以降は言及がなく、彼がどうなったのかは不明状態である。


  • ローラン・ボッシュ

「野生の動物たちは生きるために他の動物たちを殺して食う 罰せられないのは法律がないからだという
では、そのたいそうな法律をもってしても殺し合いをする人間はどうだ… これは動物以下といわれてもしようがない!」


フランス空軍中佐。
かつては傭兵部隊マークIIIの指揮官であり、劇中でも後にフランス空軍を除隊しマークIIIに戻る。
フランスで出会ったシンの不用意な言葉の真意を理解し、彼に突っかかる部下を一喝する、
傭兵や戦争に対するシビアな価値観を持つなど、熟練の軍人である事をうかがわせる。
趣味は美術品・伝統工芸品収集。私室には甲冑・アフリカ風の仮面等が所狭しと置かれており、部屋に招かれたフランス警察の二人組を圧倒させた。


優秀なパイロットであると同時にゲリラ戦・ナイフ戦・罠・暗殺術の達人でもあり、
森の中に無数の罠を張り巡らせて一人で多人数を相手にするなど、シンから「たった1人で1000人を相手取れる男」と称された。
かつて作戦中に負傷した実の弟を(足手まといとなるため)殺害した過去がある。


88を除隊したシンがフランスで平和な社会に馴染めないでいる事を見抜き、マークIIIに勧誘する。
結局シンは彼に同行、拠点で4人の仲間に紹介され、彼と共に『バンバラ大統領一家脱出作戦』に参加する。


作戦は、
1.ボッシュが指揮する隊がバンバラでクーデターを起こさせる
2.シンが指揮する隊がバルラらを国外に脱出させる
3.無事に脱出させた恩と引き換えにバルラのみが知るウラン・ダイヤ鉱山の場所を聞き出す
という流れ(つまり作戦中はシンらとは敵同士になる)の予定だったが、
作戦変更によってシン隊に『脱出を待たずに一家を纏めて殺させ』、更にシン隊をボッシュ隊が逮捕し処刑、
『「革命の英雄を殺害した大罪人」を始末する事で円滑に依頼主の息のかかった人間を大統領に就かせ、バンバラを欧州の「ヒモ付き」にする』、という流れに変更される。
シンがそれに勘付いた事で独自に脱出作戦を決行したため、部下を率いて彼らを追跡する。


その戦闘センスと元部下の能力を知り尽くしていた事により、シンらの作戦・行動を次々と先読みし、
徐々に追い詰めて行く内にマップ、スラッシュ、(間接的に)ニップル、リデア、バルラを殺害するも、
ニップルの死に激昂したシンとの死闘の末に左胸をナイフで貫かれ、それでもなお彼に襲いかかるものの直後のエラーの銃撃によって今度こそ死亡。
今際の際に「どうせなら空で死にたかった」と呟くが、シンからは「お前に空で死ぬ資格などあるものか」と吐き捨てられた。



  • マップ

「アフリカは…いやだ…どこまでいっても血の匂いがする…」


マークIIIの一人。額の後退した黒髪の男。
元ラリードライバーで、サファリ、モンテカルロ等でクラス優勝した事があり、
そして「サファリ5000km」でのレース中にナビゲーターがコース上に現れた原住民の投槍*25によって死亡、
怒りに駆られて報復のためにその原住民を車で轢き殺した経験を持つ。
人道的に結構微妙な話だからか、後の復刻版コミックスなどではこのエピソードが削られていることも多い。


コードネームはその経験に裏打ちされた地形の把握、及び自動車の運転技術に因む。
ボッシュ曰く、「地図を30分見せれば50km四方は縦横無尽に走り回れる」との事。
劇中のあるシーンでニップルは「サスのヘタったアメ車だから辛うじて追従出来ているが、仮にレース車を与えていたら追いつけない」と評した。
あるシーンでは車輌の性能もあるとはいえほぼ垂直の切り立った崖をトラックで垂直登坂するという離れ業を披露する。


脱走のための車を破壊され、徒歩での国外脱出を開始した際に最後尾に付く。
しかし直後に背後から襲って来たボッシュに肩から心臓にナイフを突き刺され、一言も発する事もできないまま死亡した。
走馬灯として先述の過去が回想として挿入されるものの、バッサリカットされる事もあるので完全初見で読み進めた場合戸惑う読者もいる。


  • スラッシュ

マークIIIの一人。
鉤鼻が特徴的な男。ボッシュの部下としては彼のみ過去の経歴が語られなかった。
エリア88の噂にも詳しく、実戦の前からシンにはある程度一目置いていた。


切り傷スラッシュというコードネームは、彼が投げナイフの達人である事に由来し、
3人の人間を相手に、同時、かつ正確に相手の喉仏にナイフを命中させる能力を持つ。
音を立てずに人を殺す事が出来るという点も大きく、暗殺術に優れていると言える。


マップ同様、徒歩での脱出を開始した後、抵抗も何もできないまま正面から心臓を一突きにされ死亡。
彼自身も暗殺術の使い手であるが、ボッシュは更にその上を行く技術を持つ事がうかがえる。
更に、彼の死体には不用意に動かすと爆弾が起爆する仕掛けが施してあった。


  • ニップル

「私に与えられた仕事はきみの身の安全を保障することだよ。それは私の腕前がやる事であって、私の名前がするわけじゃない。ちがうかね?」


マークIIIの一人。
カイゼル髭と禿頭、がっしりした身体が特徴的。
過去に妻とその浮気相手のヤクザをロールスロイスごと爆破し、15年服役した経験を持つ。


コードネームは乳首……ではなく「雷管」の意味で、爆薬のプロフェッショナル。
車にキーを捻ると爆発する仕掛け、地面と橋に二重の地雷など、罠にも精通している。
主にローデの護衛を担当、その際の会話から彼からは大いに慕われていた。


徒歩での脱出中、張り巡らされた罠に引っかかったローデを庇い、手榴弾を処理する、
茂みを鉈で掻き分けるなど、一行の先陣を切っていた。
また戦いの最中に手榴弾でボッシュの乗って来たヘリを撃墜する活躍を見せる。


しかしその後、更に別の罠により、またも投げ込まれた手榴弾二つから大統領一家を庇い、
自身の懐に抱え込んだ上で起爆させ死亡するという、ボッシュの部下の中でも一際壮絶な最期を遂げる*26
彼の死にシンは涙を流し、本気でボッシュに襲いかかる事になる。



  • エラー

「すぐに走らせてくれ!!ぶち落とす!!」
(マップ「ばかやろ!!相手はジェット・ヘリだぞ!!」)
「そいつは並の腕のやつに言うんだな」


マークIIIの一人。
女性的な顔つき・身体つきが特徴的な男性。男の娘……というには少々トウが立っているか。
学生時代、その容姿からゲイの先輩に襲われた際に抵抗した弾みで殺してしまい、親から勘当された経歴を持つ。
あだ名はその女性的な容姿、勘当された際に親から言われた失敗作エラーという言葉、そして自身も「生まれた事自体が失敗エラー」と評する事に因む。
狙撃・銃撃のプロであり、「夜間に100ヤード(約91m)先のコインを撃ち抜ける」「アサルトライフルでヘリを損傷させ撤退させる」といった能力を持つ。


作戦中は女性として扱われ、女装させられた上でリデア・ライラの護衛を任され下着売り場に連れられるなどしたためうんざりしていた。


ボッシュの部下としては感情の起伏が大きく描かれており、
自身の容姿をネタにしたスラッシュに銃を向け「次に言ったらその場で殺す」と吐き捨てる、女装させられた姿に大爆笑するマップ、スラッシュ、ニップルに「お前ら…後でみな殺しだ…」とブチギレる、
山道をアメ車で走り回るマップの運転に悲鳴を上げる、
湿気と熱気で蒸し風呂状態の屋根裏に王族一家と共に潜伏する事になり他の面々がダウンする最中、アスランの酷暑に慣れているため汗一つかかず平然としているシンに「あんたタフだね……」と言葉を投げる、
トラックでの逃走中に襲撃に来たボッシュの乗るヘリにアサルトライフルで対抗しようする(そしてそれを無茶だと咎めるマップに「そいつは並の腕の奴に言うんだな!」と言い放ち、マジキチスマイルを浮かべながら攻撃を開始、本当に撃退する)、
スラッシュの遺体を前に思わず不用意に触れようとする、リデアの死に激昂してボッシュに襲いかかるなどしている。
また作戦を共にする内にライラとの愛が芽生え、作戦終了後に恋人同士になる。
ボッシュを倒した後、マッコイの助けによりシンらと共に脱出に成功、ボッシュの部下としては唯一の生存者となる。
因みに、大統領の長女であるライラは水浴びで全裸になっている所をエラーに見られていた事があるが、男性だったことはライラには終始気付かれなかった様である。



◆その他の民間人たち

  • トレイシー

「あなたはいつも蜃気楼を見ているんだわ 空の彼方にある青い蜃気楼をね…」


ミッキーの元婚約者の女性。
彼を心から愛していたが、戦場を忘れ切れなかったミッキーからは捨てられてしまう。
その後シンとミッキーがパルテノン神殿を観光していた際、別の男性との新婚旅行中にミッキーと再会してしまう。
お互い、大いに複雑な心境であった。


  • バンバラの大統領一家

南アフリカの小国バンバラの大統領バルラ・オム・ナダトとその妻リデア、長女ライラ、長男ローデ。
エリア88としては数少ない黒人のキャラである。
かつては欧州の植民地だったバンバラであったが、バルラが同志と共に革命を起こした事で独立、彼は大統領となった。
バンバラのウラン・ダイヤ鉱山を狙った欧州の団体の陰謀に巻き込まれ、国外脱出を余儀なくされる。


シンがボッシュの意図に勘付いた事で他のマークIIIメンバー共々独自に脱出作戦を敢行する。
ボッシュによってリデア、続いてバルラは殺害されるも、ライラ・ローデは脱出に成功、ひとまずスイスで過ごす事を決意する。


バルラは今際の際に自分の銀行口座のカードとその資産をシンに譲っており、一握りのVIPにしか開設しない口座のカードのためシンは銀行で当然のごとく警戒されるが、
ほぼ状況証拠のみながら入手の経緯の説明を受けた関係者の了解を得る事が出来、本来相続するべきライラ・ローデも相続権を放棄・拒否したため、
シンはバルラの遺言に則って彼の遺産約800億ドルを相続する事になり、神崎への反撃の資金源として活用する事になる(後述のエンタープライズ級原子力空母調達費用と散らばった大和航空株の奪還費用)。


  • マダム・ビンセント

イギリス在住の王室宝石鑑定家。
宝石のみならず経済や流通の裏事情にも通じており、サキは彼女から得た市場の動きのデータを頼りにマフィアが企んでいる事(≒砂漠空母の開発)を探ろうとしていた。
沢が日本刀を隠し持っている事を一目で見抜くなど、サキも冷や汗を流しながら「並の婦人ではないのだよ……」と称する底の知れない人物。
サキらの去り際、お守りとして彼に「戦士の魂」という名の付いた、ルビーの変種があしらわれたネックレスを贈る。



  • ベルベット

マダム・ビンセントの娘。ライト・シャドウという名前の豹と黒豹を飼っている。
サキとは旧知の仲の様で、チェスで対戦した事も何度かある様である。
実は作者の妻である佐伯かよの作の漫画「ダイヤモンド・チェイサー」からのゲスト出演キャラ。



  • マクガイヤー教授

イギリス在住の博士。
サキからボルト1本のデータからミサイルの性能を割り出せると称される人物。
マダム・ビンセントから得た資料からマフィアが砂漠空母を開発している事を突き止めた他、
当時の大和航空が運用していた旅客機MB-14の欠陥を指摘し、「空飛ぶ棺桶」「車に羽根を付けて飛んだ方がマシ」と称した。



◆シンとエリア88の敵対者達

  • 神崎悟/サトル・ファリーナ

(ジュリオラ「私は夜が好きですわ…貧富の差なく平等に闇を与えてくれるから…太陽は貧乏人にはそっぽ向くときがありますものね。)」
「この下にいる何千万人かはそっぽを向かれたまま闇を迎えるのさ…
クズのような人間どもには闇がお似合いだ。俺たちは違う。おれたちは太陽を買う…そうだな、ジュリオラ」


真と同じ孤児院で育った男。真より4つ年上。
幼少期に母親の車での飛び込み心中に巻き込まれたが、後部座席にいた事が幸いして生き残ってしまった過去を持つ。
序盤と中盤以降で髪型が大きく変わり、ストーリーの進行でひげを蓄えたり再び剃ったりと容姿の変化が大きい。
真とは親友同士で、飛行学校からパリでの研修までいつも一緒につるんでいた。
しかし友情と共に真には激しい憎悪を抱いており、彼をエリア88へ送り込んだ張本人でもある。
そしてまだ真が生きている事を知ると、続けて殺し屋を差し向けた。


極めて大きな野望を秘めた野心家であり、またそれを数々の裏工作によって着実に実現させていく切れ者でもある。
裏で策謀を巡らせて行った果てに大和航空を乗っ取り、安田に失脚させられ逮捕されてなおも今度はイタリアンマフィアのボスの養子になり、
遂には世界経済を裏で支配する寸前までのし上がった。
一方で真には複雑な感情を抱いており、優秀ではあったが悪く言えば平々凡々なパイロット街道を歩く自身に対し、
涼子との縁もあって隣を歩いていたはずの彼が自身とかけ離れた順風満帆な道を歩んでいた事を振り返って、「お前が俺の前を歩かなければ良かったんだ」と吐露し、「馬鹿野郎」と嘆く場面もあった。


原作ではサキとは一度も直接邂逅する事はなかったが、OVA版ではサキの旧友が機長を務めていた民間旅客機がサキの暗殺を目的とした爆弾テロの危機に晒される話が大幅に改変されており、
神崎が機長を務め、利用客としてサキのみならず涼子と安田まで同乗しているというストーリーになっている。
逮捕された犯人の目的が当該機に搭乗しているサキの暗殺と知らされ、ラウンジに呼ばれて詰問されるまではほぼ原作と大筋は同じだが、サキがシン及びミッキーとの通信*27で口にした「外人部隊」「エリア88」という言葉で徐々にサキの素性を掴んで行き、
「エリア88のトップガンであるなら人の生かし方も心得ているはずだろう」と全幅の信頼を置く言葉の後に続いた「ミッキー、シン。頼んだぞ…!」という言葉で遂に真が生存しているという確信を得てしまう。
真が神崎が機長を務めているという事も、サキが窮地を救い短時間ながら随伴機として護衛を務める軍用機について涼子に問われた際は「あれは私の部下です」と答えた*28上、
原作では真が混線している通信の最中に神崎の声を聞いたため始まった暴走行為も無いため、涼子が搭乗している事を知る事はなかったが……


「礼ならあの2人に言ってくれ。ミッキー・サイモンに、カザマ・シンだ」

「………!!」


後の敵司令官であるサキから発せられたスクランブルで指名され、何よりが己が嵌めてアスランの外人部隊へと送り込んでなお生き延びており、サキのクフィールを一時貸与した真に、
自身を含めた乗客乗員の命を救われたという事実に神崎は悲痛な表情を浮かべ、緊張の糸が切れた事*29もあってかその場に座り込む事しか出来なかったのであった……。


後述の事情から「愛」を決して認めない。
真と決別した理由は涼子を巡っての嫉妬と思われたが……。



  • ジュゼッペ・ファリーナ

イタリアンマフィア「ファリーナファミリー」の首領にして武器商人の老人。
脚が不自由なため車椅子に乗っている。また黒目が描かれていないが恐らくは演出で、視力が無い様子はない。
マスタードという付き人を常に従えている。
結局実行はしなかったが、プロジェクト4の立案者の一人である。


幅広く武器を卸している様で、彼曰く88の傭兵の中にも彼が売った機材を使用している者もいるという。
88を長きに渡って苦しめた地上空母の開発者であり、アスラン反政府軍に協力しているのも最終的には地上空母を反政府軍に売却し、
かつその運用データを収集する事で更なる兵器開発を行う為であった。
中東は新兵器のテストに打ってつけの良い実験場と称する、まさに戦争を食い物にする悪辣な人物。


しかしその一方で、地上空母の捕虜となったシンとミッキーがヘタクソな二人羽織で脱走しようとする様を見て笑い転げたり、
その挙句に楽しませてくれたお礼と称して二人の脱走、ひいてはF-18二機の強奪を見逃す*30
「この二人を殺すのは本当に惜しい」「このスイッチはいつでも押せる」として、
彼らの乗るF-18をいつでも自爆させられるにもかかわらずそれをしないなど、食えない性格でもある。
実際に彼と対峙した事もあるミッキーは「憎めないおっさん」と評していた。



  • ジュリオラ・エッティ

ファリーナの秘書を務めていた美女。
しかし途中から神崎に鞍替えし、後に神崎の秘書兼情婦となる。
彼の手先となって計画の邪魔となる者をことごとく抹殺して行くが、
彼女としては神崎の事は愛しつつも、所によっては憐れむ所もあるなど様々な思いを抱いていた。
作画は作者の妻の佐伯かよの女史であり、産休中はジュリオラの出番が一切無かった。


中盤、王都陥落後にアスランへ入国した際王宮を訪れ、霊廟の仕掛けに勘付き冷凍保存されていたソリア王妃の遺体を発見。
それを神埼に報告するが霊廟ごと遺体を焼くよう命令され、王妃を目撃した事と合わせて「神崎の野望のためなら死んでもいい」という考えを改めていくようになる。


そして命じられるままに棺ごと燃やすが、実はダミーにすり替えており、仮死状態のソリアを伴いアスランから出国。
ジュリオラを信頼していた神崎はこの行動に気付いておらず、ジュリオラ自身もバレれば殺されるだろうと覚悟しての決死の行動であった。
神崎はアブダエルの「ソリアは生きていたのに」という旨の譫言を聞いて初めてジュリオラの裏切り行為に気付いたものの、これ以降はプロジェクト4や神崎に対する敵対行為は行っていない為か、中立国に逃げ込んだ為か、彼女に危害を加える描写は無かった。


その後スイスへ渡り、血液ガンの治療を受けさせて彼女を仮死状態から復活させるがソリアは全ての記憶を失っており、一先ず自分の妹であると嘘を伝えて共に暮らしていた。
この時ジュリオラは神崎との子を宿しており、ソリア絡みの事で宛に出来る存在もいない状況であった為、嘗て命を狙った妙子に一縷の望みを掛けて接触。ソリア存命の秘密を共有する間柄になる。
当初は妙子も「また命を狙いに来た」とソリアを隠していた冷凍倉庫に案内された事もあって警戒したが、敵対する意志は無く母親になる事に迷いを見せるジュリオラの姿に心を開いていき、足繫くスイスを訪れては情報共有を行い、身重の彼女の世話をしていたようである。


妊娠後期で精神的に不安定になっていたジュリオラにとっては、ソリアの姉を演じる事も、神崎の子を宿しているという事すらも重荷になっており、秘密を共有した事で唯一本音を吐き出せる存在となった妙子に弱音を吐く事もあった。
それ以来、終盤までは妙子に精神的に支えられながら「妹」のソリアと共に穏やかに過ごしていたが、アスラン内戦が最終決戦を迎える頃に予定日より早く陣痛が始まる。
妙子が居合わせていたため緊急搬送され出産に臨む事になったが、その際ジュリオラが書き残していたノートがソリアの目に留まってしまい、彼女が自分の素性を知るきっかけとなった。
そして神崎が真との一騎打ちで撃墜、死亡した直後に無事第一子の男児を出産。「顔立ちはサトルとそっくりだが、この子はまだ穢れていない」と喜び、「サトル」と名付けた。



  • チャーリー

不死鳥フェニックスチャーリー」の異名を持つパイロット。
エリア88を任期満了で除隊した数少ない人物で、またシンやミッキーとも面識がある事から、登場こそしなかったものの少なくとも第1話~ロッキー退場までの期間は88に居た事になるが、
ミッキーと面識がある一方で、ミッキーがシンに対して初対面であるかのように紹介している為、在籍していたであろう時期と会話内容が噛み合わない事は語り草となっている。


エリア88としてはかなりの古株の様で、激戦区になる前のエリア88やサキの来歴を詳しく知っている。除隊前から彼を知っている人員からの信頼も厚い。
曰く、任期満了除隊する前の88は一時は今ほどの激戦区ではなく、地獄の一丁目化したのは割と最近のことらしい。
ドラケンの性能を高く評価するなど、航空機への造詣も深い。


神崎からシンの暗殺を依頼された事で88に再度入隊、彼に何度も罠を仕掛ける。
シンとしては、彼から暗殺されかけていた事には気付いていなかった模様。
ミッキーとしても「地獄にいるとシャバが恋しくなるが、シャバに戻れば地獄が恋しくなる」「結局、行き着く先は地獄」という自身の経験に基づいているであろう考えから再入隊を好意的に受け止めていた。


砂漠空母編序盤、反政府軍の猛攻で混沌とした戦況に乗じてシンを撃墜しようと試みる。
この時シンが背後をとっていたにもかかわらず殺しの依頼を受けていたことを告白した後戦闘に突入、激しいドッグファイトの末に撃墜される。
その際に再入隊の本当の理由がシンの暗殺であったことを明かすが依頼主は明かさないまま墜落、死亡。命からがら帰投したシンによって戦死報告がなされた。


OVA版でもシンの暗殺を遂行しようとウルフパックとの戦闘中に襲いかかり、後一歩というところまで追い詰めたが追撃中に海岸線に入り込み、海鳥の群れの真っ只中に突っ込んでしまう。
シンは難を逃れたが、チャーリーは海鳥がぶつかるバードストライク現象に見舞われ、キャノピーが破壊され海へ墜落。
不死鳥が鳥に撃墜されるという皮肉を伴った最期となった。
OVA版は複数の原作エピソードを合成して1話にまとめている関係で、シンは撃墜された後、海岸線付近から砂漠のド真ん中にあるエリア88まで歩いて帰るという原作以上の地獄を味わう事になった。


乗機は原作ではF-4E。OVAではF-16。



◇プロジェクト4

  • バンビーン、ローバー、ノーマンなど

プロジェクト4幹部。名前の出ない者も他に数名存在する。
バンビーンはファリーナと共にプロジェクト4の発案者でもある。
いずれも自社で兵器開発を行っているとの事である。


彼らにとってすればぽっと出の日本人である神崎の事を良く思っていない面もあり、
神崎に内密でエリア88にも援助を行う、土壇場でスポンサー契約を一方的に打ち切るなどの裏切り行為も行っている。
またローバーに似た男と眼鏡の男が神崎を物理的に排除しようと暗殺者を差し向け(このときはあくまで脅しに過ぎなかったが)、
逆にその報復として爆発物を贈り付けられビルのワンフロアごと爆殺されるなどしている。


  • セラの父(仮称)

本名不明。
プロジェクト4の始動直後、プロジェクト4のパイロット訓練生を率いてアスラン空軍基地「エリア92」を襲撃する。
その際の戦闘にて、彼に付いて行った20機は全て彼の盾となって撃墜され、
彼自身は乗機MiG-21と共にたった一人で92の所属機12機を撃墜、サキをして「並の腕じゃない」と称されるエースパイロット。
その後はプロジェクト4のパイロット達の現場指揮官として活動した。


  • ゲイリー・マックバーン

「おれの空は最初から地面にへばりついてみなけりゃならない空だったのさ」


元アメリカ海軍所属パイロット。神崎からは「マック」と呼ばれる。
ニューヨークのスラム街出身で、努力を重ねて艦載機パイロットとなった男。
ベトナム戦争の前に、当時は士官学校を卒業したての新任少尉だったミッキーと知り合い、
底辺から這い上がって来た自分とは対照的にエリート街道を突き進む彼に憧れを抱いていた。
ベトナム戦争で地獄を経験した後に憧れだったアクロバットチーム「ブルーエンジェルス」に加わり、更に妻ジェニファーを得る。
しかし彼女は曲技チーム故に国中を転々とする事と事故の不安から麻薬に手を出してしまう。
ある時、飛行中にチームメイトの1人が操縦ミスで地面に激突、死亡する事故があった事も拍車を掛け、その時はまだ酒で誤魔化しながら麻薬を断てる時期だったが、マックが気付くことはなかった。
重度の麻薬中毒による衰弱により長女ミリアムを生むのと引き換えに亡くなり、ミリアムもまた麻薬中毒者から生まれた事で病弱な身体を持ってしまっていたため、
保育器から出ることも出来ない彼女を抱えたまま危険な曲技飛行を続けることは出来ず、彼女の医療費を稼ぐためにブルーエンジェルスを脱退、プロジェクト4に参加する。
神崎がアスラン入りしてからは現場指揮を任される。
「人生は幸と不幸が交互に訪れる。そして最期に『幸』の順が回って来た者が勝ち」という人生観を持つ。

終盤、プロジェクト4を支援していた武器商人達が涼子の活動と戦局の悪化を受け、支援の打ち切りをチラつかせ、更にはグレッグの言葉を切っ掛けにエリア85のパイロット達が一斉にクーデターを起こす。
これ以上プロジェクト4に居ても利益はないと判断し高跳びしようとするが、その直後にミリアムの訃報を受け『無理に生き延びる必要はなくなった』と死を決意。
撤退するにあたり、アスラン首都に核を撃ち込もうとする神崎に反発して反旗を翻す。
その後は彼を殴って昏倒させ、部下に代わりに『アスラン首都を攻撃後、速やかに撤退』を命令。自身は後述する賭けのため、その場に残る。


そしてアスラン首都総攻撃の最中、火の海となった首都上空でミッキーとセラ両名と遭遇。
捨て鉢なマックに対して「ミリアムという生きる目的があったはずだ」とミッキーは問い質すが、ミリアムの死を彼に告げた後、ジェニファーのみならず身を粉にしてでも命を繋ぎ止めようとしたミリアムも喪い、
不幸の後に幸が訪れる事もなくドン底へと墜落していく自分を尻目にセラという守るべき者を得て人生に光明が差したミッキーに対し、「ここで帳尻を合わせておきたい」と妬みにも似た感情を吐露。アフターバーナーの不調が祟ったミッキーを置き去りにし、セラと交戦状態に陥る。
ドッグファイトの末にセラを墜とす絶好のチャンスを得るが、土壇場でアフターバーナーが息を吹き返したミッキーが両機の間に割り込んでセラを庇い、「これで痛み分けにしてくれ」という言葉を受けて撤退。
その後、ミッキーとセラは空軍基地へ帰投したがミッキーはこの被弾が無理に無理を重ねて運用していたF-14へのトドメとなり機体が爆発・炎上。2人揃って爆死した。


当然神崎はマックの裏切りを許さず、真との通信の最中に放棄されたエリア88の砂漠基地で彼を射殺するが、それはマックが天国か地獄に行くかの賭けであった(もし、神崎が彼を撃たなければ『死んでも地獄までお供する』つもりだったという)。
死にゆく中、神崎から『天国への道を踏みしめながら登ることだな』と別れの声をかけられ、『悪魔に見限られたら地獄に行く資格はない』『あなたは正真正銘の悪魔だ。人間じゃない』と返して事切れる。


  • マイケル・ケンパー

プロジェクト4のパイロット。
口ひげが特徴的で、シンをして「只者じゃない」と言わしめるエース。
元フェンシングのヨーロッパチャンピオンで、正面からの戦闘を最も得意とする。
マックの副官的な立場にあった。

「男の尊厳か・・・そんなの・・・持ってると・・・ 重くて・・・疲れ・・・る・・・ぜ・・・.」


  • ロバート・ミルズ / デビッド・ホール / ポール・ブレナン / ジョージ・スコット / ハービー・ジョーンズ

同じく、プロジェクト4のパイロット。
マック、ケンパーらと共に、セラの父から目を掛けられていたとされ、事実88のエース達と渡り合える腕前の持ち主。


  • セイレーン・バルナック

「勇者を黄泉に導くワルキューレの女神ならあと6人足りないわね…一人で出てくるのは勝利の女神よっ!!」


愛称はセラ。
プロジェクト4の(判明している限り)唯一の女性パイロット。長い黒髪とグラマーなボディの美女である。
哨戒任務中のシンを撃墜、負傷した彼を撃墜地点付近の地下遺跡で手当し、自身は全裸のまま水浴びしている姿で彼の前に現れる。
88のメンバーをプロジェクト4に寝返らせる作戦の手始めとしてシンを篭絡しようと試みるが断られ、
更に応援に駆け付けたミッキー・キムの手助けによりシンには逃げられてしまう。
その際、気を失っていたシンがうわごとで呟いていた「涼子」と自身のどちらが美しいか問いかけ、
彼は「もし自分の心の中に涼子がいなかったなら、誘惑に負けていただろう」と答え、またその美しさに敬意を表して手の甲にキスをした。
この件を切っ掛けにセラはシンに惚れ、彼をつけ狙うようになる。


その後の戦闘でミッキーにより撃墜され、シンによって88の捕虜となる。
しかし後にシン・ミッキーらの手引きにより88から脱出、シンからの涼子への伝言を承り、フランスへ行った。


パイロットとしての技能は優秀で、万全の機体ではなかったとはいえシンを追い詰める、
たった一機で丸腰のF-5E二十機を守りながら複数の敵戦闘機と戦うなど88の傭兵達と引けは取らない。
シンも「兵士としての能力は一流(しかし心は年頃の娘のままなので、総合的に見て兵士としては三流)」と称した。


その後NATO空軍のF-104を強奪した上でエリア88に帰還するが、シンは既に88を除隊していた事、そして父が死亡した事を知る。
シンが居らず、父も死亡した彼女にとって戦う理由は最早無くなっていたため、
マックによって殺される事も一度は選択したが、結局彼の計らいによりプロジェクト4を離脱、
更に「今のプロジェクト4のやり方は気に入らない」とエリア88に参加する。


88の捕虜だった頃からキムとよく絡み、正式に加入後は共に行動している事が多く、一時期は姉弟に扮してアスランに潜入していた事があった。
当初はキムはセラを大いに警戒しており(敵なので当然だが)、仲間になった後も口喧嘩の絶えない仲であったがお互いに強い絆で結ばれている。
要するにおねショタ要員。2人のやり取りは年の離れた姉弟のようにも見えるため、殺伐とした描写の多い作中では清涼剤。


またミッキーとは88加入後にしばらく彼の後部座席に乗っていた事もあってか、いつの間にか恋仲となる。


弱点は重い生理痛と幽霊。前者は痛みで悶絶しており(介抱していたキムも引っくるめて)サキが出撃を免除する程、後者はそれらしき音が聞こえただけで怯えてしまった上に百鬼夜行を目撃してしまい気絶、後にキムにネタにされる程である。
最終決戦を控えてアスラン王都攻撃にもっとも適している立地であるため、グランドスラムで使用不能となっていた砂漠基地の再建案が持ち上がった際も、下見の時に目撃した百鬼夜行がトラウマ化していたらしく幽霊を理由に猛反対していた。
紅一点であるためサキには上述の生理痛以外にも配慮されており、空母では個室が与えられている描写があり、水が貴重な空母で士官クラスで例外的に水洗トイレの使用が許可されていた。
本人はひた隠しているが、毎晩寝る際にぬいぐるみが無いと眠れないらしい。



◆作中用語

  • エリア88

アスラン王国外人部隊の所属基地の一つ。
ゴリゴリの最前線であり、人員・物資共に損耗率は非常に高い事から度々「地獄の一丁目」「三途の川の向こう側」などと称される。
人種・国籍・過去の経歴、それら一切を問わないため、
単に一攫千金を狙う者、戦場でしか生きられなくなった者、複雑な事情で国を捨てざるを得なかった者等、その過去はバラバラである。
世界中から腕利きのパイロットが集まるエリア88の、殊更一部のエースパイロットは、「後ろに目が付いている」「血管にジェット燃料ケロシンが流れている」「最新鋭戦闘機より彼らを買った方が安い」などと恐れられている。
サキもトップエースなら5機で50機分の働きが出来ると称し、実際に極少数であった時期の88の稼働全機*3150機からなる戦闘機隊を全滅させた事がある。


当初はアスラン王国の基地の一つという意味しかなかったが、徐々にサキ・ヴァシュタールとその配下の兵士の部隊名の様になって行った。


詳細はエリア88(外人部隊)を参照。



  • エリア85

アスラン正規軍の空軍基地の一つ。
88と異なり、こちらは正規軍所属で、また戦闘ヘリの基地である。
作戦支援の為に88からシンら数名のパイロットが派遣されたが、正規軍は当初は外人部隊を「他所の戦争を食い物にするクズ野郎共」と認識しており、邪険に扱っていた。
また何れも非常に士気が高く勇猛果敢な性格の持ち主であるが、悪く言えば根性論/精神論に凝り固まった所もあり、
実際に地上空母との戦いでは、リモコンホーネット相手にヘリでは勝ち目はなく、こちらの損害が増えるだけという状況にもかかわらず、
「信念」「誇り」だけで戦おうとする彼らは、勇敢というよりも無謀なだけであった。


しかしグレッグはそんな彼らを「内乱終結後に備えてアスランの若者は無駄死にしてはならない」「無駄死にするのは外人部隊だけで良い」と諫め、
この言葉が最終局面で意外な形で響く事になる。


主力機はUH-1イロコイ、AH-1コブラ。



  • アスラン王国

本作の主な舞台となる中東の小国。
地中海の東側に面していること、西に進めばタンドリアを経てエジプトに達すること、劇中に登場した地図を考え合わせると、現実でイスラエル中部がある辺りに存在していると見られる(本編では早い段階から、アスランの具体的地理は描写されなくなった)。
イスラエルに代わって存在している訳ではなく、イスラエルとは友好国であり、空軍は主力機にイスラエル製のクフィールを採用している。
またアスラン軍は米軍の兵器を多く採用している事から西側国家と思われる。
旅客機は日本-アスランの直通便が存在しないため、テルアビブ経由となる。
都会部はかなり文明が進んでいる様に見受けられるが、文盲率は高いとされる。


元々は砂漠の中のオアシスに寄り集まった複数の部族が建国した国で、王家のヴァシュタール家は最初にこのオアシスを発見・定住した部族なのだという。
サキ曰く、それ故に本当の意味でアスランを愛しているのはヴァシュタール家のみで、
他の部族がトップに就いたらアスランを外国に売り飛ばす者が出る事を危惧している。
また原油産出国でもあるが、上述の理由でヴァシュタール家は敢えてそれをしていない。


国土は安田、涼子曰く「四国に毛の生えた程度」「砂漠も含めるとイギリス本土ほど」との事。


  • アスラン内戦

本編の主な舞台となる戦争。


アスラン王国現王ザクとその兄王子アブダエルとは、先代国王が存命だった頃から意見が対立していた。
アブダエルは国内の経済やテクノロジーの遅れを不安視し、原油の輸出や外資系企業の参入を受け入れる事を主張。
ザクは先代王と同路線で、海外資本の影響で国が荒らされるのを不安視して鎖国政策を主張していた。
先代国王が崩御する際、新王として指名されたのはザクだった。
アブダエルは反政府軍を組織してこれに反逆、ここにアスラン内戦が始まった。


西側と関係深いアスラン政府軍には西側、それに対抗する反政府軍には東側(当時)が大量の兵器*32を援助しており、
冷戦期に世界各地で起きていた東西の代理戦争のひとつと言える。
しかし、事情ははっきりしないが東西ともに政治力を使わず国軍を送り込んでの直接介入をせず、
武器を売るだけの間接的関与に留めていたのはこのアスラン内戦の特殊な点であろう*33
手付かずの中東産油国のマーケットなど、世界的に見てもヨダレが出る黄金郷のはずなのだが……余程面倒だったのか。
サキは「経済大国からすればどちらが勝とうがどうでも良い事」「下手に手を出して騒動に巻き込まれるくらいなら適当に武器を売って自分の口を潤した方が得策と考えている」と見ており、
そしてそのような姿勢を「死肉に群がるハゲ鷹共め!!」と吐き捨てている。
国外勢力の思惑が絡まない「純粋な身内ゲンカ」に外部の助力を引き入れたせいで問題が悪化したのだ、とはサキの評価。


そういった種々の事情の結果、政治的な面倒をある程度無視して純粋な武力による叩き合いが出来る砂漠の戦場となったこのアスラン内戦は兵器と軍事技術そして軍産複合経済の優れた実験場としての条件を満たしてしまい、
本編中盤、ファリーナ家が地上空母をこのアスランに実戦テストとして送り込んだ事を皮切りに、内戦はその意味を変えてゆくことになる。


  • ブラシア

アスランの北部に隣接する国。現実のイスラエル北部からヨルダン北東部の辺りにかけて存在する。
地中海に面しており、おそらくアスランより国土は小さい。
中盤、プロジェクト4に乗っ取られたアスランのマッチポンプによりアスランと開戦、占拠される。
後に88の活躍により解放される。
空軍の主力機はF-5E。



  • 大和航空

日本の大手航空会社。
略称はYALであり、「鶴丸」とよく似たロゴマークを持つことから元ネタは日本航空と思われる*34
真と神崎は当初はこの大和航空のパイロット訓練生であった。また涼子は大和航空の社長令嬢である。
一時は日本国内に代理店を持たないマックウェル社と株の違法取引に応じた神崎が大和航空の株45%を保持した事で社長が交代、乗っ取られ掛けるが後述のMB-14の墜落事故を引き金に彼が失脚。
その後は別の人物が社長に就任していたようだが、巡り巡って神崎から見れば先代社長にあたる津雲善三に社長の椅子が戻った。
総じて、本作の日本人キャラの多くはこれと深い関係にある。



  • マックウェル・インターナショナル

アメリカの企業。旅客機も製造しているが本業は武器製造であり、西ドイツを通じてアスランの反政府軍にも流通している。
巧妙かつ悪質な手段で目をつけた会社の株を買い集め、株主総会直前のタイミングで息のかかった人物に株を集中させるという手法でいくつもの企業を買収しており、都合が悪くなれば使い潰して捨てるという事も厭わない。
MB-14の製造元であり、大和航空株の売り渡しを条件に神崎を社長の椅子に座らせるがその半年後に墜落事故が発生。即座に大和航空を見放した。



  • マークIII

アスラン王国とはまた別の外人部隊。こちらは作中描写では歩兵が中心。
「壊滅部隊」の異名を持ち、「マークIIIの攻撃した後には草木一本残らない」と称される、
「ある作戦の参加者の死亡者数十人の内、敵の弾に当たって死んだのは3人だけ、他は全て負傷した際に「作戦遂行の邪魔」として仲間の手で殺した」など、
いろんな意味で尋常ではない。
メンバーの多くは個々の能力を現したコードネームで呼ばれている。



  • プロジェクト4

ストーリー中盤から登場する秘密結社にして、中盤以降の悪役となる組織とそれらが進める計画の名称。「P4」と略される事も多い。
世界各国の重工業会社(ぶっちゃけ、兵器を造っている会社)のトップが結成した組織で、軍産複合体の変種である。


彼らの暗躍とその存在自体が半ばネタバレなので詳細は折り畳み内を参照。


彼らの計画とは、戦争を蔭でコントロールしそれで使用される兵器の供給、
それ以前に、どこで、どことどこを、いつぶつかりあわせ、いつ終わらせるかまでを操る事で利益を上げるというものである。
現実に存在する軍産複合体は国家軍隊と兵器業者の癒着から生まれるものだが、P4はそれとは異なり軍事力も傭兵を雇って賄う事で、戦争を民間企業の商売だけで実現しようという試みである。
その計画の中には、「兵士となり死ぬべく生まれる、命とは呼べない命の生産」までもが含まれていた。
発案者はファリーナとバンビーンで、彼らはこれを発案した際に「自分らは頭がおかしくなったのでは」と考えたという。バンビーン曰く「地獄の商人の閻魔帳」「滅亡への手引書」。
ファリーナの死後に彼のスイス銀行の金庫から発見され、神崎が実行した。


兵士は制服としてベレー帽とジャケットを着用する。
空軍の主力機はMiG-21、他にもYak-38などを保有。これらは西側の部品を使用する事で性能を強化させている。



  • M資金

現実にも一種の陰謀論として存在が語られる謎の秘密資金。
第二次大戦後、日本占領中のGHQが日本から接収した財産で構築されるとも噂される。


本作では「あの戦争(第二次世界大戦とは名言されていない)」で旧日本軍が極秘裏に蓄えた軍資金とされる。
使用できるのは内閣総理大臣と海音寺家のみとされており、また一般にはやはり陰謀論の類と見られている様で、劇中でも実在した事を驚く描写もある。
最終盤、神崎が外国に売り飛ばした国内企業を買い戻すために止む無く使用、当時の金額で数兆円規模の出費が強いられたが、
劇中ではシンの個人資産に見せかけて使用する事で神崎らの目を欺いた。



  • サキ・ヴァシュタールが最も信頼する7人の兵士

サキが旧エリア88基地に調査で訪れた際、出会った亡霊から「サキがこちらに来る時は、最も信頼する7人の兵士に手を引かれる」だろうと予言された。
つまりサキとエリア88主要メンバーのうち7人は死ぬであろうという、作者からの死亡フラグの提示である。

作中において、「7人」が明確に誰を指しているのかを示す直接の描写はなかった。
亡霊の言葉を受け、サキは最も信頼している1人であろうミッキーに「最も信頼する兵士6人」を挙げさせると
「グレッグ、ケン、ウォーレン、キム、セラ」を即答し、もう一人として迷った末、当時戦場にいなかったが「(主人公の)シン・風間」を挙げている。
この内グレック&ウォーレン&ケン&セラは終盤で戦死しており、同じく戦死したミッキーもあわせたこの5名はメンバー確定とみていいだろう。
なお、ミッキーはマッコイの名前も上げたが、「マッコイは兵士ではない」としてサキは除外している。


残る二名の有力な候補は、
ミッキーは挙げなかったがサキの長年の片腕で空母を護るために対艦ミサイルに飛び込み戦死したラウンデル、
戦争を生き延びたものの記憶を失った(つまり戦士としての部分は死んでなくなったとも解釈できる)シン、
6人の兵士に入っているが最終的に部隊の戦闘を記憶しながら生きのびたキム(→亡霊の予言が外れたとする説?)、
また、大穴としてシンが戻ってこないことを想定していた時期に代わりにメンバー入りが憶測されていたブラシア空軍大尉のバム・アッサンがあがることも。




◆登場兵器

概ね劇中の登場順に紹介していく。


  • F-8E クルーセイダー

アメリカ、ヴォート社*35製艦上戦闘機。世界初の超音速艦載機。世間的には「クルセイダー」と呼ばれる方が一般的。
当時としては高い性能・信頼性を誇り、ベトナム戦争にも多く投入され大きな戦果を挙げた。
本編開始の3年前となる76年には米軍から退役していたもののフィリピンなどに売却されており、マッコイも入手は難しくなかったと見られている。


シンの劇中に於ける最初の乗機。30万ドルで購入した。
ストーリー冒頭の戦いは本機に乗り換えた直後のものであり、それ以前に乗っていた機体は不明。
登場後割とすぐに撃墜されて喪失しているため、シンが本機に乗っていた時期は意外と短い。
彼以外にも本機を愛機とするパイロットは数名存在している。
劇中には主翼を折り畳んで飛行するシーンが存在するが、主翼は一度伸ばすとロックされるため、
実際には飛行中に主翼を折り畳むのは不可能である。但し、本機が主翼を伸ばし忘れ、折り畳んだまま離陸した事例は実在する。(無事に着陸した模様)
なお、一部の模型では本機にも「炎のたてがみのユニコーン」のマークが描かれているが、
実際にはシンがこのマークを使い始めたのはF-5Eに乗り換えた後であり、本機には描かれていない。



  • MiG-17 フレスコ

ソ連の戦闘機。
初飛行は1950年、戦後ドイツから得た情報を基に制作されたものの欠陥を抱えていたMig-15の完成品でベトナム戦争でも活躍した。
MiG-15には及ばないものの10000機を超える大ベストセラー機でもあるため個人所有の機体もある。


ストーリー最序盤の反政府軍の主力機、劇中に於いて初めてシンに撃墜された機でもある。



  • F-100 スーパーセイバー

アメリカ、ノースアメリカン社*36製戦闘爆撃機。世界初の超音速ジェット戦闘機。
米空軍に於ける運用開始は54年、ベトナム戦争にも戦闘爆撃機として投入されるも、大した戦果は挙げられなかった。


ミッキーが劇中で最初に搭乗した機体。
シンにとってのF-5Eの様に、ミッキーは乗機が使用できない際には本機に搭乗していた事があった。
劇中の時点でも少々古い機体だが、ミッキーは後に当時の最新鋭機であるF-18相手に大立ち回りを演じる事になる。
ストーリー序盤の88基地にはミッキー機以外にも多数存在している事が確認できたが、
砂漠空母編の終了を機に出番が激減、以降は背景にすらほとんど登場しなくなった。



  • クフィール

イスラエル、IAI*37製戦闘機。
エリア88以外では「クフィル」表記の方がが主流。なので「クフィール」と表記・発音する者はエリ8おじさんの可能性が高い。
年代的に劇中に登場したのは生産型としては初期モデルとなるC2型と思われる。
史実ではイスラエル空軍に於ける運用開始は75年と新しく、劇中に登場する戦闘機としては最新鋭機に分類される。実は初飛行・運用開始年だけなら劇中で度々最新鋭機である事が強調されているF-14より新しい
本機が開発されたのは、第三次中東戦争を境にフランスが方針転換によりイスラエルへの兵器輸出を停止した事に因む。
フランスの戦闘機ミラージュを主力としていたイスラエルは、スパイ活動によりその設計図を盗み出しミラージュを独自生産し(これがクフィールの原型機の一つであるネシェル)、
次いでミラージュに米軍の戦闘機F-4Eと同じJ79エンジンを搭載したサルボが生産され、この2機の成果を元に完成した。


劇中ではサキやウォーレン・ケンを始め、名あり名無し問わず多くのパイロットが本機を愛機としている。OVA版の描写ではサキ機はクリーム色の塗装が施されている。そこはかとない「迷ったらクフィールに乗せとけ」感
名有りキャラでの使用者が多い一方で、パーソナルマークを描いているのはサキとウォーレンのみである。
またアスラン空軍の正規軍も本機を主力としている模様。
88では度々整備面で問題が発生しており、整備不良が原因と思われるトラブルで命を落としたパイロットもいる。



  • MiG-27 フロッガー

ソ連の戦闘爆撃機。
MIG-23戦闘機の派生型で、手動制御による可変後退翼を持ち(ソ連機にはよくある事だが)バリエーションも非常に豊富。
運用開始は74年と劇中としては比較的新しい機。


中盤の反政府軍の主力機であり、多数が登場する。つまり中盤における主な敵側のやられ役である。
TVアニメでは逆に原作で登場しない改良前のMiG-23が登場している。



アメリカ、マクダネル社*38製艦上戦闘機。
西側としては唯一5000機以上生産された戦闘機。
ベトナム戦争にも多く投入され、「機銃を持たずミサイルを主力とする」「パイロットと火器管制の二人乗り」という本機は当時としては革新的な設計であった。
しかし当時のミサイルの性能の低さと、「IFF無いし目視で敵機と確認してからじゃないとミサイル撃っちゃ駄目」という規制から、
ベトナム戦争では期待されていた程の活躍はできなかった。
但し、あくまで「期待されたほどではなかった」「苦戦させられた」であって、大量に撃墜されたは流石に言い過ぎであり、現実にはそこまでではない。
ロールアウトから50年が経過した現在では米軍からは既に全機が退役しているが、その性能の高さや空戦も爆撃もこなす使い勝手の良さから、
多くの国で未だに現役という空軍界の老師的存在。日本でも2020年末まで現役で運用されていた。


劇中では殺し屋チャーリー、シャンペン・ファミリーなど脇役の乗機として多数が登場、エリア88の主力機と言える。
概ねモブの乗機という扱いであり、名ありキャラで本機を愛機とする者は極少数であった。
一応、シンなどのメインキャラも一時的な乗機として使用した事はある。
また、劇中では機首にガトリング砲を装備するE型と、装備していないC型、D型等が混在している。



  • A-4 スカイホーク

アメリカ、ダグラス社*39製艦上攻撃機。
「ミスター・アタックアビエーション」の異名を持つ天才設計者エド・ハイネマンが手掛けた機体で、これまた3000機近くが生産された傑作機。
本来攻撃機であるが戦闘機としても使用可能な程の高い運動性を持ち、更には安価で整備性も高いという優秀な機体。
主翼の折り畳みが不要な程の小型なサイズもスペースの限られた空母で運用する上では大きな長所である。


グレッグやキム等が初期に搭乗していた機であり、他にもF-14を失った後のミッキー等も乗っていた。
クフィールと同様、名ありキャラから名無しキャラまで幅広く搭乗した機体であった。
本機だけで構成された航空機隊ウイスキー・ファミリーなどモブ機も多数登場しており、これもエリア88の主力機と言える。
因みにコミックスの表紙絵などではシンが本機に搭乗している事もあったが、本編中でシンがこれに乗ったのはギリシャでの訓練中の一話のみである。



アメリカ、ノースロップ社*40製戦闘機。
優秀な性能や整備性、コストの低さなどからアメリカの友好国に大量に輸出されたベストセラー機。
当機は初期型に様々な改良を行った*41後期型。運用開始は72年と、これも劇中としては比較的新しい機体である。


シンの二代目愛機であり、彼が「炎のたてがみのユニコーン」のパーソナルマークを使い始めたのも本機からである。
本機を失った後も、乗機が無い時や整備中の時によく空いていた本機に搭乗している。
後述する四代目愛機となるドラケンは、三代目愛機のクフィールでデルタ翼機に慣れた事から選定したのだが、
ドラケンを失った後はまたしばらく直線翼のタイガーに乗っていた*42辺り、相当気に入った様だ。
他にも88には本機のみで構成された「カクテル隊」が存在したり、ブラシア空軍が主力機に採用しているなど、モブ機として多くが登場した。



  • T-6A テキサン(Tバード)

アメリカ、ノースアメリカン社製プロペラ戦闘機。
優秀な性能の練習機で、対地攻撃など実戦にも投入されている。
運用開始は30年代であり、劇中では最古参級に古い機体。
日本でも戦前に導入され、戦後も自衛隊の練習機として導入したが早々に退役、だが現在でも飛行可能機が残されている。
生産数15000機の大ベストセラーなのもあり多くが民間に払い下げられエアレースではテキサンのみの部門があるほど。
中には映画撮影用にゼロ戦風に改造された機体もある。


モーリスが本機を愛機としており、またミッキーもこれで飛行訓練を行ったという。
劇中ではプロペラ機である事を活かし、88の危機を救って見せた。



アメリカ、マクダネル・ダグラス社*43製戦闘機。
20世紀最強と称される非常に高い性能を持つ戦闘機。
露出の多さや日本も主力機としている*44事から「戦闘機といえばこれ」「戦闘機には詳しくないがこれは知ってる」という人も多いのではないだろうか。


当時としてはロールアウト直後の最新鋭機であり、アスラン空軍に少数が納入され、88にもサキ専用機として1機が持ち込まれたが、
彼は「乗り慣れない機体では最初の一撃を仕損じる恐れがあるし、そうなれば自分がやられる(意訳)」と使うつもりは無かった。
後に88基地を狙った核ミサイル迎撃の為にシンが搭乗、その後はアスラン空軍に返却されたか88で保管されたままウルフパックの攻撃で破壊された模様。



  • T-38A タロン

アメリカ、ノースロップ社製練習機。
F-5とは姉妹機の関係にあり、超音速練習機としては屈指のベストセラー機。


88にも数機が存在し、ロッキーの写真撮影やザク国王のフランス亡命などで度々使用された。
非武装である本機は普段は偵察・連絡機などに用いられていたと思われる。



  • BAC ライトニング

イギリス、イングリッシュ・エレクトリック社*45製戦闘機。
エンジンが縦に並んだ双発機という他に類を見ない設計であり、戦後のイギリス軍における英国面の代表的存在。
局地防空用として開発されたため航続距離が短く、加えて主翼下面に主脚を収納するという設計上兵器搭載量にも乏しかったが、
一方で良好な運動性を誇る他、強力なエンジン推力による上昇力はF-15にも引けを取らない機体であった。


アスラン正規軍から派遣されその翌朝去って行っ脱走兵殺しエスケープキラーの乗機として登場。
88の傭兵達は「また古い機体で戦争しに来たな」と評し、実際初飛行は54年と相当に古いのだが、88で使われている機体も多くは本機とほぼ同年代である。



アメリカ、グラマン社*46製艦上戦闘機。
ファントムの後継機として開発され、コンピュータ制御による可変後退翼や射程200㎞を誇るフェニックスミサイルの運用能力を特徴とする。
高性能ではあったがコストの高さや整備性の悪さから使い勝手が悪く、実戦を経験する事はほぼ無いまま米軍からは退役した。
現在ではアメリカ以外での唯一の採用国であるイラン軍に納品された機体数十機を残す所であり、
アメリカからの部品の供給が途絶えている事から一時期は稼働機が10機前後に落ち込んだ事もあったが、その後米軍で退役した機体の部品をかき集めたりロシア系の部品で魔改造された結果稼働機も徐々に増え2030年頃まで使い倒す予定。
因みに、トムキャットが流行らなかった事でグラマンは潰れかかったが、そこからなんとか持ち直せたのはイランが本機を採用してくれたお陰である。


ミッキー最大のお気に入り機として登場。彼を始めとした88の面々は本機をドラ猫などと呼んでいた。
また彼の回想ではベトナム戦争でも仲間と共に運用していたが、史実では本機がベトナム戦争に投入されたのは末期も末期であり、
実戦らしい実戦をほとんど経験していないため、「ベトナム戦争でF-14を愛用していた経験」はあくまでフィクションである。
マッコイは本機の入手に当たり、
1. イラン空軍に納品予定だったものの、革命によって宙に浮いたままイタリアの倉庫で保管されていた、アメリカに返却予定だった機に目を付ける*47
2. 伝票に細工し、既に予定通りイラン空軍に納品された機体として扱う
3. 更に、事故で飛行不能になった機体の登録番号とすり替える
4. 「スクラップを引き取る」という名目で88に持ち込む
……という、ややこしい、かつあくどい手段を用いた。
その後更にもう一機をどこからか入手したがこちらの入手経路は不明。マッコイの事であるからおそらくこれも清廉とは言い難いルートであろう。
燃費や整備性の悪さや電子部品の高価さ(予備2セットの値段が中古のF-5もしくはA-4一機と同等とされる)から、88での運用はかなり苦労が多かった模様。
OVA版での請求シーンでシンが2万ドル請求されている一方、ミッキーは5万ドル請求されていたため、部品の融通という面においても88では問題児扱いされていた。
そういった事もあり終盤に至っては機体各部のあちこちのパーツが寿命切れという整備不良状態でだましだまし運用しており、
終いには「ノズルの消耗が激しくアフターバーナー使用不可(=超音速戦闘不可)」「FCSは異常動作連発(自転車の破壊に核兵器の使用を提案、逆に空母を機銃だけで撃破しようとするなど)」という酷い有様であった。



  • J35 ドラケン

スウェーデン、サーブ社*48製戦闘機。
小型かつ軽量なダブルデルタ翼機で、整備性の良さと高速道路から離陸できる程の短距離離陸能力*49が特長。
初飛行は1955年と、F-4やMiG-21と並んで古い機体。
50年以上が経過した現在も尚運用されているあれらに対して、こちらは2000年代初頭には退役している。


シンの四代目乗機。クフィールにしばらく乗っていた事でデルタ翼機に慣れていた事から本機が選ばれた。
当時既にサーブ社では生産終了していた*50事から入手に当たっては中古を漁る事になり、
フィンランドからスクラップの本体を2機入手するもどちらもエンジンが無く、正規のエンジン入手には諸々の問題で数ヵ月もの時間がかかる事からこれまた中古を漁り、
オランダからエンジン本体、ドイツからアフターバーナー……といった具合にヨーロッパ中の中古業者から部品を集めて構築されており、マッコイは「入手はF-14より大変だった」「最終的な調達費用はF-14以上だったかもしれない」と語っている。
古い機体の中古品ながら中々に高い性能を発揮し、シンも満足であった。
整備性の高さから満足な整備が受けられないエリア85でも稼働率を維持し、また短時間で補給を済ませられる長所も要所要所で発揮していた。
「北欧での運用が前提の本機を砂漠で使うには問題や課題も多かったはず」という観点から、
文庫版で登場兵器の解説を行っていた岡部いさくは当時のシンは日本に帰るのを諦めて戦闘機マニア街道を突き進んでいると評した。



  • C-130 ハーキュリー

アメリカ、ロッキード社*51製輸送機。一般には「ハーキュリーズ」と呼ばれる事が多い。
1956年の運用開始から未だにアメリカ、日本を含む世界各国で愛用されており、現在もなお新規生産されている傑作輸送機。
その設計の優秀さは、開発から60年が経った現在もなおエンジンと電子機器以外ほとんど手が加わっていないと言えば分かりやすい。
側面にドアガンを設置しガンシップとして運用される事もある。


劇中ではマッコイの所有機が有名。側面にパーソナルマークとなる銭袋が描かれている。
彼曰く、精密機器を輸送する為の特別仕様の機体との事。目の治療の為サキがスイスへ渡航する際、手術直後の彼の移送にも利用された。
それ以外にも複数機がアスラン空軍で運用されている。



アメリカ、マクダネル・ダグラス社製艦上戦闘攻撃機。
元々はノースロップ社の試作戦闘機・YF-17 コブラであり、アメリカ空軍の軽量戦闘機計画での採用をF-16と争って敗れた後、
双発機故の高信頼性・生残性や離着陸能力の高さをアメリカ海軍が買い、マクダネル・ダグラス社の手によって艦上機へ生まれ変わった。
現在でいう所のスーパーホーネットより更に1つ前のバージョン(通称レガシーホーネット)であり、この当時は型番の表記はまだF/A-18ではなかった。
優秀な性能に加え簡単な装備換装で戦闘機と攻撃機をスイッチできるマルチロール機であり、この点は航空機の搭載量に厳しい制限がある空母艦載機としては大きな長所である。
また電子装備も非常に優秀で、『制御された墜落』と称される程に難度の高い空母への着艦をほぼ全自動で行う事ができる事から、
「人が操縦している時間の方が短い」とも称される。


劇中当時の最新鋭機の一つであり、マッコイ曰く「新し過ぎて部品どころかマニュアルさえ出回っていない(意訳)」との事。
事実として本機の運用開始年は83年であり、当時はまだ初期型のA/B型が生産されたばかりであった。
初登場した時の本機は''砂漠空母が搭載する無人機''というトンでもない代物だった。如何にホーネットの電子制御が強力といえども完全無人操縦はまだ無理である。
技術的な限界からヘリ相手ならまだしも歴戦の88の傭兵達には腕で敵わず、機体性能で劣る旧式戦闘機相手に撃墜されるシーンが多かった。
その後も真っ黒に塗装された機体が神崎の愛機として登場するなど、一貫して敵役の戦闘機であった。
砂漠空母に捕まったシンとミッキーが脱出時に2機を強奪し一時的に乗機とするが、砂漠基地内での分解作業中にエンジンに取り付けられた自爆装置に工具が接触、起動させてしまった事でエンジンを喪失。
エンジン自体はNATO高官を強請って調達した予備が届く予定だった様であるが、結局その後使われる事はなかった。
エリア88に新たなF-18使用者も現れなかったため、エンジンを抜かれた本体も自爆装置の爆発に巻き込まれたか、その後の攻撃で失われたものと思われる。
その爆発で倉庫が文字通り跡形もなく吹き飛び、倉庫内にいたマッコイも瀕死の重傷を負ったため、エリア88の兵站が一時的に機能不全に陥り正規軍にその負担が回る事になった。
OVAではモブキャラの友軍機として登場している。


イギリス、ホーカー・シドレー社*52製攻撃機。
アメリカの手が加わったハリアーIIか、初期型のハリアーかは明言が無いため不明*53
F-35が登場するまでの長きに渡って、世界初にして唯一のマトモに運用できるVTOL戦闘機であった。


初登場時は敵の機体であったが、後にキムが本機を愛機とする。
反政府軍機はグレッグが「ホーカーシドレー・ハリアー」と説明しているため、おそらく旧ハリアー。
キムは翼下にガンポッドを装備させている事が多い。
エリア88の唯一のVTOL機であり、その能力を活かして随所で本機にしか成し得ない活躍を見せた。
88に於いてはF-14AやF-20と肩を並べる程に部品調達に難があるらしく、訓練兵上がりのキムに対しても平等に情け容赦ない高額請求が叩きつけられた場面もあった。


OVAでは「タイトロープ作戦」の際に、反政府軍が燃料集積場の防空用に有人機を運用していた。


アメリカ、ロックウェル社製超音速戦略爆撃機。
敵地へ高速で侵入し爆弾を投下して帰投するという機体で、爆撃機としては珍しく超音速航行能力と可変後退翼を持つ。
弾道ミサイルの技術進歩から超音速爆撃というコンセプト自体が陳腐化したため一旦は開発が中止されたが、
後にB-52の後継機とするべく、最高速度の低下など一部の仕様が変更された上で量産された。
結局のところ本機はB-52の代替とはならず、運用延長が決定したB-52に対してこちらは2021年初頭から退役を開始した。


本作では珍しく愛称で呼ばれる事は無く、専ら「B-1」と呼ばれていた。
目の治療を終えたサキがヨーロッパからアスランへ帰還する際に使用、後述するグランドスラムの迎撃のために爆弾を投下、それ以降は出番無し。
下記の登場経緯からして、アメリカないしイギリスに返却されたと考えられる。
劇中当時は米軍での運用開始から5年も前であり、本機はロールスロイスのエンジンのテストのために秘密裏にイギリスに持ち込まれていたものとされている。
アメリカ本国すらまだ使用していない機体を提供された理由はサキ曰く「中東にはいろんな国がおべっかを使いたがっているから」との事。



アメリカ、フェアチャイルド社製攻撃機。
かの空の魔王ルーデルの著書を参考とし、GAU-8アヴェンジャー30mmガトリング砲を積むためだけに作られたバケモノ攻撃機。
ジェット機でありながら航行速度は二次大戦中のプロペラ機と同等の560Km/hと恐ろしく鈍足で「後ろから鳥が追突する」というジョークもある程だが、
代わりに16000ポンド(7260㎏)という凄まじい兵器搭載量を持つ。
最近になって退役の話も出ては消え出ては消えを繰り返していたが、結局米軍は2030年代まで運用を継続する事を決定した。


砂漠空母の余りの頑強さに業を煮やしたグレッグが、口座の中身全額と引き換えにマッコイに発注した機。
運用開始は77年初頭であり、アメリカさえ配備が始まったばかりという劇中当時屈指の最新鋭機であり、マッコイも本機を注文された際にはたじろいだ。
後にマッコイは本機をNATOに配備予定の機をちょろまかすという力業で88へ持ち込んだが、結局砂漠空母との最終決戦には間に合わなかった*54
配備予定の最新鋭機を1機ちょろまかされた上に、高官を強請られF-18(同じく最新鋭機)のエンジンをぶんどられたNATOが不憫でならない*55
なおグレッグは本機の機銃を40mmガトリング砲(実在しない)に換装しており、防空シェルターに逃げ込んだ戦車をシェルターごと粉々にするといった活躍を見せた。
また、本機は夜間戦闘能力を持たないにもかかわらず、敵輸送艦隊を夜襲し無誘導爆弾で直撃弾を与えたシーンが存在する。グレッグの対地技能の賜物であろう。
更に、対地攻撃能力極振りの攻撃機であるため機動力も運動性も非常に低く、空戦能力は低いを通り越して皆無
口さがない言い方をすれば仲間の戦闘機に制空権を確保して貰った状態で対地攻撃するしか能がない航空機なのだが、
グレッグはあろうことか本機で戦闘機に空中戦を挑み、(多少被弾したとはいえ)敵戦闘機の大群を潜り抜けてみせるという離れ業を披露している。
1回だけグレッグのものとは別機種のA-10にケンが乗っていた事があるが、そちらはそのシーンにしか登場しておらず、詳細は不明。



  • F-20 タイガーシャーク(F-5G)

アメリカ、ノースロップ社製試作戦闘機。
70年代のアメリカの政策により、当時の最新機種だったF-16が諸外国から人気を集めながらも厳しい輸出規制が敷かれていた事を受け、
輸出向け戦闘機の分野で成功を収めていたノースロップが人気機種F-5Eに様々な改良を加えてF-16を手に入れられない国々向けに開発した試作機。
エンジンをF-18と同じF404エンジンに換装、その強力さから双発から単発になったもののパワーは向上した*56
他にも機体各部を改良、高い性能向上を果たした事で当初はF-5Gの型番が付けられていたが、「もはや別機種である」と新たにF-20の型番が与えられた。*57


F-5Eから各段に性能は向上しているのだが、売り込み先で本命でもあった台湾では不採用、更にはF-16を基にした独自機体の開発や競合相手のミラージュ2000の導入が決定。
しかもレーガン政権に移行した事でアメリカの兵器輸出は大きく方針転換し、F-16が大々的に諸外国に売り出されるようになってしまった。
こうなってしまっては所詮は旧式機の改造機でしかないF-20は最新鋭機F-16に太刀打ちできず、結局1機も発注される事は無く試作機で終わってしまった。
時代に翻弄された悲劇の機体と言えよう。
その後もデモ機として飛んでいたが2機が事故で失われている。2機ともデモ飛行中の墜落であり、機体性能にパイロットが追いつけなかったという説が高い。
なお世界で初めて音速を突破したチャック・イェーガーお気に入りの機体でもあった。


マッコイがギリシャの訓練基地で再編中のシンの為に持ち込んだ機体。
赤色に塗装されていた試作1号機のカラーパターンはそのまま、赤色を青色に変更したカラーリングがなされている。一号機の2Pカラー
現実の初飛行は82年であり、おそらく81年前後と見られる劇中当時屈指の最新鋭機である以上に、
試作機が3機しか製造されていない本機を如何なる手段で入手したかは不明である。それともエリ8世界には4機目以降が存在したのだろうか?

タイガー系に好んで乗る傾向があるシンも、F-5Eからより向上した本機の性能にはご満悦であった。
もっとも長期間使用していた機体で、最終決戦でもシンが搭乗したことから、シンの代表的搭乗機として扱われることも多い。


先述の通り、本機は試作機止まりの商業的には失敗作であるため世界的にはかなりマイナーであり、
日本でよく知られているのはエリア88(とその影響下にあるエースコンバット)の影響である事は疑いない。



  • バッカニア

イギリス、ブラックバーン社*58製艦上攻撃機。初期には英海軍、後に空軍によって運用された*59
超低空飛行で敵レーダーを掻い潜りつつ目標に接近、核爆弾で敵艦隊を丸ごと一網打尽にするというコンセプトで開発された。(創作で有名なもので言えばあのガンダム試作2号機と同様である)
亜音速機であるものの5t以上もの爆弾を搭載可能で、低空での運動性能とそれを可能にするための機体強度は非常に高い。
海外にも積極的に売り込まれたが、結局採用したのは南アフリカ共和国のみであった。


ラウンデルの愛機として海軍型が登場。
前述の通り本機は海外に向けて積極的に販売されていたため、入手は難しくなかったのだろう。
タイトロープ作戦にてラウンデルは本機で先陣を切り、その高い低空性能を遺憾なく発揮していた。



  • Yak-38 フォージャー

ソ連・ヤコブレフ設計局が開発した艦上戦闘機。
VTOL能力を持ち、ハリアーが排気ノズルの向きを変える事で推力方向を下に向けるのに対し、
こちらは推力偏向とホバリング用のエンジンとの併用でVTOLを行う。
その性能はハリアーより低いのだが、当時の西側諸国は、本機をハリアーを遥かに上回る超高性能VTOL戦闘機として警戒していた。
当然、作者もまた作中にて本機を高いVTOL能力を持つ機体として描いている。
なお後継機として「Yak-141 フリースタイル」が開発されていた。
こちらはYak-38の構成を受け継ぎつつも超音速飛行が可能となるなど、
Yak-38よりも性能が格段に上昇しており、もし完成すれば世界初の超音速VTOL戦闘機になる……はずだったのだが、
搭載艦となるはずだったキエフ級航空巡洋艦の退役、試作2号機の墜落、何よりもソ連崩壊による予算不足によりあえなく計画中止となってしまった。


山岳基地に移動した直後に交戦した反政府軍部隊が運用。
そのVTOL性能を活かして88の輸送部隊を奇襲し彼らの補給線を干上がらせた上に、『ヒバリの巣作戦*60』の展開により88を翻弄した。
前述の通り、実物の本機のVTOL性能では劇中で見せた様な挙動は不可能である。
本編では、例のがめついくそじじいが残骸を漁った結果中身は西側の部品がぎっしり詰め込まれ、魔改造の限りを尽くされている事が明かされているので、
武器商人結社の注力で、史実のYak-38とは別物同然の能力を持たされていた」という解釈は可能かもしれない。



アメリカ、リパブリック社製戦闘爆撃機。
戦闘爆撃機としては初めて爆弾倉を備えた機体で、戦闘機のみならず爆撃機としても優秀な性能を発揮した。
というか「型番のBとFを付け間違えられた*61」とまで称されるほど専らの爆撃機的扱いであったという。
対地攻撃担当らしく非常に頑丈なヒコーキで、
「敵の地対空ミサイルを主翼に喰らったが信管が不発で「ぶっ刺し」状態になり、そのまま基地まで飛んで帰ってきた」
という機体がいたそうな。
爆弾倉は通常爆弾のみならず核爆弾をも運用可能だが、ベトナム戦争では専ら燃料庫として使われていた。


グエンが初登場時に搭乗していた機体。88としては初めての機種だった模様。
ベトナム戦争と関わりの深い機体であるが、本機はベトナムを攻撃した米軍の機体であり、ベトナム人であるグエンからすれば仇敵の様な存在である*62



ソ連の戦闘機。
初飛行は1955年とかなり古いが、未だに新規生産*63とバージョンアップが続いているF-4と並び賞される戦闘機界の古豪。
ジェット戦闘機としてはMiG-15や17と共に10000機以上も生産された大ベストセラー機である。
その実績と、ザコっぽいビジュアルから多くの実写映画などでも敵のやられ役として引っ張りだこになっている。
身も蓋もない言い方をすれば、「ジェット戦闘機界のザクⅡといった所。
しかしその弱そうシンプルな外見に反して高性能で、西側としては本機を完全に上回る性能の戦闘機の登場はF-16を待たねばならなかった。
またベトナム戦争では交戦規定によりミサイルを満足に使えなかったF-4や、戦闘機としては優秀ではなかったF-105等を撃墜して回っており、
創作ではやられ役ばかりなのに対して実際には多大な戦果を挙げている。


プロジェクト4の主力機であり、本作でもやられ役として登場。しかしマックバーン等、本機を駆るエースパイロットも多い。
ソ連機の例に漏れずバリエーションが大量にあるが、プロジェクト4採用機は諸々の描写からPFM初期型と推測されている。
ただしこのバージョンには機銃が装備されていないのだが、それにもかかわらず機銃を発砲するシーンは数多い*64
なお劇中登場機は電子装備に西側の機材を使用する事で、原型機よりも性能向上が成されている*65
上記の存在しないはずの機銃についても、この魔改造の末に追加されたのかもしれない。



  • F-104 スターファイター

アメリカ、ロッキード社製戦闘機。通称「最後の有人戦闘機」。
アメリカ初のマッハ2級戦闘機である。
鉛筆の如き細長い外見が特徴で、米軍の他に日本や西ドイツ等のヨーロッパ諸国でも運用されていた。
運用開始当初は事故が多発しており、未亡人製造機ウィドウメーカーの蔑称で呼ばれる事もあった。


セラがフランスからアスランへ戻る際に西ドイツ軍から強奪、そのまま愛機となった。
山の基地から脱出後の仮設88基地を目指すも不時着、破損していたが後に修復した模様。
未亡人製造機に女性が乗るとは何たる皮肉であろうか。



  • B-52 ストラトフォートレス

アメリカ、ボーイング社*66製戦略爆撃機。ベトナム戦争で大量の爆弾を投下する画で有名な機体。
1952年の初飛行とその3年後の運用開始以来、近代化改修を繰り返しつつ2019年現在未だに運用されている爆撃機界の50年選手。
いい加減老朽化も進んで来たため後継機の開発も行われたが完全に置き換えるには至らず、結局その後継機の方が先に退役する事が決定してしまった。
その長大な運用期間の凄まじさは「俺も親父も爺ちゃんも、親子孫三代でB-52のパイロットをやっている」というジョークが物語っている。
結局米軍は近代化改修を繰り返して2040年代まで使用する事を決定しており、50年どころか100年選手になりつつある。おそらく初代の曾孫も乗る事になるだろう。


プロジェクト4がアスラン攻撃のために大量に投入し、またその内の1機以上が空中給油機(実在しない仕様)に改造されている*67
補給の目途が立った事を受けて出撃した88のパイロット達によって全機が撃墜された。



アメリカ、グラマン社製実験機。世界初の超音速前進翼機である。
前進翼と呼ばれる、主翼が前方に向けて傾斜した主翼を持つ戦闘機のデータ収集を目的とした機体。
前進翼は格闘性能を向上させる代わりに安定性に欠け、しかも速度を上げると空気抵抗により主翼が捻じれる、
その対策の為に強度を上げようとすると今度は重量が嵩み運動性向上とトントンになってしまうという問題があった。
本機は構造・材質の変更によって重量を抑えつつ主翼の強度を向上させ、コンピュータ制御により補助翼を絶えず自動で動かし続けさせる事で安定性の問題を解決した。


試作機どころではない実験機である本機は実戦投入を一切想定していない。
そのため武装も戦闘用装備も一切無く、燃料搭載量も少ないため劇中でも戦闘中に燃料切れを起こしたシーンが存在する。
つまり実戦で使用する為に武装その他を一から取り付けるハメになった筈であり、整備班には相当な苦労があったに違いない。


本機は存在そのものがネタバレに近いので、詳細は折りたたむ。


88に帰還したシンが使用した機体。
神崎との対決を除いて、最終盤での戦いでシンは本機を用いていた。塗装はよく知られている白地に赤と青のラインが入った実験機カラーとなっている。
機首部分はF-5Eのものが流用されており*68、本機もまたシンが愛用していたタイガー系の親戚と言える。
ミッキーがテスト飛行で飛んだ際、本機を「とても寄せ集めとは思えない」と形容したのはこの事を指している。技術実験機であるX-29は、予算を浮かせるためにパーツを色々な既存軍用機から寄せ集めて組み上げたヒコーキだったのだ。
そもそもアメリカ国内を含めて他所に売る事を前提とした機体ではなく、実験用に2機しか製造されていない本機を如何にして入手したかは全く謎である。
それどころか、現実に於ける本機の初飛行は1984年であり、劇中当時はその3年以上も前である。
こんな機体を使用したせいで、文庫版で登場兵器の解説を行っていた岡部いさくは「やはりシンは戦闘機オタク街道を突っ走っている」と評した。
どうやら用意したのはマッコイではなく海音寺側の様であるが、アメリカ大統領すら強請る権力を持つ海音寺であれば不可能ではなかったのかもしれない。
公式記録に残る事なく実戦データを取れるのなら、と開発局が喜んで提供した(押し付けた)可能性も無きにしもあらず…。


最終決戦の途中で燃料切れを起こし、10km先の最寄基地に降りようとするも、被弾し意識を失っているサキと偶然遭遇、
彼を救援している内にエンジンが完全に停止する寸前まで燃料を消耗してしまったため、アスラン王宮近くで放棄された。
シンとしては2度目となる燃料切れによる墜落であった。やはり航続距離が厳しかったのだろう。
なおコレクションモデルの解説によると意外と描きづらく、動かしいにくいから退場させたと作者が暴露している。



  • エンタープライズ級原子力空母

ニミッツ級の前級となる米海軍の原子力空母。世界初の原子力空母である。イラクの自由作戦など実戦も経験している。
ニミッツ級と異なり同型艦は存在せず、2012年に退役、2023年現在解体中である。


基地を破壊され窮地に追い込まれたエリア88に向けて、『謎のスポンサー』から空母のベテラン乗組員付きで贈られた品。
前述の通り現実のエンタープライズ級には同型艦は存在しないが、
本作では『建造途中で何らかの理由で放棄され、解体するにも完成させるにも金がかかり過ぎるためそのままドックで放置され埃を被っていた同型艦を完成させたもの』、即ちまさかのエンタープライズ級2番艦の計画中止艦である。ある意味、エリア88オリジナルのトンデモ兵器その4
謎のスポンサーがこれを調達する費用を得てから登場まで余り間が無いため、完成間際まで建造は進んでいたのかもしれない*69
サキにより88の艦番が与えられ、砂漠基地・山岳基地・その後の仮設基地に次ぐ4代目エリア88として運用された。



  • 地上空母

エリア88オリジナルのトンデモ兵器その1。
ジュゼッペ・ファリーナが運用データ収集目的で開発した試作兵器。
宇宙ロケットを発射台まで運ぶクロウラーという巨大車輌を改造して作られた。
極めて巨大であり、改造のベースに使用したクロウラーは1台や2台ではないと見て間違いない。
右舷側にアイランド、後部にエレベーターを持ち、アングルドデッキ無しという二次大戦序盤の空母の様な甲板をしている。
戦闘機の搭載量は不明だが、劇中での艦長の台詞から少なくとも30機以上と見られる。また後述の機能から甲板上には戦闘機を一機も駐機させておらず、全て船内に収納している。
動力は原子炉。しかし灼熱の砂漠の中での運用であるため冷却に難を抱えており*70、潜航中に熱量が限界に達すると巨大なダクトを数時間に渡って露出させる必要がある。
最大の特徴として砂中への潜航能力を持ち、潜航中は移動できないものの、砂がクッションとなるため空爆でダメージを受ける事もない。
また潜航中はレーダーを周辺に設置する事で索敵が可能。
船体の各所には大量のミサイルランチャーを装備し、これは潜航中も発射可能である。
ランチャーの無い所からの突然の攻撃となるため奇襲効果は抜群であり、シンやミッキーさえもこれの餌食となった。
しかしデータ不足により、ミサイルによる迎撃はある一定のパターン下でなければ不可能である*71
本体の耐久力も非常に高く、多少の500ポンド爆弾程度は全く意に介さない。


後述するグランドスラムを発射し、エリア88を使用不能にした後にサキが不在の隙に占拠、残留していた人員を捕虜とするが、
その後各地に分散退避していた88のパイロット達が結集、総攻撃を受ける。


登場当初はその防空能力や頑丈さで以って88を翻弄したが、
本気を出した88のエース達の猛攻の前に徐々にダメージを受け、防空の為に発進させたF-18も大半が撃墜されてしまう。
最終的には潜航してやり過ごそうとするが、被弾による損傷とそれによる潜航装置の故障により沈降が止まらなくなり、そのまま安全深度を突破してしまう。
そして遂には甲板が砂の重量に耐え切れなくなった事で船体が真っ二つにへし折れ、続く原子炉の大爆発により消し飛んだ。


その結果として、88基地の周辺を放射能汚染してしまったため、しばらく基地を放棄せざるを得なくなり、
また88側も大損害を被った事でギリシャの訓練基地に赴き再編成を余儀なくされる事になる。


総じて、ACE COMBATシリーズの架空兵器群に伍するインパクトを放つ超兵器である。
それまでエリア88という作品はリアル路線で進んでいたため、地上空母編だけ異様に作風が浮いているが、
これは作者曰く、「このままリアル路線で行ったらその内本当に中東で起こりそうだったから」との事である。



  • グランドスラム

エリア88オリジナルのトンデモ兵器その2。
地上空母に搭載されている巨大ミサイル。
ミサイルと呼ばれてはいるが、その実態は''先端のドリルで地下20mを掘り進み、目標の地下で爆発する''という自走地雷とでも言うべき代物。
移動速度はおよそ5㎞/hと非常に遅いが、300tという凄まじい量の高性能爆薬を搭載し、その威力は尋常ではない*72*73
タイマーや各種センサーと連動した信管を持ち、タイマーが作動した状態で周囲5㎞四方に高い熱量等を検知すると爆発する。
名前の由来は第二次世界大戦中にイギリス軍が使用していた巨大爆弾グランドスラムと思われる。
また先端にドリルが付いたミサイルというコンセプトは『宇宙戦艦ヤマト』のドリルミサイルが元ネタである。


リシャールが地上空母に乗り込んだ目的はこれの妨害だったのだが、発射寸前にまさかの2本目が存在する事が判明、彼の企みは失敗に終わった。
1本はエリア88に、もう1本はアスラン王国首都に向けて発射される。
88に向けられたものはサキと傭兵達の奮闘によって基地の少し手前で燃料切れに追い込み停止させる事に成功するも、地下水脈に乗って移動を再開してしまう。
しかも水脈の流れと土地の標高差の関係から、88基地に入り込んだ今ここで止めなければ地下深くまで潜り込んで手が出せなくなってしまう上、
次に地表近くに出るのは事もあろうにアスラン首都直下と判明したため、やむを得ず基地内で自爆させる事を決定、
滑走路の1/3が破壊される程度に被害を抑え込んだものの、88基地をしばらくの間運用不能に至らしめた。


アスラン首都に向けられた2本目は、事前の調査不足によって強酸性の工業廃水が不法投棄されていた鉱山の地下を通過してしまった為、地中で腐食分解し不発となった模様。



  • T-10対空地雷

エリア88オリジナルのトンデモ兵器その3。プロジェクト4が運用していた使い捨て対空ミサイルランチャー。
ミサイル1本を内蔵した円筒形のランチャーと敵味方識別装置、ランチャーの先端に取り付けられた地面掘削用のドリルの3ブロック構成でひとつのユニットになっており、設置をコマンドすると自動的に地中に埋もれてスタンバイ状態になる。
マッコイ曰く、過去に似た兵器が武器商人の界隈で話題となったが、それは僅か500m程度という射程の短さや敵味方無差別に攻撃してしまうという欠陥があったためすぐに廃れたという。
T-10は、ミサイル側は技術進歩によって3000m近い射程を獲得し*74、地上側はごく単純な敵味方識別装置だけを備えるという形で問題解決した。
これの最大の長所は、地上にミサイルランチャーもそれを運用するであろう歩兵の1人も目視できぬため、
非常に奇襲能力が高いという点にあり、各種哨戒機は元より、戦闘機に搭乗したグエンさえもこれに撃墜された。
「敵歩兵部隊が引き払ったのが確認できたエリアを飛んでいたのに、
地対空ミサイルに撃たれた」
軍用機乗りにとって、こんなに恐ろしい話はない。まさに地雷である。


なお本機の敵味方識別装置は「味方信号を発信していない航空機は撃つ」という単純なものである性質上、
敵機だけでなく民間機も攻撃してしまう欠点があるが、これについてプロジェクト4の兵士とサキは
「民間機といえど戦場を飛行していれば撃墜されても仕方ない(=民間機で戦場を飛ぶ奴が悪い)」
という少々乱暴な理屈によって問題なしと扱われている。



  • MB-14

エリア88のトンデモ兵器…ではなくオリジナルの民間旅客機。 殺った人数ならそこらのヘタな兵器にも負けていないけど
神崎が大和航空を乗っ取るために本機の製造元のマックウェル社が保有する大和航空株を譲り受ける条件として、大和航空の主力機に導入された双発型旅客機(エアバス)。ちなみにOVA版では4発機になっている。
曰く格安で大量の乗客を載せられる事がメリットであり、大和航空は導入直後から東南アジアやヨーロッパ方面に投入し、「額面通りであれば」世界中の空でMB-14を目にするとされていた。
パイロットには機体が軽くて操縦しやすいと好評だったが、エンジンは異常加熱しやすく耐久・信頼性に深刻な問題があり、良好な操縦性も安全関係の装備等をごっそり削って50tも軽量化させたのが主因。
装備削減については、エンジン部分の消耗が異様に激しいという報告を受けて視察に訪れた神崎に直接警告した整備員もいた程であった。
マッコイが商談で顔を合わせた西ドイツの業者は「欠陥機」とストレートに評価を下し、マッコイは「旅客機としてのチェックはパスしているが規格スレスレだろう」と考察し、
神崎も当機の品質のひどさには「安全性がスレスレなのは承知している。その分安いからな」といいつつ改善要求をしていた。
彼自身も期間は短いものの国際線の旅客機パイロットの経験があったからか、こんな機体を主力に導入するという条件を呑んで確保した当時の地位のためもあるだろうが、1人のパイロットとしても看過出来ないレベルだった事がうかがえる。
本機の資料を見たマクガイヤーはFAAの耐空証明を取得できた事を疑問視し、「空飛ぶ棺桶」「自動車に羽根を括りつけた方がマシ」などと称する程。
FAAの耐空証明なんてDC-10のやらかしとか度々あるけど
「シンは元大和航空所属だった」という事を知っていたマッコイが彼に「あの会社はやばい」と同業者間でも噂になっている事を伝えた為、ここでシンも神崎の社長就任を知る事となる。
その後、大和航空所有機でエンジン発火が原因の重大な墜落事故が導入から僅か半年で発生してしまい、神崎が失脚するきっかけになった。



◆余談

  • 「エリア88」の由来はアハトアハトの通称でお馴染みの第二次世界大戦中のドイツ軍が使用していた88mm高射砲である。
    作者がタミヤから発売されたこれの模型の出来栄えに感激した事が切っ掛けとの事。

  • タイトルの読み方について、「はちじゅうはち」か「はちはち」か「エイティエイト」か「アハトアハト」かは漫画作中では明言されていない。
    作者にも読み方の質問がされたが、その回答は「別にそんなの好きに読めば良いじゃん。『はちじゅうはち』か『エイティエイト』で良いじゃん(意訳)」であった。

  • 作者によると「仕事も恋人との交際も順調な主人公が、親友の裏切りによって島流しにされ全てを失い、後に莫大な財を得て復讐に向かう」という本作のストーリーは、デュマの小説『モンテ・クリスト伯』のあらすじをそのまま流用したとのこと。
    また、作中で度々描かれる真と涼子のすれ違いは『君の名は*75』が元ネタとされ、作者は2人をすれ違わせるのが段々楽しくなって来たとの事。真と涼子からすればいい迷惑である

  • 文林堂の世界の傑作機でF-5E系統の特集がされた際には新谷かおるへのインタビューだけでなく、表紙のF-20がシンのF-20になっている。

  • 第88回コミックマーケットに際して作者は「88」繋がりでかカタログの表紙を寄稿し、自身も10年振りにサークル参加した。
    98年の初参加時にコミケスタッフとの宴席で冗談半分に「開催番号が88まで行ったら表紙を描く」と約束したためらしい。
    新谷は当時徹夜続きで判断力ゼロだった事もあってそのような約束をした事を言われるまで完全に忘れていた模様。
    同時に「スタッフもスタッフでよくも17年越しにそんな連絡して来たな(要約)」とも語っている。なお、当時の開催番号はまだ50も行っていなかった。
    当日のスペースはA-88、スペース周りの地面には88の滑走路を模したペイントを施すという凝り様で、
    頒布物は、新刊本、シャツ、描き下ろしイラスト付き扇子、
    そして外泊証明ペン(本体に神崎の顔と「おい、真! これにサインしろ!!」の文字、パッケージに泥酔する真に書類を書かせる神崎、「注:最後まできちんと読んでからサインしましょう」の文字入り)であった。





今、追記修正の幕が切って落とされようとしている……
行きつく先は、荒らしの地獄か全消しの海か……
タイプする指は弱く震える……
ここはアニヲタwiki……


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  • 記事立てと同時に全力かい!乙! -- 名無しさん (2019-05-26 17:31:13)
  • 読みきるのに86分もかかるとはたまげたなぁ。製作おつかれさまです。 -- 名無しさん (2019-05-26 17:40:29)
  • ↑ ↑2 ありがとうございます。これでも各キャラの去就などが書かれていない状態なので、今後の追記修正で更に増える見込みなのです -- 建て主 (2019-05-26 18:35:17)
  • エリア88メンバーに関しては部隊としてのページがあるからそっちにまとめる方が良いかも(文量的にも -- 名無しさん (2019-05-26 18:41:57)
  • この項目をずっと待ってたんだ…! -- 名無しさん (2019-05-26 19:19:23)
  • プロジェクト4だけでも1項目立ちそうだもんなw 「民 間 軍 産 複 合 体」という恐怖のモチーフは、後への影響も大きそうだ -- 名無しさん (2019-05-26 21:35:22)
  • SFCのシューティング面白かったけどクリアしたことないな -- 名無しさん (2019-05-27 11:19:02)
  • 「命はだいじにせんとなあ」「そうじゃよ だいじにすれば -- 名無しさん (2019-05-27 13:43:24)
  • 一生使えるからな」は座右の銘。 -- 名無しさん (2019-05-27 13:43:45)
  • 「カナード(前進翼)がもう実戦配備なのか…」という作中の台詞が頭に残ってたんだがX-29て本来なら戦争に出てくるわけがないトンデモ機体だったのか。 -- 名無しさん (2019-05-27 22:36:48)
  • ↑飽くまでも実験機だからね……元々容積の小さいF-5の機首にバックアップ含む制御系がみっちり詰まってるから実戦装備なんて無理 -- 名無しさん (2019-05-28 02:48:15)
  • 陥れられて入れられて最後には仲間も失って記憶喪失でって・・・むかつくほどひどい展開だな! -- 名無しさん (2019-05-28 09:56:14)
  • 最期には自分の最も幸せな時間に戻れたから、これでいいんだ。地獄の過去は忘れ、一番大事な人とゆっくり時間を過ごせるトゥルーエンドだしね…。  -- 名無しさん (2019-05-28 16:57:10)
  • 記事内容の分厚さに圧倒される実に乙。…どうせならもうちょっと内容増やして所要時間88分にしない?(無茶ぶり -- 名無しさん (2019-05-28 16:59:09)
  • いまだに心残りなのが、ミスターサワと安田女史。もうひとプッシュでイケたのに…w -- 名無しさん (2019-05-28 22:59:36)
  • MB-14はフィクションじゃ済まされないかもという意味で笑えない存在だと思う。コストと効率のために安全性全部捨てましたって工業製品は、実は自分たちが気づけないだけで身の回りにゴロゴロしてそう。そしてその「リアルMB-14」を間接的とはいえ求めたのは、他ならぬ自分たち消費者の「もっと安く!もっと効率よく!」という主張という… -- 名無しさん (2019-05-29 21:37:41)
  • 行動が大胆すぎて「男がよってこない」と評される安田、夫が戦うならばとばかりにプロジェクト4に関わる津雲グループ企業に圧力をかける涼子、寄せ集めのF-4でブラシア組を88まで率いてきたセラ…エリア88のヒロインは女傑しかいない -- 名無しさん (2019-06-06 00:08:11)
  • ↑ い、一応ソリア王妃は違うから(必死) ジュリオラも女傑だしなー -- 名無しさん (2019-06-11 10:15:56)
  • ただ気になるのは、シンがふとしたきっかけに、神崎のことを気にしないか、ってことだな。記憶を失って目覚めたときも、『神崎は?』って言ってたし。下手したら、それがきっかけでシンの記憶が戻ってしまうかも……。周囲の人たちも、神崎のことをごまかすの大変だろうし。 -- 名無しさん (2019-06-14 17:47:38)
  • ↑そうなった時のための準備はしておくだろうけどな。ソリア王妃でノウハウが蓄積されてるし、周りの女ども全員が受け止める根性を持っている。後は真自身の「それでも生きようとする意志」次第だぁね -- 名無しさん (2019-06-30 13:42:02)
  • ウォーレンについての記述で、フランス外人部隊に所属してるのに~ってあるけど、そんなシーンなかったよね? -- 名無しさん (2019-10-06 01:08:07)
  • 途中送信しちゃった。記事書いた人の勘違いなら、この部分は削除してもいいかなーって思ったり。 -- 名無しさん (2019-10-06 01:10:05)
  • ↑ Wikipediaの当該項目でも88はフランス外人部隊と断言されてるけど、劇中ではアスラン外人部隊とは言ってもフランス外人部隊とは一言も言われてはないんだよな。シンが契約したのがたまたまフランスだったってだけで本質的にフランスではなくアスランの外人部隊だし。削除してもいいと思う -- 名無しさん (2019-10-06 18:50:34)
  • 自分は略さずに呼んでたな。「エリアエイティーエイト」って。あのラストは切ないけどとてもよかった。 -- 名無しさん (2020-06-01 09:49:05)
  • ↑11のコメントを受けて、文量が増えた今なら……と思ってカウントしなおしてみたらほぼドンピシャでした。なんという偶然 -- 名無しさん (2020-06-11 07:59:02)
  • クロスアンジュの元ネタの一つだっけ -- 名無しさん (2020-09-01 21:20:27)
  • 涼子が可哀想だという事でアスランで生きたシンの記憶は消えて涼子の元に帰ってきたわけだが、果たしてアスランという地で荒波に揉まれ成熟した男になったシンに愛された涼子が記憶を無くし優しいだけの男に帰ってしまったシンを愛し抜いていけるのだろうかと不安になる -- 名無しさん (2021-01-20 12:54:28)
  • マンガ図書館Zで無料公開開始 -- 名無しさん (2021-04-21 19:58:18)
  • 無料公開で読んでみたがバッドエンドかな?これは。↑2にもあるように、涼子も物足りなくなってるのでは…。大恋愛の果てに抱いたって流れも忘れてるだろうし。 -- 名無しさん (2021-05-23 17:44:58)
  • ギリシアでも訓練うけたとはいえ、劇中最初のベテラン揃いのエリア88でシンはよくトップクラスを安定できたよな… 理由としたら、他の傭兵らは戦争が長引くほうが金稼ぎできるから半端に仕事してばっか、シンの執念と才能がベテランを勝ったか… にしても高等練習機をなんとか操縦できるぐらいの民間人のシン、外人部隊でなにやるか分からん日本人(そもそもパイロットしていのかすら怪しい)を雇えるあたり金持ちなんやなアスラン空軍 -- 名無しさん (2021-05-24 22:22:21)
  • ↑ 1.真も(旅客機のパイロット訓練性としては)飛び抜けて優秀だった。その上にラウンデルのシゴキも受けている 2.真は一刻も早く、かつ確実に日本に帰る為に戦意が高く、また生還率が低過ぎると見られる任務を拒否し、代わりに高スコアを稼げる任務を選ぶといった事をしている 3.そもそも88で支払われる給料は出来高制なので腕が悪いパイロットは支払いも少ない  といった事情がある。言われるように、真の才と執念がそうさせたのだろうね -- 名無しさん (2021-05-24 22:30:03)
  • グエンは南ベトナム軍だから、米軍のミッキーとは敵同士じゃなくて友軍では? -- 名無しさん (2021-08-22 01:15:00)
  • >「このままリアル路線で行ったらその内本当に中東で起こりそうだったから」 なかなか見ない理由過ぎる…この作品のすごいところなのかな -- 名無しさん (2021-10-20 10:38:59)
  • 所要時間が「88」分で読めますになったぞ、おいwwwww -- 名無しさん (2022-09-02 14:35:50)

#comment

*1 『内乱鎮圧の為に傭兵パイロットの主人公が戦いに挑む』『受け取った報酬を元手に新機体を購入する』などといった点
*2 ロケットブースターの装着位置が主翼上、ヘリの傍をジェット機が飛んだにもかかわらず影響なし、増槽を装備したまま空戦、ハリアーのタービンが回っていない等
*3 先述の通り泥酔するまで酒を飲んだり、神崎一人を殺す為に無断出撃した挙句に他にも大勢の民間人の乗った旅客機を撃墜しようとしたりなど
*4 撃墜数で言えば第二次世界大戦に於けるフィンランドのエースパイロット、エイノ・イルマリ・ユーティライネンと同等。ミサイルが主力の現代の空戦に於いて、撃墜数は二次大戦当時ほど意味の大きい記録ではないという見方もあるが、作中ではドッグファイトとその際の機銃による撃墜シーンも多く、やはり彼自身のテクニックも相当なものと言って差し支えない。
*5 これは中盤までのスコアであるため、実際にはこれより更に増える。
*6 実際に米海軍VX-4所属のF-14Aに一時期描かれていた事がある。商標の問題からかOVA版ではデザインが若干変更されている。
*7 1度目は砂漠空母との戦いで戦友を喪って自棄酒を煽りながら空襲の最中にコイン機を引っ張り出し、泥酔状態で出撃しようとするが被弾。そのまま勢い余って滑走路に開いていた大穴にコイン機ごと落下して軽傷で済んだが、その現場を見ていたミッキー達はグレッグが死んだものと思い込んでしまい、人望がこんな時に祟る形で出撃可能だったパイロット達がロケットブースターで弔い合戦に出撃してしまった
*8 士官クラスとしては例外的に水洗トイレの使用を許可する、体調不良時の出撃を控えさせるなど
*9 Gによって血液が頭部に集中する事で、視界が真っ赤に見える現象。長時間続くと失明する恐れがある。逆に下半身に血液が集中する事で視界が真っ暗になる「ブラックアウト」という現象もある。
*10 通常であれば脱出時の機体のブレで狙いがどうしても外れてしまうが、彼は手足が義肢である事を利用し、操縦桿とペダルを固定する事で狙い通りの場所に機体を落としつつ生還する事ができた。
*11 彼と同じ機種を使用するジェンセンも同じ状況だった様である。シンのドラケン、グレッグとキャンベルのA-4は整備性が良好なため、自力で整備せねばならなかったのは同様だが彼らと比べて比較的マシだった。
*12 OVA版では会話中にボリスの負傷と機体への被弾の影響でボリス機がふらつく描写がなされている
*13 全滅させたか、シンとミッキーが離脱出来る程の時間を稼いでから振り切って離脱したか等の経緯は不明。サキも燃料切れ寸前ながらこの戦闘に加わったが、突発的な失明状態に陥り戦線を離脱している。
*14 ここで触れられるアーク・ロイヤルは、イギリス最後のCTOL空母(発艦用のスチームカタパルトと、着艦用のアングルドデッキを備えた空母)で、1978年に退役している。後の1985年にも同じ「アーク・ロイヤル」という名の空母が就役したが、こちらはヘリコプターとハリアーしか使えない軽空母であり、こちらも2011年に退役した。
*15 メインの乗機にハリアーを選択していた為エリア88のパイロットで唯一ヘリの操縦も出来た
*16 どうやら自身が王子であると言う事を明かしていたのはシン位だった様で、ヘリコプターに同乗していたラウンデルとミッキーはエクストリーム挨拶から警備隊を下がらせる為に身分を名乗った際は驚愕を通り越して半ば呆然としていた
*17 ミッキーがサキから自らの信頼する人間を選ばされた際は「腕と言うにはちょいときつい」と評しつつも「逃げ出すタマじゃない」と言う理由からキムの名前を挙げている
*18 ロッキー及びミッキーが来るより前にカメラマンが取材のために滞在していたことがあり、その際に売りつけようと大量に仕入れたはいいが、そのカメラマンは予備フィルムを持ち込んでいたのでそのまま不良在庫化していた
*19 購入したランディは80セントまで値切った。このため彼の機体はエンジン音が独特
*20 原作の名あり登場人物でサキのおじと明言されているのは、ザク国王一人だけである。ただし「ザク国王の娘」とは明言していないので、キトリの父は(サキ視点で)他の父方のおじか、母方のおじの可能性も否定できない。
*21 家族の事情等に巻き込まれて孤児となり寄る辺もなく空港で孤立していたジョゼを引き取り、凄まじい剣幕でチケットの手配を要求した涼子を神崎が自身への印象操作を目的に諌めた際、涼子を擁護せず神崎を擁護するなど。諌めた後に神崎は涼子に言動を詫びたが、周囲の社員からすれば神崎の言葉はもっともな主張であった
*22 この時はギャングに前後を挟まれており、明らかに相手側が有利な体勢であった。その上、沢は事情を聴きだすために2人とも刃で斬らずに手加減をしている。
*23 神崎が日本企業の株を外国に売却したことをいち早く察知できる海音寺が、個人で大和航空を買い戻した真を知り合ってから買い戻したことに気が付いたとは考えにくく、ホテルで別れた直後真が調査員と接触した時には既に監視がついており、ホテルでの再会どころか空港での初対面も偶然ではなく意図的に仕組んでいた可能性も否定できない
*24 素性は最後まで不明のまま。神崎は調べたが詳細が掴めず、八兵衛は特に語ることがなかった。
*25 これは決して漫画の荒唐無稽な描写というわけではない。サファリ5000kmに於いて、泥と太陽と原住民の「投石」は名物であったとされている。
*26 起爆寸前の手榴弾の処理方法としては一般的かつ(本人以外の周囲の人にとっては)最も安全なものである。当然実行した者はほぼ確実に死亡するため、実行者は死後に表彰を受ける事が多い。
*27 OVA版では日本の旅客機であり大和航空所属機が爆弾テロに晒されている事を知らされたシンが言葉を詰まらせており、傍にいたミッキーが咄嗟に通信を変わる演出がなされている
*28 この為、涼子達も護衛機のパイロットが真だと知る事も無かった
*29 「シン」という単語を聞いた瞬間怯えているようにも見える驚愕の表情を浮かべており、その直前のサキの通信内容も相俟って「殺されるかもしれない」という恐怖が少なからずあった可能性もある
*30 現代のレートで考えると200億円に近い損失である。
*31 当時はマッコイが不在だったため補給が厳しくなっており、整備不良で飛行できない機体が多数出ていた。山岳基地での再編時点で推測される保有機が120機程、その後の解散命令で2/3が脱退、その後の強行脱出による損害と件の整備不良から、稼働機は30機に満たないと考えられ、劇中の描写では10機も出ていなかったと思われる。ただし、F4でセラとキムが観測した88方面のターゲットは約20機。無理矢理上げたのかもしれない。それはいつもの事でもあったし。
*32 作劇上のフィクションもあるが、100機できかないジェット軍用機が殴り合っているのは尋常ではない。まして「国家間の戦争ではなく、一国の内戦である」事を加味すると、その異常さがより際立つ。
*33 例えば西側が隣国ブラシアを動かせば、アブダエルの反政府軍は旗揚げ間もなくに挟み撃ちを喰らって負けていたはずである。
*34 ただし、劇中には大和航空とは別で日本航空も存在する
*35 1917年に創業し、F4Uなどを開発した。エリア88の連載当初はLTV社の傘下であったが、連載中の1983年に独立している。現在はトライアンフ・アエロストラクチャーズの一部門
*36 1928年創業。第二次大戦期にはドーリットル空襲に使用されたB-25「ミッチェル」や、「最強のレシプロ戦闘機」の呼び声高いP-51「マスタング」などを、戦後は第1世代ジェット戦闘機の代表格であるF-86「セイバー」やそれに続く当機F-100、マッハ3級の試作超音速爆撃機・XB-70「ヴァルキリー」などを開発した。エリア88の連載当時はロックウェル・インターナショナルの一部門であり、連載終了後の1996年にボーイング社に売却された
*37 イスラエル・エアクラフト・インダストリーズ(現イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ)。軍用機のみならず、ビジネスジェット機やミサイルの製造販売も手掛ける
*38 1939年創業。比較的早期からジェット戦闘機の開発に注力していた新興メーカーで、戦後はF-101「ヴードゥー」や当機F-4の開発などにより一躍有力戦闘機メーカーにのし上がった。一方で珍兵器(パラサイトファイター)も開発している。その後1967年にダグラス社と合併し、「マクダネル・ダグラス」となった
*39 1921年創業。SBDドーントレスや、ベストセラー旅客機として知られるDC-3やDC-4を開発した。戦後は「空の貴婦人」ことDC-8や当機A-4、更には短距離向けジェット機のDC-9を開発したが、DC-9が売れ過ぎた結果資金不足に陥って黒字倒産の危機に瀕してしまい、1967年にマクダネル社と合併して「マクダネル・ダグラス」となった
*40 1939年に設立。それ以前にも同じ創業者で都合2度同名の会社が設立されている。本機F-5や後述するF-20といった戦闘機、T-38といった練習機の他、「世界一高価な航空機」としてギネスブックにも記載されたステルス爆撃機・B-2「スピリット」の開発を行っていた。その後1994年にグラマン社と合併し、現在は「ノースロップ・グラマン」となっている
*41 エンジンの強化、レーダーの搭載など
*42 クフィールは新鋭機ではあるが88での採用例は多く、アスラン空軍正規軍でも使用している事もあって、入手は然程難しくなかった筈である。
*43 先述したマクダネル社とダグラス社が1967年に合併して誕生した航空機メーカー。エリア88の連載当時は軍用機分野では当機や後述するF-18、「空飛ぶ戦車」の異名を持つ攻撃ヘリコプター・AH-64「アパッチ」といった航空機や、ハープーン対艦ミサイル、トマホーク巡航ミサイルなどのミサイルを、旅客機分野ではDC-10やMD-80シリーズを送り出して成功を収めていたが、連載終了後、冷戦終結後の軍縮や旅客機市場での苦戦で経営危機に陥り、1997年にボーイング社に吸収された
*44 厳密には本機の日本向けバージョンのF-15Jである
*45 1918年創業。当初はディーゼル機関車などを製造していたが、第二次世界大戦の国家総動員により他社製軍用機のライセンス製造を始める。WW2後の1949年にイギリス発のジェット爆撃機「キャンベラ」を開発。その後イギリス初の実用超音速戦闘機「ライトニング」を開発する。1960年にイギリス政府の圧力によりブリストル・エアクラフト、ハンティング・エアクラフト、ヴィッカース・アームストロングと合併し「ブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーション、略称BAC」として再編される。さらに1977年の航空宇宙産業国有化政策により、ホーカー・シドレーやスコティッシュ・アビエーションと合併して「ブリティッシュ・アエロスペース、略称BAe」に再編。1999年に「BAEシステムズ」に改称して現在に至る。
*46 1929年創業。高い技術力を生かし第二次大戦期にはF6F「ヘルキャット」やTBF「アヴェンジャー」などの数々の名機を開発し、その質実剛健な設計思想は「グラマン鉄工所」と呼ばれた。戦後もE-2「ホークアイ」やA-6「イントルーダー」を開発した他、人類初の有人月面着陸を成し遂げた「アポロ計画」にも参加した。現在は先述した通りノースロップ社と合併し、「ノースロップ・グラマン」となっている
*47 イランに納品予定だったF-14が1機革命で納品中止になったのは実話。史実では流石にどっかの武器商人にすり替えられたりしたりはせずアメリカに返却された。
*48 1937年創業。軍用機メーカーとしては本機J35の他、その後継として開発されたサーブ37「ビゲン」、ビゲンの後継として開発され、某ゲームで有名となったサーブ39「グリペン」で知られる。また旅客機市場に参入していた時期もあり、双発ターボプロップ機の「サーブ340」やその発展型の「サーブ2000」を開発している
*49 これは開発に際してスウェーデン軍が戦時下に設置する高速道路を滑走路代わりにした航空基地で運用できることを求めたため。この能力は後継機のビゲンやグリペンにも受け継がれている
*50 ドラケンの製造時期は1955年~ストーリー開始2年前の1977年。マッコイの言う通り、1980年頃である当時は後継機J37 ビゲンに生産が移行していた。そのビゲンは当時既に最新鋭機という程ではなく、こちらもデルタ翼機なので素直にそちらを調達すれば良かったようにも思えるが、サーブ社自身は輸出に積極的だったものの典政府の方針と米政府からの圧力で輸出に厳しい制限が掛かっていたため、どの道入手は難しかったと思われる。
*51 1912年創業。第二次大戦中は双発戦闘機・P-38「ライトニング」の開発を手掛けるなどして躍進し、戦後は後述するF-104や当機C-130の他にも高高度偵察機・U-2「ドラゴンレディ」、超大型輸送機・C-5「ギャラクシー」を手掛けている他、精鋭開発チーム「スカンクワークス」を通じ、F-117「ナイトホーク」や「航空支配戦闘機」ことF-22「ラプター」といったステルス戦闘機やマッハ3級超音速偵察機・SR-71「ブラックバード」を開発した。その後1996年にマーティン・マリエッタ社と合併し「ロッキード・マーティン」となり、現在はF-35「ライトニングⅡ」の開発製造などを行っている
*52 1920年に「ホーカー・エアクラフト」として創業。1960年にデ・ハビランド、フォーランド、ブラックバーンを買収。1977年にブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーションと合併し国有企業「ブリティッシュ・アエロスペース」となる。
*53 少なくとも劇中では「ハリアー」と呼称されているが、F-4やF-5も「ファントムII」「タイガーII」などとは呼ばれておらず、単に「ファントム」「タイガー」と呼ばれているため、呼称だけを根拠に初期型ハリアーであると断言はできない。ハリアーIIの米軍での運用開始は本編の数年後である1985年であるため旧ハリアーである可能性が高いが、上記にも下記にもある通り本作には史実では運用開始前の航空機がいくつか登場しているため、これもそうでないとは言い切れない所がある。
*54 グレッグ自身もこの当時は砂漠空母の捕虜になっており、どの道砂漠空母との決戦には参加できなかった
*55 しかもシン達が脱走した際に強奪したF-18は2機のため、最大2機分強請り取られた可能性がある
*56 F-5Eは推力13kNのJ85双発で推力26kNなのに対し、F-20はF404単発で49kNである。
*57 ただし当初は輸出規制の関係や後述の台湾への売り込みで中国との関係を考慮し最新鋭機を売るわけにはいかなかったのであくまでF-5系統扱いとされていた
*58 1914年創業。1960年にホーカー・シドレーに吸収合併される。
*59 というのも英海軍の通常空母が1978年に全廃されてしまったため。そのため、当初よりキャンベラ爆撃機の後継として導入していた英空軍が海軍所属機を引き取って運用を続けた
*60 森林部に一旦降下した後に木々を縫って低空を飛行、降下地点から離れた場所まで移動する事で、本来の拠点の位置を攪乱する欺瞞作戦
*61 米軍機の型番のFはFighter、即ち戦闘機を意味する。BはBomberで爆撃機の意
*62 東京大空襲を生き残った日本人がB-29を愛機としている様なものである。
*63 ソビエト連邦では輸出用も含めて1985年まで生産が続けられた。ソ連での生産が終わって以降も、中華人民共和国が2017年まで生産を続けていた。これ以外にも、チェコスロバキアとインドがライセンス生産を行った。
*64 コレ以前のF-13とかは固定装備だったが、PFM周辺の機体に関しては固定装備されておらず、胴体下に専用のガンポッドを搭載する必要があった。その後MiG-21SM/-MFで再び固定武装にもどっている。
*65 現実世界においても、ルーマニア空軍のMiG-21をイスラエルのIAIが近代化改修している。(インド空軍のMiG-21bisの近代化改修は、ロシアが行った。)
*66 1916年創業。第二次大戦期は日本への戦略爆撃や原爆投下を行ったB-29「スーパーフォートレス」の開発製造を行ったことで知られる。戦後はB-52の様な大型ジェット爆撃機を手掛けた他、その経験を活かしそれまで劣勢だった旅客機市場においてジェット旅客機「ボーイング707」を送り出して大成功を収め、その後も短中距離用の「ボーイング737」や『ジャンボジェット』こと「ボーイング747」などを送り出し、世界的な大手旅客機メーカーにのし上がった。現在もその地位は健在で、ヨーロッパのエアバス社と激しい市場競争を繰り広げている
*67 イギリスでは、B-52の同輩に当たる3V爆撃機(ヴィッカース ヴァリアント、ハンドレページ ヴィクター、アヴロ ヴァルカン)がいずれも空中給油機に改造されている。
*68 他にも降着装置はF-16、エンジンはF-18、油圧はA-6などが流用されている
*69 さすがにそこまで建造が進んでいるなら就役させられているのでないのか?というツッコミは野暮であろう。原子力空母は建造だけでなく運用にも多大なコストを要するため、「『作ったところで使い続ける事ができない』と判断され完成目前で計画中止となった」とも考えられる。
*70 原子力空母や原子力潜水艦と違い周囲の海水による冷却が出来ない
*71 劇中ではグレッグが地上空母に至近距離まで突っ込み、甲板上ギリギリを通り過ぎるという挙動を取った事があるが、「データ不足によりこの様な型破りなパイロットには対応できない」と十分な防空ができなかった。
*72 300tの爆薬とは、単純計算でB-52爆撃機10機分の爆弾と同等である。
*73 もし核を積めば、理論上イタリア半島を丸ごと消滅させられるとされる。
*74 劇中で、対空地雷を回避するために高度10000フィート(約3000m強)まで上昇するという旨の台詞がある。
*75 当然ながら新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』ではなく、その元ネタとなった1950年代のラジオドラマの方である。

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