禁止カード(スタンダード)

ページ名:禁止カード_スタンダード_

登録日:2017/03/20 Mon 22:47:09
更新日:2024/02/06 Tue 10:44:17NEW!
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mtg tcg 禁止カード スタンダード 構築 シナジー バランス崩壊 凶悪コンボ発見 所要時間30分以上の項目 一覧項目 存在否定



ここでは、Magic the Gatheringのスタンダードフォーマットにおける禁止カードについて述べる。



まえがき――フォーマットとローテーションについて

マジックの禁止カードはフォーマットと深い関係がある、と禁止カード(MtG)では触れているが、スタンダードの禁止カードを述べる上でもうちょっと補足しておく。
というのもフォーマットやローテーションというのはマジックをやっていれば常識だが、他のTCGのプレイヤーにはイマイチ掴み辛い概念でもあるのだ。遊戯王とかには無いしね。
復習も兼ねて、ここはそもそもの始まりの話から書き起こしたい。


むかーしむかしあるところに、…では流石に古すぎるが、それでもかなり昔の話。時期としてはマジック最初のエキスパンションが発売された頃。もう二十年以上前のお話である。


このころのマジックにはフォーマットという概念は存在せず、レギュレーションも「公認構築」の一種類しかなかった。
だが、マジックのカードセットが年々増えてくると、カード資産の関係上新規参入者が辛いという事情が現れてくる。
そこでマジックのカードゲームは、Type1(現ヴィンテージ)とスタンダード(Type2とも)に分離され、スタンダードにはローテーションの制度が設けられた。
要するに「新セットが発売される度に、古いセットは使えなくなるよ」という制度である。新セットを売りたい商売との相性もいい。
これにより、古参と新参との差をある程度減らし、古いカードも使いたい人はType1へという構図が出来上がったわけだ。


こうした古い時代にも規制されたカードというのは存在した。全ては黎明期、何もかもが手探りだった時代に作られたものであり、参考にすべき先例さえ存在しなかった時に作られたものなのだから、これはまぁ止むを得まい。
ただし、規制は制限カードという形でのみなされた。「一枚だけなら使えるから」という苦しい言い訳説明が成り立つからだろう*1


だが、これらのカードの多くはデッキを問わない汎用性を誇るぶっ壊れカードばかりであり、やがてどんなデッキにも(一枚ずつの)それらのカードが入ってくる事態となった。"パワー9"という呼称も本来はそうした時代の風潮に由来する*2
また「そういうカードを入れられないデッキでは勝てない」という事態も引き起こした。
ちなみに上記の公認構築で行われた唯一にしてマジック史上初の世界選手権で優勝したデッキには当時の制限カードが片っ端から詰め込まれている。
デッキ名「宝石箱」とはよく言ったものである。逆から言えばそれらのカードを持たない人には辛い環境であっただろう。


やがて時が経ち、上記のパワー9などもローテーションなどで徐々に整理されていくが、一部のぶっ壊れカードはそれなりに後々まで残っており、それらは制限カードとして猛威を振るい続けた。ネクロの夏での《天秤》トップデッキなどの逸話は、こうした事情が背景にある。
天秤も制限カードであり、一枚しか入れられなかったのだ。だからこそここぞという場面でのトップデッキが今でも話に上るわけだが。


が、「ぶっ壊れカード一枚でちゃぶ台返し」というのはあまり美しい話ではない。「引いた者勝ち」では「腕より運」となってしまい、それは頭脳ゲームを自称するTCGの理念に反する。高額賞金で争われるトーナメントなら尚の事。
制限カードには「引き勝負」「引いたもん勝ち」という負の側面が存在するのだ。


こうした観点からWotCはスタンダードにも禁止カードを導入。ぶっ壊れカードの整理も進み、環境は平和を取り戻したか…に見えた。


ちなみにこの時期に禁止指定されたカードは《チャネル》《精神錯乱》《露天鉱床》《天秤》《黒の万力》《象牙の塔》《土地税》《Zuran Orb》。
いずれも別のフォーマットで禁止経験のあるカードたちである。
現在のレガシーでも前から4枚は未だ禁止のままである。



スタンダードの禁止カードの特徴

さてここからが本題である。
だが、その前にまず確認しておきたいことがある。先に「禁止カードというのは製作会社にとって出したくないもの」と書いたが、
そうした意思はスタンダードにおいて特に強い。


その理由は、

  • 最も競技人口が多い
  • 現在発売中のブースターパックを利用して行われているしシングル売買やトレードも盛ん
  • そこで環境を荒らしたり、価値を大幅に下げる禁止カードなんて出したらプレイヤーからの反感は物凄いことになり小売り店も尋常ならぬダメージを受ける
  • 結果人が離れたり禁止を恐れて買い控えが発生するなど会社が被るダメージが半端ない
  • そして責任者は社長室送りの刑になる。んでコラムという名の反省文を書かされる。場合によってはバスに轢かれるかもしれない

からである。


ただ、そんな状況下でも強すぎるカードというものは学習能力が無いせいである程度のインフレを伴う強さがなければ売れないカードゲームの宿命にある以上、やっぱり印刷されてしまう。
そこで開発側は、禁止カード候補への露骨な対策カードを出して誤魔化したりもするのだが、それでもどうしようも無い場合もたまにある。○○の冬とか夏なんてつく時は結構な確率でどうしようもないときである。
ところが環境を整えるために禁止カードを乱発したら、今度はシャークトレードが横行したとか*3ぶっ壊れカードを規制したら残りが暴れたとか、悪い逸話には事欠かない。
そもそも黎明期のぶっ壊れカードを除けばスタンダードで禁止カードが出ることはありえないとプレイヤーもWotCも思っていたフシもある。ウルザ・ブロックの頃までは。


その後戦乱のゼンディカー+イニストラードを覆う影+カラデシュ期に3枚の禁止カード(後述)が出て話題になったが、
このときには「極端なオーバーパワーなカードしか禁止しない」から「ある程度のオーバーパワーは許容するが、トーナメントシーンの多様性をあまりに歪めるカードは許さない」という思考にスイッチしたという部分が大きい。
ただ「禁止は10年に1枚くらいに抑える」という目標は変わってないとされているので注意。
流石にタルキール龍紀伝+マジック・オリジン+戦乱のゼンディカー+イニストラードを覆う影期の「カンパニーほぼ1強環境」でも禁止カードを出さなかったのを反省したらしい。
この時期は禁止カードこそ出なかったがスタンダードにおけるメタゲームが完全に固定化された時期でもあり、「スタンダードのローテーション間隔の変更*4」などもあってプレイヤー離れが進んでしまった。


確かに、禁止カードは出ないに越したことはない。しかし禁止カードが出ていない環境が無条件に楽しいのかというとまったくそうではないことは忘れてはいけない。


カラデシュ+アモンケット+イクサラン期に一気に4枚出た時は
「Tier1で他のデッキにまんべんなく強い【ティムール/スゥルタイ/4Cエネルギー】、そしてエネルギーに不利だが他デッキにさらに強いことで喰らいつけた【ラムナプレッド】という2つのデッキがあまりにも勝率が高すぎてデッキの選択肢が無くなる」
というアナウンスと共にこの2デッキのキーカードが一気に規制された。
この表明を見るに、スタンダードもモダン同様に環境を支配するデッキ、もしくは4ターン目で大勢が決まるデッキが規制対象とする方針が固まった模様。
ちなみにこれで1年間で9枚の禁止カードを出したことになる。10年で1枚どころか1年で9枚の禁止カードを出したウィザーズの明日はどっちだ。(2020年追記:だめでした…)


その後はラヴニカの献身あたりまでは禁止になるようなカードも出ず平和な環境が続いていた(おかしいパワーのカードが無いとは言ってない)が、
スタンダードのパワーを引き上げる目的で灯争大戦以後はスタンダードのみならず下の環境でも通用するようなパワーカードが多数作られるようになり、
最終的にラヴニカの献身~エルドレインの王権から合わせて1年間で10枚の禁止を出す大惨事再びとなった。相棒10枚のルール変更も加味すればさらに多い。
一応フォローを入れておくと、その内の何枚かはこれまでの基準であればスタン落ちを待っていいはずだったが、ソーシャル・ディスタンスの影響でデジタル上でのゲーム、特にMTGアリーナがこれまでの紙のゲーム以上に活発に行われていた*5ため、スタン落ちを待たずにテコ入れするべき、という判断をしたとのことである。


その後ローテーション後にも禁止カードが立て続けに出てしまい、信頼が揺らいでいるというのが現状。
特に《記憶の壺》の記録を21年ぶりに塗り替えた《創造の座、オムナス》の禁止は、その少し前に行われた《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の禁止とともに「スタンダードでもいつ何が禁止になるか分からない」という風潮を生んでしまうことになった。


この朝令暮改的な禁止カード制定の理由は、公式の説明にあったデジタル上でのゲームの増加に加えて、特にMtGアリーナではカード1枚ごとの価値が好きなカードの生成に使えるワイルドカードの存在によって等価であるためTier1のデッキを組むのが最適解というゲームシステム上のテーブルトップとの差異もプレイヤーから指摘されている。
一部のプレイヤーからは同時期の壊れメカニズムであるデュエル・マスターズGR召喚や限定商法など他のウィザーズのやらかしも合わせて「社長を禁止にしろ」という声まで上がる始末。


こうした禁止改定の方針やそれに対する意見は紙とMTGAどちらを中心にプレイしているか、どういうプレイスタイルかによって異なる部分も大きく、もはや正しい答えというものは存在しないに等しい。
どちらにせよ、多様なカード、デッキが使われる環境が維持され、禁止カードが出ないに越したことはないが……


禁止カード一覧

  • 《精神力/Mind Over Matter》

マジック最大の失態、【MoMa】のキーカード。
手札を捨てるとパーマネント1つをタップもしくはアンタップ出来る。
このカードを禁止にすると【MoMa】というデッキそのものが消えてしまうため、他のマナ加速カードやドローカードを禁止にすることでこのカード自身の禁止指定を避けようとしたフシがある。
が、再三の禁止改訂&スタンダード落ち&ルール変更でパーツが無くなっても代用カードを使って【MoMa】を作ろうとする諦めの悪いプレイヤーがいたためついにこのカード自身がお縄に。
ちなみに暴れたのがウルザ・ブロック参入後、【MoMa】のパーツも大半がウルザ・ブロックのものなので勘違いされやすいが、このカードはテンペスト・ブロックのエクソダス出身である。


  • 《水蓮の花びら/Lotus Petal》

効果は三分の一でもLotusはLotusでした。
超優秀なマナ・アーティファクトで、上記アカデミーとも相性バツグン。
ちなみにこいつはテンペスト出身。このカードがなぜかコモンな辺りテンペストブロックもかなりおかしい。


  • 《ドリーム・ホール/Dream Halls》

全ての呪文を「色の合っている手札1枚をピッチコストにする(同色の手札を捨てること)」で唱えられる意味不明なエンチャント。アカデミー禁止後の【MoMa】で悪用された。
もちろん足りなくなるはずの手札は《時のらせん》と《意外な授かり物》で補充される。
レガシーでも禁止解除当時に少し使われたが、無色故にこのカードで踏み倒せない《エムラクール》の登場で下火に。
今では《実物提示教育》によって10マナを踏み倒して出てくる《全知》のせいでほぼ見ることは無いのだが、5マナと素出しもなんとか出来るレベルなので、【Show and Tell】系に数枚入っている事も。
実を言うとウルザブロック前にこれと《精神力》を使ったデッキが考案されてはいたのだが、上記のドローソースの不足により形になることはなかった。


項目参照。【クラフト】系無限コンボの根幹。


  • 《繰り返す悪夢/Recurring Nightmare》

《適者生存》と合わせた【ナイトメア・サバイバル】のエンジン。
なおかつウルザ・ブロック参入後はフリースペルによる無限ループまで仕込めた…が、「相方のほうを規制すべきだった」との声もちらほら*6
ルール的にプレイミスがなければ「このカードを唱えて着地→即起動→コストで手札に戻る」の間に相手が割り込めるタイミングがないため、相手は置物破壊で対応することが出来ない。そういった対処のしづらさも原因かもしれない。
ちなみにこのカードも含めたテンペスト・ブロックの禁止カードも5枚。ウルザ・ブロックの陰に隠れて目立たないが、こっちもやっぱりぶっ壊れである。


項目参照。マジック最大の失態、最初期の【MoMa】の動力源。
自分のアーティファクトの数だけ青マナが出る、マジック最強のぶっ壊れ土地。ウルザブロック壊れカード筆頭。
禁止された理由はご存知【MoMa】のせいだが、それがなくても正直許されていなかったであろう性能のカードである。


  • 《時のらせん/Time Spiral》

マジック最大の失態、【MoMa】のドローソースその1。
パワー9の1つである《Timetwister》を元に、マナコストを倍にしてみたがフリースペルだったせいで元のカードの「強化版」扱いに…さすがウルザブロック。
使いやすさは流石に本家のほうが上だが上記アカデミー他のせいで強化点ばかりが目立つ結果に。


  • 《意外な授かり物/Windfall》

マジック最大の失態、【MoMa】のドローソースその2。
一応これも《Wheel of Fortune》の調整版という扱いなのだが色のおかげでやっぱり元ネタより扱いやすい。【MoMa】のパーツのうち今もレガシー・ヴィンテージで規制されているカードは上記《トレイリアのアカデミー》とこのカードのみといえば壊れ具合が分かるかと*7
ちなみに開発部、【MoMa】のようなデッキをテストプレイで回した時に、このカードと上記の《時のらせん》を失念していて「先に手札が尽きるから大丈夫」とかぬかしていたらしい。馬鹿か。


  • 《記憶の壺/Memory Jar》

瞬殺コンボデッキ、【メグリムジャー】のドローソース件フィニッシャー。
というか単純に7ドローはおかしいと気づいて欲しい。前のエキスパンションに2つも7ドローカードがあるのに…。同じエキスパンションに入っている《修繕》のせいでもあるが。
発売後すぐ*8に禁止入り。スタンダードで使えた期間は当時の最短記録であり、その後も20年以上破られなかった。さすがウry


  • 《波動機/Fluctuator》

サイクリングコストを不特定2マナ軽くするアーティファクト。
当初サイクリングコストは全て不特定2マナだったためこれをコントロールしていれば全てタダでサイクリングできてしまう。
手札を片っ端から墓地に送ってデッキを掘り進めて《生ける屍》で蘇生する【波動機リアニメイト】なるデッキを生み出す。さすがウルザ…、と言いたい所だが、活躍の機会は他より少なめ。当時禁止するほどか?とは言われたがサイクリングのコンセプトが壊れるので致し方なしか。
今ではモダンにて「軽量サイクリングクリーチャーで墓地を肥やした後、適当な続唱呪文から《死せる生》をめくってちゃぶ台返しする」という、挙動自体は変わらない【リビングエンド】が生き残ってるぐらいなので、WotCもサイクリングの本来の使い方を忘れている模様。


項目参照。最凶の装備品。
本当に極々最小限のコストのくせに極悪ドロー性能を持ち、凶悪速攻デッキ・【親和】の息切れ防止のほか、ほとんどどんなデッキでも採用された。というかクリーチャーが多めのデッキなら入れない理由がない。さすがミラディン・ブロック。
コイツを規制したら【親和】も止まるかかと思いきや…


  • 《電結の荒廃者/Arcboud Ravager》

親和】参照。親和を超強化した最強の0/0クリーチャー。
除去されそうなアーティファクトを+1/+1カウンターに変えてしまう。接合持ちなのでこいつに除去を撃ってもムダ。
アーティファクト除去を使うと損という状況を生み出し、名前の通りスタンダード環境をズタズタに荒廃させた。さすがミラディンry


  • 《大霊堂の信奉者/Disciple of the Vault》

【しんw(ry】。
コモンクリーチャーにも関わらず禁止指定された史上初のカード*9。さすがミ(ry
中身は凶悪ダメージソース。上記の荒廃者や《エイトグ》との相性は最高。頭蓋骨絞めと合わせれば2ドロー1点ロス。コモンの能力じゃねぇ!
【親和】は速攻ビートダウンなのにこいつのせいで軸をずらした攻めが無理なく出来るようになり、攻勢を維持することが可能に。
出た当初から評判が悪かったこいつらを長い間放置したため【親和】は猛威を振るい続けた。


  • 《大焼炉/Great Furnace》、他アーティファクト土地計6種すべて

【親和】の基盤。直接のカードパワーはないが蔓延びすぎた【親和】を環境から落とすために禁止行きに。
こいつらまで禁止になったせいで、ミラディン・ブロックの禁止カードは過去最多に…
ちなみによく使われていたのは青・黒・赤の出る土地だったため白と緑と無色はとばっちりとも言われる。しかし開発陣によると、当初は《ダークスティールの城塞》だけ使用可能とする予定だったのだが、その状態でテストプレイしても親和デッキが強すぎたとのこと。これでは全面禁止もやむなしである。
《ダークスティールの城塞》だけは基本セット2015に再録され「初の禁止カード再録*10」と話題になった。
勿論その時期のスタンダードでは禁止指定されていない、某ハサミのせいで5/5破壊不能とか頭悪いのに悩まされたが。


項目参照。通称「一万円札」
スタンダードを【Caw-Blade】だらけにしたのが直接の原因とされているが、ぶっちゃけカウブレ抜きにして単純にカードパワーがおかしい。場に着地したが最後、プレイヤーの精神は好き放題刻まれるハメに…。
カウブレ以外にも色々なデッキに投入されており、青赤緑ターボランドや青絡みのコントロールデッキに投入されていた。
カウブレードが最終的に一番上手に扱えたというだけのことだったりする。


モダンでも当初禁止されていたが、解禁された。その後のインフレで「なんだかんだ丁度いいパワーレベル」と言われることに。
しかし値段は今でも高い。とはいえ「4マナは重い」とか言われ、下記のオーコなどに立場を奪われるとともに少しずつ下がってはいる。


上の万札と同罪。こちらも項目を参照のこと。
登場時こそ微妙だったが、次のブロックで出た強力装備品のせいで一気に日の目を浴びてそのまま還らぬ人となった。
そもそもそういうカードとしてデザインされたので、ある意味仕方ないことでもある。
当時のワールドウェイクは「ジェイスくじ」と呼ばれ、大当たりを求めてこぞってプレイヤーが買った。そのジェイスくじの価値を後半期に一気に高めたのがこのカードで、ワールドウェイクのパックが定価より高く売られて、それでも売り切れが続出したほどである。
おかげで他のレアカードは相当に叩き値で売られたらしい。


今のモダンやレガシーでも「2マナ最強生物四天王*11」の一角とされている。
エクステンデッドで行われるプロツアー前にMagicOnlineの環境で【青白石鍛冶】というデッキが流行りまくっていたので、「禁止カードを出す」か「フォーマットを変える」かを迫られてプロツアーのフォーマットがモダンに変更された、という噂話もある。……どちらかというとエクテンの過疎が決め手のようだが。
エクテンどころかレガシーでも【青白石鍛冶】はデッキタイプとして生き残ってる。まあエクテンでも最終的には禁止されたんですけどね。まあ下記のオーコと相性が悪くて押され気味であるが。


ちなみにこっちも後にモダンでも解禁された。かつての友である《殴打頭蓋》とともに白系のデッキで往時と変わらない活躍を見せている。


  • 《反射魔道士/Reflector Mage》

5年半ぶりの禁止カードの一角。
戦乱のゼンディカーで登場した白青の人間・ウィザードで、戦場に出た時に相手クリーチャーをバウンスし、次の自分のターンまで同名カードを唱えられなくする効果を持つ。
登場時から【バント・カンパニー】における除去要員として活躍しており、それらのパーツが落ちたあとも【白青フラッシュ】に採用されていた。
そもそもこの【バント・カンパニー】(または類似の【バント・人間・カンパニー】)というデッキは異常なまでに強く、
タルキール龍紀伝とイニストラードを覆う影を同時に使えた頃は「【カンパニー系】と【黒緑昂揚】デッキ以外は息をしていない」とも言われていた。
環境末期は【カンパニー】だけで70%を占めていたとも。
その後タルキール龍紀伝とオリジンがスタンダードを退場した後も、【白青フラッシュ】が一部のデッキ(主に【昂揚霊気池】)以外は有利に戦えるため環境トップの一角であった*12


【白青フラッシュ】を抑えるため、市場調査で「最も嫌いなカード」「プレイしていて楽しくないカード」とされたこのカードが禁止となった。カンパニー時代の前科が響いた形か。
下記の《回転翼機》が使用率高すぎで禁止、《終末エムラ》が不愉快過ぎるので禁止と決まった後に、環境トップの【白青フラッシュ】弱体化のために選ばれたのがこのカードらしい。
また、このカードの存在は「4マナ以上のファッティは、CIP能力・速攻・瞬速・呪禁のいずれかを持っていない限りゴミ」という風潮を生み出していたので楽しくない・嫌いなカードとされてしまうのも致し方がないだろう。あと見逃してしまった【サヒーリコンボ】の抑制のためとかいう噂もある


余談ながら、イラストがなかなか立派なハゲである。反射と言っているが魔法だけでなく本人も反射している。
ヴィンテージで制限カードになった《僧院の導師》も含め、この時期から「MTGはハゲが強いゲーム」という風潮が出始めた。一部では「プレイヤーもハゲてたほうが強くなる」とか。やめてくれよ…
実はテフェリーが元祖というわけではない。
剃りこんではいるがハゲではないテフェリー*13がハゲ呼ばわりされている理由のひとつは、この時期の流れが脈々と受け継がれているというのがある。


  • 《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》

同じく久しぶりのスタン禁止カードの一角。
イニストラード再訪時に他二柱に遅れて現れた第二のエムラクール。


こちらは最初の方の自分の追加ターンとは違い「次の相手のターンを唱えたプレイヤーの思い通りに動かす」というものになっている。
一応立て直しの為の猶予として相手に追加ターンを与える能力が付いているが、大体立て直しも効かないくらいの被害を貰うのであってないようなもの。というか追加ターンがなければ相手をフルタップに出来てしまうので強すぎる。《精神隷属器》という前例もあるし。
飛行を持っているのは同じで、色の付いた呪文へのプロテクションはインスタントだけになり、滅殺は失って代わりにトランプルを得た。打ち消し耐性は無くなっている。
13マナと莫大なコストを持つが、イニ影ブロックで登場した「昂揚」に近いコスト軽減能力を持つので適当に呪文を唱えていれば大体9マナくらいで出せる。昂揚に特化したデッキなどでは8マナ、最大6マナで飛び出してくる
カラデシュ参入後は《霊気池の驚異》というコスト踏み倒しカードも出てきて最速4ターンで呼ばれることも。
そして着地したら最後、相手にターンのコントロールを奪われる前に処理しなければならないのに、プロテクション(インスタント)のせいでスタンダード環境ではほぼ対処できない。
そんなカードが許されるはずもなく久しぶりの禁止カードに。


ちなみに禁止になった際の記事は、そのあまりのポエムっぷりから語り草となっている。説明をしろ


  • 《密輸人の回転翼機/Smuggler's Copter》

久しぶりスタン禁止カードの最後。1度に3枚も禁止カードが出るとは…
カラデシュの目玉である機体*14)の一つ。こいつはパワー1になるようにタップすることで2マナ3/3のクリーチャーになり攻撃かブロックしたとき限定のルーター能力を持つ。
非常に強力だがこれは開発が意図的に作ったものであり想定の範囲内であった…


が、カラデシュ発売後最初のStarCityGames Openでトップ8に残ったデッキ全てに4積みという何処かの青い万札みたいな事をやらかす。その後のプロツアー「カラデシュ」でもトップ8に16枚。その後のグランプリでもトップ8に32枚。
無色であり色を問わないこと、高いマナレシオ、腐りにくい上に戦闘に参加するだけという緩い条件で誘発するルーター能力、軽い搭乗コストなどの理由により、トップメタのビートダウンデッキには当然のように4積みされる状態に。
「まずはこのカード4枚から」という状況は構築の幅を狭めるためわずか3ヶ月と少しで禁止になってしまった。
これはかの《頭蓋骨絞め》の4ヶ月ちょっとを上回るものである。上には《記憶の壺》とか《トレイリアのアカデミー》とか《意外な授かり物》しかない。
また、公式のコラムで「次のセットに回転翼機への対策になるカードが用意されているよ」といったことを書いていたにもかかわらず、そのセットが出る直前に禁止カード指定されてしまったという点もツッコミどころである。


この3つが禁止されてしまった背景には最近のMtGのデベロップにおける「受けるカードを弱くしすぎる」「ミッドレンジ偏重」「そのセットのテーマへのクリティカルな対策カードは収録しない」等といった方針があると言われている。
事実墓地対策やアーティファクト対策、起動型能力対策があればエムラクールや回転翼機は禁止を免れたかもしれない。


  • 《守護フェリダー/Felidar Guardian》

4マナ1/4で、戦場に出たとき自身以外の自分がコントロールするパーマネントを追放しすぐ戦場に戻す、いわゆるブリンク能力を持つクリーチャー。登場はカラデシュブロックの第二セット「霊気紛争」。
危険性を認知できる筈がスルーされてしまった前代未聞のカード。詳しくは後述。
別にこのようなカード自体は過去にも《修復の天使》などが存在したが、対象が限定されないこと、ターンエンドではなく即座に戻ってくると言うのはかなり強かった。しかもこのカードはクリーチャーであり、自身サクッたりする必要もないため再利用が非常に容易である。
そのままでも色々なコンボや面白い使い方ができそうなカードではあるが、その中でも霊気紛争の直前セットであるカラデシュで登場していたプレインズウォーカー《サヒーリ・ライ》との相性が良すぎた。
具体的には《サヒーリ・ライ》の-2能力で速攻を持った《守護フェリダー》のコピートークンを出し、そいつが出たときの能力で、先程能力を使ったサヒーリをブリンクする。するとこのサヒーリは「先程能力を使ったものとは別のサヒーリとされる&戦場に出たばっかりのため忠誠度が3に戻る」ため再び-2能力を使うことが出来る。
つまり無限に速攻持ちのトークンが湧く。サヒーリは3マナなので、下手したら4ターンでパーツが揃う。
しかもフェリダーを先に出していても後からサヒーリでトークンを作ればコンボ開始、先にサヒーリを出していてしかも能力を使ってしまっていてもフェリダーを出してサヒーリをブリンクすればコンボ開始出来る。どちらを先に出していてもコンボに入れるという柔軟性もあった。
このコンボは守護フェリダーが収録された霊気紛争のスポイラー発売当時から注目され、【コピーキャット】や【サヒーリコンボ】と呼ばれすぐにデッキが考案され、実際トップメタに君臨した。
誰が言ったか「現代に蘇った【欠片の双子】*15
デッキの自由度が高いのも特長で、コントロールに寄せたもの、色を足してフェリダーの能力でブリンクして得をするカードを増やしたものなどが出てきた。プレインズウォーカーを大量に入れてコンボをブラフにして戦うものも。


それでも環境最上位はスピードで上回る【マルドゥ機体】や、同デッキにマナを使い切っていてもコンボを阻止出来るサヒーリ殺すロボ《歩行バリスタ》を組み込んだ【マルドゥ・バリスタ】などが存在していた。
それらが【サヒーリコンボ】に有利がついていたおかげである程度は抑制されており、実際にプロツアー「霊気紛争」では上記のデッキにボコボコにされ、戦績は惨憺たる物に。
結局3月の改訂では禁止になることはなく、その後4月の改訂も潜り抜けた、はずだった。


ところで霊気紛争の次のセットであるアモンケットからは紙の発売日よりも早く、発売週の月曜日からMagic Onlineで新セットのカードが使えるようになった*16
そこで新セットが参入した後の環境を調査した所、勝率トップクラスデッキに占める【サヒーリコンボ】の支配率が40%に到達。前環境で最強デッキだった【マルドゥ/4C機体】デッキよりも高いことが判明した。アモンケットでサヒーリコンボが色々手に入れたのに機体はあまり強化されなかったのが原因。
これでは本発売した際に環境を歪める可能性が高いとして、本来の改訂日の2日後に急遽禁止カードに追加指定された。
本来の改訂日以外に禁止・制限に指定されたのはPauperの《流浪のドレイク》以来。スタンダードに限ればかの《記憶の壺》以来18年ぶりのことである。


ちなみにこのようなコンボが環境に放たれた理由が「《守護フェリダー》をデザインする際にサヒーリを見落としていたから」とのこと。
3枚コンボまでは確認し大丈夫と判断したらしいが、1つ前のセットに頭が回らなかったようだ。アホらしい話である。
このカードの反省からか、以降のブリンクを行うパーマネント・カードは帰還にタイムラグを設けるようになっている。
新環境になってからたった2日で判断したことに対しても議論がある。また、特に本来の改訂日以外に禁止を追加したということについては圧倒的に批判の声が上がった。
当時2000円前後していたサヒーリ(とフェリダー)を購入した人たちへは、緊急で払い戻しをするショップまで現れるほどであった。
ただし全てのショップが払い戻しをしたわけではないし、まさか緊急禁止なんてあるわけがないと思っていたプレイヤーが、禁止後すぐの大会でサヒーリコンボを使ってしまい顰蹙を買うなど、ゲーム外の部分でもいくつかの悲劇を生んだ。


  • 《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel》

通称「6連ガチャ」「CR霊気池」。特定の行動で貯まる「エネルギー・カウンター」を消費して、ライブラリーの上6枚の中から1枚をマナ・コストを払わずに唱えられるという、所謂マナ踏み倒し系カード。このカード自身は4マナ。
4マナ、インスタントタイミングで起動可能、6枚見て踏み倒し。以前に見た気がするのは気のせいではない。
登場直後は上記の《約束された終末、エムラクール》を踏み倒す為に使われていた。しかし青いデッキに弱かったので一時的に衰退した*17ものの、その後エムラクール自体と相性の良い昂揚要素とハイブリッドしたものが登場。結果エムラクールが禁止されてしまった。
それでもフィニッシャーが「10マナ10/10破壊不能、唱えた時パーマネントを2つ追放し、攻撃時に相手のライブラリーを20枚追放」という《絶え間ない飢餓、ウラモグ》に差し替わったものが登場。
エムラクールに比べれば、自身のマナ軽減が出来ないが故に手札に来てしまい、ガチャも唱える事も出来ない大惨事というリスクが高いものの、
「最速で霊気池の驚異設置&起動→ウラモグを引き当てて土地を2枚吹き飛ばす」はスタンダード環境ではオーバーパワー。
それでなくとも攻撃されるたびにライブラリーが20枚吹っ飛ぶので、チャンプブロックで時間稼ぎ出来ないのもしんどい。
当初こそ【サヒーリコンボ】などとのハイブリッドデッキが少々存在する程度だったが、メタゲームの成熟により環境が遅くなったことで復権を果たした。
その後アモンケット参入時に【サヒーリコンボ】が上記禁止改訂で消滅。新カードを手に入れたこのデッキは強化され、プロツアー「アモンケット」では優勝こそ逃したもののトップ8の半数を占める事態に。
その後、【霊気地の驚異】の占有率や勝率は絶対的ではないものの、上記の「4ターン目ウラモグ」を10%弱の確率で発生させてしまうことはあまりに面白くないし、健全でもないということで禁止されてしまった。3、4ターン目に土地が2枚もふっとばされれば勝負にならないし。
前回はエムラクールの禁止という形で終わったが、今回は自身が禁止されてしまった。


なお禁止の際に「《霊気池の驚異》と《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をエネルギーを使う強力なクリーチャーに入れ替え、《炎呼び、チャンドラ》を《反逆の先導者、チャンドラ》に交換すれば、
【ティムール霊気池】と【ティムール・エネルギー】は事実上同じデッキです*18。」
という、もはやどこから突っ込んだら良いのかわからない一文があった。
当時は禁止の連発もあり相当叩かれた文章であったが、「事実上同じデッキ」であったことから次の禁止が出てしまったと揶揄される羽目に。


  • 《霊気との調和/Attune with Aether》

緑1マナでライブラリーから基本土地をサーチ、さらにエネルギーカウンターを2つ得ることが出来る。土地サーチだけの《地勢/Lay of the Land》の上位互換。


上記の霊気池の驚異が禁止された後に、それらのパーツを用いて出来上がったのが【ティムール・エネルギー】であった。
元々近年のセットの中では強いと評判のカラデシュ、その中心的なメカニズムであるエネルギーは霊気池抜きでもやはり強力であり、瞬く間にトップメタに駆け上がった。
さらにメタゲームの関係上、色を追加した【4色エネルギー】や妨害が多い【スゥルタイ・エネルギー】なども登場。特に黒を追加して強力カードをかき集めた【4色エネルギー】は【ティムール・エネルギー】ともにメタゲームの30%を占める程になった。さらにメタゲーム上の努力が行われているにも関わらず、ローテーションを経ても5ヶ月以上環境を支配し続けたのだ。
現環境に存在する強力カードを片端から詰め込んだようなグッドスタッフに対抗できるデッキは存在せず、現存するほぼすべてのデッキに不利にならないという圧倒的な相性を誇っていた*19


そもそもフェッチランドも1マナのマナクリーチャーもない現スタンダードで3色4色のデッキが容易に成立するようになった原因は、このカードと《霊気拠点》というマナ基盤のサポートがあったから。
特にこのカードは手札に応じて必要な色の基本土地を持ってくることが出来るだけでなく、後続が必要とするエネルギーまでも手に入れることができるのだ。これにより《霊気拠点》はエネルギー切れにならずに色マナを出し続け、《牙長獣の仔》や《逆毛ハイドラ》は隙を見せずに着地する。
またサイドボードも各色のメタカードを採用することが可能。ただでさえメインデッキが強いのに、これによりサイドボード後の勝率の高さが保証されていた。
この「隙の無い多色デッキを成立させている」点と「第1ターンから前もってエネルギーを手に入れられる」という点がデッキの選択肢を狭め、ゲームの流れの固定化を招いているとされて禁止カードに指定された。


  • 《ならず者の精製屋/Rogue Refiner》

1青緑の3マナで3/2のボディで、戦場に出た時に1ドローとエネルギーカウンターを2つ手に入れることができる。
WotCが「気前の良い「比率」のカード」と呼ぶ小さい投資で大きい価値を生み出すカード。


禁止理由は上記の《霊気との調和》と同じくエネルギーデッキ。
こちらはわずか3マナでカードアドバンテージを得た上にエネルギーまで供給するという能力が、他のミッドレンジデッキやコントロールデッキが攻勢に転じることを難しくしていると判断された。
《霊気との調和》と同じく他のエネルギーを消費するカードを強化している点もある。
またエネルギーデッキはこのカードを入れるためにデッキを青に寄せることが多く、各種エネルギーデッキが似たようなものになってしまうという点で多様性を狭めていることも禁止カードの理由。


これでカラデシュブロックからは合計5枚。「アーティファクトにフィーチャーすると禁止が出る」というジンクスはまたも続いてしまった。


  • 《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins》

タップで無色1マナ、ライフ1点とタップで赤1マナ、4マナとタップと砂漠1つを生け贄にすることで各対戦相手に2点を飛ばすことが出来る土地。このカード自体がサブタイプとして砂漠の土地タイプを持っている。


スライ系デッキの【ラムナプ・レッド】の名前にもなっている強力な土地。
発生源が土地であるために妨害を受けづらいのが強み。また普通にアンタップインなため早期決着を目指すデッキの方向性に合っている。序盤は普通の土地として使用し、マナが余ってきたりトドメの場面で使う事ができる。
デッキには他の砂漠カードを採用し、先にそちらを生け贄にしていくのが基本となる。


上記の通り【ティムール・エネルギー】の規制が決まったわけだが、もしあちらだけを規制した場合2番手だった【ラムナプ・レッド】が1強となってしまう可能性があった。
実はこのデッキは上記の【ティムール・エネルギー】(と【赤緑《静電気式打撃体》】)以外のデッキに対しては圧倒的な相性を誇っており、ミラーマッチと対エネルギー系デッキを除いた場合のマッチ勝率は驚異の60%だった*20
現実には【ラムナプ・レッド】はエネルギー系デッキに次ぐ2番手の扱いだったが、それはいちばん苦手なデッキが一番流行していたデッキだったと言うだけであり、環境に存在するほとんどのデッキに有利であったのだ。*21


上記の通りこのカードは事実上相手の初期ライフを引き下げるのと同じようなことがあった。
またコントロールデッキは「盤面を完全にコントロールし打ち消しも構えているのに、このカードを引かれて負ける」ということが多く、本来は長期戦に弱いはずのスライ系デッキの弱点を消してしまったことも強すぎると判断された理由である。


  • 《暴れ回るフェロキドン/Rampaging Ferocidon》

2赤で本体は3/3威迫。このクリーチャーが戦場にいる限り全てのプレイヤーはライフを得られなくなり、他のクリーチャーが戦場に出るたびそのコントローラーに1点を飛ばす能力を持つ。
本来は上記の【サヒーリコンボ】への対策として刷られたカードであったが、世に出た頃には《守護フェリダー》は既に禁止を食らっていた。


禁止理由は上記の《ラムナプの遺跡》と同じく【ラムナプ・レッド】。
本来の役割を失ったまま世に出てきたこのカードであるが、3マナ3/3威迫という標準以上のボディと能力を買われてスライ系のデッキに採用された。
しかしその能力がスライ系デッキに対抗する手段として有効な「盤面を埋め尽くしてライフを回復する」という戦略に対して必要以上に効果的と判明。数多のデッキが対【ラムナプ・レッド】として作られていき当初は有利であったが、そのたびにこのカードはサイドの採用枚数が増え更にはメインへも投入されていくことで、本来の相性差をひっくり返してしまったのだ。
結果としてそれらのデッキは衰退していき、上記のような「ミラーマッチとエネルギー系デッキ以外で勝率6割」という事態になったため禁止カードに指定された。


3マナ3/3の除去耐性もCIPもPIGも持たないクリーチャーを禁止にせざるを得ないあたり「対応手段の減少」が深刻であったことが分かる*22


実は次のパックであるイクサランの相克でプッシュされる部族デッキにも強烈に刺さるためそのために禁止カードにされたのでは?と穿った見方をする人もいる。吸血鬼デッキはライフゲインも多いし。


●ラヴニカの献身

  • 《荒野の再生/Wilderness Reclamation》

自分の終了ステップの開始時に自分の土地をすべてアンタップする4マナシングルシンボルの緑のエンチャント。
似た能力の《覚醒》などと違い、自分の終了ステップにアンタップするのが特徴。
ローテーション前は《運命のきずな》と組んで暴れていた。ローテーション直後のエルドレインの王権では【フード(オーコ)】や【出来事】の後塵を拝したが、テーロス還魂記で《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を手に入れたことにより、このカードを軸にした【ティムール(緑青赤)再生】と呼ばれるランプデッキが、【青白コントロール】や【ジェスカイファイアーズ】と頂点を争った。


続くイコリア:巨獣の棲処では《サメ台風》と3色土地が加わり更に強化され、【4色再生】といった派生形も登場した。
その後ライバルであった【ファイアーズ】が禁止により消滅し、必然的にこのデッキがトップメタとなる。2020年のプレイヤーズツアーファイナルでは【ティムール再生】と【4色再生】の2つのデッキで5割ほどになる有様。優勝したのも4色再生であった。なお準優勝は【黒単アグロ】で、赤緑白青vs黒という構図であった。
そんな状況が許容されるはずもなく、ローテーションまで約50日ほどを残して投獄された。


いつも通りならローテーションまで逃げ切ると思われていたが、前述の通り社会情勢によりアリーナなどのオンラインプレイが増えていたために特別措置を取られた。
【死者の原野】、【シミック系フード】、【ファイアーズ】と次々に禁止されていった結果トップとなったデッキであったが、自身も許されるものではなかった。


  • 《成長のらせん/Growth Spiral》

カードを1枚引いて土地を最大1枚まで戦場に出す緑青2マナのインスタント。過去のカードで言えば緑の《Time Walk》こと《探検》が多色化してインスタントになったと言えば良いか。インスタントであるため《探検》と異なり除去やカウンターとの撃ち分けができるという利点がある。


《探検》は強力ではあったが禁止にはならずスタンダードを完走したが、こちらは上記の《荒野の再生》や下記の《自然の怒りのタイタン、ウーロ》といった相性のいいカードと一緒にマナ加速をして、高マナのカードを叩きつけるランプデッキで大暴れ。荒野の再生と同時に収監された。


●灯争大戦

  • 《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》

下環境ではうんざりする程見かける通称「ハゲ」2名の内1名。どっちも同一人物の別名カードだが
白青3マナのプレインズウォーカーで、常在型能力として相手のインスタントタイミングでの呪文を阻害する。+1能力で自分の次のターンが来るまでソーサリーをインスタントタイミングで唱えられるようになり、-3能力でアーティファクトかクリーチャーかエンチャント1つのバウンスと1ドロー。初期忠誠度は4である。
こいつはMtGの醍醐味であるインスタントというものを対戦相手だけ一方的に機能不全に陥らせる。この能力だけでも「呪文は打ち消されない・相手の動きを大きく縛る」と強力だが、さらにプラス能力でソーサリーをインスタントタイミングで撃てるようになるため、いろいろと悪用可能。マイナス能力は緊急時には使えるため隙がない上、マイナス能力を1回使っても戦場に残り続けるため結局相手に対処を強いる


打ち消しのように呪文に対応して使うカードや、瞬速のように対戦相手の隙をついて展開するのが強みであるカード、《約束の終焉》などの呪文をソーサリータイミング以外で唱えさせるカードなどは、テフェリーのせいで否定されてしまうため採用に気を配る必要があり、テフェリーをあまり苦にしないデッキを台頭させてしまう…という意味で大きな圧力を環境にかけており、禁止を求める声も大きかった。
それでも《荒野の再生》を封じるためにこいつも許されていたが、これのために白をタッチした【4色再生】というデッキもあったほどである。《荒野の再生》が禁止になったら、もはや不快でしかないこいつが許されるはずもなかった。


なお、ラスト1ヶ月程度で禁止になったせいで「ラヴニカお別れ会」とばかりに使い納めしようとしていたプレイヤーに大ダメージを与えたことも付記しておく。もう少し早ければねぇ…


●基本セット2020

土地を出すたびに7つ以上の違う土地があれば状態なら2/2のゾンビを出す土地。
基本セット2020の前後にあるラヴニカ三部作やエルドレインの王権では様々なバリエーションの土地が豊富にあるため、条件を満たすのは難しくない。
M19と同居していた時期には《風景の変容》を使って一気にゾンビを量産するデッキが流行した。というよりこのカード自体がそのために刷られたようなカード。
当初は有力デッキであったが、《隠された手、ケシス》を使った【ケシス・コンボ】が発見されると余り見なくなっていった。


M19のスタン落ち後にはさすがに弱化するかと思いきや、《不屈の巡礼者、ゴロス》をキーカードに変えた【ゴロス・ランプ】が流行。
さらに同時に有力メタカードである《廃墟の地》や《高山の月》が落ちたことで対抗できるデッキがほぼ消滅。一部の高速アグロぐらいになってしまった。
10月7日発表の禁止改訂ではスルーされたものの、その3日後に本来の禁止改訂に加えて臨時の禁止改訂日を設けることを告知すされる。本来は約40日後のはずが、わずか18日後に臨時の禁止改訂が行われた。
その間に開催されたミシックチャンピオンシップでも断トツのシェア1位となり、改めて禁止となった。


一方で次点で人気のアーキタイプであった【シミックフード】からは一切禁止カードが出なかったため、一強となることを懸念する声もあった。
その後の環境の動きとしては、その懸念は見事に当たり、食物シナジーを使った青緑系デッキは大隆盛することに。
もっともその後にパイオニア、ヒストリック、モダンでも禁止になっているため、後々禁止される運命だっただろう。


自身の呪文がそのターン打ち消されず、自分とコントロールしているパーマネントは黒と青からの呪禁を得るという緑1マナインスタント。黒か青の呪文がそのターンに唱えられていればキャントリップがつく。
基本セット2020に収録された色対策カードのサイクルの1枚であり、そのサイクル中で頭一つ飛び抜けて強い。


詳細は個別記事に譲るが、1マナで青と黒の戦術を否定した上でドローまでするのは明らかにやりすぎである。ただでさえ青は近年のWotCの方針的に打ち消しが弱いのに1マナで弾かれたらやってられない。おまけにプレイヤーも呪禁の対象になるので黒のハンデスも通らなくなる。多くのカウンターカードと違って発動したターンの間耐性が持続するのも強い。
スタンダードに緑絡みのデッキが多い上にこのカードで妨害にも強く出れてしまうため緑一色環境を更に後押しし、メタゲームを歪めているとされて禁止になった。
ヤソこと八十岡翔太氏プロ曰く「1マナのクリコマ


パイオニアでもほとんど同じ理由で禁止された。モダン以下では規制されていないのでバリバリ使われている。青環境のエターナルではスタンダード以上に刺さりやすい。


  • 《裏切りの工作員/Agent of Treachery》

戦場に出た時、対戦相手のパーマネント1つのコントロールを奪う能力を持つ青のクリーチャー。相手のパーマネントを3つ奪ってると3ドローできるがインクの染み……のはずだった


登場からしばらくの間は(5)(青)(青)というマナ・コスト相応のフィニッシャーとしてランプやコントロールで使われていたが、「イコリア:巨獣の棲処」の登場で評価が一転。
《軍団のまとめ役、ウィノータ》や《銅纏いののけ者、ルーカ》等のマナ・コストを踏み倒してクリーチャーを戦場に出せるカードが登場したことで、4~5マナ域から《裏切りの工作員》を出す【ウィノータ・コンボ】や【ルーカ・コンボ】といったデッキを成立させるに至った。
また、工作員を使うデッキでは《深海住まいのタッサ》や《魅力的な王子》、《空を放浪するもの、ヨーリオン》といったブリンク手段と併用して複数回効果を使うことも容易だった。


しかし、コンボ成立の早さに対して巻き返しが極めて困難な状況を作りやすいこと、使われる側が腹立たしいことなどが問題視され、2020年6月1日より禁止カードに指定された。
強力な踏み倒し手段もさることながら、効果を再利用しやすいクリーチャーに範囲の広い永続的な奪取を持たせたことがそもそもの間違いだろう。


●エルドレインの王権

エルドレインの王権最大の戦犯。
詳細は個別記事で。
簡単にまとめると、3マナなのに+能力で事実上の除去ができ、+能力2つを交互に使っていると忠誠度が増え続けたうえで3/3のクリーチャーが量産される。マナクリを絡めれば多色マナカードであることを踏まえても十分安定して2ターン目に降臨させることも可能であり、現行スタンに2ターン目に出てくる脅威を弾く手段は乏しい。
そして食物トークンを有用に使えるマナクリーチャーである《金のガチョウ》や《意地悪な狼》あたりと組み合わせた【シミック・フード】が誕生しほどなく隆盛を極める。バント、スゥルタイ、ティムールなどの色違い食物デッキも生まれ、《死者の原野》禁止後のある大会ではオーコの使用率が69%に達する異常事態になり、公式からオーコの秋と言われてしまった。


勿論こんな暴虐が許されるはずもなく生後49日で収監と相成った
これはかの《記憶の壺》にもう少しで追いつくところだったというひどい記録である。
またこの惨状に開発チームが社長室で怒鳴られた謝罪文を公表した。一応短期の禁止カード続出が理由だが、大体の内容はオーコがオーバーパワーすぎたことによる反省だった
というか禁止化の原因は神ジェイスと同じで着地したら除去は絶望的でほぼゲームエンドになるので、対抗するためにはこちらも使わざるを得ない点。しかもあっちと違って3マナとコストが軽すぎる上にゲームエンドまでの時間も下手したらこっちのほうが早い。頼むから学びやがれください


  • 《むかしむかし/Once Upon a Time》

2マナで上から5枚見てクリーチャーか土地を手札に加えるインスタント。ゲームで最初に唱える呪文であればノーコストになる。「むかしむかし、あるところに…」にちなんで、物語の最初に舞台(土地)か登場人物(クリーチャー)を紹介するというデザイン。
一見地味だが、その実パイオニアとモダンですらもその使用率の高さから禁止され、規制されていないレガシーでもたびたび採用されている立派なパワーカード。
行う効果自体はそうぶっ壊れたものではないが、「ゲームで最初に唱える呪文であればノーコストになる」というのが大問題で、緑絡みのデッキはマリガンのリスクを大きく低減させることができるようになってしまった。見る枚数が5枚と比較的多いため、この手のカードにありがちな、土地が欲しいのに土地が無いといった裏目も起きにくい。
他の色に比べ安定した戦略を進めることが可能になり、【食物】(つまり王冠泥棒、オーコ)も含めた緑のデッキにおいて初手ノーコストでクリーチャーや土地を揃えられるため、事故率が大幅に下がり安定性を増すことになった。
そしてこの手の「条件を満たすととても強い」カードは条件を満たせないと重くなりがちだが、このカードは条件を満たせなくても2マナインスタントというまったく許容できる性能なので、従来のこの手のカードに比べ2枚目以降がかなり腐りにくい
緑と他の色との序盤のマナ基盤や安定性に有意な差があり、安定した勝率を求めるプレイヤーが緑絡みのデッキを選択するようになった。食物デッキのさらなる台頭をサポートしただけでなく、これを採用した緑絡みのデッキが環境に多すぎたこともあり、オーコと一緒に収監された。
ところで、《むかしむかし》は後にパイオニアやモダンでも禁止を食らったパワーカードだったわけだが、いずれの場合も「初手が安定するのは強すぎるので禁止」という理由だった。どう見ても初手を安定させるためのカードなのに…。つまり想定外のコンボに利用されたわけでも、想定外に強い挙動をしたわけでもなく、想定通りに機能したので禁止である。ある意味一番何考えて刷ったの?と言われるタイプのカードであった。


  • 《創案の火/Fires of Invention》

相手ターンに呪文を唱えられなくなり、かつ1ターンに唱えられる呪文が2つに制限される代わりに、自分がコントロールしている土地の枚数以下のコストの呪文を踏み倒して唱えられるようにするエンチャント。
なお呪文を唱えること以外は制限されないため、余っているマナで土地やクリーチャーの起動型能力を使えてしまう。
発売当初から《願いのフェイ》の出来事面でサイドボードから持ってきたカードを色拘束を無視して使ったり、《帰還した王、ケンリス》やエルドレインの城サイクルなどの起動型能力を利用したりするデッキが様々な形の【ファイアーズ】として成立し、環境に居座り続けてきた。
最終的に【ルーカ・ファイアーズ】が安定して勝ち続けていたこと、何よりもカードデザインにもたらす影響とこのカードを野放しにしておくリスクが大きすぎるという踏み倒し系の問題児でよく見る文言で禁止された。いい加減踏み倒しは諦めてください


しかしこのカードが禁止になる前からこのカードだけではなく、インスタントでのやり取りを否定する、つまりこのカードのデメリットを帳消しにできる性能の《時を解す者、テフェリー》や自分だけ使えるマナが事実上倍になる《荒野の再生》の危険性も指摘されていた。
実際テフェリーがいなければカウンターに弱いこのデッキがここまで活躍できたかわからないし、【再生】は【創案】と渡り合っていた。
その中でこのカード(と工作員)だけが禁止カードに指定されたので、今度は再生デッキが支配的になるのではないかと危惧されていた。
その後の動きとしては、大方の予想通り【再生】が環境を支配することに。結果、上記の通り【再生】も禁止となった。
そもそもマナを倍増させる再生にしろ、マナをガバガバにさせるこのカードにしろ、簡単に土地を伸ばす手助けをする《成長のらせん》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》にしろ、経過ターンに対して使えるマナを増やすカードが多すぎである。


「1ターンに唱えられる呪文が2つに制限される」ということを自動的に制御してくれるシステムがないテーブルトップでは、使用者がうっかり3つ目の呪文を唱えたり、ルールに疎い人がこのカードを除去された後に呪文を唱えられないと勘違いしたりと、揉め事を起こすこともままあった。そういう意味でも結構な問題児である。


  • 《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》

エルドレインの王権から4枚目の禁止カード。EtBで1点のドレイン。しかも食物1つ生贄で墓地から戦場に戻ってくる黒1マナの猫。
《魔女のかまど》というアーティファクトと組んで【ジャンド/ラクドス・サクリファイス】デッキを成立させた。
このデッキがアグロやミッドレンジなどのビートダウンに対して圧力が強すぎる上に勝率も高く、しかもデジタルゲームでの操作が煩雑すぎる。このカードを作った頃にはアリーナもできてたはずなんだが・・・
このため2020年8月に禁止されることになった。
なお同時に禁止された他の3枚は9月下旬にローテーション落ちするが、こいつは1年以上残り続けるはずであった。


禁止理由には説明されていないものの、テーブルトップにおいてもいちいち1点のライフ増減を記入しないとカウントミスが起きてしまうという煩雑さもあり、慣れていない人には面倒がられていた。


  • 《幸運のクローバー/Lucky Clover》

出来事呪文*23をコピーする2マナのアーティファクト。


ソーサリーかインスタントをコピーするアーティファクトの《ミラーリ》が設置に5マナ、コピーに3マナ必要だったことを考えると異常なほどに軽い。スタンダードで共存する《複視》がコピーはノーコストだが設置に3RR、《石成エンジン》が設置4マナでコピーにコストを要する上いずれも各ターンに回数制限があり、さらにクローバーはこれらよりレアリティまで低いと、コピーの範囲の違いはあれどもコスト・パフォーマンスは破格。
出来事呪文自体も性能は控えめだが弱いということは全くなく、3マナで土地加速する(なぜかアンタップイン)出来事を持つ《豆の木の巨人》をコピーして2マナを立て、《砕骨の巨人》または《厚かましい借り手》の出来事を構えアグロを排除する光景が日常茶飯事であった。4マナでサイドボードからサーチする《願いのフェイ》によって対応力にも事欠かない。


ローテーション前こそ《時を解す者、テフェリー》によって対応できないままクローバーをバウンスされテンポを阻害される、《世界を揺るがす者、ニッサ》に弱い、《戦争の犠牲》でついでに処理されるなどの要因で環境に顔を出すことは少なかったが、ゼンディカーの夜明けのリリース後の《創造の座、オムナス》の隆盛の中で【オムナス・アドベンチャー】が開発され、その後の大会でもトップTierのデッキとして活躍、結果的にオムナス禁止後の【アドベンチャー】の隆盛を防ぐ目的で10月12日に禁止された。
ちなみに開発段階では緑の1マナだった。そのまま出ていたらとんでもないぶっ壊れだったことは想像に難くない。


  • 《僻境への脱出/Escape to the Wilds》

赤緑の5マナのソーサリーであり、山札の上から5枚を追放して一時的な手札にしつつ、土地のセット権を1回増やす。赤によくある衝動的ドローに土地のセット権が付いたことで、土地ばかりが追放されても無駄になることが少なくなった。


以前から軽い出来事呪文によってクリーチャー面を確保しつつ、5枚のカードを使い切ることが容易な【ティムール・アドベンチャー】で採用されていたが、ゼンディカーの夜明けで登場したオムナスと《水蓮のコブラ》によって状況が一変。土地をセットして上陸を誘発させれば複数マナを容易に生成できるため、追放したカードを使い切れないリスクが大きく軽減された。


最終的に、ランプ戦術を抑制する目的で10月12日に禁止された。環境での活躍はオムナスに依る部分も大きいが、だからと言って残しておけば《発生の根本原理》と組み合わせたランプデッキが生まれることは火を見るよりも明らかだったため、必然の結果といえる。


●テーロス還魂記

戦場に出た途端に自壊してしまうが、戦場に出た際に3点ライフ回復、1ドロー、土地を追加で1枚戦場に出せる能力が誘発するクリーチャー。
加えて4マナを払い墓地から他のカード5枚を追放することで、墓地から自力でリアニメイトできる脱出能力を持つ。脱出して戦場に出た場合は、自壊せずに戦場に留まる。攻撃した際にも戦場に出た時と同じ能力が誘発する。


3点回復のおかげで、マナ加速を進めている間にアグロに押し切られてしまうというランプデッキの負けパターンにある程度耐性がついている。
更に墓地が肥えてきた中終盤以降は墓地から脱出し、このカード自体が4マナ6/6というフィニッシャーになれる。
これにより、マナ加速でマナはたくさん出るがフィニッシャーが引けなくて負けるという、ランプデッキのもう一つの負けパターンも克服している。
これ一枚が前半のマナ加速と時間稼ぎのための回復、後半のフィニッシャーを兼ねるというランプデッキにとって至れり尽くせりの性能であり、《荒野の再生》をキーカードとする【ティムール再生】デッキを大幅に強化し、一躍環境レベルへと押し上げた。
それ以外にもバントランプやスゥルタイランプなど各種緑青系ランプデッキに投入され、様々なデッキで活躍した。
ローテーション後は上陸能力でマナを生み出す《水蓮のコブラ》と併用することでマナ加速が更に強化され、《創造の座、オムナス》をキーカードとする【オムナス・ランプ】デッキを支えた。
元から強かった上にゼンディカーの夜明けのメカニズムである上陸との間にシナジーが発生したことと、ローテーション後も相変わらず環境デッキに投入され続けたことにより、遂に禁止となった。
付け加えると、非オムナス系デッキの中で有力視されていた【ディミーアローグ】に対し脱出能力が強力なメタになっているなど、単純な強さに加えて周囲の環境にも何かとかみ合っているカードであった。


●ゼンディカーの夜明け

  • 《創造の座、オムナス/Omnath, Locus of Creation》

戦場に出たときのドローと、土地が出るたびに誘発し、解決した回数ごとに4点回復、4マナ生成、相手と相手のPWに4点ダメージが誘発する上陸を持つ、赤緑青白の4色になったオムナス。それぞれの能力が4色に対応している。


4色の色拘束と引き換えに単体でも4/4のサイズとキャントリップを持つため強力。さらに上陸をサポートするカードは無数に存在するため上陸の複数回誘発も容易であり、特に1つ目の能力でダメージを与えて勝つデッキを強力に否定し、2つ目の能力でオムナスを使わないデッキにテンポ面で圧倒することが可能。
色拘束は一見厳しいように見えて《水蓮のコブラ》、《寓話の小道》、各種トライオーム、ゼンディカーの夜明けで登場した両面2色土地によって容易に達成できるため全く問題にならなかった。特に《寓話の小道》はフェッチランドであり、それだけで上陸を2回誘発させられる上条件付き(土地を4枚コントロールという条件からオムナスが立っている段階では実質ほぼ無条件)でアンタップインとオムナスの上陸2回目の能力と極めて相性が良く、オムナスを極めて強力にサポートした。


アリーナのアーリーアクセス時点から【オムナス・ランプ】が猛威を振るい、その後抑制としてウーロが禁止指定。
【オムナス・ランプ】におけるウーロは回復と上陸誘発とフィニッシャーを兼ねる超強力なカードだったためさすがにダメージが大きいだろうと思われていたが、結局オムナス自体も狂った性能だったので【オムナス・アドベンチャー】とともに環境を支配しグランドファイナルでも32人中23人*24がオムナスを含むデッキを使用。決勝は【オムナス・アドベンチャー】のミラーマッチであった。
もはや周辺の規制ではどうにもならないことは明らかだったため10月12日に禁止された。
結果的にテーブルトップでは17日、アリーナ基準でも25日での禁止と、《記憶の壺》が持っていたスタンダード最速禁止記録を21年ぶりに更新した


ちなみに禁止指定された時点では「25日で禁止とかもう開発能力がないのではないか」という否定的な意見が見られたが、その後の環境がようやくまともに回るようになったということで2020年10月後半の時点では肯定的・仕方ないと見る人が圧倒的に多い。


●カルドハイム

  • 《アールンドの天啓/Alrund's Epiphany》

飛行を持つ1/1鳥トークンを2体生成して追加ターンを得る7マナのソーサリー。予顕*25を使うと6マナになる。
当初はチャンプブロッカーを呼び出すことで1+αターン時間を稼げるようになった《時間のねじれ》という評価だったが、ローテンション直後のイニストラード:真夜中の狩りで出た《感電の反復》という呪文をコピーするインスタントと組み合わせると4点飛行クロック+追加2ターンを得られるようになり、《アールンドの天啓》そのものが強力なエンドカードへと変貌を遂げた
ここに7/7の巨人になる青のミシュラランドの《ストーム・ジャイアントの聖堂》が加わると(4+7)×2=22と一瞬で相手のライフを削り切ってしまう。このワンショットキル・コンボの「感電天啓」を切り札としてそれまでのターンを赤の火力と青のカウンター・バウンスで遅延する【イゼット天啓】が環境を席巻した。


このデッキの問題点は《アールンドの天啓》→追放領域に避難、《感電の反復》→フラッシュバック持ち、《ストーム・ジャイアントの聖堂》→土地と、ハンデスの通りが非常に悪く、またコンボ成立後は連続追加ターンで相手のターンに回さずに勝ちに行くため「感電天啓」のコンボを事前に妨害することも成立後に崩すことも非常に困難であるという所。
このせいで「感電天啓」対策は「撃たれる前に殴り勝つ(=単色アグロ)」か「こちらも《感電の反復》を使い、カウンターをコピーして全ての《アールンドの天啓》を打ち消す(=イゼットミラー)」しかなくなり、結果環境がイゼット含む青系コントロールとそれに勝てる速度を持つ白単・緑単アグロの三種に固定されてしまった。それに伴いハンデスが利かずアグロに寄せても速度が出ない黒や、打ち消しを使えず重量呪文の投げ合いで絶対に勝てないミッドレンジ・非青系コントロール等が一時期環境から消えるという事態となった。


【天啓】系デッキは支配率こそ高くはなかったが数々の競技シーンやトーナメントで結果を出していて、またメタゲームが明らかに《アールンドの天啓》を前提としたものに固まってしまった。何より当時ゲームに勝つには「軽量クリーチャーをひたすら叩きつける」か「即死コンボ」の実質2択しかないという状況は健全な環境とは言い難く、2021年10月のアナウンスで公式も危険視していたが「真紅の契りが追加されたらワンチャン環境が改善されるかもしれないから!(意訳)」という理由でその時はスルー。
しかしイニストラード:真紅の契り追加後も特に環境に変化がなく【天啓】系デッキがトップのまま。即死コンボに発生保証が付与された「感電天啓」は生半端なメタゲームでは崩せないという多くのプレイヤーが薄々感づいていた事実が浮き彫りとなってしまっていたため、いよいよ擁護が不可能となり環境にミッドレンジや青以外の低速デッキを復活させるために2022年1月25日に禁止行きとなった。この禁止には怒りよりも納得の声が大半であった。


  • 《不詳の安息地/Faceless Haven》

タップで無色氷雪マナ1点を加えて、氷雪マナ3点で警戒とすべてのクリーチャー・タイプを持つ4/3クリーチャーになるミシュラランド。
本体が警戒持ちなので実質3マナ4/3多相という極めてマナレシオに優れたミシュラランドだが氷雪土地を使わなければならない制約を持つ・・・というつもりだったのかもしれないがスタンダードで氷雪土地を使うリスクはほぼ《傑士の神、レーデイン》のみと有って無いようなものだったので、ただただ強力なミシュラランドとして広く使われた。特に猛威を振るったのは無色マナを比較的許容できる単色デッキで、後にフォーゴトン・レルム探訪で色マナを生み出すミシュラランドが登場した後も、起動コスト軽さからアグロデッキにおいてはそれらに席を譲らなかった。


上記の【天啓】系デッキを喰うために環境には《不詳の安息地》を採用した白単アグロ、緑単アグロで溢れかえっていて、《アールンドの天啓》禁止後にそれらの歯止めが利かなくなることが容易に想像が出来た。そこでそれらのメインプランを殺さずに、かつ確実に速度と持久力が落とすために《不詳の安息地》は2022年1月25日にあえなく御用となった。
アグロデッキが他の氷雪カードをほぼガン無視して《不詳の安息地》1枚のために土地を氷雪化したが故の悲劇であり、《アーカムの天測儀》でも見られた「氷雪基本土地を使うデメリットが無い」という問題点がここでも顕在化してしまった形となる。純粋に氷雪デッキを作ってた人は泣いていい。


●ストリクスヘイヴン:魔法学院

  • 《ゼロ除算/Divide by Zero》

マナ総量が1以上の、呪文かパーマネントをバウンスして履修*26を行う3マナのインスタント。
対象範囲が非常に広く、フルタップで唱えてきた呪文に雑に当てるだけで相手のテンポを大きく削ぐことが出来て、おまけに履修でマナ加速・ドロー・除去などその時点で手札に足りない要素を講義カードで補充可能と高い防御力と汎用性を備えていた。また呪文バウンスという挙動の特徴として打ち消されない能力や呪禁を無視してバウンスが出来るので、時間稼ぎの確実性も他のバウンスや打消しより優れていた。


環境を歪める最大の原因《アールンドの天啓》を消したとしても、青には《溺神の信奉者、リーア》や《船砕きの怪物》などまだまだトーナメントレベルのフィニッシュカードが残されており、下手すると《アールンドの天啓》をそれらに取り替えただけで終わり、という危険性があった。そこで青系コントロールを確実に弱体化させるために、それらの中盤以降の多様な選択肢を支えていたこのカードが2022年1月25日に禁止された。


「カードパワーが低い」と囁かれていたストリクスヘイヴンから禁止カードが排出されたことに驚いた人も多いだろう。
確かにレア以上のカードで環境レベルのカードは少なかったが、どこぞのプロフェシーとは違って実はアンコモン以下のカードパワーは遜色なかったのだ。


●イニストラード:真夜中の狩り

  • 《食肉鉤虐殺事件/The Meathook Massacre》

(X)(黒)(黒)の伝説のエンチャントで、戦場に出たときに全体を-X/-X修整し、自軍が死ぬたびに相手に1点ライフロス、敵軍が死ぬたびに自分に1点ライフゲインする常在型能力を持つ。マイナス修正のため破壊不能や盾カウンターを無視できる点や、Xを調整して自分のクリーチャーだけ残せるなど柔軟性が高く、常在型能力によってライフレースも有利、といった強力なカードである。コントロールデッキでは勿論のことサクリファイス系デッキを確立させるなど黒を利用する理由の一つとなっていた。


このカードが問題になったのは団結のドミナリア発売のローテーション後である。他がカードパワーを落とす中で《黙示録、シェオルドレッド》の登場と《ヴェールのリリアナ》の再録、続投した《絶望招来》など黒にパワーカードが集中したことで黒の使用率が高くなってしまった。これを踏まえて『黒の使用率を少し下げるため』として《食肉鉤虐殺事件》は2022年10月10日をもって禁止となった。他にも《絶望招来》や《シェオルドレッド》といった槍玉に上がるカードはあったが、それらよりスタンダードで使えた期間が長かったこと、そして大量の小型クリーチャーに依存するデッキに対して非常に強力であったことを踏まえて禁止となった。


《食肉鉤虐殺事件》自体に大きな問題があったが故の禁止ではなく環境改善のためにトップメタデッキの弱体化を狙った禁止であり、過去の禁止カードで言えば《ならず者の精製屋》辺りと事情が似ている。当初は黒が強い・アグロがいないという前提に目を瞑れば中速からコントロールまで様々なデッキが存在していて、かつ黒系デッキの抑制効果がなかなか見られなかったため批判の声が目立った。しかし次セット兄弟戦争の追加以降は非黒系デッキが徐々に数を増やしてきており、特に《食肉鉤虐殺事件》禁止の狙いの一つだったアグロ・ウィニーデッキが復活したことにより、運営の面目が保たれる結果となった。


余談だが《食肉鉤虐殺事件》は非常に高額なカードとして知られており一枚12,000-15,000円とスタンダードとしては異例の高値となっていた。*27禁止によって当然悲鳴も上がったが、仕方ないと考えるプレイヤーも多く、否定的な意見は値段の割に多くなかった。


●神河:輝ける世界

  • 《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》

赤シングルシンボル3マナの裏面を持つエンチャント—英雄譚。1章で攻撃するたびに宝物トークン1つを生成する2/2のトークンを戦場に出し、2章で最大2枚まで手札を捨ててから捨てたのと同じ枚数を引き、3章で自身を追放してから変身した状態で戦場に戻し、自分がコントロールしていてこれでも伝説でもないクリーチャー1体を対象とし、速攻を持つことを除きそれのコピーであるトークン1体*28を生成するコスト1マナの起動型能力を持つ《キキジキの鏡像》という名の2/2のクリーチャー・エンチャントになる。


1章が2マナ相当、2章が2マナ相当、3章が3マナ相当の性能であり、時間さえかければ非常に大きなリターンが見込める。何もしなくても単純に1章と3章だけでクリーチャー2体の1:2交換なのだが、宝物トークンでマナ加速をしたり色拘束のきつい呪文を唱えたり、2章で余った土地を捨てて手札の質を良くしたりデカブツを墓地に仕込んでリアニメイトの下準備としたり、3章の鏡像の能力でETB能力持ちのクリーチャーをコピーして更にアドを稼いだり、鏡像を2体並べて対戦相手の終了ステップに鏡像でもう一体の鏡像をコピー、コピー鏡像で鏡像をコピーしてまたコピー鏡像を出す、をマナが尽きるまで繰り返して、返しのターンに一斉攻撃を仕掛けるという戦法でフィニッシャーにまでなれると最早至れり尽くせり。それでいて3マナシングルシンボルなので事故とは無縁どころか、宝物生成とルーティングでデッキの安定化に大いに貢献してくれる。
特に黒赤2マナのクリーチャー《税血の収穫者》との相性が良く、これをコピーすることで毎ターン血トークンを増やしながらクリーチャーを除去し続けられるお手軽最強コンボとなる。永久機関が完成しちまったなアア~!!


スタンダードはおろかパイオニアモダン果てはレガシーですら通用する「神河:輝ける世界」屈指の強カードであり、しまいには「《ウーロ》以来のパワカ」「3マナなのにマストカウンター」とまで評されるに至った。あまりの汎用性の高さからスタンダードでは赤いデッキに4積みはもちろん、赤を含まないデッキでもタッチしてこのカードを採用した派生デッキが生み出されることすらあった
これを採用した赤系ミッドレンジデッキ、その中でも特に【ラクドス・ミッドレンジ】のパワーを劇的に引き上げており、プロツアー・機械兵団の進軍ではTOP8のうち5人がラクドス系デッキを使用。優勝はやはりラクドス・ミッドレンジであり、その中心には鏡割りの寓話の存在があった。
それでももうすぐスタン落ちということもあり、かつての《集合した中隊》のようにこのまま完走するかと思われた矢先にまさかのローテーション期間3年への変更という重大発表。これにより最早逃げきれないと大多数のプレイヤーがお察し状態になり、禁止になる前からTwitterのトレンドに「寓話禁止」が浮上する珍事まで発生。そしてその後、大方の予想通り禁止と相成った。


余談だがこの寓話、プレビュー時の評価はカスレアさほど芳しくなかった。最速で出てくるターンが本家キキジキと同じ5ターン目なのに、コピーにマナ要求で速攻もないとキキジキに比べて弱いこと、そして変身する英雄譚のメカニズムが裏面がよほど強くない限りクリーチャーとして遅すぎると思われていたことが原因。しかし研究が進み、ゴブリントークンを出した上でキキジキが出ればマスト除去なのに単体除去が当てづらいこと、そしてこれが英雄譚であり、待機と異なり1章2章の時点で強力な効果をもたらすことが発覚したことで採用率がみるみる上昇。最終的に上記の通り禁止となり、前評判を大幅に覆す大躍進を遂げている。


  • 《勢団の銀行破り/Reckoner Bankbuster》

蓄積カウンター3個が置かれた状態で戦場に出る2マナのアーティファクト—機体。機体としては搭乗3の4/4バニラとそこまで突出した性能ではないが、2マナ起動で1ドローしつつ蓄積カウンターを取り除き、蓄積カウンターが無くなれば宝物トークン1つと、パワーが実際より2大きい扱いで機体に搭乗できる無色の1/1クリーチャー・トークン1体を生成できる。
時間さえ掛ければ3ドロー+宝物トークンでマナ加速+自前で搭乗要員を用意と中長期戦に強いデザインになっており、多くのミッドレンジデッキのアドバンテージ源となっていた。
おまけにタフネス4なので《稲妻の一撃》で死なない、アーティファクトなので《喉首狙い》が刺さらない、無色なので《離反ダニ、スクレルヴ》の疑似プロテクションを無視してブロッカーに回れる、こいつを先に出していれば後続のパワー3以上のクリーチャーが疑似速攻になりプレインズウォーカーに強い、などなど機体としても意外なほどに活躍できる場面が多い。
純粋なカードパワーで言えば《鏡割りの寓話》には一歩劣るものの、無色という事で様々なデッキに入りやすくプロツアー・機械兵団の進軍ではTOP8のうち7人が採用した*29
青を筆頭とする他のドローカードを押しのけてしまっているため禁止に。とは言え、ひと昔前にあったマナコスト・起動コストが全く同じの《精神迷わせの秘本/Mazemind Tome》は何の問題も起こさずローテーションを終えているので無色ドローソースが無条件でアウトという訳ではない。が、銀行破りは機体にその能力を持たせたことで汎用性が上がり過ぎたのが決め手となってしまった。


  • 《絶望招来/Invoke Despair》

色マナ4つを要求される5マナのソーサリーorインスタント(通称:招来サイクル)の黒版で、相手にクリーチャー、エンチャント、プレインズウォーカーそれぞれ1つを生け贄に捧げさせ、できない場合は相手は2点ロス&自分は1ドロー。
除去として使えない状況でも手札補充とライフロスがあるため状況を選ばず使えるが、その分色拘束が強いため多色では使いにくく、登場後しばらくは【黒単氷雪コントロール】での使用が主だった。


しかし、ローテーション後の「団結のドミナリア」でアンタップインかつライフ1点を要求されるが常時2色を出せるペインランドが環境に参入。元々容易にアンタップインできるスローランド、タップインだが3色土地の友好色トライオーム、宝物を用意して色マナ確保&加速を担う《鏡割りの寓話》などのマナ基盤と噛み合い2色どころか3色デッキですら運用が可能という状況に。
上2枚同様ラクドス、グリクシスのミッドレンジでの採用が主となり、エンチャントやPWを生け贄で除去できることによる対処の難しさと、リソース補充にもなる強さが顕在化。黒系デッキへの対抗策を減らしているとして禁止された。


ただし多色でも色マナを容易に確保できるマナ基盤がこの状況を生み出した部分もあり、「土地を聖域化しすぎてることが問題」「多色化を容易にする土地の方を規制するべき」とこのカード自体の禁止はあまり俎上に上げられていなかったため、発表時には驚きの声が多く上がった。
3枚とも神河なあたり、アーティファクトを推すと禁止が多数出るジンクスからは逃れられないらしい


禁止解除されたカード

  • 《暴れ回るフェロキドン/Rampaging Ferocidon》

上記イクサラン・ブロックにて禁止されたフェロキドンが帰ってきた。
ちなみにスタンダードで禁止されたカードが同ローテーション内で禁止解除されたのは今回が初。
理由は流行している《風景の変容》コンボや白黒吸血鬼といった、大量に小型クリーチャーを展開するデッキに対するアンチカードとして有力なため。
ローテーション落ちまで40日、閃光のような最後の輝きを終えた。



追記修正は、禁止改定が発効されてからお願いします。


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*1 遊戯王やデュエマも初期はそうだった。禁止カードというのは製作会社にとってやっぱり出したくないものなのである。
*2 「黎明期ですら飛び抜けて強く、その後のマジック史に大きな影響を与えた9枚のカード達」の意。「デッキに入れないと勝てない」という誤った認識をされるほどであった
*3 当時はインターネットも普及しておらず情報格差があったため、禁止が告知されたカードを禁止前の価値でトレードしたり、強力なカードを「それ禁止になるらしいよ」と価値を下げさせてトレードするなど
*4 以前は1年毎だったのを半年ごとにローテーションするように変えた。1年間硬直してしまうメタゲームを一気に変えようという狙いがあったが、これによって「遊ぶ時間があまり取れない社会人プレイヤー」や「半年しか使えないことを嫌う資金不足のプレイヤー」が離れてしまった
*5 ソーシャル・ディスタンスの影響を抜きにしても、デジタルならば大会に行かなくても不特定多数のプレイヤーと瞬時に対戦できるし、また自動化によりルール上のトラブルや記憶問題が解決されたことも短い時間に何度もゲームを行えることに繋がった。このことがメタ・ゲームやカード・シナジーの研究を加速させ、開発側の想定以上の暴れ方をするカードがプレイヤーに発見されやすくなっていた。
*6 実際レガシーでは【ウーズ・サバイバル】のせいで相方が規制されている。そのデッキができなくても「制限の緩い軽い永続サーチ」なのでいずれ禁止にされたとは思われるが
*7 それでもヴィンテージで制限解除を検討されたという話が公式でなされた。アカデミーには全くそういう話がないあたり壊れ具合が分かる
*8 45日。大会で使えたのは31日
*9 一応《水蓮の花びら》がコモンで禁止という前例はあるが、「コモンかつクリーチャー」は初ということ
*10 実際にはスタン禁止からの初再録。エクステンデッドに広げれば《惑乱の死霊》が第4版禁止→第8版再録という実績有り
*11 他の3体は《闇の腹心》、《瞬唱の魔導士》、《タルモゴイフ》で残りは《若き紅蓮術士》or《悪意の大梟》
*12 そもそも霊気池一本ではカウンター擁する【白青フラッシュ】にボコボコにされてしまうため昂揚ギミックをハイブリッドさせたという背景があるのだが
*13 テフェリーが登場しているドミナリア以降のイラストを見れば一目瞭然。長い間旅をしていたのかかなり生えているイラストもある。
*14 クリーチャーをパワー合計が一定になるようタップすることでターン終了時までクリーチャーになるアーティファクト
*15 スタンダード当時は周りのカードパワーの高さに救われて禁止にならなかったが、モダン禁止済
*16 つまり禁止改訂直後から新環境で遊べる
*17 霊気池が上位メタになっていたプロツアー「カラデシュ」にて、【グリクシスコントロール】で優勝したヤソ曰く「霊気池はBYE(不戦勝)みたいなもん」と言われるほど酷い相性だった
*18 だから禁止改訂後も戦えるよという意味
*19 メインデッキでは不利なデッキも存在するがサイドボード後はほとんどのデッキに勝率5割以上を誇る。唯一サイド後も5割を超えない【赤緑《静電気式打撃体》】デッキはそのデッキ自体がピーキーなためそもそもほとんど環境に存在しなかった
*20 基本的に環境末期には最強のデッキでも52~53%に落ち着くのが普通。上記のエネルギー系デッキもだいたいそのくらいだった。
*21 現実には「【ラムナプ・レッド】には強いが【エネルギー】系に弱いデッキ」があったかもしれないのでエネルギー系が弱くなればそれらが出てくるかもしれないものの、あくまで可能性の話である。しかも低い
*22 この当時は黒にはスタンダードでは範囲が狭い《致命的な一押し》くらいしか軽量除去がなかった。むしろ《蓄霊稲妻》や《稲妻の一撃》を擁する赤のほうが除去が強いと言われる始末。そしてこれらのカードはエネルギー系デッキや【ラムナプ・レッド】で採用されていたのだ…
*23 クリーチャーに付随するソーサリーまたはインスタントであり、出来事として唱えた後は追放領域からクリーチャー面を唱えられるようになる
*24 使用率72%、内訳はオムナスアドベンチャー19人、オムナスランプ4人
*25 予め2マナ払って追放領域に移動させると、後にマナコストを軽減して唱えることが出来る能力
*26 手札を1枚ルーティングするか講義カードという専用カードをサイドボードから手札に加える能力
*27 これにはいくつか理由があり、『黒であれば採用しない理由がなく、また複数投入されること』『パイオニアや統率者など他のフォーマットにも採用されることがあること』『そもそもMTGAの存在とコロナ禍によりカードの流通枚数が少ないこと』『神話レアである』など複数の要因が重なった結果である。
*28 次の終了ステップの開始時に、それを生け贄に捧げる。
*29 枚数は23枚。鏡割りの寓話は5人20枚。

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