ダイバー採用試験

ページ名:ダイバー採用試験

数多の試験をパスした猛者たちよ。初めまして、になるのだろうな。

我は派閥メルヒェンの長、生ける夢ウルだ。最終面接を兼ねた講義を担当している。よろしく頼もう。

ここまで来た時点でお前達は概ね間違いなく採用されるのだが、この面接では適性という最も重要な要素を見ることになる。この適性如何でどの部署に配置になるのか、ここで大きく左右されるからそれなりには気を引き締めて臨むように。

小冊子はそれぞれにちゃんと行き届いているか?落丁などがある者も近くの係員に交換してもらうようにな。

まずは目次を飛ばして4ページ目を開いてほしい。ドレアム騎士団の始まりから今に至る歴史が仔細に記されているだろう。だがな、夢の使者は好かん。目につくだけでむかつくから、この資料は使わない。各自ゴミ箱にでも突っ込んでおけ。

そもそもだ、お前達は夢とダイバーについての基礎的な教育は終えているはずだ。こんな役にも立たないような歴史や蘊蓄を延々説くような座学よりも、実戦に連れてって直接経験を積んだ方が何倍も有益な……[中略]

 

ローグダイバーとは夢界を悪用する者どもの集団で、そして、我々の世界はその悪事に証拠の多くを保持することができない。修正力によって記憶と記録は塗り替えられてしまうからだ。ゆえに、例外を除いて即時での処分が許される。

さて、お前達がローグを処分するという仕事にあたって必要なものだが、それは確実に1人1人を処理する慎重さと緻密さだ。相手の意識外の状況で、頭部を、可能であれば脳幹を狙え。死んだことさえ認識できないように殺す必要がある。

██島パンデミックは誰もが知っているだろう?死という恐怖と、生きたいという渇望は急速かつ最大限に悪夢を育てる、宿主は辛うじて殺せたが、完全悪夢として独立した悪夢が残って隊が全滅した……と言うのは実によくある話なのだ。

ああ、それとついでに言うのなら、それはローグに限った話ではない。這いずり回りのた打ち回る瀕死の仲間が悪夢化することだってごまんとある。もしも危険な兆候を感じ取ったのなら、鉈を真直ぐそいつの頭に振り下ろせ。

できないなら、お前がそいつの代わりに頭蓋を砕かれることになるだろう。

実のところ、我々とお前達にとって最も重要であるものはそれらを躊躇わないだけの冷静さであるかもしれないな。

 

[中略]お疲れ様。これにて講義も終了だ。不慣れなもので、正直なところあまりよい授業であったとは言えないかもしれない。それでも一人も居眠りせず真面目に受けてくれて心から感謝している。

さて、これからについてだが。お前達はまず第二会議室に移動してから、そこでアンケートがあるから……それで本当に終わりだ。お前達と任務に就けることを切に願っているよ。それではね。


室外へ出た受講者たちは振り返ってめいめいにざわめく。

「あれ、アンケートってどこでやるんだっけ?」

「馬鹿野郎、多目的ホールって冊子に書いてるだろ。行くぞ」

 

仮説:夢界の観測能力を有さない人類は夢現領域を知覚しても、長期間に渡って記憶を保持することはできず、

修正力に基づいて最も妥当性のあるものへ修正される。

 

実験提案:生ける夢を使用した講義を実施し、その記憶の有無で選別を行う。

この際、対照実験のために資料は講義の中では使用させないこと。

いいだろう。試す価値はあるかもしれない。‐奇書院院長

第二会議室に集まったのは3割程度のみだったが、それでもなお老人はこの結果にいたく満足した。

 

 

 

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