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ユウナは戦争のどさくさで彼個人の存在そのものも奪われてしまいます。Destinyにおけるユウナの最後のシーン以降、彼は大怪我をしながらも、命を取り留めます。しかしここで命を取り留めてしまったことは、もしかするとユウナにとっては、非常につらく悲しい人生の始まりだったのかもしれません。
彼は野戦病院に「正体不明のけが人」として担ぎ込まれます。この時点では戦時中の混乱と彼自身の負った怪我により、誰もが彼をユウナ=ロマ=セイランであるとは考えもしなかったのです。
ユウナにとってCE74は最悪の年であったと言えます。思い通りにいかず自らの行動が悉く裏目に出て、祖国であるオーブ連合首長国は戦火にさらされ、多くの民は命を落としたことをはじめて直感的に感じていました。
さらに、一市民として怪我の治療を受けるユウナは改めて戦火にさらされる市民達の声を体験することになります。
その声は自らの愚かさを気付かせるのに十分過ぎたと言える。非戦闘員である市民が理不尽に命を奪われ、生き残ったものもあるものは両足を切断され、あるものは精神的なショックで言葉を失ってしまい、あるものは母親のむくろにただ泣きじゃくっている。
ユウナはそのことをはじめて直接経験することとなりました。戦略室に集められる数字には表れてこない現実は彼を容赦なく責め立てます。
当然、カガリに「国家反逆罪」を言い渡されることにより、ユウナは政治家としてその「失態」を償う手段はありません。国家反逆罪という罪で彼から政治家としての権利と責任の双方を失ってはじめてその資質の一端を得たのです。
このとき初めて、彼は自らの招いた戦火の罪をあがないたい。その意思の「種」を得たのです。
自らの無力さを痛切に実感する中、ユウナは野戦病院での治療行為を無心に手伝うようになります。気が狂うほどの無力感と後悔から逃げ出したい。
そんな気持ちもあったかもしれません。
しかし、そんなユウナを運命は見逃すことはありませんでした。
大怪我に対する治療が表面的な外科治療にとどまっていたため、怪我の影響が視神経に及んでいることを誰も把握できなかったのです。
徐々に薄れ行く視界。彼は再び心を絶望に支配されてしまいそうになります。
そんな中、彼の治療を行った医師が彼を戦火の影響の少ないアメノミハシラへ行くことを薦めます。アメノミハシラであれば、戦火の影響を受けずに治療を行えると。
そして、そのために事実上戸籍を失っているユウナに仮の戸籍申請を行った上で、ユウナにアメノミハシラへの道をその医師は開いてくれました。
そして、同時に「ロマ=ギリアム」の戸籍を手に入れます。
ユウナは徐々に薄れ行く視界と共に絶望するしかなかった自分を救ってくれたその医師に感謝を感じます。
この感謝こそ、彼が今に至ってまだ生き続けていることの根幹にある感情であるといえるでしょう。この感情は、ユウナにとって初めて人に感謝することが出来た貴重な経験だったのです。
ユウナの行動背景。特に第二次汎地球圏大戦時の彼と今作の彼との間を生める出来事。
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