「んー......」
浮かんでこない。
沈んだものが浮かんでこないんじゃなくて、考えが浮かばない。
船を使わずに海を渡る方法が浮かばない。
私は空は飛べないし、他の島までは距離がありすぎて泳いでいける自信もない。
下手に泳いでることろを船に拾われちゃったらその船が大変な目にあっちゃうし...。
「そこのフレンズ!何者だ!」
「ん...?」
海を眺めながら考えていたら、空から一人のフレンズが降りてきた。
その恰好は、まるで海兵。黒と赤の軍服を着ているけど、頭に翼があるからフレンズだって事はわかった。
「私はオスカー 。船乗りネコだよ」
「ほう、船乗りネコとな...私はオオグンカンドリ、このアクシマの主である!」
「主なの?」
「そうだ!この島に怪しい者が入り込んでいないか、常に空から監視しているぞ!」
「まるで偵察機みたいだね...」
ビスマルクに乗せられていた偵察機を思い出す。あんな風に飛べたら楽なのに...。
「...それで、ここで何をしていた?」
「船を使わずに海を渡る方法ないかなぁって、考えてたんだ」
「船を使わずか...鳥なら飛んでいけるが、ネコではそうもいくまい...
というか、船乗りネコなのに船を使わずに渡ろうとしているのか?」
「うん。 私には呪いがかかってるんだ」
「呪い...?」
「私が乗った船は、ものすごい嵐や荒波に襲われて、最悪沈没しちゃう。だから、乗りたくないんだ」
私がそう説明したら、オオグンカンドリは少し考えこんでから、こう言った。
「...ふむ、ならば私が抱えて飛ぶか?」
「えっ...抱えて対岸まで? 結構遠いよ?」
「私は世界最大の海鳥、一人抱えて飛ぶくらいどうという事はない!」
「わっわ...!?」
返事を待たずに私を背中から抱き上げて、オオグンカンドリは飛び上がった。
みるみるアクシマが遠くなって、私とオオグンカンドリは海の上を飛びはじめた。
「高い...というか速い!?」
「当然だ!海鳥界最速でもあるからな! 本気になればもっと早く飛ぶ事も出来るぞ!」
「そ、そうなんだ...すごいね...!」
もう一度下を見る。 あの頃は同じぐらいの高さで見ていた海が、今は青く広大に、眼下に広がっている。
何隻かの船が行き交っているのも見える。どの船にも、あの頃の軍艦みたいな大砲はない。
その代わりに、貨物を満載した軍艦ぐらい大きな船もいる。
(......今の船、ちゃんと落ち着いて乗れたら、あの頃の船よりも静かなのかな...?)
「...どうかしたか?」
「ん、いや......オオグンカンドリさんは、船に乗った事ってある?」
「ふむ...ないな。乗る必要がないからな。
だが、動物だった頃に羽休めに数分だけ乗ったことはあるぞ!」
「...静かだった?」
「静か...か。 そういえば、乗っている人間たちが楽しそうに歌っていたな!」
歌。
そういえばドイツの海兵もイギリスの海兵も、みんなで歌っている事があった。
喧嘩した相手でも、歌っているうちに仲直り、って事もあった。
「 Der mächtigste König im Luftrevier
Ist des Sturmes gewaltiger Aar...」
「...? 歌か?」
「うん。ドイツ海軍にいた頃に、海兵さんたちが歌ってた。
Die Vöglein erzittern, vernehmen sie nur
Sein rauschendes Flügelpaar...」
歌詞の意味を知ってるフレンズは、多分いない。
それでも、一緒に歌ってくれるフレンズにあえるといいな。
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