メルビィのイメージチェンジ計画「1日目 ノギハラバシリスク」

ページ名:メルビィのイメージチェンジ計画②

前回 プロローグ より

 

【メルビィのイメージチェンジ計画】

 

【1日目 ノギハラバシリスク】

 

メルビィはミチアトを後にし、ゴコクエリア北西部に位置する宿泊施設、イマハリレプタイロッジに来ていた。

地下1階と地上3階の4階構造で、1階以外は基本的に客室になっている。メルビィは現在、地上1階のエントランスにいた。

そして同じく1階エントランスの中央にある噴水の前に一人のアニマルガールが佇んでいる。茶褐色のゴスロリ風フリルスカートとビーズによる装飾を施したコルセット。頭部には豪華なティアラを纏い、腰からは身長とほぼ同等の長さを持つ尻尾が生えていた。

「はじめまして。レイナから話は聞いています。貴女がメルビィさん?」

「あぁ、不服だがレイナに言いくるめられて7日後にファションショーをやらされることになったメルビィだ。そっちはノギハラバシリスクってことでいいのかな?」

「ええ、合っています。私のことはバジリスクとお呼びください。では早速、服を見てみましょうか」

そう言ってノギハラバシリスクことバジリスクは、ゆっくりと歩き出し地下へと向かう。

 

そして場所は移り、地下1階。4つある客室の1つに二人は移動していた。そこは4人部屋らしく2段ベッドが2つ対面する形で並んでいた。

そして向かって右側の二段ベッドの下側のベッドの上にいくつかのトランクケースやボストンバッグが置いてあった。

「お気に召してくれるものがあれば良いのだけれど…」

そう零しながら、バジリスクは1つ目のトランクケースを開ける。中身はバジリスクの服と同じ茶褐色のジャンパースカートに黒いボレロとケープ、小麦色のカンカン帽の形をしたミニハットと白いジャボ。そしてスカートの下に着るドロワーズとパニエが入っていた。

「…………。これを着ろと?」

そのセットを目にしたメルビィは苦笑いでバジリスクに視線を向ける。メルビィの視線に対し、バジリスクは無言の笑顔のままである。

「…………。」

メルビィはその場で固まっていた。

「どうしたんですか?あっ!もしかして着る順番がわからないとかでしょうか?

たしかに、こういう服は初めての方には難しいところが…」

「待て待て待て待て!待ってくれ!

確かにそれもあるが、そうじゃない!

これ私に着ろと?見るからに動きにくそうじゃないか!?」

「え?そうですが?スポーツウェアじゃないんですし、動きやすさよりもデザイン性重視なのは当たり前じゃないですか?」

「む…そ、それにこんなの…私に似合うはず……」

「ものは試しです!とりあえず着てみましょう!」

と、バジリスクはメルビィの目と鼻の先まで駆け寄り期待の眼差しを向ける。

「あ、あぁ…わかった…着ればいいんだろ!」

と、その眼差しに気圧されたメルビィは自棄気味に普段の衣装を脱ぎはじめた。

 

そして数分の時が流れ…

「うわぁぁぁ~♪すごいですわ!思った以上の逸材ですわよ!

もともとウェーブがかかった髪がマッチして最高に可愛いですわ!それでもその凛々しさは保っているなんて…」

と、用意した以上に身を包んだメルビィを見てテンションがあがっているバジリスクがいた。

「もうどうにでもなれ…」

一方のメルビィは、顔を熟れた林檎のように赤くし、自棄になってこの服を着たことを後悔していた。

「こんなに可愛いのでしたら、これやこれなんかも…」

と、言いバジリスクはボストンバッグに入っていた他の衣装を取り出していく。

「私とお揃いなどはどうでしょうか?」

「頼むから、動きやすいのにしてくれよ…」

「見た目に反して動きやすさはありますよ?」

「そのフリルスカートがなぁ…プリッツスカートとかズボンタイプがいいな」

「それでしたらこちらを」

と言って衣装を1セット、メルビィの前に並べていく。

「次の衣装は凛々しさの方に軸を置いた服になりますわ

これならば一人で着替えられると思いますので試しにご自分で着替えてみてください。

私は部屋の外で完成図を楽しみに待機しておりますわ」

と、次の衣装一式を置いてバジリスクは部屋を出る。メルビィはバジリスクが置いていった衣装に目を向ける。

「まぁ、今着てるこれと比べれば….」

と口を零しながら着替えを開始した。

 

そして数分の間、沈黙が流れた。ドアの前で待機していたバジリスクに対し、メルビィはドアを数回ノックすることで着替え終えたことを伝える。

「着替え終わったかしら?」

と、ドアを開けバジリスクが部屋に入る。

その視線の先には、黒の七部丈のボトムスに白のシャツ。胸元にはグレーのリボンを結び、黒いロングコートを羽織っている。そして頭にミニサイズのシルクハットを付け、足元をリボン付きの厚底パンプスで飾ったメルビィが立っていた。

そしてバジリスクは口を開き感想を述べる。

「やっぱり、元々が綺麗ですから何を着ても似合いますわね♪

さて、着心地の方はどうでしょうか?」

「まぁ、さっきのに比べたら悪くない。

圧倒的に動きやすさが違う」

「お気に召した様でなによりですわ♪

でしたら、こちらの一式差し上げますわ」

「いや、流石にそれは悪い……」

「いえいえ持っていってください。あわよくば、このままゴシックに目覚めて…」

「何か言ったか?」

「い、いえ!なんでもありませんわ!

とにかく、その服は差し上げます」

と、服の贈呈を押してくるバジリスクに対し、メルビィは数秒考えてから少し諦めたかのような顔で

「わかった。なら、言葉に甘えて貰っておくとしよう。ただ、1着目のやつは本当に無理」

と、言葉を返した。

「ふふ♪受け取っていただけて何よりですわ♪ゴシック系というのも悪くはないでしょう?」

「まぁ、可愛いってのは認める」

メルビィの返答にバジリスクは嬉しそうな表情を表に出してメルビィの手を握る。

「けど、服はまだまだありますわ。一通り試してみたいですわね…」

「………。(汗)」

その後しばらく、メルビィはバジリスクの着せ替え人形にされたのは別の話である。

 

2日目 鍋島の化け猫・すねこすり へと続く


Tale

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