【プロローグ】
とある冬の日、ジャパリパーク・ゴコクエリアにあるミチアト古生物研究所。そこにある広場に紺のセーラー服の様な服を身に纏い、側頭部のヒレと背中から生える大きな尻尾が目立つ古代の大型鯨のアニマルガール、リヴァイアタン・メルビレイことメルビィがいた。
「………。」
誰かを待っているのか、木にもたれかかって貧乏ゆすりをしていた。
「遅いな…」
広場の端にある時計に視線を向ける。そして何かに気付いたかの様に施設の建物の入口の方へ視線を向けた。
その視線の先にはゴスロリ調の服にフリルが目立つスカートとコルセット、そして自らの体を座らせられるほど大きな尻尾を持つ蛇のアニマルガール。ティタノボアことレイナが佇んでいた。
「あら、メルビィ。早かったわね」
「いや、さっき来たばかりだが?それで、ここに呼んだ理由は何だ?」
「そうね。早速、本題に入りましょうか。
ここじゃ寒いし暖房の効いた館内で話しましょう」
と、レイナが180度体の向きを変え館内に入るとメルビィもそれに続いてミチアトの館内へと入っていった。
場所は変わり、ミチアト古生物研究所にあるレイナの私室。
「それでは、本題に入ろうかしら?」
テーブルに2人分の紅茶を用意しながら、レイナはそう告げる。
「あぁ、そうしてくれ。そして紅茶は砂糖多めで頼む」
レイナは「はいはい」と返事をしながら、2つあるティーカップの片方に角砂糖を添えてメルビィへと差し出す。メルビィが紅茶を啜るのを見るとレイナも紅茶で唇を濡らし、言葉を放つ。
「この前、貴女が広場の木を蹴りで折ったのは覚えてるかしら?」
「あぁ、すまなかったな」
そう。メルビィは先日、ミチアトの広場でとあるアニマルガールと擬似戦闘を行い、その過程で広場の木を1本へし折ったのである。
「本当に反省してるなら、一つだけ言うことを聞いてもらおうと思っててね。そのために今日はここに呼んだのよ」
その言葉にメルビィは視線だけをこちらに向ける。
「何をさせる気だ?セルリアンでも出たから倒してこいとかか?ミチアトの警備スタッフになれとかか?それともティニーがいない間に抱き枕になれとかか?」
「ちょっ!?最後のは有り得ないでしょ!?そりゃティニーがいないと寂しいけど…
じゃない!違うわ!」
「なら、何だよ…」
レイナは右手の人差し指を自らの頰に当てて、子供をからかうような笑みでメルビィの足元から頭頂部までを見据える。その視線に対してメルビィが不機嫌そうな顔を浮かべてきた辺りで口を開く。
「貴女には少しイメージチェンジをしてもらおうと思うの
オシャレしてきなさい」
「はぁ!!!?」
レイナの言葉にメルビィが言葉を返すのに0.1秒もかからなかった。
「何故そうなる!?」
「だってねぇ。貴女も少しは服装に気を使うようになれば、その戦闘狂が治るんじゃないかなーって思ったのよ」
「いやいや!それ私のアイアンティティだからな!私から強さを取ったら何が残るんだよ!?それに…私にオシャレなんて…似合うはずないだろ…」
「そんなことは無いと思うよ?
貴女、素材はかなり良いと思うわ。着飾り方次第ではかなり可愛くなれると思うわよ?」
「そ、そんなことはない///!!!!」
「けど、顔が赤くなってるわよ?もしかして興味はあるけど自信はないとか?
最強のアニマルガールって名乗っておきながら弱気ね」
と、メルビィの額を指でツンツンする。その度にメルビィの方がビクッと動く。
メルビィの額部分には彼女の能力の一つ、エコーロケーションに必要なメロン器官が存在し、その影響で額の感度が高いのをレイナは知った上でツンツンしていた。
「戦闘理論とかなら博識なのにファッションやオシャレに関しては無知なのね
最強が聞いて呆れるわ」
「いや、ファッションは戦闘には関わりないだろ…」
「そうかしら?保護色や迷彩だってファッションの一部みたいなものでしょ?
なら、そこも極めないとダメなんじゃなくて?」
「…………。」
言葉を返せないメルビィを他所にレイナは話を続ける。
「まぁ、初心者にいきなり可愛く着替えてみなさいなんて言わないわ。
一週間だけ猶予をあげる。その間にオシャレやファッションについて学んで一週間後に可愛く着飾った姿で私の部屋に来なさい。審査してあげる」
と、メルビィを指差しながら言う。
そして少しの静寂が過ぎ、メルビィがゆっくりと口を開く。
「わかったよ…やればいいんだろ…その口車に乗せられてやるよ」
「ふふ♪言ったわね。私がぬいぐるみにしたくなるぐらい可愛いファッションを期待してるわ♪」
そう微笑みながら言うレイナを背にして、メルビィは部屋から出て行った。
1日目 ノギハラバシリスク へ続く
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