登録日:2023/01/19 Thu 19:52:00
更新日:2024/07/05 Fri 10:27:18NEW!
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カンフー ジャッキー・チェン 師弟愛 拳シリーズ 映画 石丸博也 香港映画 木人 少林寺木人拳 だんまり
奇跡を起こせ 今その腕で
『少林寺木人拳(しょうりんじもくじんけん 広東語:少林木人巷 英語:Shaolin Wooden Men)』とは香港のアクション(カンフー)映画。
主演はジャッキー・チェン。監督はチェン・チー・ホワ。
かつてブルース・リーの映画を手掛け後にジャッキー映画の定番監督として二番煎じC級映画を量産するロー・ウェイが総監督として名前を連ねている。
概要
日本で公開されたジャッキー主演の映画としては最古に近い作品。*1
本家香港では1976年公開。
当時は一週間で公開終了されるなどあまり人気がなかったという。
ジャッキーがまだ『ドランクモンキー 酔拳』でブレイクする前の無名役者に近い時期だったのも災いしたと思われる。
日本では1981年公開。
東映配給で『太陽のきずあと』との併映。
こちらはまだまだ酔拳ブームが冷めない中での公開であり、中々のヒット。
ウィキペディアによると日本では『酔拳』より売れたらしい。*2
後のジャッキー主演作と比べると、コメディー的な空気感があまりなくストイックな印象を受ける異色の作品。
一方で共感しやすい素朴な主人公や復讐物語でありながら物悲しいラストなどから日本のファンにはかなりの人気を誇る作品。
日本独自のテーマソング「ミラクル・ガイ」は名曲かつ作中の主人公の背景ともマッチしていたためこちらも人気。
ジャッキー映画の中では一番好きと語る日本人ファンも少なくない。
脚本も極端な破綻はなく当時にしてはよくできている。他が酷いのが正しい
流石にカンフーは『酔拳』辺りの脂の乗った作品と比べると劣るが決して退屈なものではない。
なお、当時のパンフレットには「ぼくじんけん」、チラシでは「もくじんけん」と当時からして読みにブレがある。
現在のところは「もくじんけん」で落ち着いている様子。
あらすじ
少林寺…そこは日夜カンフーの修行に励む若者の聖地。
そこに入山したばかりの言葉の不自由な青年が今日もカンフーの修行に励んでいた。
ある日彼は食事をもった僧侶を追いかけているうちに洞窟でつながれた罪人と出会う。
罪人と仲良くなった青年は彼からカンフーの稽古をつけてもらうようになる。
しかし、その技はあまりに危険な技であり、それを危ぶんだ少林寺の尼僧からも別の拳法を学ぶこととなる。
二つの拳法を学んだ青年は実力を伸ばし、少林寺の最終試練「木人路」に挑む。
しかし、彼を待つ運命はあまりに皮肉なものだった…。
登場人物
登場人物にはちゃんと名前が設定されているが、当項目では映画中の表記に基づいて記載させていただく。
- だんまり(字幕:小僧)
演:ジャッキー・チェン
声:セリフ殆どないけど石丸博也
少林寺で修行中の青年。言葉を話すことができないが、意思疎通に問題はない。
名前を呼ばれる場面はほとんどなく、もっぱら「だんまり」とよばれる。
なお、イーロンと言う名前を呼ばれるのは吹き替え版特有のもの。
少林寺に来てまだ日が浅く、基礎修行の水くみと薪割りしかやらせてもらえない。
素直で真面目な性格で誰にでも好かれる。
二人の師匠から正反対の拳法を教えられ、木人に挑む。
何か目的があって少林寺に入ったようだが…?
当時のジャッキー・チェンはまだ瞼を整形前でデビュー間もないこともあり垢抜けてなく、野暮ったい顔つきをしているのだが、その辺がむしろ純朴なだんまりのイメージには合っている。
なお、時期によってはだんまりが差別用語と判断され呼ばれていない吹き替えもあるようだが、ブルーレイ収録の吹き替えなどでもだんまりと呼ばれているバージョンが収録されており現在はそこまで問題ではない様子。
本項目でもだんまりで統一させていただく。
- 罪人
演:カム・コン
声:森川公也
ボロボロの服を来て髭や髪も伸ばしっぱなしの壮年。
少林寺の奥の洞窟で四肢を鎖で繋がれている。
一応、僧侶に食事は貰っているようだが、非常に気難しく横柄。
武術の心得があるらしい。
忍び込んできただんまりに食事や酒を貰ったことから彼と仲良くなり、木人を倒すための武術を教えるようになる。
鳥居のように組んだ木で行う組み手修行は印象に残りやすく、ファンから人気がある。
殺気に溢れた急所狙いの実践的な拳法を使い、自身は獅子の拳(字幕では獅子吼)という新たな拳法を開発しているらしい。
以下終盤のネタバレ
本名ファーツー(字幕:ファユー)。
元々は少林寺の僧だったが、拳法を悪用したため破門されてしまう。
それでも悪事を続け、青龍会と白虎会というヤクザを組織し世を乱していた。
その後3人の拳法家に捕らえられ、少林寺に引き渡され幽閉されていたのだった。
少林寺から下山するだんまりに仲間への決起の手紙を渡し、その後獅子の拳を完成させ鎖を破り脱走する。脱走後の髪型は凄い珍妙。
10年も鎖に繋がれていたとは思えない圧倒的強さでかつて自分を捕まえた拳法家や少林寺の追手達を次々血祭りにあげた。
中盤でだんまりと再開するも平気で人殺しをする凶暴さから次第に仲違いするようになる。*3
一方でだんまりの友人は殺さない、だんまりと約束した食堂の娘はきちんと返すなど彼には特別な感情を持っていた節がある。
演者は後の『蛇鶴八拳』や『カンニング・モンキー 天中拳』でもラスボスを演じている。登場のたびにラスボスのカリスマが消えていく
- ウンムイ
演:チャン・ビンユー
声:中西妙子
少林寺の客分の尼僧。名前は字幕より。
だんまりの修行への熱意に感心しつつ、危険な拳法を極めようとしていることに危機感を覚え、彼に蛇八歩(字幕では蛇意八歩)という相手を殺さず身を守る拳法を教える。
彼女がいなければだんまり道を踏み外したかもしれない程の重要人物だが、後半は全くでなくなる。急所を狙ってはいけませんおばさん。
- ファーチ(字幕:ファチー)
演:チャン・イーフェイ
声:藤本譲
少林寺の管長。
だんまりが少林寺を下山する前に罪人から拳法を学んだことに気がつくのだが、あえて見逃し代わりにリンクン大師と言う人物のことを教える。罪人が脱走したときの顔アップを繰り返す謎カメラワークが地味に人気。
- 酔いどれ和尚
演:ウー・テーサン
声:二見忠男
少林寺の僧侶。
常に酒を飲んでおり、自称何もできない呑んだくれだが、実は酔拳の使い手。
教えを請われて酔拳を教えてくれたり、酒を盗んだことがバレても掃除だけで許してくれたりと意外と度量のある人物。
だんまりは2つの拳法を覚えるため酔拳は学ばなくなるのだが、2年後に学ぶこととなる。
- 食堂の娘(字幕:ラン)
演:ドリス・ロン
声:幸田直子
腕っぷしに定評のある姉ちゃん。
青龍会というヤクザに捕まり人質にされるが、何故か何もされず解放される。
一応ヒロイン的ポジションだが、最終盤は登場しなくなり地味。
なお、彼女に絡むチンピラ役の一人にユン・ピョウがいる。探してみよう。
- 食堂の息子
演:ジャン・ジン
声:小山梓
デブ。登場するたびにろくな目にあわない。
こちらも最終盤は登場せず。
- ウェン(字幕:マン)
青龍会のことを調べている謎の男。
かなりの使い手でだんまりを容易にあしらった。
独特の拳法をしており、だんまりはその構えに見覚えがあったようだが…?
以下終盤のネタバレ
- リンクン大師
演:リー・シャオツン
声:大久保正信
ファーチの前の少林寺の管長にして、かつてのファーツーの師匠。
彼に拳法を教えてしまった責任を取り、管長を辞職。自ら目を潰し世捨て人になっていた。
ファーツーの脱走を聞き、ファーチにだんまりに教えるよう少林寺の秘術を記した本を渡す。
その瞬間寿命が尽き、昇天した。
- ウェン
実はかつてファーツーを捕えた三人の拳法家の一人。
友人スーリンを殺した覆面の男を探しており、構えは手がかりを探すためにあえてその男の構えを模したもの。
リンクン大師から渡された少林寺の秘術の書に基づいた修行を行っただんまりは見違えるほど強くなった。
一方で少林寺への復讐を企むファーツーは軍勢を率いて少林寺へ向かう。
少林寺の行く末はだんまりの手にかかっていた。
そこにファーツーを倒すために現れたウェンであったが、返り討ちにあってしまう。
そのとき、ファーツーの構えはスーリンを殺した男の構えと完全に一致していた。
そのことに気がついただんまりはファーツーの前に立ちはだかり…
……何故殺したんだ!
だんまりはファーツーによって殺されたスーリンの息子だった。
父の敵を討つまで口をきかないと決意しており、少林寺に入山したのも全ては復讐のためだった。
同じ構えで相対するだんまりとファーツー。
お互いに満身創痍になり、激戦を繰り広げる二人だったが、蛇八歩や秘術の修行により力をつけていただんまりはファーツーをとうとう追い詰める。
しかし…
たとえ一日でも…あなたは師匠です。
少林寺に戻って真面目に暮らせば、全てを忘れるとファーツーに言うだんまり。
その誘いを断りつつ、自分を超えたことをどことなくうれしげにするファーツー。
まだまだ伸びる…大物になれよ…
優しくだんまりの頭を撫でるファーツーだったが、突如彼を殴りつける。
だんまりを引き起こし胸を突こうとするも避けられてしまいファーツーは自らの喉を貫いてしまった。*4
こうして復讐は果たされた。
かけがえのない師と引き換えに。
その後、だんまりは仏門に入る決意をするのだった。
余談
- 饅頭
そんな汚れたものは食べないと言った罪人を気遣い、だんまりが地面に落ちた饅頭の薄皮だけ剝いて食べさせる場面がある。
当時おまんじゅうの皮だけ剝いて食べるのが流行ったんだとか。
- 木人
木人路という道に用意された木の人形。
木人路を抜けなければ少林寺から下山することはできない。
繋がれた鎖で操られ、中に人がいるようにしか見えない動きで突きや蹴りなど機械的に同じ行動を繰り返すだけだがその一撃はとても重い。
しかも、狭い通路に何体もおり、攻撃を払うと攻撃パターンが変化するため愛嬌のある見た目に反して難敵。
廊下で並んで木人のマネをする遊びも当時流行ったそうだ。
格闘ゲーム『鉄拳シリーズ』に登場する木人の元ネタとなるなど、後世の作品に与えた影響も大きい。
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▷ コメント欄
- 木人の造形は中々に凄い。そして、あれを鎖で動かしてると言い張る少林寺の謎技術にツッコまざるを得ない。 -- 名無しさん (2023-01-19 20:42:20)
- 最後のあれは卑怯打ちの振りをした自害だと思うよだんまりを引っ張ってるし -- 名無しさん (2023-01-19 22:39:48)
- ↑その辺の解釈が分かれるのも魅力だねぇ。どの意見でも合ってるし捨て難い。 -- 名無しさん (2023-01-19 23:43:18)
- カメハメ特訓木人の元ネタってこれだったのか -- 名無しさん (2023-01-20 07:09:03)
- ↑ラーメンマンの額の焼き印なんかも。ゆでは多分カンフー映画めっちゃ好き。 -- 名無しさん (2023-01-20 08:44:22)
- 山野井仁さんがジャッキーの吹き替えやってるやつもあるな -- 名無しさん (2023-01-20 19:47:57)
- ラストシーン、中川家がモノマネでやるときあるやつだな -- 名無しさん (2023-01-21 14:45:42)
- ミラクルガイは名曲 -- 名無しさん (2023-01-30 14:36:29)
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*2 『酔拳』のブームは劇場公開時より、テレビ放映されてからというのもあると思われるが。
*3 吹き替え版ではこの辺の下りはカットされており、最終決戦で脱走後初めて再会したという扱い。
*4 この死に方も単に間抜けな悪党とも、悪は自ら身を滅ぼしたとも、悔い改め自害したともとれるため、その点でも今作は人気。
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