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更新日:2024/07/05 Fri 10:26:43NEW!
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いらっしゃいませ。そして、永遠にさようなら。
概要
『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(原題:Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street)は、2007年12月21日にアメリカで公開されたミュージカルホラー映画。
日本では2008年1月19日公開。
原作は、ミュージカル界の巨匠スティーヴン・ソンドハイム作詞・作曲で、トニー賞を受賞した1979年公開の同名ミュージカル。
日本でも1981年に鈴木忠志演出、市川染五郎(当時)・鳳蘭・市原悦子らの出演によって初上演され、その後も市村正親・大竹しのぶ出演で上演されており、ご覧になった方も多いかもしれない。
監督は[[ティム・バートン>ティム・バートン]]。盟友ジョニー・デップとは6度目のコンビ作である。
元々は『アメリカン・ビューティー』や『007シリーズ(スカイフォール、スペクター)』のサム・メンデスが監督する予定だったがキャスティングがうまくいかず、やがて『ジャーヘッド』を撮るために降板。
企画はバートンの元に回ってくることになった。
原作のミュージカルにバートンが触れたのは、カル・アーツ(カリフォルニア芸術大学)に通う、将来に悩める学生だった時のこと。
彼はロンドンでの休暇中、たまたま「ポスターがカッコよくて面白そうだったから」と、ふらっと劇場を訪れた。
そこで目の当たりにしたものは、全ての要素が調和した全く観たこともないようなものだった。
ミュージカルの知識はなかったものの、とにかく凄い作品であることを即座に理解したバートンは、続けて2回観に行ったという。
曰く、「音楽がとても美しいのに、見た目がちょっと古いホラー映画っぽいという対比が面白かった」とのこと。
その後バートンが映画監督の道に進み、『バットマン』で名声を確立した頃に映画化が考えられたが、実現しなかった。
さらに『マーズ・アタック!』の後にも映画化のためにソンドハイムと話し合ったが、後にボツ企画の代名詞となる『Superman Lives』に飛びついてしまい、また実現せず。
2006年になって、漫画家ロバート・リプレーの伝記映画の企画が延期になったタイミングで前述の通りサム・メンデス降板が決まり、引継ぎを持ちかけられる形でようやく映画化にこぎつけた。
「ストーリーは変えたくない。パロディもエンディングも、ストーリー・テリングに関わることは何一つ変えたくない」
その誠意が通じ、ソンドハイムからも大きな信頼を得ていたバートン。
実際、原作と映画版で構造上の変化はない。
一方で、上演時間3時間の作品を2時間にまとめるため、曲は短く編曲、あるいはばっさりカットされたりした。
例えば開幕の歌『スウィーニー・トッドのバラッド』は登場人物を説明する曲だが、現に目にしているものについてわざわざ語る意味がないとのことでカットされている。
映画化における曲のまとめ方について、ソンドハイムはこう語っている。
今回はそのシーンには有効じゃないという歌をカットした。
ミュージカルの映画化の問題点は、舞台では3分なり5分なりを歌として聴いていればいいところ、つまりその時間をじっくり味わえるけど、
もっとスムーズにストーリーを伝えてほしいと思ってしまう。
僕も一人の映画ファンとして同感さ。
だからティムや(脚本家の)ローガンが、『ここからここまで、もっと早くいけないかな』と言えば、僕は何とか曲を圧縮したり、削除したり、活かしたりする方法を見つけたんだよ。
引用元:キネマ旬報2008年2月上旬1500号記念特別号 P55
そしてこの作品で特筆すべきは、ミュージカルでありながらスプラッター映画ばりの出血と[[カニバリズム>カニバリズム]]要素がメインというショッキングな内容。
原作の時点で観客に大きなショックを与えているが、それがトッドの感情などを表す最も重要な要素であるだけに、バートンは当然スプラッター描写から逃げなかった。
そのため、スタジオに対しては真っ先に説得をしている。
君たち、血に関しては一言だって文句を言わないでくれ。映画には血が登場することになる。
いくつか舞台公演版を観たけど、鮮血描写を和らげると観客は離れて行ってしまう。構わないでくれ。
この映画に関しては政治的に公正になりようがない。
連続殺人鬼の話だし、パイの中に人肉を入れてしまうんだから。映画を温和なものにしようとしないで欲しい。
もっとも、そんなにどぎついものじゃない。
何もかもハマー映画的なやり方で作るし、『ホステル』的なやり方は採用しない。
血は鮮やかな赤色だ。血が一つの象徴であり、配色の基本構造の一部である舞台版に立ち返っているんだ。
引用元:ティム・バートン[映画作家が自身を語る] P351
こうした説得が通じ血みどろ描写全開になった結果、アメリカではR指定*1、日本ではR15+指定*2となった。
ぶっちゃけ、同じく残酷描写を売りにした『スリーピー・ホロウ』よりも流血量がはるかに多いので、グロ耐性の無い方は要注意。
さらにグロ抜きにしても、ほぼ全編にわたってモノクロに近い色遣いの陰鬱極まりない世界観に、スラム独特の臭いや不潔さが際立つような描写がなされている凝りよう。*3
それだけ世界観などが作りこまれている分評価は大絶賛を受けており、アメリカの大手映画レビューサイトRotten Tomatoesでの批評家からの支持率は86%を記録している。
スウィーニー・トッドとは何者か
元々は小説の登場人物であり、『ピープルズ・ピリオディカル』なる定期刊行誌に1846年11月21日から18回連載された『真珠の首飾り』でデビューしたとされる。
翌年には『フリート街の悪魔の理髪師』のサブタイトルで舞台化されて評判に。以降様々なバージョンが上演された。
1920~50年代に舞台・映画で4000回以上もトッドを演じた、イギリス大衆メロドラマの怪優トッド・スローター*4の演技は、彼は実在していたと信じる人を急増させたほど。
現在のイメージである復讐者として描かれるようになったのは1973年から。これを観たソンドハイムが感動しミュージカルにしたことから、そのイメージが定着した。
なお、トッド・スローター版で実在したと信じる人を急増させたと書いたが、実際にこの殺人理髪師が実在したか研究する向きもある。
恐怖小説や殺人小説を多く手がける作家ピーター・ヘイニングによると、1800年頃に実在したとされている。
が、検証を試みた他の研究者からは実在の証拠を発見できていないのが実情である。
イギリスの犯罪史を遡ってみても、スウィーニー・トッドの名や、同様の事件が起こったという記録は残っていないのだ。
一方で1800年、フランスのパリでこの作品と似たような内容の事件が起きていたらしく、『真珠の首飾り』の作者トーマス・プレストは、この事件をモデルに物語を創作した可能性もある。
あらすじ
ヴィクトリア朝中期のロンドン・フリート街。
彼は船乗りのアンソニーと共にそこに戻ってきた。
――15年前、理髪師のベンジャミン・バーカーは、美しい妻ルーシーとまだ幼い娘と幸せに暮らしていたが、横恋慕するターピン判事によって家族を奪われ、無実の罪で流刑にされた。
脱獄し波間を漂っていた所をアンソニーに救われた彼は、スウィーニー・トッドと名前を変えていた。
かつて自身の店があった場所に戻ると、階下でラヴェット婦人がミートパイの店を営業している。
彼女曰く、ルーシーはヒ素を買って服毒自殺、娘はターピン判事の養女になったという。
大切に保管されていた剃刀を再び手にした彼は、復讐のために動き出すのだった……
登場人物
- スウィーニー・トッド(ベンジャミン・バーカー)
演:ジョニー・デップ
腕利きの理髪師で、かつては幸せな家庭を築いていたが、ターピン判事に家族を奪われオーストラリアに流刑にされる。
それから15年後に脱獄、本来の名を捨てて復讐のためフリート街に戻って来た。
最初のターピン判事来訪時、タイミング悪くアンソニーが駆け込んできたことで復讐は未遂に終わるも、そこから完全に吹っ切れていく。
何せラヴェット婦人の恐ろしい証拠隠滅アイデアを「センスがいい」と評し、意気投合しているぐらいなのだから。
客がヒゲをそってもらおうと店を訪れたら最後、剃刀で一瞬で首をかき切って息の根を止めてしまう。
すると改造された椅子がガタンと後ろに傾いて死体をボッシュート。地下室に落ちた死体はラヴェット婦人が回収し挽き肉に加工、ミートパイの具に。
復讐ターゲット以外はよそ者や身寄りのない人をターゲットにし、足がつかないようにしていた。
こうしてウィンウィンの関係を築きラヴェット婦人の店は大成功を収めるものの……
もはや彼は過去と復讐心に完全に捕らわれており、今を受け入れて前に進もうとするラヴェット婦人と根本から考えが違っていた。
……このすれ違いが、後の決定的な悲劇の一因となる。
バートンはトッドについて、このように語っている。
僕らはいつも、彼を悲惨な極悪人とか何かではなく、一人の悲しい人物として見ている。
皆さんが彼に出会う時には、根本的にはもう死んだ人間になっていて、彼を突き動かしているのは、心に秘めたたったひとつの痛ましい出来事でしかない。
誰も彼の周りで起きたことを見ることはできないんだ。
デップも「シド・ヴィシャス*5だって彼に比べれば純情な新聞配達の少年みたいなものだよ。彼は闇を超えた存在だ。彼は既に死んでいる。死んでから何年も経っているんだ」*6
と語っており、もはやどうやっても救えない哀しき存在として描かれている。
また、白いメッシュは彼曰く、トッドの憤怒を表しているという。
- ラヴェット婦人
演:ヘレナ・ボナム=カーター
トッドの大家にして閑古鳥が鳴いているミートパイ店の女将。未亡人。
「ロンドン一まずいパイ」と自嘲するだけあって、厨房にはゴキブリが湧き、まともな肉は高価で買えないので皮ばかりなど、それに恥じないレベルの演出がなされている。
かつてのベンジャミン・バーカーのことも知っており、トッドの正体に気づいた後は共犯者として活動。
トッドが初めての殺人に手を出した後、証拠隠滅と肉の調達のために死体をミートパイの材料にするという鬼畜極まりないアイデアを思いつく。
新装開店した店は大盛況。もちろん客たちはその素材など知る由もなく……
そもそもアンソニーの扱いにしても、ジョアナを取り戻した後は喉を切ればと言い、ピレリ殺害の件もゆすられたと聞いただけであっさり許容したりと、元々そういう気質だった模様。
トッドに思いを寄せており、海辺に家を建て幸せな家族生活を送ることが夢だったが……
- アンソニー・ホープ
演:ジェイミー・キャンベル・バウアー
脱獄したトッドを助けた若き船乗り。
ターピン判事邸の窓辺で歌を歌っていたジョアナと出会い、恋に落ちる。
後日彼女から家の鍵を託され、判事が法廷にいる間に駆け落ちするため、トッドに彼女を1~2時間ほど匿ってほしいと頼むが結局判事にバレてしまう。
ジョアナが精神病院に送られたことを知った後、トッドからカツラ職人の弟子を装って侵入するよう助言を受ける。*7
……もっともトッドはこれを利用して、ターピン判事に「船乗りがジョアナをさらいました」という手紙を出し、店におびき寄せるつもりだった。
ジョアナを救出した後男装させ、彼女にトッドの店で待つように言って馬車を探しに行ったが、そのままフェードアウトする。
- ジョアナ・バーカー
演:ジェイン・ワイズナー
スウィーニー・トッドことベンジャミン・バーカーの娘。
赤子の頃にターピン判事に奪われ、父の顔も知らず、自由のないまま養子として育てられていた。
アンソニーと駆け落ちしようとしていたことをターピン判事に知られ、精神病院送りに。
その後アンソニーに救出されトッドの店で待つことになるが、男装していた上に物乞いの女が侵入したことでトランクに隠れ続けていたため、正体を知らない実の父に命を狙われてしまう……
ネタバレ
その直後に、まだ息のあったターピン判事にスカートの裾を掴まれたラヴェット婦人の悲鳴を聞いたことからトッドが飛び出していったため、辛くも命の危機から逃れた。
彼女が助かったことが、この物語においてせめてもの救いなのかもしれない。
もっとも、アンソニーに「夢なんて悪夢しか知らない」と言っているあたり、彼女の未来も明るくないことが示唆されているが。
- ターピン判事
演:アラン・リックマン
ベンジャミン・バーカーから家族を奪い濡れ衣を着せた宿敵。
好色で、世界各国の性にまつわる書物を集めている。
ルーシーを手籠めにしたばかりか、アンソニーがジョアナを見染めたのを見て、あろうことか養子の彼女に対しても結婚を迫った。
トッドがピレリにヒゲ剃り対決で勝利したのを見て気に入り、店を訪れると約束する。
この時はアンソニーが店内に飛び込んできたことで結果的に命拾いするものの、「船乗りがジョアナをさらいました」の手紙にまんまと乗せられ再びトッドの店を訪れてしまう。
そしてトッドは積年の恨みをついにぶつけるのであった……
- ビードル・バムフォード
演:ティモシー・スポール
ターピン判事の部下の役人。
復讐ターゲットの一人だが、トッドとピレリのヒゲ剃り対決の時には判定を任された。
その後トッドの腕前を超一流と認め、ターピン判事に推薦する。
ラヴェット婦人の店が繁盛するようになった後、煙突から上る煙から異臭がするとの苦情を受け点検に訪れるが、トッドに言いくるめられ犠牲となる。
- アドルフォ・ピレリ
演:サシャ・バロン・コーエン
毎週木曜日に聖ダンスタン市場に現れる自称カザフスタン人……ではなくイタリア人。本名はデイビー・コリンズ。
ロンドン一の理髪師を名乗り、「奇跡の秘薬」と称して育毛剤を売りつけていた。
が、その育毛剤の正体はインクで色を付けた小便。
そのことをトッドに見破られヒゲ剃り対決を挑まれる。
が、結局その対決に負け、後日トッドの店を訪れる。
実は子供の頃にバーカーの店で下働きをしていた経験があり、その正体を見抜いていた。
彼は賭けで負けた分をゆすろうとし、要求を飲まなければ役人たちに正体をバラすと脅迫するが……
怒り狂ったトッドに撲殺され、まだ息があった所をトドメと言わんばかりに剃刀で喉をかき切られ、哀れ犠牲者第一号となった。
- トビー
演:エド・サンダース
ピレリの元で下働きをしていた少年。原作のトバイアス・ラグに相当する。
身寄りはなく、施設からピレリの元に引き取られた。
そこでは、勝負に負けた八つ当たりで暴力を振るわれるなどひどい扱いを受けていた。
商売のために金髪のカツラをつけさせられており、子供ながらかなりの酒豪。施設でジンは睡眠薬代わりだったらしい。*8
ピレリの死後はラヴェット婦人の元に引き取られ、店を手伝うことになる。
こうしてラヴェット婦人には深い恩義を感じるようになった一方、次第にトッドの言動に不信感を抱くようになり、彼女をトッドから守りたいと願うようになる。
が、ラヴェット婦人がピレリの財布を持っているのを目撃してしまう。
その時彼女からパイ作りの手伝いを頼まれ、そのまま地下室で待っているように言われる。
そこで目の当たりにしたのは、パイに指が入っていたり、見るも無残な死体がゴロゴロ転がっていたり上から落ちてくる地獄絵図だった……
逃げ出そうとした彼だが鍵がかけられて出られない。そして彼のことを息子同然に愛していたラヴェット婦人の目には、涙が浮かんでいた。
このように、大人たちに振り回され続けた彼こそ、ある意味本作で一番悲惨な境遇かもしれない。
- 物乞いの女
演:ローラ・ミシェル・ケリー
ターピン判事邸周辺に現れる謎の女性。アンソニーにジョアナのことを教える。
その後ラヴェット婦人の店の周辺にも出現し、町民に彼女の危険性を訴え始める。
バムフォードが店に入ったのを見て追ってきたが、鉢合わせしたトッドに殺害されてしまった。
「どこかで会ったかしら?」の言葉を遺して……
ネタバレ
その正体は、ベンジャミン・バーカーの妻であったルーシーその人。
トッドは復讐心に捕らわれるあまり、皮肉にもその時愛した妻の顔さえ思い出せなくなっていた。
つまり、ラヴェット婦人はトッドと結ばれるためにルーシーは自殺したと嘘をついていたのだ。
事の真相を知り怒り狂ったトッドは彼女を燃え盛るオーブンに閉じ込めて焼き殺した。
そして妻を手にかけてしまい悲嘆にくれる彼もまた、店の秘密を知ったトビーに首をかき切られ、因果応報の末路を迎える。
その姿はまるで、自身の罪や運命を受け入れたかのようだった……
余談
〇本作でミュージカルに初挑戦したデップ。
「人前で1曲歌いきったことがない」という彼はオファーが来た時、昔のバンド仲間に頼んで劇中曲の「マイ・フレンズ」を録音して送った。
しかしこの時すでに他の配役が決定し、衣装やセットの製作も始まっていたため、バートンやプロデューサーのリチャード・D・ザナックはテープを聴くまでやきもきしていたらしい。
デップとバートンは盟友同士とはいえ、まさに一か八かの賭けだったと言えるだろう。
また、撮影前に吹き替えなしで全曲録音し、撮影中は自分の歌をガイドにして演技したという。
その甲斐あって、批評家からは「音楽としての質こそ欠けるものの、役柄に合った歌声」とおおむね好意的な評価を得ている。
〇ヘレナ・ボナム=カーターは10代の頃からミュージカルに憧れており、ラヴェット婦人役を熱望していた。
しかしバートンにとってこのキャスティングは、「公私にわたるパートナーという立場から役を与えたのでは?」と思われてもおかしくないことから神経質になっていた。
そこから散々悩んだ末にオーディションをやったが結局彼女が一番ということになり、さらにソンドハイムも(バートンが誰を選んだか知らない状態で)彼女を選んだことにより決着がついた。
〇当初は予算の関係でセットや小道具は必要最小限にして、グリーンスクリーン*9で撮影する予定だった。
しかし結局、「グリーンスクリーンの前で歌ったら、どんな現実味からも遠くかけ離れてしまって、本当に恐ろしい悪夢になってしまう」とのことで、実物のセットを使うことになった。
〇本作の衣装はすべて手縫いで、ダークな世界観になじむよう色味を抑えてある。
特にラヴェット婦人のドレスは、わざわざヴィクトリア朝時代の布を探し出して作ったというこだわりっぷり。
また、トッドのボーダー柄の水着はボツ寸前だったものの、撮影現場で大ウケしたために採用された。
〇スプラッター描写に力を入れているだけあって、噴き出した血糊の量は4リットル以上。
これは人間の血の総量以上である。
その『キル・ビル』ばりの壮絶なスプラッターぶりに、ザナックもドン引きだったという……
撮影時も、カメラマンたちは色がつくのを避けるためにゴミ袋で作ったライナーを着て臨んだ。
〇映画化は本作が初ではなく、1997年に『スウィーニー・トッド(原題:The Sweeney Todd)』というタイトルで映画化されていた。
もっとも、こちらはミュージカル無しのホラー色が強いサスペンスとなっており、トッドの人物像に関しても復讐の要素がカットされて悪役寄りな殺人鬼に仕上がっている。
バートンの次回作は、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の世界を、バートン流に再現した作品である。
バートンから、キャストたちへのメッセージ
自分が言えるのは、今まで一緒に働いた内で最良のキャストのひとつが今回のメンバーだということだ。
みんなプロの歌手ではないが、考えるに最も難しいミュージカルのひとつだろうこの作品を演じるために、全員が尽力してくれた。
このセットで撮った毎日が、自分にとってとても、とても素晴らしい出来事だったよ。みんなが歌っているのを聴いて、もう1度こんな体験ができるか分からないなと感じている。
追記・修正は、ミートパイを食べながらお願いします。
参考文献
キネマ旬報2008年2月上旬1500号記念特別号(キネマ旬報社)
DVDでーた2008年6月号(角川マガジンズ)
ティム・バートン[映画作家が自身を語る](フィルムアート社)
トッド・スローター Tod Slaughter 忘れられた怪優~英国のベラ・ルゴシ
スウィーニー・トッド~悪魔の殺人床屋は実在したか~
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▷ コメント欄
- 小さいころになんとなく録画したのをみたけどグロは勿論救いのなさに -- 名無しさん (2023-01-19 07:10:18)
- 驚いたな。バートン監督とジョニー・デップの『既に死んだ』人間って評は凄い的確 -- 名無しさん (2023-01-19 07:12:23)
- あれからアンソニーはどうなったんだろうな・・・ -- 名無しさん (2023-01-19 20:27:29)
- 正直、もう復讐以外なんにもないトッドより、夫人の方が恐い。 -- 名無しさん (2023-01-20 14:02:24)
- 暗いロンドンの街の片隅で、全てが転がり落ちるように収束していくラストは圧巻にして必見 -- 名無しさん (2023-01-20 21:16:41)
- ↑2 そこは原作自体が元々単なる猟奇殺人者話だったのが、舞台化を重ねる内復讐話に変わった名残じゃないかな。だって復讐言うには無関係の人死に過ぎだし…。 -- 名無しさん (2023-01-23 23:30:27)
- PCゲームで2階が服屋、1階が人肉パイ屋の奴があったけどこれが元ネタだったのか… -- 名無しさん (2023-02-22 18:00:27)
- これを観るとミートパイが無性に食べたくなる… -- 名無しさん (2023-05-15 22:00:26)
- アメリカの殺人ホテル事件とかが元ネタにあるのかと思ったけど、違ったか -- 名無しさん (2023-05-15 22:37:03)
#comment(striction)
*2 15歳未満の入場・鑑賞は禁止
*3 19世紀のロンドンは下水道が未整備のため、排水は垂れ流し状態で通りには悪臭が漂っていた。空も産業革命と石炭燃料によりスモッグに覆われ多くの健康被害をもたらし、さらに人口過密でスラムがコレラやチフスの感染源になるなど、その環境は不潔で劣悪そのものだった
*4 役名のトッドは「Todd」、演者の方は「Tod」。そして苗字の「Slaughter」は虐殺を意味する。これ以上ないほどぴったりな名前である
*5 伝説的ロックバンド「セックス・ピストルズ」の元メンバーであったパンクロッカー。流血沙汰の絶えない凄惨なパフォーマンスやドラッグの常用等過激な生き様で有名
*6 出典:https://web.archive.org/web/20170217041411/http://ew.com/article/2007/11/03/johnny-depp-cutting-loose-sweeney-todd/
*7 当時カツラ用の髪は、精神病院の患者から仕入れていた
*8 当時はその劣悪な環境により、5歳前に死ぬ子供が多かった。貧困層は大量にジンを密造し、刑務所や病院で子供に飲ませるケースがあり、実に9000人の子供がジン中毒で死亡した
*9 映像の合成を前提として素材を撮影する際に使用される緑の背景
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