登録日:2020/11/05 Fri 15:43:35
更新日:2024/06/06 Thu 13:55:15NEW!
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『シャーロック・ホームズの冒険』とは、1984年から1994年にかけてイギリスのグラナダテレビジョンにより制作された『シャーロック・ホームズシリーズ』を題材にしたTVドラマ。
このため、「グラナダ版」の通称で知られている。
●目次
【概要】
しっかりとした時代考証を元にしたセットや、原作描写に基づいたホームズの描写など、(多少の改変こそあれ)映像化された『ホームズ』作品の中では原作に非常に忠実と言われている。
というのも、ホームズといえば鹿打ち帽を被りインバネスコートを羽織ってパイプを咥えている、と思い起こす方も多いだろうしそんなイメージが広く知られているが、実はこれらは後付けのトレードマークに過ぎない。その点、グラナダ版はそういったものを極力排除しているのだ。
『ホームズ』物はキャラやモチーフだけを使ったオリジナル作品、キャラや舞台にまで大きく変更を加えた作品が多いが、二次創作のようなものではなく原作に近いものを見たい人には本作がお勧めとされることが多い。
最終的に6シーズン+長編シリーズ1回の計7シーズンが放送されたが、主演であるジェレミー・ブレット氏の体調不良もあって後半はかなりアレンジを加えた物が多い。*1
残念ながら全てのエピソードを映像化する前に同氏が亡くなったため、一部の作品は映像化されずに終わってしまった。
【主な登場人物】
()内は演者名。
また、追加収録の記載がある物は放映版でカットされた部分の追加収録の際に吹き替えが変わっている。
- シャーロック・ホームズ
(ジェレミー・ブレット)
声:露口茂(追加収録:諸角憲一)
本作の主役。詳細は「シャーロック・ホームズ」の項目を参照。
容姿や仕草、ブレット氏の名演により、「小説からそのまま出てきたようだ」と世界中で高評価を受けた。
そのため、彼の死と共に未完ながらもシリーズは終焉を迎えてしまった。
というか、同氏が体調を崩した一因には本作の重圧もあったと言われている。
(一番の原因は躁鬱を患っていたことと、支えてくれていた奥方の死だが、丁度そのタイミングでホームズの死を扱った『最後の事件』を撮影していたのも心労に繋がったとか。)
とはいえブレット氏もホームズへの情熱は強く、撮影の都合で原典から変えなくてはならなくなったシーンなどでは監督に強く抗議していたそうだ。
更に晩年も体調不良に悩まされながらも『ホームズ』シリーズの撮影には積極的で、撮影されなかった残りの話も全て演じ切るつもりでいたらしい。それだけに逝去が惜しまれる。
ちなみにブレット氏の御地声は割と尖っており、それが突き放すような印象を与えた。
一方、日本語吹き替えで印象深い露口茂氏の御声はクッションの効いた低めで気取り気味の声色。
方向性が違うが、どちらも甲乙つけがたい名演である。
余談だが、ジェレミー・ブレット氏は元々は舞台俳優。
彫りの深く眼差し鋭い尖った容姿が見初められ、ドラキュラ伯爵役を演じた経験がある。
- ジョン・H・ワトスン
(デビッド・バーク(第2シーズンまで))
声:長門裕之(追加収録:金尾哲夫/立木文彦)
(エドワード・ハードウィック(第3シーズン以降))
声:福田豊土(追加収録:園江治/宝亀克寿)
ホームズの相棒で、本作の語り手。原作と比べると推理や考察が多少鋭くなっている。
また、原作では結婚によりベーカー街221Bを離れるが、本作においては制作の都合で最後までホームズと同居したままだった。
バーク氏が家族の都合*2で引退したので、ホームズが帰ってくる第3シーズンからはハードウィック氏へと交代。以降、ハードウィック氏は公私に渡ってブレット氏を支え続けた。
そのため、グラナダ版の『最後の事件』は「デビッド・バーク最後の事件」とも言われている。
- ハドスン夫人
(ロザリー・ウィリアムズ) 声:竹口安芸子
ホームズたちが暮らすベーカー街221Bの下宿の女主人。
ホームズの奇行に振り回されながらも部屋の掃除や食事の用意、ホームズへの依頼人の取次など、自身の仕事はしっかりこなす女傑。
ちなみに彼女が用意した食事が映るシーンも度々あり、本作の時代背景の演出や雰囲気づくりに一役買っている。
- レストレード警部
(コリン・ジェボンズ) 声:川辺久造
いくつもの事件に登場する、スコットランド・ヤードの警部。
原作描写に依っているので、ホームズへの態度が話によって結構変わっていることも。
- マイクロフト・ホームズ
(チャールズ・グレイ) 声:松村達雄/9話以降:久米明
シャーロックの兄にして、彼以上の頭脳の持ち主。
しかし活動的ではないので、表立って行動する場面は少ない。英国政府に関わる仕事をしている。
……が、ハードウィック氏が撮影に来られない時にワトスンポジションで呼ばれたり、ブレット氏が急に体調が悪化した時にホームズポジションで呼ばれたりしたので、原作よりも出番が増えている。
【放送リスト】
日本語タイトルはNHK放送版(VHS版)表記。
VHS版では放送時のタイトルに依らずに日本語訳タイトルを付けたため、一部はタイトルが変わっている。
後にDVD版が発売された際にはNHK放送版タイトルで収録された。
第1シーズン/『The Adventures of Sherlock Holmes』
元々は『四人の署名』が第1話として作られる予定だったが、他のTV局が既にその話を作っていたので、こちらが第1話として採用された。
有名なアイリーン・アドラー*3の登場する話で、ホームズの人格面や変装技術など、彼らしさが描写された第1話。
ちなみに、報酬であるエレーナの写真は別エピソードでも映る場面があった。
- 第2話 『The Dancing Men』/『踊る人形』
- 第3話 『The Naval Treaty』/『海軍条約事件』
ホームズの自室のVR(ヴィクトリア女王)の形の弾痕が描かれた回。
- 第4話 『The Solitary Cyclist』/『美しき自転車乗り』(『あやしい自転車乗り』)
実は最初に撮影された話。ブレット氏やバーク氏に役に慣れてもらうために、重要な第1話などは撮影が後回しにされていたのだ。
- 第5話 『The Crooked Man』/『まがった男』
Bandが楽団(Band)と紐(Band)のどちらを差しているかわからない、というのも本作の謎解きの一つであるため、作中のセリフでは『まだらのバンド』と翻訳されている。
……が、タイトルは『まだらの紐』表記となっている。
また、ラストの蛇を追い払うシーンはホームズ中心の描写で蛇を映さない形を取ったが、EDで止め絵の形でそのシーンが描かれている。
原作では最後にホーナーがどうなったかは省略され不明なまま*4だが、本作では最後にホーナーが釈放され家族と再会するシーンで締められている。
第2シリーズ/『The Adventures of Sherlock Holmes』
- 第8話 『The Copper Beeches』/『ぶなの木屋敷の怪』(『ぶなの木立』)
- 第9話 『The Greek Interpreter』/『ギリシャ語通訳』
- 第10話 『The Norwood Builder』/『ノーウッドの建築業者』(『ノーウッドの建築師』)
原作では正体不明の焼死体の件が補強されており、犯人の凶悪さが際立っている。
- 第11話 『The Resident Patient』/『入院患者』
ホームズが音楽に聞き入っているサラサーテの演奏会のシーンもしっかり再現されている。
また、次回の『最後の事件』への伏線として、本来は全く無関係のモリアーティ教授が事件の黒幕となった。
- 第13話 『The Final Problem』/『最後の事件』
バーク氏演じるワトスンの最後の事件。
モリアーティ教授を追い詰める描写としてモナ・リザ盗難事件が前半に追加されており、これを解決したことがモリアーティ教授の脅迫シーンや彼の一味の逮捕へと繋がっていく。
最後の滝への落下シーンはスタントマンと人形によって行われ評価が高い。
……だが、人形を使ったせいで落下後に水面に浮かんでしまっており、原作で「死体が見つからなかった」とされる描写とは食い違ってしまっているが。
第3シリーズ/『The Return of Sherlock Holmes』
- 第14話 『The Empty House』/『空き家の怪事件(空家事件)』
ここからワトスンがハードウィック氏に交代となった。
バリツについては英語版では原作通り「Bartitsu」だったが、日本語翻訳版においては「日本の柔術」と翻訳された。
日本で「日本のバリツ」と放送するのはやはりおかしいと判断されたようだ。
- 第15話 『The Priory School』/『プライオリ・スクール』
原作では犯人への追及シーンはなく、依頼者へ犯人の事を伝え遠くにやってもらう事で事件解決となったが、洞窟で犯人を追い詰めるシーンが追加された。
その結果、犯人が洞窟内の高所から落下して死亡してしまい、原作では死ななかった犯人が死亡する形になった。
- 第16話 『The Second Stain』/『第二の血痕』
事件を穏便に済ませるために最後にホームズが仕掛けた策が上手く嵌り、最後にジャンプしながら大喜びするホームズが印象的。
- 第17話 『The Musgrave Ritual』/『マスグレーブ家の儀式書』
原作ではホームズの若い頃の話だったが、ワトスンと共にサセックスへ休養へ向かう今の話に変更された。
儀式書の内容にツッコミどころが目立った為か、基準となる木は屋敷の屋根についた樹木型の風見鶏が目印に変更され、歩数もかなり増やされた。
ラストも行方不明のメイドはどこか国外へ逃げただろうという事で終わっていた原作にアレンジが加えられ、ホームズ達が去った後、近場の湖からメイドの死体が浮かび上がる物へ変更。
原作を知っている程驚く終わり方となった。
- 第18話 『The Abbey Grange』/『修道院屋敷』(『僧房(アベイ)荘園』)
- 第19話 『The Man with the Twisted Lip』/『もう一つの顔』(『唇のねじれた男』)
- 第20話 『The Six Napoleons』/『六つのナポレオン』(『六つのナポレオン胸像』)
スペシャル番組1作目
- 第21話 『The Sign of Four』/『四人の署名』
長編を2時間スペシャル番組として映像化。
日本では1時間の枠で放送する都合上、前後編に分けて放送された。
2時間の枠が取れる場合には1話丸々放送する場合もある。
第4シリーズ/『The Return of Sherlock Holmes』
- 第22話 『The Devil's Foot』/『悪魔の足』
事件の検証の為にその原因となった粉を焼いて事件現場と同様の状況にするシーンがあるが、その際に非常に印象的な幻覚シーンが作成されている。
- 第23話 『Silver Blaze』/『銀星号事件』(『銀星号(シルヴァ・ブレイズ)事件』)
- 第24話 『Wisteria Lodge』/『ウィステリア荘』(『藤(ウィステリア)荘』)
- 第25話 『The Bruce-Partington Plans』/『ブルース・パーティントン設計書』(『ブルース=パーティントン設計書』)
スペシャル番組2作目
- 第26話 『The Hound of the Baskervilles』/『バスカビル家の犬』
長編の映像化2作目。こちらも2時間スペシャル番組。
第5シリーズ/『The Casebook of Sherlock Holmes』
- 第27話 『The Disappearance of Lady Frances Carfax』/『レディ・フランシスの失踪』(『フランシス・カーファックス姫の失踪』)
- 第28話 『The Problem of Thor Bridge』/『ソア橋のなぞ』(『ソア橋の怪事件』)
- 第29話 『Shoscombe Old Place』/『ショスコム荘』(『ショスコム・オールド・プレース』)
- 第31話 『The Illustrious Client』/『高名の依頼人』
- 第32話 『The Creeping Man』/『這う男』
2時間スペシャルシリーズ
短編3作が大きくアレンジを加えた2時間スペシャル版として映像化された。
- 第33話 『The Master Blackmailer』/『犯人は二人』(『恐喝王ミルヴァートン』)
- 第34話 『The Last Vampyre』/『サセックスの吸血鬼』
- 第35話 『The Eligible Bachelor』/『未婚の貴族』(『独身の貴族』)
第6シリーズ/『The Memoirs of Sherlock Holmes』
- 第36話 『The Three Gables』/『三破風館』
- 第37話 『The Dying Detective』/『瀕死の探偵』
- 第38話 『The Golden Pince-Nez』/『金縁の鼻眼鏡』
ハードウィック氏が映画撮影のため出演できず、マイクロフトが相棒役となった。
- 第39話 『The Red Circle』/『赤い輪』
- 第40話 『The Mazarin Stone』/『マザランの宝石』(『マザリンの宝石』・『ガリデブが3人』)
タイトルは『マザランの宝石』だが、『三人ガリデブ』も合わせてアレンジされている。
またブレット氏の体調悪化により、マイクロフトが事件解決に動いている。
ラストの霧の中のホームズのセリフが印象的なためか、日本放送時には順番が入れ替えられ本作が最後に放送。ホームズがマイクロフトを褒める台詞で終了となった。
- 第41話 『The Cardboard Box』/『ボール箱』
本エピソードの撮影後にブレット氏は再度入院し、そのまま第7シーズンを撮影することなく亡くなってしまった。
映像化されなかった作品リスト
『緋色の研究』
『恐怖の谷』
『グロリア・スコット号事件』
『隠居絵具師』
『ライオンのたてがみ』
『株式仲買店員』
『花婿失踪事件』
『オレンジの種五つ』
『技師の親指』
『緑柱石の宝冠』
『黄色い顔』
『ライゲートの大地主』
『ブラック・ピーター』
『三人の学生』
『スリークウォーター失踪』
『白面の兵士』
『覆面の下宿人』
『最後の挨拶』
【余談】
- テーマ曲
各回の内容に合わせてアレンジが加えられている。
クリスマスの話である『青い紅玉』ではクリスマスっぽいアレンジ、『最後の事件』ではおどろおどろしいアレンジになるなど、テーマ曲も1つの楽しみになっている。
- 日本での放送順
日本で放送される際には一部の放送順番が入れ替わっており、以降、再放送する際にもその放送順が使用されている。
- アヘン等の麻薬の描写
当時の状況から原作からして一般人が出向く範囲にアヘン窟等が出てくる事もあって、現代で「酒に酔う」程度の感覚でアヘンを吸っているシーンが度々登場する。
とはいえ、やはり撮影された時代的に主役であるホームズが麻薬を肯定するような描写はまずかったようで、「悪魔の足」の際にコカインを手放すシーンがわざわざ追加された。
君を確実に破滅させることが出来るならば、公共の利益の為に僕は喜んで追記・修正を受け入れよう。
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▷ コメント欄
- 緋色の研究やってなかったのか。評価高いよねこのシリーズ。 -- 名無しさん (2021-11-05 15:52:00)
- 原作のドラマ化としてはめっちゃ評価高い。それだけにジェレミーが死んで全部出来なかったのが本当に惜しい。 -- 名無しさん (2021-11-05 16:02:07)
- 今ちょうどBSで再放送中だから気になるなら途中から見てみるのもオススメ。2時間のやつ以外は単話完結だからどこから見ても問題ない。 -- 名無しさん (2021-11-05 18:59:55)
- 露口茂のタメの効いた演技がまた良いんだよなあ -- 名無しさん (2021-11-05 19:19:08)
- ホームズが音楽でうっとりしたりしていて微笑ましい -- 名無しさん (2021-11-05 21:48:36)
- 子供の頃瀕死の探偵(カルバートン・スミスってのが犯人のやつ)を見てからハマった これと名探偵ポワロのDVDは宝物だわ -- 名無しさん (2021-11-05 23:15:33)
- たまたま赤毛連盟見たけど本当に想像した通りのキャラの造形してた -- 名無しさん (2021-11-06 01:39:14)
- 印象的な話だけど黄色い顔の映像化は難しいだろうね -- 名無しさん (2021-11-06 13:46:35)
- ジェレミー氏の綴りはJeremy Brettだから、ブレッ「ト」の方が正しくないですか? -- 名無しさん (2021-11-06 16:02:49)
- ↑2 ホームズが推理ミスして恥ずかしいってオチだから俺も好きだわ、あの話。 -- 名無しさん (2021-11-09 15:09:32)
- 14話で大塚芳忠さんが声を当てている人がマルフォイにそっくり -- 名無しさん (2021-11-17 20:31:44)
- ↑3 ホームズが自戒のためにこの事件のことを呟いてくれ、というのが印象的だし、事件そのものはいい方向で終わったけれど差別を取り扱った内容だから難しいかな -- 名無しさん (2021-11-28 19:32:22)
- 「覆面の下宿人」いつか映像化してくれないかな、あのシーンは女性を後ろ姿でみせてホームズの表情から察せさせるとかの演出で -- 名無しさん (2021-11-28 19:33:56)
- フォン・ブラウン版はないのか -- 名無しさん (2021-12-10 13:53:09)
- ミルヴァートン最強すぎて怖い -- 名無しさん (2023-06-02 08:52:38)
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*2 小さな子供と共に過ごす時間を望んだ。
*3 本作中では「エレーナ・アドラー」呼び。
*4 とはいえ釈放されるだろうし、そうならないならホームズが動くつもりではあった。
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