回廊の戦い(銀河英雄伝説)

ページ名:回廊の戦い_銀河英雄伝説_

登録日:2018/10/07 (日) 02:55:22
更新日:2024/03/26 Tue 11:17:20NEW!
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銀河英雄伝説 銀河英雄伝説の戦役 架空の戦争 回廊の戦い 暗殺 戦争 魔術師、還らず エル・ファシル革命政府 悪口合戦 八月の新政府



ここに宣言する!
余はヤン・ウェンリーを跪かせぬ限り、オーディンはおろかフェザーンにも帰らぬことを!!


「回廊の戦い」とは、SF小説「銀河英雄伝説」内における軍事作戦行動の名称。


●目次


【背景】

宇宙暦799年/帝国暦490年、バーラトの和約によって自由惑星同盟は銀河帝国との長きにわたる戦いに敗北し、事実上銀河帝国の支配下に置かれた。
これにより軍を退役したヤン・ウェンリーは半年間の雌伏の後、艦隊を率いてイゼルローン要塞を奪取。
自由惑星同盟から独立を宣言したエル・ファシル革命政府と共にゴールデンバウム王朝を滅ぼし新王朝の開祖となったラインハルト・フォン・ローエングラム率いる新銀河帝国の支配に立ち向かうこととなった。


これに先立ちラインハルト率いる新銀河帝国軍はマル・アデッタ星域会戦においてアレクサンドル・ビュコック提督率いる自由惑星同盟軍を壊滅させ、宇宙暦800年/新帝国暦2年2月20日、「冬バラ園の勅令」を発布して自由惑星同盟を名実ともに滅ぼした。
旧同盟領を支配下に置いたラインハルトは、続いて銀河の完全統一を掲げ、イゼルローン要塞に拠るヤン一党を討伐するために、4月2日旗下の諸将と共にハイネセンを出発した。


4月15日、帝国軍が出払った惑星ハイネセンのホイッチュア丘陵にある国立精神病院で不審火が起こった。死者・行方不明者が11名発生したが、その中に元同盟軍准将アンドリュー・フォークの名前があった…。


【登場人物】


◇新銀河帝国

新銀河帝国皇帝。旗艦はブリュンヒルト。
既に帝国は回廊の両岸を支配しており、イゼルローン要塞自体の戦略価値は無くなっていたものの、バーミリオン星域会戦で敗北寸前まで追い込まれたラインハルトは、ヤンに勝ちたいという欲求から軍を動かす。


ミッターマイヤーとロイエンタールはこの出兵には反対しており、ヒルダまでもが再三に渡って戦う必要はないと説得をしたものの、それらの反対を押し切ってラインハルトはヤンと決着をつけることに執着した。
このあくまでも自らの欲求と覇気を満たそうとするラインハルトの態度は後に軍務尚書オーベルシュタインより痛烈に非難されており、

「皇帝の個人的な誇りのために数百万の将兵が無駄死にさせられた。それではゴールデンバウム王朝と変わらない」


と言われてしまっている。


統帥本部総長。ブリュンヒルトに乗艦。
この戦いの前に、併合した同盟領を統括する「新領土ノイエラント総督」就任が決定している。


  • ウォルフガング・ミッターマイヤー

宇宙艦隊司令長官。旗艦は人狼ベイオウルフ


黒色槍騎兵艦隊シュワルツ・ランツェン・レイターを率いる猛将。旗艦は王虎ケーニヒス・ティーゲル


速攻に定評のあるファーレンハイト艦隊司令官。旗艦はアースグリム。


  • エルネスト・メックリンガー

メックリンガー艦隊司令官。旗艦はクヴァシル。
大親征には同行しておらずオーディンに残留。


  • ナイトハルト・ミュラー

「鉄壁」の異名を持つ、ミュラー艦隊司令官。旗艦はパーツィバル。


  • エルンスト・フォン・アイゼナッハ

沈黙提督の異名を持つ、アイゼナッハ艦隊の司令官。旗艦はヴィーザル。


  • カール・ロベルト・シュタインメッツ

シュタインメッツ艦隊司令官兼大本営幕僚総監。旗艦はフォンケル。



◇エル・ファシル革命政府

  • フランチェシク・ロムスキー

エル・ファシル革命政府首席。
本職は医師の為、作中では「ロムスキー医師」と呼ばれることも多い。
バーラトの和約によって、事実上は帝国の従属国となってしまった同盟に対し「真の民主共和政」を体現する国家としてエル・ファシルの独立を宣言した。


エル・ファシル革命軍司令官。元帥。旗艦はユリシーズ。
後世に民主共和政の芽を残すべく、圧倒的に優勢な帝国軍に対し持てる知略の全てを尽くして戦いに挑む。


  • エドウィン・フィッシャー

副司令官。中将。旗艦はシヴァ。
寄せ集めに等しい革命軍を縦横無尽に運用する艦隊運用のエキスパート。


[[「この戦いが終わったら、アッテンボロー中将に倣って偉そうに本の一冊でも書いてみますかな」>死亡フラグ]]


分艦隊司令官。客員提督。旗艦はヒューベリオン。


  • ダスティ・アッテンボロー

分艦隊司令官。中将。旗艦はマサソイト。


  • マリノ

分艦隊司令官。准将。旗艦はムフウエゼ。


  • ムライ

参謀長。中将。


  • フョードル・パトリチェフ

副参謀長。少将。


後方勤務部長。中将。イゼルローン要塞に残留。


イゼルローン要塞防御指揮官。中将。イゼルローン要塞に残留。


  • ライナー・ブルームハルト

薔薇の騎士ローゼンリッター連隊第15代連隊長代理。中佐。
シャーウッドの森艦隊に同行した連隊長カスパー・リンツ大佐に代わって、ヤンを巡るハイネセンでの騒動でシェーンコップを補佐し大暴れした。


  • スーン・スール

アレクサンドル・ビュコック元帥の元副官。少佐。
同期には「あの」アンドリュー・フォークがいる。



◇その他

  • ド・ヴィリエ

地球教の大主教。
地球の本部は帝国軍のワーレン上級大将率いる討伐軍によって壊滅させられたが、残党を率いてテロ活動を続ける。
今回の戦いの裏ではヤン・ウェンリーとラインハルトの講和を阻止するべく、密かに暗躍を行う。


元同盟軍准将。
自らのエゴと誇大妄想を満たすために自由惑星同盟を滅ぼすきっかけを作った最大の元凶で、
挙句の果てに軍のトップまでも逆ギレによる発狂で殺人未遂を犯し、精神病院に幽閉されていた。
既に治療不能な狂人と化しているがヤンを抹殺するため地球教によって拉致・洗脳される。




【以下、作戦行動の内容とその経過】


◇前哨戦

旧同盟領からビッテンフェルト艦隊とファーレンハイト艦隊、そして帝国領からメックリンガー艦隊が先遣部隊として、イゼルローン回廊へと派兵された。


開戦に先立ち、ビッテンフェルトはヤン艦隊に対して降伏を勧告。
ビッテンフェルトからの通信は、


かつての自由惑星同盟軍随一の将帥から、今や共和主義者の残党ども唯一の将帥となったヤン・ウェンリー氏に対し、帝国軍より通達する。
平和と統一に対する卿の抵抗は、道徳的に無益であるのみならず、戦術的に至難であり、戦略的には不可能である。
賢者たる卿にそれを理解しえぬはずはない。本職は心より忠告する。
卿が生命とささやかな名誉を守りたいと欲するならば、叛旗を下ろし皇帝カイザーの慈悲を求められよ。本職はその仲介役を喜んで務めるであろう。
理性あるご返答を期待するや節である。


降伏勧告とは名ばかりの無礼なものであったが、これに対してアッテンボローが通信文の返答を担当し、その内容が


連年失敗続きにもかかわらずその都度階級が上がる奇跡の人、ビッテンフェルト提督へ。
貴官の短所は、勇気と思慮の不均衡にあり、それを是正したく思われるのであれば我が軍を攻撃されよ。
貴官は失敗を教訓として成長する最後の機会を与えられるであろう。
唯一以外の将帥、ダスティ・アッテンボロー。


と揶揄していたためビッテンフェルトを激怒させた。


これらの艦隊は、ラインハルトの本隊到着まで待機するよう命じられていたものの、それまでに帝国軍にある程度ダメージを与えておきたいと考えるヤンの思惑によって戦端が開かれた。この時点でのヤン艦隊の戦力は実動2万隻強(総数は2万8千隻あったが、うち3割が整備が必要とされている)、帝国軍の3個艦隊はビッテンフェルト・メックリンガー両艦隊が各15,900隻、ファーレンハイト艦隊が15,200隻となっている。


ヤンは上記の文書の通達と同じくして、メルカッツが再び帝国に寝返る意思があるという偽造文書を送ることでビッテンフェルト艦隊とファーレンハイト艦隊を足止めする。まずメックリンガー艦隊を牽制するため、全艦隊を帝国側出口方面へ移動させる。メックリンガーはこれを見て、イゼルローン要塞へ流入した戦力を過大に見積もってしまい、後退を命令してしまう。
続いて再びビッテンフェルトに偽の文書を送ると、罠にかかるまいとするビッテンフェルトの心理を逆に利用し、4月20日アッテンボロー分艦隊が帝国艦隊をイゼルローン回廊内へと誘い込むことに成功、本隊到着前に開戦することとなった。
回廊の狭さを利用してビッテンフェルト艦隊とファーレンハイト艦隊を包囲し大打撃を与える。
帝国軍が上手く動けない中、ビッテンフェルトとアッテンボローは何とオープン回線で悪口を交わし始めた。


「怯むな! 前進しろ! 無理矢理にでも接近戦に持ち込めば勝機はある!」


「混戦に持ち込んで戦況がヤンのコントールを離れれば、ヤン艦隊など寄せ集めの弱兵に過ぎん!」


「昨年のバーミリオン会戦のことを思い出してみろ! 貴様ら帝国軍は惨敗・大敗・完敗の挙句、宇宙の塵と成り果てるはずだった!」


「それをお情けで助けてもらったくせに、恩を忘れて再侵略してくるとは! 貴様らの皇帝は顔が綺麗なだけのロクデナシだ!」


「――奴ら、ただではすまさん!(怒) 全艦、敵と刺し違えてでも倒せ!!(怒)(怒)」


アッテンボローの挑発にブチギレたビッテンフェルトは強行突破を図り、ファーレンハイトも隙を突いて側面から集中攻撃を仕掛けて割り込もうとするが、フィッシャーの巧みな艦隊運動によって難なくかわされてしまい、メルカッツによる空戦部隊の近接攻撃でダメ押しされてしまう。


「この戦法、メルカッツ提督か……」


「よろしい。本懐である……!」


ファーレンハイトの集中砲火で包囲網を突破して回廊からの脱出を図った帝国軍だが、更に回廊出口にピンポイントで十字砲火を仕掛けられてしまう。
甚大な被害を出しながらも辛うじて全滅は免れた帝国軍だったが、4月30日23時15分、殿を務めたファーレンハイトは乗艦アースグリムを撃沈されて戦死してしまう。


緒戦ではヤン艦隊が勝利したものの、ラインハルト率いる帝国軍の本隊が合流すると帝国側の戦力は15万弱にまで増大。
一方のヤン艦隊はこの時すでに2万隻そこそこであり、数的な戦力差は圧倒的であった。
2個艦隊3万隻強を半壊させたが自軍も3割に達する大損害を受け、戦力差はかえって開いてしまった。*1


◇回廊の戦い

5月3日イゼルローン回廊へ侵攻を開始した帝国軍に対し、数的な不利を補おうとヤンは回廊内に機雷原を配置することで足止めを図る。ロイエンタールは指向性ゼッフル粒子を用いて機雷を爆破し、機雷原に通路を作りだした。
これに対しヤン艦隊は機雷原を突破してきた帝国軍に砲撃を集中させることで帝国軍に打撃を与えるが、圧倒的な数の優位を生かした帝国軍は、5月4日に犠牲を払いながらも回廊内に侵入した。
だが10万を超える大軍には狭すぎるイゼルローン回廊では思うように動くことができず、疾風の異名を誇るミッターマイヤーでさえ得意とする高速の艦隊運用も活かせずに幾度となく失策を犯してしまうほどだった。


ヤン艦隊は圧倒的な戦力差を回廊の狭さでカバーし守備に徹していたが、5月6日にメルカッツ提督の献策で帝国軍の左翼を集中して攻撃し、その隙にマリノ准将が率いる分艦隊が敵本隊を叩くという作戦に出る。


シュタインメッツ艦隊が割り込み盾となったことで、頭を押さえられたマリノ分艦隊は一時壊滅の危機に瀕した。
ところが、この直後にヤンの本隊が密集隊形にて突入してきたため、逆にシュタインメッツ艦隊は側面を急襲される形となってしまった。
そして11時50分、シュタインメッツ艦隊旗艦フォンケルに砲撃が命中。シュタインメッツ上級大将以下、艦隊司令部が全滅した。
司令部を喪失したシュタインメッツ艦隊は指揮系統に混乱をきたし、帝国軍は戦線崩壊の危機に瀕する。
この状況を打ち破るためロイエンタールは帝国軍の本隊を後退させてヤン艦隊を引き込み包囲しようとするが、指揮系統の乱れから艦隊間の連動に遅れが生じたため、その隙にヤン艦隊は一点突破攻撃を実施し、猛烈な勢いで旗艦ブリュンヒルトに迫った。
だが、ラインハルトは迫るヤン艦隊に対し、絶妙なタイミングで攻撃を指示。
大打撃を受けたヤン艦隊はイゼルローン要塞へと撤退する。


5月7日、ヤン艦隊は再度攻勢に転じ、帝国軍も応戦するも回廊の地形を最大限利用し、局地的に戦力的優位を作るヤン艦隊に対し決定打を与えることが出来ず、戦線は混乱を極めた。
5月8日、ラインハルトの下に「ミッターマイヤー提督戦死」の凶報が届く。これは誤報であったが、結果的にはラインハルトに全面攻勢を決意させる切っ掛けとなった。


5月9日、ブリュンヒルトで行われた御前会議で新しい作戦方針が伝えられた帝国軍は、翌10日より戦闘を再開した。それは各艦隊を1つずつ順番に突撃させ絶え間なく攻撃を続ける数の優位を最大限に活かした物量作戦であった。
帝国軍の全戦力が巨大な圧力となってヤン艦隊を襲い、ヤンはイゼルローン要塞に撤退するよう艦隊に命じるも、ミュラーら帝国の諸将に隙は無く、後退はおろか補給や休息の時間も与えられず将兵の疲労が蓄積されていった。
ヤンは各艦隊との連係プレーによって第一陣のミュラー、第二陣のアイゼナッハ、第三陣のミッターマイヤー麾下の分艦隊、さらに第四陣の黒色槍騎兵艦隊(旧ファーレンハイト艦隊との混成部隊)までは辛うじて持ち堪えたものの、15日19時20分に黒色槍騎兵艦隊の後退と時を同じくしてヤン艦隊の要ともいえる「生きた航路図」こと副司令官フィッシャー提督が戦死してしまう。


将兵の疲労困憊・物資の欠乏、そしてフィッシャー中将の戦死により、敗北を覚悟したヤンだったが、その寸前の18日にラインハルトが突然の病に倒れ、帝国軍は攻勢を停止。潮時と見たラインハルトはヤンに対して停戦と会談を申し入れた。


余談ではあるが、帝国軍が物量作戦に切り替えてからの8日間、不眠不休で戦ってきた艦船乗り組みの将兵は過度の睡眠不足になっており、帰還したイゼルローン要塞のあちらこちらで倒れて睡眠をむさぼる将兵の山が出来上がっていた(無事なのはキャゼルヌやシェーンコップらイゼルローンに残留した将兵のみ)。


脳細胞がミルク粥になってて考え事どころじゃない・・・


ベッドが欲しい、女付きじゃなくて、いい・・・


起こした奴は、反革命罪で銃殺・・・


私も今は、無限の未来よりも、一夜の睡眠が欲しい心境だ・・・



200万の将兵と2万2400隻の艦船を失った帝国軍でも疲労の極みにあったが、ある者は圧倒的兵力差で挑んだにもかかわらず、戦術的敗北の上での停戦に無念の臍をかみ、またある者は再戦に向けて未だに戦意を高ぶらせており、全宇宙の耳目がこの二人の会談結果に注目していた。






・・・だが


◇魔術師、還らず

ラインハルトからの会談の申し入れに、これ以上の戦闘継続は不可能と感じていたヤンも会談に応じる。
ヤンはラインハルトと会談するため、5月25日、ロムスキーらエル・ファシル革命政府の首脳陣と護衛役のパトリチェフとブルームハルト、スールと共に巡航艦レダⅡでラインハルトの旗艦ブリュンヒルトに向かう(フレデリカは過労のため病床にあったため同行せず、ユリアンもなぜかヤンが同行させなかった)。


この時、ヤンを含めた誰もが戦いの終わりによる安堵からか油断をしていた。


「ラインハルトという太陽を直視したがために、他の星の存在に気付かなかったのである――」


ヤン達とは入れ違いでイゼルローン要塞に到着したボリス・コーネフの口から、精神病院より脱走したアンドリュー・フォークがヤンを暗殺しようとしていることを告げられる。
ヤンを保護するため急ぎ出港するユリアン達だったが、時すでに遅く、会談に向かうヤンの乗艦をフォークと地球教の残党が襲撃した。


地球教徒たちは、皮肉にも第7次イゼルローン要塞攻防戦でヤンが使ったのと同じく、フォークの武装商船を攻撃し沈めることで、帝国軍の駆逐艦に乗艦した地球教徒を「味方」であると誤認させるという手を使い、ヤンへの挨拶を口実にレダⅡへの乗艦許可を得た。そこで迎えたのはロムスキーら独立政府の面々であったが、襲撃者たちはロムスキーをその場で射殺し、逃げ惑う政治家たちを追って艦内へと侵入していった。


レダⅡの中で激しい銃撃戦が繰り広げられ、


よせよ…痛いじゃないかね…(パトリチェフ)


あの人が生きていないと…これから先、面白くないですからね…(ブルームハルト)


護衛のパトリチェフとブルームハルトが戦死、スールが重傷を負う。
折悪しく就寝前で睡眠導入剤を飲んで意識がもうろうとしていたヤンも、ふらふらと艦内をさまよっていたところで、凶弾に倒れた。



ごめん、フレデリカ。ごめん、ユリアン。ごめん、みんな……



薄れゆく意識の中で、フレデリカ、ユリアン、そして大勢の友や仲間たち、脳裏に浮かぶ彼らに謝罪と別れを告げながらヤン・ウェンリーは帰らぬ人となる。
時に宇宙暦800年/新帝国暦2年6月1日2時55分。享年33歳。
戦場では不敗と謳われ、そしてまたテロには歴史を変えられぬ無為なものと嫌悪したヤン・ウェンリーは、皮肉にも暗殺によってその命を落としたのだった。


【影響】

ヤン・ウェンリーの死を知ったラインハルトは、喪中の敵を討つことを忌避し、全軍に対して撤兵を命じる。
帝国軍を代表して弔問に訪れたミュラーは、短いながらも誠意のこもった弔辞を述べ、ヤンの死を悼んだ。


ロムスキーもレダⅡで死亡したこともあり、エル・ファシル革命政府は解散する。そしてヤンを失ったことで動揺した人々はイゼルローンを離れ、民主共和制の最後の牙城も瓦解した…。







かに思われた。



八月の新政府ニュー・ガバメント・イン・オーガスタ


そして、宇宙暦800年/新帝国暦2年8月4日――


わたし、フレデリカ・グリーンヒル・ヤンは、ここに民主共和政治を支持する人々の総意にもとづいて宣言します。


イゼルローン共和政府の樹立を――


アーレ・ハイネセンに始まる自由と平等と人民主権への希求、それを実現させるための戦いが、なおつづくのだということを……。


この不利な、不遇な状況にあって、民主共和政治の小さな芽をはぐくんでくださる皆さんに感謝します。……ありがとうございます。


そして、すべてが終わったときには……ありがとうございました――と、そう申しあげることができればいいと思います……。


ヤンの妻であったフレデリカ・グリーンヒル・ヤンを首席に、ユリアン・ミンツを軍司令官としてイゼルローン共和政府が新たに樹立されることになった。


イゼルローン共和政府、ばんざい!


くたばれ、カイザー・ラインハルト!


斉唱:自由惑星同盟国歌

人口400億のローエングラム朝銀河帝国に対し、わずか94万人――全人類4万2500分の1だけが、なおも民主共和制の旗を掲げ続けるのだった。



before第2次ラグナロック作戦


next第二次ランテマリオ会戦


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  • 個人的にはラインハルトはヤンが死亡した時点で全軍に再攻撃を命じるべきだったと思う。そうすれば銀河の統一はこの時点で達成していた。はっきり言えばこの戦争や後の戦争の犠牲者はラインハルトの美学に無駄死にさせられたとさえ言える -- 名無しさん (2019-03-25 04:03:33)
  • 何で名称にイゼルローン要塞攻防戦が入らないのかな?普通にこっちが第11次イゼルローン要塞攻防戦で良いような気がするけど -- 名無しさん (2020-04-18 07:45:54)
  • 参謀長はムライさんじゃないの? -- 名無しさん (2020-04-21 23:56:03)
  • ↑2 たぶん、イゼルローン要塞近辺で戦わなかったからじゃないかな? 戦闘の舞台になったのはティアマト会戦みたいに回廊の出入り口に近い方だったし。 -- 名無しさん (2020-04-25 15:00:30)
  • これ、そういえばヤン暗殺の時のフォークの武装商船と地球教の駆逐艦の動きって帝国軍に捕捉されなかったのかな? 帝国軍は回廊の外で待機して警戒は続けてるだろうから、回廊に侵入しようとする宇宙船なんて捕捉されそうなもんだけど。それこそ、ヤンが来るのを待ってた訳なんだし。 -- 名無しさん (2020-10-11 18:09:58)
  • というかヤンを暗殺したのって本当に地球教なのか?当時の情勢で地球教がヤンを暗殺してもデメリットだけでメリットは無いだろ。ぶっちゃけ帝国がヤンを暗殺して地球教に罪を擦り付けたって方がしっくりくる -- 名無しさん (2020-12-19 01:40:43)
  • ↑「地球をわが手に」っていう襷を所持していたのが証拠だけど、そんなもの捏造することぐらいはできるもんな。となると容疑者として思い浮かぶ筆頭は、直前にヤン暗殺を進言してたオーベルシュタインかな -- 名無しさん (2021-07-17 18:07:53)
  • フジリューや新アニメで辻褄合わせるとしたら、実はイゼルローン回廊とフェザーン回廊の間には戦艦が1,2隻くらいしか通る余裕がない直通の隠しルートがあって地球教とフォークはそこを通って回廊入り口の帝国軍をかわした、とかになるかな? 特にフジリューはフェザーンの設定が変わってるから、そういうのがあってもおかしくないし。 -- 名無しさん (2021-07-19 15:32:42)
  • ↑2思ったのだけれど、オーベルシュタインも一枚絡んでいる可能性もある。フォークのヤン暗殺計画をボリス達が詳しく知ってたから、フェザーンで武装商船の強奪騒ぎがあったと思われ、そこに残っていたオーベルシュタインにも情報は届いていたけどそれすら利用してヤン暗殺を幇助したのかも。 -- 名無しさん (2022-01-12 22:42:01)
  • ぶっちゃけ、ボリスも封鎖突破してるんで、封鎖線はかなりザル……というかいかに回廊が狭いといえど宇宙は広大だしサルガッソスペースだってハイネセンらが多数の犠牲とともに踏破してるわけで絶対侵入不可領域じゃない、艦隊の動きは制約されるが個艦単位ならいくらでも抜け道があるんだろう。 -- 名無しさん (2022-08-08 21:26:45)
  • ラインハルトもガイエスブルグ要塞を包囲したが、完全に封鎖できなかったしな。おまけに帝国兵にあれだけの信徒がいたんじゃ地球教にとって帝国軍の警戒システムなんざ紙も同然やろ -- 名無しさん (2022-08-08 21:38:32)
  • ↑11和平交渉しようとしてたのに暗殺されたから転じて討ちます掌返しは、成り上がって支持を得ている清廉で立派なラインハルト像、それを国是・沽券としてる現帝国への信を揺らがせて政治的に難しかったとも思うがな(見かけ統一で根がグラついたら意味がない)。ロイエンタールだけは迷ったがすんなり引いたし、批判や蒸し返しが起きなかった辺りにも反映されてると思う。 -- 名無しさん (2022-12-11 17:17:22)
  • ↑12というか全軍攻撃なんて命じたらますます『ラインハルトは勝てないから”あのカルトの”地球教徒を使って暗殺した』ってトンデモない流言が飛び交って、帝国内部ですらグラつくのは確実だろう。ましてや帝国軍に地球教徒への協力者がいたなんて事実が見つかった状態で。 -- 名無しさん (2023-06-15 20:57:33)
  • ↑1、2そんなもんラインハルトが勝ったら全部陰謀論扱いされるだけだろ。 -- 名無しさん (2023-11-21 07:52:27)
  • ある種の信仰の問題でそれが帝国の強さに直結してるから、陰謀論が蔓延るだけでもやばいし陰謀論扱いして強権的に押さえ込めば済む問題でもない。あとぶっちゃけ兵もやる気を失ってるんで、ここから難攻不落の要塞に総攻撃かける(流石に総攻撃中に葬式継続したりしないだろう)のも士気的につらかったりする。降伏勧告の方は、非公式ではあるがミュラーがやってる(公式ではないので拒絶されても直ちにアクション起こす必要がない -- 名無しさん (2023-11-21 22:04:16)

#comment

*1 ヤンの目論見としては半壊させた2個艦隊が丸ごと戦列を外れることを期待していたのだが、ファーレンハイト艦隊の残余は黒色槍騎兵に糾合されたため、実質1個艦隊減に留まってしまった。

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