タイガーマスク現象

ページ名:タイガーマスク現象

登録日:2011/01/14 Fri 04:40:49
更新日:2023/09/11 Mon 12:10:52NEW!
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」とは、2010年12月25日から翌年春前あたりまで全国各地で起きた謎の寄付行為のことである。


事の発端は12月25日。
群馬県のとある児童相談所に赤い包装紙に包まれたランドセル10個(30万相当)が置かれていた。同封されたカードにはこう書かれていたらしい。


こどもたちのために使ってください。

伊達直人



このことはニュースで「タイガーマスクからのクリスマスプレゼント」等として称され報道、全国に知れ渡ることとなった。



だがここで、そもそも何故「タイガーマスク」?伊達直人って誰?と思う人も出てきているだろう。
なのでまずそこから簡単に説明したい。
タイガーマスクとは1960年代後半~70年代にかけて少年マガジンにて連載、TVアニメ化した梶原一騎原作の作品である。


孤児院育ちの主人公・伊達直人は、動物園の虎の檻の前で喧嘩したことをきっかけに悪役レスラー養成機関「虎の穴」にスカウトされ、
日本人初の悪役レスラー「タイガーマスク」となる。


伊達は試合で稼いだファイトマネーの半分を虎の穴に、残りの金を素性を隠しつつ育ててもらった孤児院に寄付していた。
だがある日、その孤児院の経営が厳しい状態にあると知り、伊達は本来虎の穴に上納する分の金まで寄付にあてることに。


虎の穴から裏切り者扱いされることとなった伊達は、リングを舞台に様々な刺客達と戦うことになる…。といった話である。
今回の件との関連性は何となく理解して頂けただろう。



話を戻すが、前述の一件から数日が経ち、新年は1月1日。今度は神奈川県の児童相談所にラッピングされたランドセルが置かれていたのだ。
添えられた手紙には


お年玉です

伊達直人



とあり、また


群馬の件に非常に感銘を受けた


とも書いてあったらしい。


おそらくニュースを見た人が「私もやりたい」と思ったのだろう。
これを皮切りに沖縄静岡岐阜長崎…とあちこちの県で同じような偽名の寄付行為が報道されるようになり、
1/13日までに47都道府県全てで報告されるまでに至った。
これがタイガーマスク現象である。



なお、この項目を立てた時点(2011/1/14)で件数は300を超えており、総額は数千万円となっている。


寄付されているのは主にランドセルであり、他にも文房具やおもちゃ、お菓子、商品券や現金といったものまであるらしい。


また偽名も伊達直人のみではなく、同原作者のあしたのジョーこと矢吹丈、同姓繋がりで伊達政宗、他には桃太郎や肝っ玉かあさん、
果てには涼宮ハルヒムスカ大佐不動遊星を名乗る者まで出ているようである。
なんと実在の人物(渡部陽一)の名を騙る者も。手紙には「かなり……遅れた……お年玉」
うむ、かなりふざけ倒している。
後の2020年には似たような寄付金が竈門炭治郎の名前で贈られたという。



しかし、ここまで全国的に発展すると気になるのは国の反応。
当時首相であった菅直人氏は、


「本当に心温まる活動だと思ってみています。共助の精神とか、そういうものを大切にしたいと改めて思いました。」


(当時)厚生労働相細川氏は、


「本当に温かい気持ちに感謝している」


と述べている。
どうやら国も認知、そして公認したものとみていいらしい。



懸念

確かにこのタイガーマスク現象、暗いニュースばかりの昨今に現れた、心温まる素晴らしい美談である。
しかし、この現象に関して危惧すべき事柄もあるのだ。



具体的な話をすると、一つ目は「一過性」の出来事で終わるのではないかということ。
日本人というのは熱しやすく冷めやすい。この寄付行為が果たしていつまで続くだろうか。一つのブームとして過ぎ去ってしまうのではないか。


当時こそマスコミは連日のように報道し、ネット上でも所謂「祭り」感覚で盛り上がりを見せていたが、
一段落ついた後にこのような現象が再び起きるのか…断定は出来ない。
中には30年以上前から募金をしている方もおり、ブームとは無関係に続いて欲しいものである。



二つ目は「現象」から「問題」になる可能性も秘めているということ。
まず、施設や子供からすれば、それは本当に欲しい物なのだろうか?
そして素性のわからない存在から物を貰うということに、危険意識が欠けてはいないだろうか?


前述したランドセルやおもちゃなどの寄付も、「子供が本当に欲しい物を選ぶことができないのは可哀想だ」と言う声も出ていた。
更に明らかに子供向けで無いホビーやガシャポン、ビジネスバッグやボクシンググローブ等、
「こんなの貰ってもなぁ…」というちょっとありがた迷惑な贈り物も増えている。
なかには「これはないわ」と思った職員が警察に届けを出すという本末転倒な事態まで起こっている
助けるつもりが迷惑かけてどうするんだと。
勘違いしてはいけないが、寄付先は不用品の処分やリサイクルを行う場所ではない。


また、考えたくはないが、不審物として見ていない以上これらのことがテロ等に繋がってもなんら不思議ではないのである。
寄付金や寄付物に偽装した危険物や毒物を送る……なんて事件も便乗して起きかねない。


また、ネタだとしても『宮崎勤』や『酒鬼薔薇聖斗』の名前で寄付とかは絶対してはいけない。
どんなに良い物でも、それだとかえって不安を煽る。


当然、このサイトを見ている皆さんの中にそんな事をしようと考える人はいないと思うが。
ダメ。ゼッタイ。



そして3つ目、寄付をされる側の子供達の心境にも変化が現れている。


「今日はどんなものが届けられたの?」


といった具合に、その行為があって当然のような気持ちになってしまっているのである。
このことに対しては施設側も
「これを機に、改めて寄付とは何なのかということを子供達と共に考えたい」
としている。



タイガーマスク現象と呼ばれるこの寄付行為、今後はどうなっていくのだろうか……。



あの現象から約一年後。

2012年1月末、タイガーマスク現象という単語は殆ど耳にすることはなかった。
年末年始にいくつか類似した寄付行為があったようだが、現象と呼ぶには些かさもしい件数だった模様である。



寄付をしたい人は

寄付をしようという善意は素晴らしいことだ。
だが、寄付をするならせめて施設の担当者には身元を明かそう
外部には提供者を匿名にすることくらいは施設も応じてくれるはずである。


なお、一番有難がられる品物は現金
余った物などを渡したい場合もあるだろうが、その場合には施設に一報入れた上で必要かどうかを聞こう。 
また、施設は立場上、こういった善意の申し出に対してノーと言い辛く、本当はいらないのに受け取ってしまうこともある。
ありがた迷惑とならないよう、細心の注意を払おう。


なお、「欲しいものがある福祉施設」と「プレゼントをしたい寄付者」を引き合わせるサイトもあるので、使ってみる手もある。



追記・修正は偽名でお願いします。


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