「殺せるのか?」不死鳥は問うた。
「……いいえ、できません。」
「ですが、運命がいずれあなたの永遠に終わりを運ぶでしょう。」
膝をついた泣き女を一瞥して、不死鳥は夢現の外へと羽ばたいた。
「なぜ殺す?」不死鳥は問うた。
「わからない。」
「けど、あの人がやれって言うのなら、きっとそれが正しいから。」
黒騎士の銃口が吼えると、不死鳥は原型をとどめないほどに穴だらけになった。
「殺させるのか。」不死鳥は問うた。
「そうだねぇ。」
「それが一番スマートな方法だと思わないか?」
老人が腕を振ると、何人もの男たちが不死鳥に鉈を振り下ろした。
「殺したいのか?」不死鳥は問うた。
「そんな訳ないじゃないですか。」
「今までだって、一度たりともそう思うことはありませんでした。」
女性がスカートを捲り上げると、無数の虫は這いだして不死鳥を貪った。
「殺し続けるのか?」不死鳥は問うた。
「殺し続けるとも。」
「彼らがそう我を定義したのだから。」
巨狼が大口を開けると、不死鳥は頭から爪先まで一口で丸のみにされた。
「殺したのか?」不死鳥は問うた。
「まだないな。」
「みんなが、俺の手を汚さないでいてくれてるから。」
少年はただ留めるだけの術を用い、不死鳥は自害を選んだ。
「殺すのか?」不死鳥は問うた。
「どっちでもいいけどねぇ」
「でも、お前たちを生かす理由はないからさぁ」
蒐集者が銃を抜くと、不死鳥が気づくよりも先に頭部が弾け飛んだ。
「なぜ殺せる?」不死鳥は問うた。
「そうしなきゃ、お前が俺を殺すだろうが」
「当面は、俺にも死にたくない理由があるんだよ」
幽鬼が刀を抜くと、不死鳥は紙を断つように容易く細切れにされた。
「殺すのは楽しかったか?」不死鳥は問うた。
「いいや、ちっとも。」
「まあ、だから他の人にやらせちゃ酷かなぁとか思うわけ。」
顔のない悪魔の粘液で不死鳥はどろり、とろけて黒い水たまりになった。
不死鳥は問い続ける。
向き合う者は答え続け、殺し続ける。
姿持たざる男はいまだ答えを出せずにいる。
問答は続く。互いに、己の役割が終わるまで。
葛藤は終わらない、きっと彼は命絶えるまで
ソースは覗かないでね
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