自分宛てのチョコレート

ページ名:とばりが改心フラグ立ってるときのやつ

 

「それで、おまえの真心込めたチョコはペンローズのゴミ箱にシュートされたってわけか。はっは、そりゃあ傑作だ」

「そうね」

ペンローズはとても慎重な男だ。彼女自身が別段疎まれてるかというとそういうわけでもなく、ただ、混ぜ物をしていないと彼に信頼させるだけの信用を勝ち取れなかったに過ぎない。それは自分だけでなく、他の信者達だってそうだ。そうはわかっていても、贈り物が処分されるというのはやはり彼女にとって辛い事実ではあった。

そして、その触れられたくない心の柔く脆いところを啄み痛めつける。そういうことにこそパペットは最も歓びを得る。

「それから、おれにもこうしてそれを押し付けようというわけだな?」

「そうよ」

「つくづくおまえは惨めだな。おれはおまえ、ならば、これは代償行為。ただのオナニーだ、違うか?」

「そうね」

「だろう。おまえは本当に憐れだ。隣に誰も居ないから、こうしてなじられながら自慰に……」

目の前に置かれたリボンの包みを前にして、パペットは嬉しそうに罵声を浴びせる。パペットに人格はあれども肉体はないから、その表情などを見ることはかなわないが、もしも彼が生身の肉体を持っていたのなら、口角をめいっぱい吊り上げ下卑て笑み、やれやれと手を振ったりと、身振り手振りの仕草で彼女を虚仮にしていたに違いないだろう。

「ねえ」

「なんだ?ははぁ、そうか。今のは余程堪えたか。だがおれは黙ってなんかやらない。おまえは永劫苛まれ続けるんだ」

「違うわ」

「じゃあなんだ。」

「チョコ、嬉しい?」

だからこそ、その質問はいたくパペットを困惑させた。パペットは嘲笑者であり、彼女を傷付ける為の悪夢であるからだ。パペットの求めるような慈悲を乞う嘆願でもなく、逆上した罵声でもなく、それこそ、その質問は親しき人や愛しい誰かに問うようなそれであった。

「……さっきまでの話を聞いてたか?おれはおまえ、だから、この行為に意味なんてないんだよ」

「それ、答えになってないと思うな」

「…………」

パペットは思わず言葉に詰まった。というのも、今日のとばりは明らかに様子が違ったように見える。何を投げ掛けてもそれを物ともせず会話を続けてくる。どんな中傷をも受け入れ、目も逸らしたりしないし、ましてや泣きだすことだってしない。

「私は、貰えたら嬉しいけど。あなたは?」

「おまえ、ほんっとうにつまらなくなったな!」

「そうかも」

「おれの声に怯えて、隅っこで震えてるお前はどこに行った?大体、おれにこんなものを渡そうってこと自体が……」

だからこそ、それはパペットにとって非常に面白くない話だ。苛立ちを隠すことさえできなかった。

「それは……ほら、私、最近ね」

「はあ、次はなんだ」

「あなた自分のこと、ようやく好きになろうと思えてきたの」

 

 

 

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