妻の顔に娘の人格か。私はお前の、出来の悪い思い出のパッチワークだな。 モノの優先度を見誤ったんだよ、人間。名誉なんてもの、本当はどうだってよかったんだろう? だが、わかるよ。後悔は常に先立たずだものな。 |
■現実の設定
名前:てぐすさん
年齢:17歳
身長:173㎝
性別:女性寄り
瞳の色:赤
髪の色:黒
所属:悪夢-一級夢現災害→夢の使者-ドレアム騎士団-血統派→傭兵-トレンチ
キャラクター設定:サー・モルベリーが妻子を失った後悔とそのトラウマを源に生まれた悪夢。
現在では無邪気で幼く、悪意はないが馬鹿、という感じの印象が強いが、これは参照元である人格が彼の8歳の娘のものであることに由来し、それとは別にモルベリーの未練を象徴し責め立てる役割を持って生まれたゆえにかなり辛辣な節がある。 端的に言えば厭世家で、それゆえか他人の眼差しにもかなり敏感。宿主との繋がりを求めて接近する騎士達にはおためごかしでやり込められてしまうのに何とも言えない感情があるが、彼女が言語的にそれを指摘することができない。
血統を重んじパッと出の彼女へ思う節を隠さないモルベリー家の執事のサー・カリカルパのことは『陰険片眼鏡』と呼んで互いにいがみ合っていたように見えるが、実は彼女の側からは気に入っていたところ(彼女が渾名を付ける人間は誰であれそれなりの関心を意味する)がある。彼がこれといって処罰されなかったのも、それをサー・モルベリーが汲んでいたからである。それゆえ自分を特別扱いも馬鹿な駒とも見ないトレンチの面々は掛け値なしに貴重な存在であり、彼女の心の拠所となっている。
「友よ。迎えに来たぞ」 「……ああ、そうだな。そろそろ目醒めの時間だ」 「それは許さない。お前はここに留まり続けるんだ。ずっと、ずっとな。」 「私の為にそこまでしなくていい」 「馬鹿を言うな人間。これは、私の永遠の為だ。」 「ああ、そうだったな。……なら、そうだな、お前も私と一緒に帰らないか?」 「……………」 「勝手に進めてすまなかったな、茴香卿。あなたもそれで構わないか?」 「……ウハハハ!!すまない、珍しいことを言うもので……少し予想外だったのでな、固まってしまっていた」 「ああ、構わないとも。まだ飲み込めてはいないが、お前がそう言うのなら、そう云うことなのだろう」 「ありがとう。……らしくないのは、お前に言われずとも自覚している」 「それに、お前が私に『茴香卿』だの『あなた』だの言うこともそうあるまいからな!」 「忘れてくれ」 「……私を知った風に言う。人間どもめ、いつかこのことを必ず後悔するだろうな。」 「ああ、そうかもしれないな」 |
悪夢として持って生まれた使命は「モルベリーが後悔を克服する」こと。誕生当時は彼を繭の夢界の中に閉じ込め、その世界の中で妻子のコピーとして生成された自分を相手に彼にやり残しを果たさせ、失意に付け込む悪夢として彼の前に立ち、いずれ討ち果たされることで過去の決別を促すところまでを目的として動いていた。
前述のサー・フェンネルが救援に来る最終局面まで殆ど彼女の思い通りに物事は運んでいたが、その時点では既に思惑を察していたモルベリーがそこまで自身の為に身を尽くしたところに親愛の情を覚え、妻子の代用品でも悪夢でもなく、1柱の生ける夢として契約することを望み、和解が成立した。『てぐす』の名前は「克服の生贄」という定義から解放し、隣人として迎え入れるための再定義としてこのとき名付けられたものである。
当初こそ冷たく当たるてぐすであったものの、毒気を抜かれて間もなくして懐くようになり、彼から与えられたものの大半を宝物として箱の中に仕舞い込むようになった。オルゴールはその一つで、特に彼の趣味のものであったことも相まってかなり執着するようになっている。
「サー・ロータスらを指導者に自由派がクーデターを起こしました。サー。どうか私達と戦場へ」 「お前達に言われずとも知れたこと。鎧を着ただけの汚らしい蛆虫どもめ、一匹残さず潰してくれる」 配下のローリエの促しに応じ、モルは瓶詰の夢のコインを数枚握りしめる。任せろ、てぐすさんも行くぞ。 「てぐす。お前はここに残っていてくれ」 どうしてだ。てぐすさんが弱いからか? 「そうじゃない。私には、私は弱いから、帰る場所が必要だからだ」 てぐすさんはいつもモルにだけは勝てない。だから見送った。だけど、そうすべきじゃなかった。 窓から見える燃える地面に何だか急に恐ろしくなって、結局モルのところに駆けつけてみたんだ。 だけどその時にはもう手遅れで。サー・ロータスの槍に心の臓を貫かれたモルが横たわっていた。 モルを冷たく見据える彼女の隣には、恭しく傅くローリエの姿があった。 あいつには、一つも戦傷はありやしなかった。 さぞ痛かっただろう。苦しかっただろう。 「ごめん、ごめんな……モル」
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目が覚めるや否やてぐすがぴっとりくっついて離れやしない。なぜだと理由も尋ねても答えない。 もうすぐ鍛錬の時間だし困ると言えば困るのだが、こうまで甘えてくるのは珍しい。たまにはいいだろう。 「温かいな」 人間は恒温動物だからな。冷えるようなら、暖を持って来させようか? 「それは、いい」 首に両腕を回され、ひしと抱き締められる。 「大丈夫、大丈夫だからな、モル。……今度こそ守っててやるから」 |
血統派主導だった旧来の日本ドレアム騎士団だが、数年前にロータスを中核とした自由派によるクーデターが起こされ、現在の体制へと移行している。この際、何も干渉されていない世界線のサー・モルベリーは、サー・ローリエの裏切りとサー・ロータスの刃にて死亡することを漠然と予知夢で認識しており、実際の現実時間軸においては予知夢同様に彼に従ったように見せたてぐすが隙を伺い即座に介入することでロータスとモルベリーが遭遇せず、回避されている。
ただし、その結果敵対者として認定されてしまった彼女はクオリアに還元されたのち、その半分を砕かれる処刑という憂き目に遭い、結果として彼の狂気の原因となってしまった。『いつかこのことを必ず後悔する』の呪いを望まず叶えてしまった形とも言える。
その結果の話とも言える『桑の葉が枯れ落ちるとき』にててぐすが自分を亡き者としてモルベリーの代替わりを果たし、名誉を守ろうとしたのは、「最初の使命を果たす為」「自分よりモルの命の方が喜ばれる為」「また助けられ預けられてしまった命を返す為」などかなり複雑な心境がある。しかし、生かし生かされ死んで死なれての堂々巡りを感じていたこともあり、仮にうまく行ったとしても……という不安を感じていたところに笛出理子の説得を受け、彼女の目と、自分とモル双方が生きて笑い合える可能性を信じて最終的には肯いた。
それゆえ笛出は数少ない知り合いの中でも特別な人間なところがあり、傭兵が山ほど居る中で一人だけ『傭兵』という渾名で呼ばれる存在である。
■夢の姿の設定
名前:シルク・テキストロ
武器:鱗粉・屈折光
外見:モルベリーの学生時代の妻の制服姿→2m大の天蚕
夢の姿の設定:ダイバーネームは『絹を織る人』。書面での便宜上つけられているものの、当人がてぐすという名前をいたく気に入ってるためほぼ使われた試しがない。
固有形質は撒布する鱗粉による光の反射で、照明を利用した目暗ましから、他の生ける夢同様に自前で生み出した光帯を乱反射させ意表を突いたり、収束させたりしてより貫通力を高めることができる。
また、標準的な擬態能力も持ち合わせてはいるものの、人間体は妻子の実質2種類しか扱うことができないし、そうであることを望んでいるためこれといって訓練していない。
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