アフターライフ/死後生

ページ名:三途の川

 

私達は未だ真なる意味では死亡していない。ただその寸前に踏み止まって停滞し続けているだけだ。

ここは死後生の救済ではない。単に一つの夢に過ぎないことを忘れてはならない。

ならば。夢は一体何を望んでいるのだろう?

 

■現実での概要

奇書院呼称:アフターライフ

所属:悪夢-来訪者 特級夢現災害

概要:夢界を漂流していた悪夢およびその従属悪夢群。

「死後生への恐怖・願望」から固定化された個体なのは間違いないが、正式契約者が未発見で、奇書院の把握してる範囲では出生が判然としない。「ユグドラシルの観測によって転移してきた別世界線固有の残骸」「未来に発生した個体だが夢界の時制の狂いによって遡行してきた」「悪夢を合成して夢神を作る狂信者の実験の産物」などが現状候補として挙げられる。

死者が発生した戦闘や災害に出現し遺体を周囲一帯丸ごとを攫っていくこと、不規則なタイミングでこの夢界から自身の死を忘却した元人間の悪夢、つまり怪人が出現することから、長期的な社会秩序の敵とみなし例外的に特級夢現災害の指定を受けている。直接の遭遇者のような個人単位を除いて、派閥として存在を認識しているのは不知火機関と奇書院の2派閥。内、情報工作などのコスト面も鑑みて即座の討伐対象とすべきとしているのが前者であり、後者は技術利用と後述する事情から捕獲あるいは交渉を旨とし対立している。ただし、そのどちらも倫理的や戦力上の問題で実施には至らず睨み合いの状態が続いている。

 

この個体がどれくらいの期間活動しているのかは不明だが、1950年代に死亡した織部元重(織部重成の実父にあたる)が内部に存在していることが確認されているため、彼が怪人化してしばらく漂流していたなどと考えない限りは、70年は超えるものだと思われる。

 

内部から完全な生存者として鴉羽 麗子/レイヴン音無 忍/ゴーストが帰還したのは正式に特心対が把握しているケースとしては3例目。これは特に奇書院の目を強く惹くこととなった。

■夢界の概要

名前:死後生

概要:生ける夢としては極めて稀有な、直接の意思疎通の代理人としての端末を一切持たない個体。内部に存在するあらゆる生ける夢はあくまで従属眷属にあたり、この夢界そのもののクオリアは持っていない。そのため当然のことながら自称する名前はなく、「死後生」とは彼らが付けた呼称に過ぎない。また内部構造に関しても全くの無干渉であり、現在の構造物は「死人寝台列車」も含め、従属個体達が自身の夢界と同様に定義化によって改変し固定化されたもの。

このように殆ど自我の存在が見受けられないため、奇書院の研究者の中にはこれをそもそも生ける夢と分類しない動きもあるが、生ける夢として取り扱う言説においては「死者或いはそれに類する重傷者」のみを認識して取り込もうとする習性と、侵入者にのみ干渉する性質の存在が彼の自我によるものだと例にあげられる。

思うにこれは捕食活動だ。自我薄弱に思われるのは単に彼の感覚が遠大であり、我々のそれと隔離があるからだろう。-藍司優

前述した侵入者への干渉についてだが、概ねこれは「記憶の剥奪」と「肉体の再生」に要約することができる。

まず前者に関してだが、これは剥奪された記憶がクオリアに似た疑似結晶核を構成し夢界内部のどこかに配置され、そして時間経過とともに消失していく。捉え方によっては死という鮮烈な体験へのフラッシュバック予防措置とも取れるが、封印ではなく奪取であることから断言はしがたく、このような工程を踏むことで記憶を蒐集することがこの個体の目的とする意見もある。

後者はおおむね数時間から半日の時間を掛けて進行するもので、この工程を終えると基本的にはそれ以前でどれだけの負傷を受けていたとしても現実界で十分活動可能な程度の治癒を得る。ただしこれは瓶詰の夢と同質のものであり、つまり生身の人間は実体の肉体として再生することができるが、生ける夢はやはり夢界存在としての再生しか施されない。このため完全な死者の場合は死者の自我を保有した悪夢、現実の項で言及したような怪人として再生する。

このように生まれた怪人はこの悪夢と契約関係を維持することはなく、自身の持つリソース分によって、或いは新たな契約者のリソースによって存在を続けることとなる。そしてその多くは何等かの事情によって自身の死を認識することでたいていの怪人がそうであるように自壊し、クオリアのみを、あるいはそれさえも残さず消滅する。

 

「死人寝台列車」

この夢界に存在する従属個体群の一つ。夢現領域に取り込まれた死者の多くはまずこれと接触し、夢界内の各地点へと移送される。この悪夢に対して明確な敵対意思を持っており、最終的な目標はこの夢界の支配権そのものの奪取である。剥奪した記憶の固定化・再注入など、いくつかの機能に関しては部分的に既に乗っ取りに成功しているようだ。

ここの住人である生ける夢たちの多くは「銀河鉄道の夜」に影響を受けたような性質をもつものが多いが、元々がそうであるというよりはここに定着した個体達が役割を分担し群体を構築しているというのが恐らく正確な表現になる。

 

『カンパネルラ』「ジョバンニと再会してほしい」という子供の夢から発生した個体。作中の彼の設定の関係で死に強い忌避感を持つため、侵入者の帰還に極めて協力的。願いの動機から現実界を広く動き回るための手段に飢えており、この点でブルガ二ロ博士と協力関係にある。

『車掌』元々は単純に列車に憧れがある幼児の夢だった個体。車掌としての振舞いに強い憧れがあり、その願望を満たすためだけにブルガニロ博士の発足した「死人寝台列車」に協力を決めた。元となった人格がアナウンス上の車掌とその幼児でしかないため、見た目に似合わず精神年齢は高くなく、丁寧だがアドリブや心情推察に弱いという弱点がある。

『ブルガ二ロ博士』死者であり本名は織部元重(重成の実父にあたる)。乗っ取りの首謀者であり、この従属個体群の発足者。その為にこの空間の定義自体を大きく改変しようとすることを銀河鉄道の夜第三稿になぞらえて「プレシオスの鎖を解く」と表現する。数十年以上このための作業を続けているためか、時間感覚が若干希薄である。

『執事と令嬢』海難事故の死者であり執事の本名は藍司夜道、令嬢の本名は古論薫子。固定化された記憶の番人を担当しているが、侵入者に襲われることへの辟易と元々蘇り否定派であることが相まって口頭以上の注意はしなくなっている。また、それで捻くれてしまってか性格が悪く、死者が記憶を取り戻して発狂するのを日々の楽しみにしている。

『鳥捕り』死者であり木口のクローンの一個体。役割上は捕った雁を提供するのが本来の筋なのだが、定食屋の前世と死後ようやく趣味に走れることが噛み合わさり暴走気味。これが天職と言わんばかりに食堂の開設を頼み込んで本当に実施してしまった。あっし、といった独特の喋り方をするが、これはブルガニロ博士の蔵書に影響を受けたもの。

 

「無」

死人寝台列車が運ぶ地点の一つ。「死後生」のいわゆる白紙状態がこれであり、未開拓の夢界上に点々と存在している。

主に消滅を願う自殺者が行き着く場所であり、物質やエネルギーのみならず法則さえ存在しない空間として定義されているため、ここの侵入者は自身と周囲の存在の認識が薄められていき、そのまま消滅するように拡散していく。

使いようによっては死者同士の処刑手段にもなることを危惧したブルガニロ博士により周囲の整備が進められており、基本的には彼が所持している鍵がなければ柵によって侵入することができない。

「彼岸の川

アケローン川や三途の川といった各地伝承における「死者の川」の集合。死人寝台列車が平定される以前はほぼ全てここの船渡しの助力を得る必要があった。開拓領域であるためにここは誰かが作成したのだけは確実であるが、この夢界の記録者であるブルガニロ博士が来訪する頃には既に消滅あるいは脱出しているために不詳。

現在は役割を終えたものとして放棄されているが、時たま夢界の住人が景色を眺めるためだけに訪れることもある。

「彼岸」

浄土、天国、冥府、地獄、煉獄、黄泉……宗教的価値観に基づく多くの死後の世界の模倣が集合している領域。「死人寝台列車」によって運ばれてきた死者たちは各々の望む場所へと割り当てられ、送られていく。各地点には一応の統率者は存在してはいるものの、相互不干渉の原則を設けており、人口の流入出なども制限していない。宗教的イデオロギーの相違が起こらない構造であるためか、コミュニティ内の対立はあまり見られないが、極稀に分裂が発生することもある。

「青い星」

この夢界に存在する従属個体群の一つ。ある狂信者の一人が死後生本体と契約を結び、ホルダー体と成り果てたもの。『死という終点の運命を明確に定義し、それに至るまで善く生きることを説く』という教義に則った性質を持つ。

眷属を撒布する機能を持ち、それを利用した能動的な自殺を促進するという点で、死後生における明確には初の有害個体。12年前に出現した際には数十人の自殺者を生み、最終的に夢現領域を維持していた分割個体が夜鬼摩によって鎮圧、再顕現した『いつか星になって再会しよう』では精神汚染によってその近隣支部の7割という破滅的な被害を齎した末に、「死人寝台列車」と「レイヴン」「獏」「スターゲイザー」「トリフォイル」の同盟によって鎮圧、「死人寝台列車」に同化吸収されたことで事実上の消滅という結果をみた。

「思い出の博物館」

この夢界に存在する従属個体群の一つ。

青い星が消滅したことで浮いた余剰リソースを充てて、死後生が意図的に作り出した眷属個体。直接それが作り出したのは『オーナー』のみであり、管理は彼女の手によって任されている。13

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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