『DREAM DIVER:Rookies file』Prologue

ページ名:DREAM DIVER Rookies file.0

 

『DREAM DIVER:Rookies file』

-主な登場人物

・初夢 七海
真面目な性格で心の中で他人を罵倒する悪癖があるが、仲間を思いやり他人の心に寄り添うことができる心優しい青年。

・深瀬 陸朗
初夢と同じく仲間想いで人懐こい性格だが、考えるよりも先に身体が動く。身体能力は同期の新人の中でずば抜けて高い。

 

プロローグ『ダイバーとなった日』

 

 潜夢士になるという選択肢が現れた日のことを今も鮮明に憶えている。我が家に特殊心理対策局の局員が現れた日、僕の人生に大きな転機が訪れた。僕に潜夢士と呼ばれる職業への適性が見つかったのだ。大学を卒業する間近だったあの日。僕は局員に押し込まれるように自室に行き、彼女から潜夢士に関する詳細な説明を受けた。少しも現実味を帯びず、にわかには信じ難い内容に眩暈がした。しかし未知の世界への好奇心に心を躍らせていることを隠せなかった。
 僕は大手企業の内定を蹴って潜夢士になった。わかりやすく混乱する様子の母親に局員は、国家からの推薦で特殊な公務員となると説明した。僕が公務員ではなく、一般企業に就職したことに少なからず不満を持っていた両親にとって、まさにその話は天の授けものだっただろう。ただし局員から両親に伝えられた職業内容は偽られたものだ。決断に際して潜夢士の存在を秘匿する義務に関する契約も交わした。この推薦を受け取った時点で既に後戻りはできないだろうことは分かっていた。だが潜夢士そのものにはならず、潜夢士に関する事務部署に就職し平穏に暮らすこともできただろう。「これは”赤紙”ではない」と局員も僕に念押ししていた。実際に特心対の事務職への就職も示唆されたが、しかし僕は潜夢士として夢界に降り立つと決めていた。正直に告白すれば、二つ返事で潜夢士となったことに後悔していないと言えば嘘になる。だがここで断ったならば、より後悔しただろう。
 僕はすぐに実家から寮に移された。一週間後から同期の潜夢士との研修が始まるという。寮のベッドは実家よりもふかふかしていたことをなぜか憶えている。完全な個室で寮というよりはホテルといった方が適切なほどの厚遇だった。廊下に出れば無邪気にも豪華さにはしゃぐ同期の潜夢士がいたが、僕にはこの待遇がどうにも不気味に感じた。
 研修が本格的に開始してからは日ごとに脱落者が現れた。初日で既に不平を漏らしていた奴は二日目には既に姿を消していた。当初十五人ほどいた研修生は最終的に片手で数えるほどとなった。研修は大きく座学と実技に分かれ、一見して胡散臭い訓練を経て僕たちは潜夢士としてのコツを掴んでいった。今でも付き合いのある深瀬とはそこで出会った。彼は僕とは似ても似つかない快活な男だが、ダイバーになりたい情熱で意気投合した。
 最終日まで残ったメンバーは全員が”夢に潜る”ことができた。残った新人は僕を含めて十五人ほどらしい。深瀬は研修後に特心対の『実働部隊』へ配属されたが、僕はその時点では保留として一時的に実働部隊に配属予定の深瀬と共に訓練を受けることとなった。
 決断をした日から研修を終えて潜夢士になるまでの三十日間はあっと言う間だった。仮にも潜夢士となったという実感を得られぬまま、その日は一晩中天井を見つめて夜を明かした。

 

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧