墓穴の街
- 街の呼び名:墓穴の街
- 正式名称:ワィザスリ
- 人口:小規模
街の特性
- 肌寒い荒野の真ん中、正方形状に掘られた穴の中に収まる街。
- 穴の深さは十メートル強。
- 読み方は「ぼけつ」ではなく「はかあな」。
- 空は薄暗く、遠くにはしょっちゅう稲妻が走っている。
- 空には紫がかった雲が広がっており、街の周囲はいつもどろどろ薄暗い。
- 穴の周り、街の周囲一帯には無数の墓石が立ち並んでいる。
- 整然と並んでいる箇所もあれば、乱雑に乱立している箇所もある。
- 大きさも様々で、一人だけが眠っているものや、十数人がまとめて祀られているものもある。
- 古く、どこかで起きた戦争で亡くなった人たちが眠っているお墓。
- 街が穴の中にあるのは、お墓よりも高い場所に建物を建てるわけにはいかない、という理由らしい。
- 墓石の下に眠るたくさんの人たちと、街の人々との関わりはほとんどない。
- 墓の数が多過ぎて、どこが誰の家の墓かということもあやふやになりつつある。
- しかし、街民たちは先人への尊敬の念を忘れず、弔い続けている。
- 墓の数が多過ぎて、どこが誰の家の墓かということもあやふやになりつつある。
- 街民の恰好は、喪に服すような黒い服。
- 街は退廃的な雰囲気。
- 木は立ち枯れ、建物は崩れそうで、土は痩せて収穫は乏しく、家畜も満足に育たない。
- 穴の側面には階段があって、それで穴の上を行き来する。
- 街庁の中で昇降機設置計画が一時立ち上がったが、街民の反対に遭い設置は中止された。
- 街が建つ穴の底からは、暗雲(くらくも)と呼ばれる紫っぽい色のガスが吹き出している。
- 吸い込むと不眠作用が働き、吸ったら眠れなくなる。
- 溶け込んだガスは常に街の中に充満しており、そのせいで街の中はどこか紫色っぽい。
- ガスはすぐに空気中に溶け込んで色を失うが、ガスの持つ成分は消えていない。
- 街で生活していると常にガスを吸い続けることになる。
- そのため街民の目の下には濃い隈が浮かんでいる。
- 街で生活を送ればガスへの耐性が付くが、寝不足の人は多い。
- とある街を苦しめていた「永眠症」という病気の進行を大きく遅らせる薬として暗雲が役に立つと判明した。
- 進行を遅らせるだけでなく、治療薬としての効能も発揮出来るといわれている。
- 街の周囲の墓を管理し、街を守る「墓守」と呼ばれる仕事がある。詳細は後述。
墓守
- 街の周りに無数に立ち並ぶお墓を守る役目の人の呼び名。現在の数は四名。
- いつも大きなシャベルを持っている。服装は、街民と同じく黒を基調にしたもの。
- かなり危険な仕事で、仕事中に亡くなった人がこれまでにもたくさんいる。
- 主な業務は、墓石の状態の管理と、墓石への献花。
- 全ての墓石の場所を把握し、常に最善の状態に保つ。
- 管理と言っても、墓石には手出しはできない決まり。
- ボロボロになっているからといって、石を取り換えるなどの修繕は不可能。
- 眠っている霊魂がそこから離れてしまう可能性があるため建て直せない。
- 墓守にできるのは、雑草を取り除いたり、動物の痕跡を片付けたりするぐらいのこと。
- ボロボロになっているからといって、石を取り換えるなどの修繕は不可能。
- 街の周囲の墓には時折「墓暴き」が現れる。それを撃退・街や墓に近付けないのも仕事。
- 墓暴きとは、街周囲の墓から戦争時代の遺品を掘り出そうとする盗賊たちのこと。
- 街の外から戦争の遺品の噂を嗅ぎつけて、やって来る。
- 金目の物を盗むためにやって来る。墓参り中の街民が襲われるという話も少なくない。
- それよりも厄介なものが、墓嵐(はかあらし)。
- 街の遠くから、墓場・街に向けて接近して来る巨大な颶風。
- 墓を吹き飛ばし、街を根こそぎ破壊できるほどの力を持っている危険な嵐。
- 街へ到達する前に墓嵐を破壊するのが、墓守の最も重要な任務。
- 墓嵐は年々数が増え、勢いも増している。
- 墓守が仕事中に死亡する原因のほとんどが墓嵐の破壊にあたっているとき。
- 幾人もの墓守が墓嵐を退ける度に体を引き裂かれ犠牲になっている。
- 墓守は厳しい訓練と試練を乗り越え、一定の基準に満たねば墓守として認定されない。
- 人手は不足しているが、適性のない者を墓守にすることはできないジレンマ。
歴史
- 現在街に住んでいる人々は、もとはどこかの街に住んでいた一族だった。
- どこかの街で戦争が起こった際、その一族も街の人々と共に戦った。
- しかし、戦争の最中にその一族が突然謎の病気を発症し、全員が戦線を離脱。
- 長い争いの果て、その街は戦いに勝利したが、戦いから離脱した一族に対しては冷たい目。
- その戦争は、たくさんの死者が出た戦争だった。
- 彼らを祀る墓が必要となるが、大量の墓を街に建てることを当時の街長たちは嫌った。
- そこで、墓を大量に建てる場所を見つけ、その墓場を管理する人々として、その一族を選んだ。
- どこかの祓師と神仕えの助言により、一族が管理する墓を建てる場所が現在の荒野になる。
- 暗雲が出ることも当時から発覚していたが「カミサマが選んだ場所なら」と、一族は命を受け入れた。
- 穴を掘ったのも、神仕えの助言によるもの。
- それが大体百年と数十年前のこと。
- 世界変の際は、街の人全員が一週間以上眠りにつけなくなった。
- 睡眠が取れずに、多くの人が倒れた。
街が抱える問題
- 墓嵐がガンガンやって来る。
- 今は墓守たちの尽力により街を守れているけれど、いつ防ぎきれなくなるかは分からない。
- 墓嵐の問題に加え、そもそも墓守の数が減っている。
- 暗雲の良い使用法が見つかったとは言え、ワィザスリの人々の寝不足問題は残ったまま。
- 土地が痩せているので、食べ物も貧しい。
- 土地に合った食べ物の研究をする費用もなく、時折来る商人からその場しのぎで買い付けることしかできない。
特産品
- 暗雲(薬)
- 暗雲色の絵の具
- 劣化草
- ヤセイモ
- 此岸華
- シストフララ
名所
- 墓石の森
- 墓守の監視所
- 大墓石
- 大戦の碑文
- 薬師の家
- 穴上階段
- 立ち枯れの樹木
- テッドマン屋敷跡
宗教
- 墓石信仰
- 墓石と、死者への畏敬の念。
- 自身の先祖でなくとも、墓参りをして慰霊に努める。
“外”の世界について
- 通行者に対しては、ちょっと懐疑的で敬遠しがち。
- 悪意はないので丁寧に接するが、あまり親身ではない。
- あくまで真面目に丁寧に。
- 入れ込まず、悪い印象は与えず、嫌われないように、好かれないように接する。
- 世界の仕組みについて、理解している者は半々ほど。
- 一族全員で緩衝地帯を歩いてきたため、当時使われた通行証は現在でも多く保有されている。