融通の利く檻
融通の利く檻
隙間から見える空は、紙上のそれとは比べ物にならないほどの青。
手を伸ばせばきっと届くのだろう。今はその気が起きないというだけで。
行儀よく並べられた書物に目を通し、思考の煙をくゆらせる。
音を上げるまで脳味噌を燻し続ければ、多少なり豊かな安寧を得られると信じて。
何度となく見た机の引き出しをひっくり返し、それ以上の時間をかけて元に戻した。
今日もまた、そこに新しい発見はない。少し乱暴に、引き出しを閉じる。
日の当たらない植物に水を遣り、突き刺すような冷たい水で顔を洗った。
植物に遣る水と、自分の浴びる水が同じものだとは、今だけは考えられなかった。
過剰に用意した食事を呑み込んで、天井に開いた小さな穴の数を数える。
あとはベッドに腰かけて、読み潰した文章に目を落として消灯を待った。
それから電灯が沈黙してもなお、空はただ青いまま。
意味はないと理解しながらも、空を眺めずにはいられなかった。
なにせここは、誰の助けも来ない監獄なのだから。