アリー攻防戦

ページ名:アリー攻防戦

バルアミー鍾乳洞はアリーの街に繋がっている。しかし、その事実を知る者はこの地方に住むものでも極僅かであり、余所者は知り得ない情報である。ローゼンクロイツがこの街に居を構えたのも、いざという時の脱出路としてこの洞窟を利用する事を考えての事であったのかも知れない。

道というには険しすぎる道を越え、シンとコニールは無事アリーの街に到着した。……約一名は憔悴しきっていたが。

時刻は正に正午。正午の鐘が戦火の中も変わらず鳴り響く。この地方特有の焼け付くような日差しが最も強くなる時間。コニールは洞窟を出た後も暫く走り続け、アリーの街の最も開けた場所である噴水広場でシンを蹴り降ろす。


「ほら、シン。何時までもヘタってんじゃ無いわよ」

「コニール……、お前、後で憶えてろ……」


憎々しげな呪詛をコニールは「後でケバブ奢りで許してあげるわ」と聞き流し、さっさとその場を去る。コニールはコニールでやる事があるのだ。


「……ったく」


服の埃を払い落とし、何とか立ち上がるシン。実際、何時までもへばっている訳にもいかない。大尉達が命がけで時間を稼いでくれているのだから。

シンは、腕時計の目盛りを最大まで回す。腕時計のバッテリーを大幅に食うが、こうする事でダストとの交信が遠距離でも行えるようになるのだ。雑音だらけのノイズの中で、レイの声が聞こえるのを確認すると、シンはそれに向かって叫ぶ。

「こちら、準備完了。来い、ダスト!」






アデルの見るモニタに、突然光源が一つ増えた。それは砂漠の何処からか射出され、真っ直ぐにアリーの街に向かっている。確認しようとして、それがとんでもない代物だと気付く。


「マッハ5以上の飛行物体だと!? この大きさでか!」


その飛行物体は、かなりの大きさだった。ムラマサ程では無いが、普通の戦闘機というのは大き過ぎる。例えるなら、モビルスーツサイズの大きさなのだ。しかし、それ自体は驚く事では無い。空飛ぶモビルスーツなど、珍しくないからだ。問題なのは、それが明らかに人間に耐えられる速度制限を遙かに超えているという事だ。

人間というのは機械の持つ最高速度には耐えきれない。急旋回、急加速、その他の機動でパイロットたる人間は容易く壊れてしまう。個人差あるが概ねマッハ3.5が人間に耐えられる最高速度であり、それ以上の速度は訓練された人間であっても生命の危険が付きまとう。――それ故、速度制限を超える等という事は不可能な事なのだ。


(いや、待て。ミサイルという事は……?)


――すぐにその考えを一蹴する。兵器としては有り得ても、運用的に有り得ない。

モビルスーツクラスの大きさを持つミサイルは実際に存在する。しかし、その多くは対鑑、対要塞用でこんな戦場で使われる事はない。リヴァイブの連中とて街にこんな大型ミサイルをぶち込みはしないだろう。

色々考えてみたが、アデルには正解は思いつかない。しかし、放っておく訳にもいかない。


「ムラマサでこの飛行物体を撃墜する。ミサイル発射!」

「了解!」


ボトムパーツに設けられたガンナー席に座る副パイロット、エミル=ミンツが、迎撃ミサイルを発射する。如何に速度マッハ5以上とはいえ、ミサイルはそれ以上の速度を有する。技術革新はこんな所でも行われているのだ。

だが数秒後、アデルは再び面食らう事になる。


「も、目標、回避運動を取ってます! ……ミサイルじゃ無いんですか、アレは!?」


その目標はあろう事かパイロットが乗っているかの様にミサイルを回避して見せたのだ。ミサイルに自立思考を組み込んでそういう事をする事は可能だが、どう考えてもコストパフォーマンスに見合う代物ではない。そもそもそんな超高価なミサイルを作れる程、資金に余裕がある組織とも思えない。

混乱している間に飛行物体はムラマサの射程外まで移動してしまった。それでも、アデルはなんとかザウート隊に迎撃を指示する。それが『無能では無いが、マニュアル以上の対応が出来ない士官』アデル=マニングスの限界だった。






謎の飛行物体は対空砲火を悠々と潜り抜け、アリーの街に迫る。


《ふむ、自分で操縦するというのもたまには良い。本音を言えばもう少し楽しみたい所だが、そうもいくまい》


その謎の飛行物体の無人のコクピットから『何か』の声が響く。

眼下では、ザウート隊がこちらを狙って射撃を開始している。しかし、超高速で飛行する物体に対して有効打にはならなかった。

やがてザウート隊を飛び越え、飛行物体はアリー中心部に到着すると、急上昇して目標を確認する。


《ランディングポイント確認。何かに掴まっていろよ、シン》


目に見えない『何か』、AIレイは眼下の目標に対して呟くと、自らを覆っていた繭状の装甲をバージした。ザウート隊は街に降り立ったダストを撃とうとするが、建物が邪魔になって狙いが付けられない。その隙にAIレイは乗るべきパイロットの姿を探す。するとすぐさま、求めていた声が通信機から聞えてきた。

「遅かったな、レイ」

その足元には機体の主、シンの姿があった。






大尉達が戦闘を始める少し前。ローゼンクロイツの野営地は喧騒に包まれていた。


「ダスト設置は!? ちゃんと固定したのか!?」

「急ごしらえなんだ!『どうなるか』なんて、やってみなきゃ判らんだろう!」

「そんなの言い訳だ!自信が持てないならやり直せ!」


怒声が飛び交う。ローゼンクロイツの古株メカニック相手に一歩も引かない若者、サイ=アーガイルはメカニック連中の好奇を一身に集めていた。

そんな視線に構う事無く、シゲトはダストのコクピットに目をやる。そこには奇妙な物体が設えていた。シート横に銀色の箱。それはコクピットと色取り取りのコードで繋がれ、しっかりと固定されていた。ダストに内蔵されたAIレイがダストを動かせるように、とサイが開発した物である。


「レイ、どうだい? ……動かせそう?」

《基本的な事でいいなら問題ない。流石に戦闘はできんがな》


今、ダストは筒状の奇妙な形の鉄板に包まれていた。形状は限りなくミサイルに近い。モビルスーツがすっぽり入る大きさなのでミサイル、というよりは輸送機の類だろうか。

ロマの『奇策』。それはアリーの街にいきなりダストを出現させるというものだ。大尉達が敵を引きつけている間に、アリーの街に残ったザウート隊を始末する――戦場に於いて、予想外の方向からの攻撃は有効である。まして理解出来ない方法であれば尚更、だ。

これこそが、リヴァイブの反撃の狼煙となるだろう。






双眸に光が点り、聞き覚えのある駆動音が響く。

シンにとっては既に慣れたダストの起動手順。それまでの気怠さが嘘のように晴れていく。自機を動かす時、自分の居場所はここなのだと、パイロットは実感出来るものだ。


《シン、敵の現存戦力はザウート三機だ。ルタンドは来るまでにまだ時間が掛かる。今の内にザウートを仕留めろ》


メインモニターにザウートが映る。だがその動きは鈍い。まさかこんな風に敵モビルスーツが来るとは思えなかったのだろう。動揺が見て取れる。


「言われなくても……」


ダストが屈伸し――動く!


「……解ってる!」


シンはダストを一気に跳躍させた。背部のフライトユニットを展開させ、中空に躍り出る。今回ダストは迅速な行動が求められていた為、増加装甲は施されていない。ようやくザウートが攻撃態勢を整えた頃には、ダストに懐にまで入り込まれている。


「食らえっ!」


ダストが右腕に装備していたバズーカが火を噴く。だがザウートに直撃する寸前、突如その弾頭が四つに割れた。


「?」


来るべき衝撃が来ない――そうザウートのパイロットは思ったが、次の瞬間、割れた弾頭から凄まじい電撃がほとばしる。

バチッバチッ!!

激しい稲妻に襲われたザウートの機体は激しくスパークする。雷に匹敵する程の一撃に、一瞬で内部機構は完全に破壊され、同時に搭乗者も黒焦げとなってしまう。完全にショートしたザウートは、機体各所から煙を上げてそのまま止まってしまい、その砲門が火を吹く事は二度と無かった。


「プラズマリーダー弾か。街に余計な被害を与えないためには、うってつけの武器だな」

《即興で作った割には、いい出来だ。我等の整備班長はどうやら開発の腕もいいらしい》

「そういう事だな」


新兵器の威力にシンもAIレイも満足していた。

この武器はダストに装備されているスレイヤーウィップと同じで、電撃ショックで敵モビルスーツの内部機器を破壊する兵器である。しかもスレイヤーウィップと違い過電流の逆流を気にせず、破壊的な出力を出せるのが特徴だった。今回この武装が採用されたのは戦闘予想地帯が市街地だったからだ。……早い話が最も有効かつ、市街に被害を出さない武器として選定されたのである。

僚機を潰されたザウートが、雄叫びの如く中空を舞うダストへ撃ちまくる。だが襲い来る幾重もの弾を、ダストはまるで羽毛が風になびく様にすいすいと避けていく。そして狙い澄ましたバズーカがまたもザウートに襲いかかった。




コニールのアリーの街での仕事は『アリー市民の避難誘導』である。


「皆、今の内に安全な所に避難して! 大丈夫、流れ弾が飛んできても大丈夫な所まで避難するだけだから!」


市街での戦闘は極力行わない様にローゼンクロイツもリヴァイブも配慮していたが、どうにもならない事態は起こり得る。それ故、市民を一時避難させるのは彼らの義務と言える。コニールはローゼンクロイツの部隊と協力して市民を誘導していた。


「ど、何処に逃げるの!?」

「政府軍に立てついたってどうにもならないじゃないか」


人々が口々に言う。その度、コニールは誠心誠意説得を続けていた。


「この状況だって政府軍が作り出したんでしょう! ……いい加減理解してください! 政府軍は私達の事なんて考えてくれないの! 今は、自分の身は自分で守るしかないんです!」


普段のコニールとは全く違う物言い。コニール自身も欺瞞だと思う。だが、そういう事が必要な場合もある。そう思える程度にはコニールも成長していた。

人々は納得こそしなかったが、現状で避難する事に異論があるはずもない。ダストとザウート隊が直ぐそこで闘っているのだから、それに勝る説得力は無いのだ。

爆発音が響く。ダストのものか、ザウートのものか。一抹の不安がコニールの胸中を過ぎる。


(アイツが、シンがこんな所で負ける訳が無い! あたしは、あたしの仕事をするんだ――アイツと対等で居るためにも!)


コニールは毅然と、人々に指示を出し続ける。その甲斐あって市民の避難は順調に進んでいた。





一方大尉達は完全にこう着状態に陥っていた。上下からの二段攻撃を防ぐために大尉達がばら撒いた煙幕弾で、戦場はすっかり視界失っている。辺り一面が白煙で覆い包まれていた。おかげで上空のマサムネ隊も散発的な攻撃しかできず、ゼクゥ隊と分断された格好になっている。

しかし敵もさるもの。何も見えない中でも陣形を崩さず、ジリジリと大尉達を追い詰めてくる。この白煙が晴れるのもそう掛らないだろう。額に汗がにじむ。いつの間にかあせりを感じていたのか。そう大尉が思った瞬間、不意に白煙の中から一機のゼクゥが飛び出してくる。顎部にサーベルを構え、大尉のシグナスに向かって大きく飛び掛ってきた。だが上から襲い掛かるゼクゥに対し、大尉は避けずにその懐に飛び込む。


「うおおおお!!」


大尉が吼える。すかざずビームサーベルを抜刀し、一気に叩きつける。

ザンッ!

飛び込んだゼクゥは前足を寸断され、バランスを崩して転倒する。すかさずそこに少尉がビーム突撃銃を叩き込む。腹部に数発のビームをまとめて喰らったゼクゥは、瞬く間に爆発、四散した。


《やっと一機撃破だぜ!》


少尉が叫ぶ。一瞬流れる安堵の空気。だがそれはすぐさま破られる。


《少尉! 上です》

《何!?》


突然空から少尉のシグナス目掛けて、二条のビームが飛んできた。マサムネだ。爆発で煙幕が晴れた瞬間を狙われたのだ。


《チィィィィ!》


フットレバーを一気に踏み込み、急旋回する。次の瞬間、鈍い衝撃がコックピットに伝わる。肩に一発かすったようだ。中尉機がマサムネに向けて対空散弾を撃つが、悠々逃げられる。追い払うのが精一杯だ。


「大丈夫か? 少尉」

《ちょっとかすっただけです。問題ありません!》


通信機から威勢のいい少尉の声が帰ってくる。しかし大尉はその端々に疲れが滲んでいるのを目ざとく感じ取った。一機倒したとはいえ、残った敵の数はゼクゥ四機にマサムネ二機。敵は想像した以上に、選りすぐった精鋭部隊を投入してきたようだ。このままでは壊滅も時間の問題かもしれない。大尉はデータから戦域の地図を呼び出した。


《中尉、最後のスモーク、撃つぜ! ……なんかよぉ、“撤退戦”やってるっつーより、ただ単に“撤退”してるよーな気がするんだけど、よっ!》

《大変不本意ながら、その意見に賛成です。……っと、対空散弾、もう切れます!》

「やかましい!この辺は美味いヘビが多い!終わったらたらふく食わせてやるから文句を言うんじゃない!」

《……大変です少尉!カレー粉を切らしています!!》

《なにィ!……なら、ここは地獄だッ!!》

「お前ら、帰ったら覚悟しとけ!!」


……もう、何が何だか。こんな状況でもこんな冗談すら飛び出すのは、まだ余裕と言って良いものかどうか。


(いつ死ぬか分からんのに、まだ無駄口が叩けるとはたいしたもんだ)


コックピットの中で一人大尉はニヤリと笑った。とはいえ、さすがの彼らも限界に近いのは分かっている。そう判断した大尉は、一か八かの賭に出た。


「――全機に告ぐ!左舷2km後方にある“林”へ逃げろ!」


大尉のシグナスが目眩ましのフラッシュグレネード弾を放ち、少尉も中尉も残った煙幕弾を全弾発射する。再び巻き起こった白煙の渦と、太陽のように眩しい光が戦場一面に炸裂した。その瞬間、大尉達はほぼ同時に動き出した。









敵部隊は一瞬、虚を突かれただろう。なにしろ彼らはなりふり構わず敵に背を向けて逃げ出したのだから。


「ば、馬鹿かアイツ等!?」


何とか対空溜弾の雨を潜り抜けていたマサムネ二機のパイロット達は今までの見事なまでの撤退戦とは打って変わって、見苦しいまでの敗走ぶりに呆れかえった。今まで彼らの見せていた撤退戦の手腕は軍学マニュアルに載せたいくらい見事なものであった。それが突然この有様。疑うのも無理は無いだろう。

補足すると、撤退戦とは『常に敵と相対出来る』訳でも無く、『常に敵に背を向けて逃げられる』訳でも無い。攻めては引いて、引いては攻めて、最終的に引くという極めて難しい用兵なのだ。部隊のチームワークしかり、個人技しかり、敵部隊の動静を把握する戦術観しかり。それらが全て合わさって出来る戦術なのだ。それが突然、素人の集団の如き豹変ぶり。少しでも戦術を囓っていればそれを不審に思うのは当然だろう。だからこそマサムネ隊もそうだったように、ゼクゥ隊も一瞬だけ躊躇し、足を止めてしまったのだった。しかしそれもほんの僅かの間だけ。敵が遁走したと判断するや否や、一気に大攻勢を開始する。


「よおし、敵が総崩れを起こした! 全機突撃、一気に叩きつぶせ!!」

「GO!GO!GO!」


逃げ惑うシグナス達に止めを刺すべく、マサムネ、ゼクゥ隊の隊長機が総攻撃の命令を下す。それにあわせて両部隊は最大速力で突撃していく。その猛攻の前に、煙幕弾も目くらましのフラッシュグレネードも、もはや障壁足り得なかった。



《うひょー!!奴ら一斉に追いかけてきたぜ!》

《一発でも当たったら一巻の終わりですね》


少尉と中尉が悲鳴のような声を上げる。シグナスの背後、遥か向こうから地響きを上げてゼクゥ隊が追いすがってきた。その上空には二機のマサムネもいる。四機のゼクゥが一斉に背部の連装ビーム砲を撃ってくる。


《でえええええ!》


雄たけびを上げながら少尉が必死によける。当然大尉も、中尉も。足を止められたら最後、それは死だ。


「牽制の弾幕を張れ!」


大尉が叫ぶ。二機のシグナスは突撃銃を持つ腕を後ろに向けて、そのままフルオートで連射。当たるわけもないが、それでも敵をひるませるには十分だ。中尉もライフルを肩に担ぎ、僅かに残った対空散弾を後方のマサムネ目掛けて発射する。牽制をしながら三機のシグナスは全速力で逃げるが、ゼクゥとマサムネの部隊はますますその距離をつめてきた。想像以上に速い。


「糞ッ!」


後方モニターを見ながら、大尉はいらただしげに吐き捨てる。実はこの逃走はシグナスにはかなり分が悪かった。

二脚モビルスーツはその体格上、どうしても重心が高くなるという性質を持っており、如何に有効なバランサーを装備していたとしても、常に不安定性の問題を抱えている。そのため道路などの舗装地帯ならともかく、起伏のある地形などでは長時間の高速移動が困難となっていた。

ところがゼクゥをはじめ四脚モビルスーツは重心が低く、さらに接地面積が二脚モビルスーツの2倍と遥かに大きいため、その安定性は群を抜いていた。二脚モビルスーツとは違い、地上であれば一切の地形を問わず、長時間の安定した高速移動が可能なのである。先代機のバクゥが『地上の覇者』と謡われたのも頷けよう。まして空を飛ぶ可変モビルスーツ、マサムネは何をいわんや。

すなわちこれら二機種を背中に回しての逃走など到底不可能なのである。

だがこの苦心極まる逃走劇もそれほど長くはかからなかった。何故ならこれも彼らの作戦だったのだから。





有効射程距離まで、あと70……いや50か。


「逃げろ逃げろ、兎ちゃん達。キツネに狩られるのももうすぐだ」


ゼクゥの射撃担当パイロットは、逃げ惑う三機のシグナスを照準モニターから覗きながら、舌なめずりをしていた。

幾多の戦友を死地に追いやった憎むべき敵。それを討ち果たすその時が、もうまもなく訪れる。戦友の無念を晴らし、比類ない功名を打ち立てる甘美なる愉悦。長年待ち焦がれた極上のワインの開ける瞬間にも似ようか。じわりじわりとシグナスとの距離が近づいてくる。来るべきその時に向けて、パイロットは己が心臓の鼓動が高まるのを抑え切れなかった。

そしてそれはマサムネのパイロットにもいえた。その彼は三機のシグナスの進路上には、木々のしげみがあるのを上空から発見する。


「ゼクゥ隊各機に告ぐ。敵機は前方に見える林に逃げ込むつもりだ。注意せよ。逃げ込まれる前に我々は先回りして敵の足を止める」

《了解。林に入り込まれる前に撃破する。万が一の場合は林ごと焼き払おう》


追撃するマサムネ隊とゼクゥ隊は相互に確認しあう。追っ手から視界をくらますには持って来いの場所だろう。対空散弾のさえなければ落される心配が無いマサムネはそのまま大胆に突っ込んでいった。強襲能力の高いマサムネの面目躍如である。

だが。


「さあ、いいかげん落ちやがれ、テロリスト共! ……え?」


次の瞬間、突然マサムネのパイロットの身に予想外の事態が起きる。突然ミサイル警報が響きわたったのだ。

そんな訳は無い。敵はシグナスしか居ないはずだ。現にレーダーには今までなにも――そこで、彼の意識は途絶えた。先行したマサムネが爆散する様をもう一機のマサムネのパイロットは呆けた様に見入っていた。何が起こったのか信じられないという顔をしている。

マサムネを撃墜した犯人、それは。


《朝も早よから穴掘りして対空地雷を埋めた甲斐があったぜ!》


火の玉と化して墜ちていったマサムネの姿に、少尉が歓声を上げる。大尉達が夜陰に乗じてこの辺りに仕掛けていた対空地雷がマサムネを撃ち抜いたのだ。大尉の言った“林”とは、この対空地雷を仕掛けたエリアの事だったである。

対空地雷とは地面に埋めておいて、その上空を敵飛行機が通過した瞬間に射出されるミサイルである。本来地雷という用途からは絶対に派生しないタイプの兵器で、通常の軍事的観点からすれば“意味の無い兵器”に間違い無いだろう。対空車両の方がずっと効率がいいからだ。しかしゲリラ戦という観点から見れば、一転有用な兵器となる。対空兵器も乏しく、また航空支援の望めないゲリラ達が最も恐れるものは、やはり敵の航空戦力だ。しかしこの対空地雷はそれを罠に絡めとる事ができるのである。どこに隠されているのか判らず、しかも安価であるがために一度に大量に配備できる。――いつ、どこから攻撃されるか判らない。それは特にマサムネの様に低空攻撃を行うものにとっては、重大な脅威となる。かくしてそれは現実のものとなった。

先行したマサムネが爆散した事で対空地雷の存在に気付き、慌てて残りのマサムネは高度を取る事で回避する。錯綜する敵の様子を見た、大尉はすかざず合図を送る。そこには彼の言う”林”という言葉の、もう一つの意味が隠されていた。


「狼煙は上がった――出番だ、野郎共!」


シグナスが林の中に消えた瞬間、それと入れ替わるように、突如として林の中から十機もの小型モビルアーマーが出現する。あたかも大尉の掛け声に呼応するかのように。それはローゼンクロイツが用意した伏兵――簡易モビルアーマー『フライル』の部隊であった。

林の中で息を殺していた彼らは次々に起動し、関節部から軋みを上げながら、雄々しく立ち上っていく。

その姿は攻撃ヘリからローターを外し、代わりに機体の左右に二本の足をつけたかのような、実に奇妙で簡素なデザインをしている。腕はなく、足の付け根の両脇に数発のミサイルを装備し、機体下部にビーム砲を一門装備していた。

この異形のモビルアーマー『フライル』は、レジスタンスという非合法に軍備を持たなければならない特性上から生まれた。”安価で、メンテナンスや部品調達が楽で、役に立つ”という三本柱――はっきり言えば無理難題に他ならない要求の元に。が、“必要は発明の母”という至言はこのことか。レジスタンスの技術者は”共有できる基本ユニット”、”部品・装備は現地部隊が自在にアレンジ”という二点に絞込み、ついに開発したのだった。

すなわちフライルとは機体の基本ユニットとなる基礎フレームとエンジン、コックピットだけで構成された、いわば骨格だけの簡易モビルスーツなのである。無論高い性能は望めど手に入るわけもなく、むしろその性能は雑魚の範疇に入る。だがそれでも様々な部品を繋げただけで運用できるこの機体は、その応用性の広さと調達価格の安さゆえに、各レジスタンスで使われるようになった。

基本フレームユニットを除けば外観、性能はバラバラで部品の選択は現地の部隊それぞれだ。ローゼンクロイツで使われているこのフライルは、戦闘機の部品を流用して作られた一バリエーションであった。


《て、敵の増援か!?》


三機のシグナスが向かっていた林から、突然現れた伏兵にゼクゥ隊は戦慄する。”敵を追い込んだはず”が、いつの間にか”敵に追い込まれていた”という事実。彼らは自らが死地に立ちつつある事を悟った。


「全機突撃! 一機たりとも生かして帰すな!」


ローゼンクロイツに所属する部隊長の号令一下、フライルが宙に高々とジャンプする。ゼクゥの真上の空を瞬く間にフライル隊が覆い尽くす。四脚モビルスーツの最大の弱点――、上空からのトップアタックだ。全高が低く隠密性に優れ、軽量にして、驚異的な瞬発力。戦車の天敵が攻撃ヘリであるように、このフライルもまさにバクゥ系モビルスーツの天敵としてその生を受けたのである。


「ウオオオオオッ!」


パイロットの雄叫びとともに、フライル隊は次々とゼクゥに襲いかかった。フライルのビームガンが次々と火を吹き、雨のようにゼクゥ隊に降りかかる。一機のゼクゥが被弾する。その装甲に次々とビームで穴を穿たれ、たちまち炎上した。

だがゼクゥ隊も必死に応戦する。背中の連装ビーム砲を射角限界まで引き上げて、上空から攻撃してくる敵めがけて撃ちまくった。一機のフライルにビームが当たる。一瞬にして装甲が蒸発し、爆発した。フライルの装甲は紙の様に薄い。防御力など無いに等しく、一撃必殺にかけるしかないのである。だが僚機が撃墜されようとも、誰も怯まない。一方、残った三機のゼクゥは果敢に反撃するが、射撃角度がきつすぎて狙いが定まらない。


「下がれ、下がるんだ! やつらの間合いで戦うな! 距離を取れ!」


指揮を取るゼクゥのパイロットが悲鳴のような声で、生き残った僚機に命じた。なんとか距離を取って自分達の有利な展開にしようと必死だ。飛び上がったフライルが一機のゼクゥを真上から狙う。しかしその瞬間、ゼクゥは足のキャタピラを逆走させ、そのまま大きく引き下がった。敵にかわされたフライルはそのままゼクゥの正面に着地してしまう。


「そこだ!」


連装ビーム一閃。フライルを撃ち抜く。哀れなその機体は破片を撒き散らして爆散した。さらに近くでまた一機のフライルが爆発する。トップアタックに失敗し、ゼクゥの火力の前に血祭りに上げられたのだ。正面勝負になってしまえば、装甲と火力に大きく劣るフライルに全く勝ち目は無い。……だが、それはフライル隊の誰もが熟知している。一撃必殺のトップアタックに賭けるしかないのだ。


「怯むな! 一人一殺! 死んでも落とせ!」


フライル隊の隊長が叫ぶ。次々に倒れる仲間を無視して、残ったフライル隊全機が全力で突撃する。背部のブースターを閃かせ、次々と中空に舞い上がっていく。

この言葉がその心を余すことなく伝えている。命を惜しみ、逃げ帰る事は許されない。というより、己の誇りが許さない。言葉通りフライル隊は特攻を開始する。防御をかなぐり捨てた命懸けの攻撃。まさにそれは必殺の覚悟だった。

一機のゼクゥに仕掛けたフライルが真下からの迎撃を受ける。左足をビームが撃ち抜き、膝から下が粉々に吹き飛んだ。だが被弾したそのフライルは、落下にまかせてそのまま体ごとぶつかっていく。迎撃の一打を放ったゼクゥのボディに、撃墜したフライルの機首が突き刺さる。互いに両機は誘爆し、荒野に己の体を散らしていった。


「何だよ! 何なんだよ、こいつら!?」


高空に逃げたマサムネのパイロットは眼下で繰り広げられる凄惨な戦いに、完全に青ざめていた。櫛の歯が欠ける様に、一機、又一機と友軍が撃墜されていく。そして気づけば生き残っていたのは自分ひとり。戦争においてそれはしばしば『悪夢』と形容される。しかし、マサムネのパイロットにとって『悪夢』とは正にこれから始まるものだった。





「ライトニング=フォーメーションAct.チャーリー!!」


大尉の号令で、最後の力を振り絞り中尉、少尉が動く。狙うは唯一健在なマサムネ。だが、未だ高空の安全地帯に居るマサムネに有効な手段は無い。否。安全だと相手が思っているからこそ効果があった。

次の瞬間、マサムネのパイロットは信じられないものを見た。シグナスがマサムネの目の前に居たからだ。


「ば、馬鹿な! 地上から何メートル離れてると……」


陸戦用モビルスーツでは到底到達出来ない高度にマサムネは居るのだ。パイロットが動揺するのも無理は無いだろう。

思わず地上に目を向けるマサムネのパイロット。シグナス隊が何をしたのかそれは直ぐに解った。彼らは、まるで騎馬戦の様にそれぞれが片腕でシグナスを抱えると、そのまま馬になった二機のシグナスのスラスターでジャンプ。そして、最高度に到達した所で、頭のシグナスが自身のスラスターで跳んだのだ――マサムネの居た高度まで。考え方自体は多段ロケットと同じ。だが、理論と実践には雲泥の差がある。その差が、明暗を分けた。

少尉機がビームサーベルを抜く。そのまま一気に叩き付ける。


「墜ちやがれ!!」

「ひいいいいィィィ!?」


サーベル一閃。回避する事もままならず、マサムネはそのままコクピットを貫かれた。そして落ちる木の葉のように二、三回くるくると回って、爆発した。

火玉を背に少尉のシグナスが地上に舞い降りてくる。スラスターを吹かして、ゆっくりと減速しながら。ゼクゥ隊もすでに全滅している。地上では中尉と大尉のシグナス、そして生き残った5機のフライルが少尉の帰りを出迎えていた。






ムラマサに設えられた戦術指揮用のモニター。そこにはマサムネ隊、ゼクゥ隊、ザウート隊の全滅――その情報が映し出されていた。それをどう確認しても、アデルにはこの一言しか思いつかない。


(……してやられた、という事か!)


敵はこちらの予測を遙かに上回る方法でガンダムタイプを後方支援部隊に突貫させ、こちらの後方支援部隊を潰した。更に前線部隊はゲリラ戦術で分断され、各個に迎撃されてしまった。現存している部隊は、今やムラマサとルタンド隊だけだ。部隊の半数以上が撃墜されたとあっては、戦術面でレジスタンスに敗北したのは明白。だが、諦める訳にはいかない。否、諦められない。アデルに撤退する場所は無いのだ。

進むも死、退くも死。用意された運命はそれしかない。

アデルは静かにモニタを操作する。最大望遠でアリーの街を――そこに居るモビルスーツを大映しにする。


「そうだ……全ては貴様が居たからだ……」


アデルはぶつぶつと呟く。


「そうだ、全てはこいつから始まった。度重なる敗北も、味わった事の無い屈辱も。ガンダムもどき! 貴様さえ居なければ、私は……!」


狂気が、アデルの中で渦巻く。


「良い子ぶって正義を振りかざした所で、貴様等は単なる殺戮者に過ぎん。殺人に貴賤など無いのだ! お前に与えられるのは賞賛でも感謝でもない。ただ、怨嗟と侮蔑のみ! 待っていろ。私が貴様に、貴様に相応しい墓場を用意してやる……!!」


 アデルの口元に、笑みが浮かぶ。それは恐怖と嫌悪と愉悦がブレンドされた嗜虐の笑み。己の運命も、他人の運命も構わず投げ捨てる事が出来る――そんな人間の微笑み。

今のアデルの形相は魔剣の所持者と呼ぶに相応しかった。伝説の通り、親を殺し、妻を殺し、敵を殺し、そして――己をも殺した狂気の剣の。





《シン、レンジ3に敵影補足。9時方向から来るぞ》

「何機だ?」

《一機。だがこの大きさと速力はモビルスーツじゃないな》

「モビルアーマー!?」


黒い鳥が、空を切り裂いていく。禍々しきフォルムは威圧性を期待したものか、黒で塗り固められた姿は正しく”凶鳥”といった所だ。ムラマサ――かつて、所有者を常に死に追いやったという剣の伝説――その名を継いだモビルアーマー。


「貴様さえいなければ……! 貴様さえいなければ!!」


呪詛のような怒号がアデルの口からほとばしる。ダストの周囲にまだ逃げ遅れた市民がいたのをアデルは発見する。誰もがムラマサの姿におびえ、恐れていた。ここで攻撃すれば彼らを巻き沿いにするのは確実だろう。だが今のアデルにとってそんな事実はどうでもよかった。彼は躊躇無く引き金をを引いた。


《撃ってきたぞ、シン! ミサイルだ!》

「正気か!?……ここにはまだ、市民が残っているんだぞ!?」


市民を犠牲にするのに一片の躊躇も無い。正常とは思えぬその思考に、シンは戦慄した。

そう。確かにシンとコニールはザウート隊を蹴散らした。その後、コニールは現地ローゼンクロイツと協力して市民の避難誘導を行う手筈になっていたはずだ。だが、それは未だ完了していない――まだ街中に市民が居るのがダストからでも見て取れるのだ。

そもそも今回の奇策は、アリーの街という環境を十分に考慮したものだった。

『政府軍にとっても、レジスタンス側にとっても無傷で手中にしておきたい』というアリーの街の特性。産業拠点としてのアリーの街はやはり両陣営にとって極めて重要なものだった。それ故にレジスタンス側はこの街に砲撃を仕掛ける事は――戦術上で不利になったとしても――どうしても躊躇ってしまう。大尉達が満身創痍になりながらも撤退戦術を敢行したのはそういった背景もあったのだ。

だがそんな苦労を嘲笑うかのように、十二本の矢が弧を描き、ダストに向かって飛来する。それ一つで街に大損害を与えうる対モビルスーツ用の大型ミサイルだ。ダストに当たらずとも、レジスタンスは痛手を受ける――当然政府軍側も。暗黙の了解であったお互いのルールが破られた瞬間である。


「駄目だ! 俺が避けたら街に当たる!」


シンが叫ぶ。それは最悪の結末。街に一発でも当たれば、まだダストの近くに居るコニールや、市民がどうなるか。モビルスーツ同士の武器が、たとえ一つでも流れてしまったらどうなるか。シンの脳裏に、フラッシュバックする映像――そんなものが無くても、容易に想像が付く。そして、シンにとってそれは決して見たくない、見てはならない類の映像に他ならない。


《シン。あのミサイルはアクティブ誘導方式だ。ダスト目掛けて追尾してくるはずだ。皆を守りたければ引き付けてから避けろ》


レイの言葉に頷いたシンは、ダストのスラスターペダルを乱暴に蹴飛ばし一気にダストを中空に押し出す。それにつられて、ミサイル群がダストに引き寄せられるかのように向きを変える。


《どうする気だ? 今は増加装甲も無い。一発でも当たれば一溜まりもないぞ?》

「全部、打ち落とせば良いんだっ!」

《確かに、それしかないな。上手くやれよ》


ひどく冷静なレイの声が、熱くなりがちなシンに上手く水を差す。シンはラダーを操作し、ダストをミサイル群から直角に移動させる。荒野に背を向けながら、少しでも着弾までの時間を稼ぐ。そして、手当たり次第にイーゲルシュテルンで迎撃する。


「落ちろっ!」


ミサイル群はダストをまるで生き物のように追いつめる。白く伸びる白煙が、蛇のようにダストを襲う。そこにダストはイーゲルシュテルンを撃ち込んでいく。一つ、又一つとミサイルは息の根を止めていくが、如何せん数が多すぎた。


《直撃来るぞ。何をやっている!》

「ここからだ!」


するとシンはダストに携行させていたバズーカをミサイル目掛けて放り投げ、それにイーゲルシュテルンを撃ち込む。バズーカが爆発し、瞬間、辺りにスパークが走る。


「くあっ!」


モニターが一瞬ホワイトアウトする。だが襲い掛かってきていたミサイルは、あるものは爆散し、またあるものは街の外に落ちていった。バズーカの誘爆によって生み出された局地的な電磁スパークで、ミサイルは計器類を破壊されたのだ。

シンはダストを自由落下に任せる。ミサイルの誘導を切るためと、計器の無い状態でのアクロバット飛行は危険だと瞬時に判断したためだ。この辺りはパイロットの本能である。

ミサイルが全て撃墜されたのを確認すると、シンはほっと胸を撫で下ろした。しかし安息はそうそう訪れない。すぐさまレイの警鐘が飛ぶ。


《来るぞ! 大物だ!》


アデルの操るムラマサが、すぐそこまで接近していたのだ。

飛来してきた黒いモビルアーマーは変形し、たちまち巨大な人型へと化身する。否、それはやはりモビルスーツではない。モビルスーツの様なコンセプトで作られた代物ではないのだ。巨大な腕らしきものから発振された大型のビームサーベルが、驚くべきスピードでダストに飛来してくる。回避が間に合わないと判断したシンは咄嗟にシールドを構えた。


「……なっ!?」


激しい火花が散ったと思った瞬間、ダストの足は宙に浮いていた。

巨大な質量から生み出された運動エネルギーが叩き付けられ、シールドごとダストを弾き飛ばしたのだ。

地表に叩き付けられる寸前、シンはダストのスラスターを全開にして何とか墜落だけは避ける。姿勢を整えたダストの前に、黒い巨体が降り立った。人型のシルエットは更なる禍々しさを連想させる。


――最新鋭モビルアーマー、ムラマサのスタンディングモードであった。



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