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オーブの首都、オロファトに本社を構える『オーブタイムス新聞社』。
その国際部の室内の一角。机の周りには資料の束が積まれ、タバコの煙が霧のように立ち込める。メッシュを入れた黒髪の青年が、古臭いデスクトップのキーをせわしなく叩いている。机の左側の書見台には非英語圏の言語が羅列された原稿が置かれており、先程から彼の視線はその原稿とディスプレイを往復していた。
「んー退屈っ、だー……」
その声の直後、時代錯誤な電子音が上がる。右側に置かれたアタッシュケース型コンピュータのモニターに、一瞬遅れて文字が並んだ。
『アウトフレームを手放せないんだろう? 必要なコストだ』
「……解ってるよ、8(ハチ)。あれは…必要、だからな」
ジェスは以前から親交のあったジャーナリストの先輩のツテで、この新聞社で国際部の契約社員として勤めていた。常に真実を求める姿勢だけでなく、数々の賞や功績を持ち、数ヶ国語を余裕で操り、海外事情にも詳しいジェスの力量が、新聞社から大きく見込まれたのだ。
一方、ジェスも愛機「アウトフレーム」の保全・管理・修理などのためにより大きい稼ぎを必要としていたし、人脈をより広げられるチャンスだと思っていたので、つまりは両者の思惑が一致したのだ。 そんなわけで今、ジェスは新聞社に籍を置いていた。
日常は国際ニュースの翻訳・執筆に関わる一方、事あらばカメラ片手に南米の鬱蒼としたジャングルだろうが、熱射が叩きつける灼熱の砂漠だろうが、どこでも駆けずり回る事をも厭わないジェスだが、1ヶ月以上のオフィス仕事は骨身に堪えているようである。顎を出して深く溜息をつき、再び単純な翻訳作業に埋没しようとしたその時。
「ジェス、君宛の手紙が来てるぞ」
「あ、先輩……手紙ですか? Eメールじゃなくて……?」
「確かにアナログだな。紙のようだし……ああ、一通りのチェックは終わってるぞ。薬品も大きな金属も入ってない。……それからなジェス。例の写真の件だが、やられたよ。治安警察の検閲が入った」
白い封筒を受け取ったジェスが、弾かれたように男を見上げた。
「え、例のって…シドニーのですよね? デモ隊への発砲シーン……何であれが駄目なんですか! あれが無かったら、記事が……」
「平和を乱す、とさ。我々は二度と戦争を起こさない為に全力を尽くしている。君たち報道関係者も、社会の木鐸として統一連合の平和維持活動に協力するべきじゃないのか……そんな事を延々言われたよ」
「平和、か……」
統一連合が世界を握ってから幾度と無く繰り返され、美しい詩のように持ち出されてきたその単語を聞いて、ジェスは歯噛みする。
『平和の乱れに繋がる』『また戦争を起こしたいのか』『ジャーナリズムが動乱の種を蒔いている』
戦後、ジェスが何度もぶつかってきた言葉の壁である。統一連合の支配に生まれた歪み、貧困の中で起こる無秩序。それらは世界の『真実』として報道されるべき物のはずである。知らなければ、何も始まらないからだ。
確かに戦争よりは平和が良い。だがその為に、汚い物を世間から隠して良いという理屈は無い。しかし汚れた真実を知れば、現状を変えようと動き出した世界に争いの火種が生まれる。かつて南米の独立運動を取材したジェスには、それが痛いほど解っていた。
ジェスは熱血漢だが、愚者ではない。態度にこそ出さないが、自分自身の姿勢に疑問を抱いた事など何度もある。 だが今までと異なるのは、彼に『最後の一押し』が欠けている事だった。信念を貫く為の、何かが。
「挙句…この写真を撮ったカメラマンを『保護』させろと言ってきた。勿論、そっちは丁重に断ったから、安心してくれて良いぞ」
「感謝します。……え?」
封筒の宛名を指で追ったジェスの目が見開かれる。とある名前が、真っ白な紙面に書かれていたからだ。
「ソキ、ウス……?」
勢い良く席から立ち上がる。身を仰け反らせる男に慌しく詫びて、アタッシュケースを手にオフィスから出て行った。呆気に取られていた男が、やれやれと肩を竦める。
「つくづく、はしっこい奴だ……」
『そう興奮するものか? 確かにアメノミハシラからだが』
「『あの人』が季節見舞いなんか寄越すかって! きっと何か大事な……!」
仕事時間中は人気のないラウンジ。丁寧に封を切るのももどかしく、破るように中身を取り出すジェス。予感があったのだ、ジャーナリズムとしての。ICがプリントされた白い便箋を広げ、食い入るように読み出した。8も視覚センサーを起動させ、目を通す。通す、が。
「オロファトは変わらぬ暑さでオフィスのクーラー漬けも身体に悪く、健康にはくれぐれも注意されたし。……あ、あれ?」
『不器用な季節見舞い、だな。どう読んでも』
「ぁーあ……何かあると、思ったんだが」
『ロンド=ミナ=サハクも今や一国の代表者だ。多忙なんだろう』
ラウンジに置かれた安物の椅子に腰掛け、テーブルに8を置いたジェスが、脱力して天井を仰ぐ。
「紙で連絡が来たんだぞ? この時代に」
『確かにな。しかも個人情報を入力したICプリント付のようだ。機密文書に使われる手法だが…季節見舞いにしては大袈裟な……ジェス!』
「うわっ」
呆けた表情で展望窓から見える街並みを眺めていたジェスの身体が、横から上がったブザー音で浮き上がった。
「8、どうした?」
『このICプリント、二重構造になっている。人間の目には確認できないだろうが。こちらのセンサーだけでは、詳しく読み取れない』
「なに? じゃあ…」
『別の情報が隠れているかもしれないという事だ。オフィスのスキャナーと私を繋げば、あるいは…』
「…!」
弾かれたように、ジェスは手紙と8を持ってオフィスへ駆け戻る。紙の束で埋もれた机を掻き分けて、古ぼけたスキャナーを発掘した。10本以上のコードが絡み合ってスパゲッティのようになったその混沌の海から、無理矢理引っ張り出す。
呆気に取られ、遠巻きにジェスを眺めるオフィスの面々。 数々の賞を取ったが、時折アタッシュケースに話しかける風変わりな契約社員という事で、やっと定着してきたイメージが剥がれ落ちた瞬間だった。
「あぁっ!?」
「わ、悪い!」
何かまずい物を引っ掛けたらしい。向かいの席でキーボードを叩いていた同僚から上がった悲鳴に謝りつつも、スキャナーから伸びるコードを8の端子に繋ぐ。電源が入る間すら惜しく、LEDが点灯した直後に、叩きつけるような勢いで便箋にスキャナーを押し付けた。
目の前のデスクトップ画面にウィンドウが浮かび上がる。ロンド=ミナ=サハクの公式プロフィールだ。その直ぐ横にもう一つ表示されるウィンドウ。2つのICパターンが組み合わされ、各所が赤く点灯する。
「いけるか? 8」
『プロテクトと呼ぶほどでもない。簡単な間違い探しだ。つまり、急を要する事態かも知れない。……出たぞ』
そして表示されたのは僅か3行の文。1行目には日時、2行目には場所。そして、3行目には、こう短く書き足されていた。
『来たれ野次馬』と。
『また、唐突だな。刻限まで24時間を切っているし、何より遠いぞ。彼女が冗談事で人を呼び出すとも思えないが……』
「当然行くさ! 冗談だろうが罠だろうが、こいつは見逃せない!」
『そういうと思った』
ジェスが立ち上がる。『最後の一押し』が今、訪れたのだ。
「編集長! 翻訳終わりました! 今から行ってきます!」
「 あ、ああご苦労さん。え、行くってその、何処へかね?」
デスクから顔を上げた老年の編集長は、ジェスの出で立ちを見て思わず老眼鏡を掛け直した。同時に分厚い紙の束と、数枚のメモリスティックが立て続けに机に乗せられる。
首に掛けたゴーグル。フードつきのパーカー。着古したジーンズ。背負った登山用リュック。肩からかけた、大型の撮影機材。左手には何時も彼が話しかけているアタッシュケースを提げ、右手にはたった今プリントアウトした空港の発着スケジュールと地図。
「取材です!」
いまだ呆然としている編集長に向かって、ジェスは無駄に力強く返答し、白い歯を見せて笑顔を浮かべた。
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執筆の途中ですこの項目「赤道内戦」は、調べものの参考にはなる可能性がありますが、まだ書きかけの項目です。加筆、訂正などをして下さる協力者を求めています。この項目「赤道内戦」は、現在査読依頼中です。この...
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